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94話 魔道具をゲット!


 俺達はベロニカ峡谷という所へ向かう事になった。

 だが、移動するには人数が多く、いままで使っていたラ○クルプ○ドは使えない。

 そこで新しい車を購入した。よく盗まれる車ナンバーワンとも言われるT田ハ○エースコミューターだ。


 さて、新しい車を買ってしまってから言うのもなんだが……。


「皆の意見も聞かずに、王族や俺達と戦った魔導師と一緒に旅をする事が、なりゆきで決まってしまったのだが――」

「にゃ?」

「気が乗らない者がいるなら、金を渡すから王都で待っててもいいぞ?」

「そんな事を言うなよ、旦那!」

「今更かにゃ? 王侯貴族が横暴なのはいつもの事にゃ」

 ミャレーの言葉に王女が苦笑いをしている。


「私は、ケンイチがいいなら、いい」

「マロウ商会、金儲けの秘訣――商売とは相手の人格を計るものではなく、財力を計るものである」

 金儲けの秘訣――そんなのがあるんだ。要は、金持ちなら気に入らない連中でも、とりあえず付き合っておけ――って意味だろ。



 皆の意見は俺に賛成。王族も――王女を俺の所へ送り込んできたって事は、これ以上敵対するつもりもないのだろう。

 それにスノーフレーク婆さんの孫とも揉めたくはない。まかり間違って、殺したり大怪我をさせてしまったら、あの婆さんがかわいそうじゃないか。

 それでも、あくまで敵対するのであれば、やむを得ないが……今のところは、そんな様子もなさそう。


 俺達家族の話し合いの間にも、カールドンさんが、ハ○エースの周りをぐるぐると回っている。


「こ、これは、何ですか? 荷馬車? 馬なしで動くのですか?」

 空中から落ちてきた車に皆が驚きの声を上げたが――こういうメカが大好きそうな彼が、真っ先にアレコレ聞いてきた。


「私の言うことを聞く、召喚獣ですよ。私が作った特殊な油を食べて走ります」

 ドアを開けて運転席を見ると、キーが挿さっていたので抜く。

 側面のスライドドアは片面だけで、キーのリモコンスイッチを押すとドアが自動で開く。


「おおっ! 勝手に開いたぞ? 魔法かぇ?」

「まぁ、そのような物です。これに皆様を乗せて、ベロニカ峡谷の崩落現場へと、お運びいたします」

「こ、これはどのぐらいの速さで走るのですか?」

「休みなしで、今日中には峡谷へ到着できると思います。何も問題がなければですが……」

「なんと! それは凄い……」

 女魔導師のメリッサもあっけに取られている。


「君も乗って行くだろ?」

「も、勿論もちろんよ。早く着くに越したことはないから……」

「これは凄い、柔らかい車輪? 一体何で出来ているのですか?」

「そりゃ召喚獣だから、柔らかい部分もある」

 無論、大嘘だ。


「なんと……」

 カールドンさんが、床の下に潜り込んでいる。

 ドライジーネを自動化するようなメカマニアなのだから、自動車のメカニズムにも興味があるのだろう。

 しかし、あまり探られてしまうと、単なる機械だとバレてしまうかな?

 エンジンも見せたりしなければ、想像もつかないとは思うけど……。

 彼を放置して、王女の荷物を確認をする。


「リリス様。お荷物はどのぐらいあるのですか?」

「もうすぐ、メイド達がやってくると思うのだが……」

 待っている間に――家とニャメナの小屋をアイテムBOXへ収納する。

 そして、トイレも収納――アイテムBOXからユ○ボを出して、穴を埋める。立つ鳥跡を濁さずってな。

 かなり深く掘った穴だから、臭いがしたりすることもないだろう。


「おお~っ! これが、謁見の間で暴れた召喚獣ですか!」

 メカ好きのカールドンさんが、ハ○エースの下から土まみれで這い出てきた。


「暴れたのは、これより2回りは大きい物だったの」

「ほほう!」

 俺達の家を収納し、後始末を終えると――メイドさん達が10人程、荷物の詰まった鞄を運んできた。

 全部で鞄が10個か。


「普通は天幕テントも運んだりするのじゃが、それは其方の家があるから、必要ないじゃろ?」

「そうですね」

 アイテムBOXからパレットを出して、その上に王女の荷物を載せてもらう。


「収納!」

 荷物がアイテムBOXへ収納されて消えると、メイドさん達から歓声があがる。


「「凄い!」」

 ニコニコしているとアネモネにズボンを引っ張られた。


「ケンイチ、ニコニコし過ぎ」

「はは、悪い――それではリリス様。出発いたしますか?」

「おう! この中に乗ればよいのじゃな?」

「お好きな席へどうぞ」

「妾は其方の隣がよいのだが――こら! カールドン! いい加減にせい!」

 カールドンさんが、再びハ○エースの下へ潜っていたのだが、這い出てきた。


「はい! 申し訳ございません。年甲斐もなく、興奮してしまいました」

「仕方ないのう」

 彼が、置いてあったドライジーネと一緒に車に乗り込む。


「それでは、リリス様はこちらへ」

 俺が助手席のドアを開けて、王女をエスコートする。


「うむ」

 だが、助手席を取られたアネモネとベルは、ふくれっ面をしている。

 偉い人優先だ。仕方ないじゃないか。


「よっしゃ、皆乗ってくれ。好きな場所でいいぞ」

「クロ助、俺たちゃ、また一番後ろへ行こうぜ」

「にゃ」

 アネモネとベルは、運転席のすぐ後ろの席に座っている。


「こ、これは――乗って大丈夫なのでしょうか?」

 ビビって腰が引けているのは、メガネのメイド長のマイレンさんだ。


「鉄の車体に見たこともない素材で出来た内装。見事な作りの椅子。これは素晴らしい!」

 カールドンさんが、車の内装を見て興奮し、自分の椅子の作りを確認し始めた。


「皆乗ったか?」

「「は~い!」」

「旦那ぁ! 大型の馬車でもこんなに人数は乗れないぜ」

 一番後ろの座席から、ニャメナの声がする。都市間を走っている定期便の大型馬車でも、7~8人乗りらしい。


「ニャメナ、身体は大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ」

「食欲は?」

「ちょっと腹が減ったかなぁ……」

「これでも齧ってろ」

 アイテムBOXから、パンの入った袋を出すと、後ろへ送ってもらう。


「飲み物がほしいところだけど……」

「贅沢言うんじゃないにゃ」

 準備が整ったので――ハンドルの右下にある、スイッチを押す。するとパワースライドドアが閉じて、発進準備完了だ。


「凄い!」「魔法です!」

 後ろから声がする。


「それじゃ、出発!」

「「「お~っ!」」」

 車がそろそろと動きだす。この車はオートマなので、運転はラ○クルプ○ドよりは楽だ。

 お城の裏門を潜り、驚く門番達に挨拶をする。

 そのままお堀に架かった石の橋を渡り、城下町へ入る。

 目指す峡谷は王都の東。だが、まずはカールドンさんの実家へ向かう。


「カールドンさん、道案内を頼む」

「はいはい! お任せください!」

 俺の後ろに、カールドンさんが来ると、ナビをし始めた。


「その丸い輪を回す事で、この乗り物の行き先を決めているのですか?」

「まぁ、そうですねぇ」

 あまり詳しい説明は出来ない。

 ルームミラーで、ちょっと後ろを見ると――あのメリッサという魔導師が静かだ。

 まぁ、静かならよしとしよう。


 カールドンさんによれば、彼の実家は城下町の東の外れにあると言う。

 それに、ちょうどベロニカ峡谷へ行く街道の途中に屋敷があるらしい。これは好都合。

 ゴミゴミした市街地を離れて、デカい屋敷に住んでいるようだ。それに魔導の研究をするなら、人があまりいない場所の方がいいだろう。

 彼の案内で街を出て、大きな川に架かる橋を渡る。

 橋から川の右左を見渡してみるが、あまり利用はされていないようで、小さい船しか見えない。


「研究中の魔道具って爆発したりするんですか?」

「爆発する事はありませんが、魔石が弾けたりして怪我をする事はありますよ」

 充電池の過充電みたいなもんか?

 橋を渡り――郊外へ出てしばらく進むと、広大な畑の中に大きな屋敷が見えてきた。

 彼の祖父の代から代々王室お抱えの魔導師のようだから、給料も良いのであろう。


「どうじゃ、ケンイチ。妾の物になれば、あのような屋敷に住めるのじゃぞ?」

「暮らしていくには、小さな小屋とアイテムBOXがあれば他は必要ありません。1つの鍋で顔を洗い、手足をすすぎ煮炊きをする。人間、起きて半間、寝て1間の広さがあれば十分でございます」

「ちっ! これじゃから、欲のないものは扱いにくい」

「それにしても、この乗り物――召喚獣ですか? まるで雲の上にいるような乗り心地はすごい。全く揺れないし、凸凹道にもびくともしない!」

「全くのう、馬車で旅行をすると、それだけで疲れてしまうのだが……これは凄いの」

 屋敷の黒く細い鉄の棒で出来た門を潜り、カールドンさんの実家を訪れた。

 2階建ての青い屋根が綺麗な屋敷の前にハ○エースを止める。

 屋敷の前にはホウキをもった初老のメイドがいる。


「まぁ、坊ちゃま。突然のお帰りで……この馬なしの乗り物は、坊ちゃまの発明品で?」

「カロリナ、坊ちゃまは止めてくれ。私もこの歳なのだから」

 カールドンさんが、メイドにあれこれ説明した後、一緒に屋敷からちょっと離れた場所にある木造の納屋へ行く。

 木の扉を開けると、薄暗い中――埃を被った訳の分からない道具で一杯。


「確か、一番奥の方に――母が捨ててないと良いんだが……」

 彼が探し物をしていると、外から声がする。


「カール! 帰ってくるなら、帰ってくると、連絡をおよこし!」

「母さん、お爺さんの発明品捨ててないでしょうね?」

 納屋に入ってきたのは、背の高い上品そうな年を召した女性。

 白いドレスの上に青いベストのような着物を羽織っている。


「こんなゴミは捨てるか燃やしたいのに、お前が捨てるなと言うから、捨てていませんよ」

「ホルト夫人、久しいの」

 いつの間にか、ハ○エースを降りて王女が納屋の所へやって来ていた。


「えっ!? これはこれは、王女殿下! こんな所へお越しとは! カロリナ! カロリナ! お茶のご用意をして!」

「構わぬ、カールドンが探している荷物を見つけたら、ベロニカ峡谷へ向かわねばならぬ」

「峡谷へ?」

「峡谷が崩れての、街道が不通になっているらしい」

「そ、それは一大事でございますね! それでは王女殿下、御自ら普請の指揮をお執りに?」

「まぁ、そんなところだ」

 夫人と王女が話をしている間に、暗い納屋の中でアイテムを探す。


「あった! これでしょう!」

 彼が掲げたのは、まさしく『不』の形をした、黒い魔道具。


「これですよ! 間違いありません。それじゃやはり私が持っている物も、カールドンさんのお祖父様がお作りになった物なのですね」

「これは画期的と祖父が自慢していたので、よく覚えていますよ」

 確かに画期的な物なのだが、使い道を知らなければ、よく解らない魔道具で終わりなんだよな。


 見つけた魔道具をカールドンさんから受け取ると――俺達は再びハ○エースで峡谷へ向け出発した。

 カールドンさんは車から降ろした自走式のドライジーネに乗って、お城へ帰ると言う。

 どうやら、自分の作った発明品の耐久試験をやりたいようだ。


 研究熱心だな。車の下へ潜り込み、サスペンションなどを詳しく見ていたので、ドライジーネや馬車に応用した物が作られるかもしれない。

 一緒についてくると言われたらどうしようかと思っていたのだが――お城の仕事もあるので、そうはいかないのだろう。


 ------◇◇◇------


 新しい車――ハ○エースコミューターを駆って、9人でベロニカ峡谷という場所を目指す。

 どうやら、そこで大規模ながけ崩れが発生して、街道が塞がってしまっているらしい。

 俺達が王都へやって来る前に、街道の橋も落ちていた。これで、主な街道が二箇所で不通って事になる。

 王都は多くの住民の生活を維持するために、四方から食料を輸入し――普段から食料不足気味で、地方では売らないような傷んだ果物も売られていた。

 そして街道が塞がってしまったということは、国境の街へ帝国の侵略等があっても、援軍を送れない事を意味する。

 

「其方の力を貸してほしい」――と、国王陛下に直に頼まれてしまったのだ。

 陛下の娘である王女が同行して、俺達は一路崩落現場へ向かう。

 途中で休憩も挟み、ハ○エースは街道をひた走る。


 まばらな穀倉地帯を抜けると、浅い森へ入る。だが、街道脇の木は伐採されており、王都へ運ばれているのだろう。

 ここに人が住み着けば、畑になるのかもしれない。

 だが、ここでの開墾作業は全て人力か――あっても馬や牛。

 王都で動いていたデカいゴーレムを使えば、木の根っこを抜く作業等は捗りそうなのだが……。


「ほぉぉ! 全く凄い速度で走るの!」

 助手席で王女が喜んでいるのだが、彼女に何かあると拙いので、シートベルトを締めさせたいのだが……。

 それ故、安全運転のため車の速度はかなり控えめだ。


「これでも、かなりゆっくりと走っておりますよ」

 そう、舗装もされておらず道が凸凹なので結構危ない。4WDではあるが、ラ○クルに比べたら走破性能は落ちるだろう。


「なんと!」

「後ろは、皆大丈夫か~?」

「大丈夫にゃー! この乗り物は広いにゃー!」

「ば、馬車に比べたら、かなりマシな乗り物ね」

 外の景色を見ながら素直にメリッサが感想を述べている。

 アネモネは――ルームミラーに隠れて見えないが、パッドを使ってお城で取り込んだ本を読んでいるらしい。

 俺は車で本を読んだりすると乗り物酔いをするのだが、彼女は大丈夫なのだろうか?


「リリス様。こういう場所の開墾にゴーレムが使われる事はないのですか?」

「ふむ――あまり聞かんのう。普通は力自慢の獣人などを集めて行われるようじゃが」

「ゴーレムを投入して穀倉地帯を拡大すれば、あちこちから食料を輸入しなくても済むのでは?」

「其方の言うとおりじゃが、大型のゴーレムは1時間程しか稼働出来ぬ」

 王女が横目でチラリと後ろに座っているメリッサの方を見る。

 1日1時間労働か――そのために、魔導師を地方へ赴任させておくのは、確かに効率が悪い。


「私は召喚獣を使って、自分の畑を開墾いたしましたけど……」

「其方の召喚獣は、1日中動けるのかぇ?」

「はい、食べ物となる特殊な油がある限り」

 王女は、召喚獣――重機の稼働時間に感心しているのだが、俺が開墾までして畑を作っているのが、不思議なようだ。


「其方のような変わり者も珍しいの。普通は人を使って、自分は楽をしようとするものなのではないか?」

「私は、物を作るのが好きなのでございますよ。お城にいたカールドンさんと似ていると思います」

「ああ、なるほど……」

 俺の説明に王女が納得した。自分で言ったが、カールドンさんとは気が合いそうだ。

 ただ、オーバーテクノロジーを余り見せると、理解してしまう可能性がある。彼は優秀だ。


「リリス様。お城を出発するのが、少々遅くなってしまいましたが、急げば今日中には現場に到着出来ますが……」

「いや、峠を走っているうちに、日が傾くであろう?」

「おそらくは……」

「峠道は曲がりくねっており、狭い。しかも横は崖で、暗くなってからの走行は自殺行為じゃ」

 ガードレールがない峠道か。元世界の外国の映像でそんな道を見たことがあったような……。

 確かにヤバそうだな――酷道ってやつか。

 俺の田舎から都市へ出るための峠道も、かつては曲がりくねっていて酷道だった。

 峠を越えるためには、乗客が降りてバスを押して峠の頂上で1泊――それが今では、車で30分で峠越えだからな。


「それでは、どこかで1泊いたしますか」

「峠の上り始めに、宿場町がある。そこで1泊するとしよう」

「王女殿下が、お泊りになるような高級宿もあるのでございますか?」

「確かに本陣があるが――其方達はどうするのだ?」

「街の外で家を出しますが……」

「まさか、妾を追い出そうというのかぇ?」

 王女が、ハンドルを握っている俺の腕を掴むので、危ない。


「違いますよ。そんな事するはずがないでしょう。しかし外で野営して御身に何かあれば……」

「大魔導師が3人もいて、何かあろうはずもあるまい」

「確かにそうでございますが……」

「出発する前にも申したが、メイド達も手練じゃぞ?」

 ただの王女の玩具ではなかったんだな。確かに――能力がないのに王女のお付きになるはずもないか。


 森の切れ目から横に連なる大山脈が見えてきた。あそこを越えるのか……。3000~5000m級だろうか?

 峠の標高はどのぐらいであろうか?

 この山脈は王都の遥か北から、南はダリアを過ぎた所まで延びていて、王国を分断している。

 それ故、通れる場所は限られているのだろう。そこがベロニカ峡谷ってわけだ。

 そのまましばらく進むと、黒い塀に囲まれた宿場町が見えてきた。


 だが、そのまま近づくとただの塀ではなく窓が見える――それは建物と一体となった塀だった。

 つまり、デカいタイヤのような円形の建物に外周が覆われている。もちろん、その中にも建物があるのだが。

 人口は1万人ぐらいらしい。名前は――アグロステンマ。


 街の少々手前、小さな小川が流れている場所で車を停める。ここなら水の確保も出来るだろう。

 それに峠に上るなら、水は少々多めに確保しておいた方がいいかも。

 よ~し、ここをキャンプ地とする。皆を降ろして車をアイテムBOXへ収納。

 そして、家を出す場所の草刈りをする。ベルは早速、周囲のパトロール。


「おおっ、それは!?」

 俺がバリバリと草を刈る機械に、王女が興味を示したようだ。


「草を刈る魔導具でございます」

「面白そうじゃの! 妾にもやらせてたもれ」

「危のうございますよ! 回転する刃が全てを切り刻みます故、万が一刃が当たれば致命傷になります」

「姫様、あまり危ない事はおやめください」

「解ったわぇ!」

 メイド長にたしなめられて王女は横を向いてしまった。ちょっと草刈り機は――マジで事故が多いからな。


「よし! 家召喚!」

 草刈りが終わった後、家を設置して、その隣にニャメナの小屋も出す。トイレは1日だからいらんだろう。

 王女の荷物が載ったパレットもアイテムBOXから出すと、必要な物をメイドさんが家に運び込んでいく。

 さて、女性陣は家の中。俺はまた外で寝よう。雨が降ったらテントを出せばいい。

 町の近くなので人通りも多く、ジロジロと見られるのだが、もう慣れたものだ。

 テーブルを出して料理の準備を始める。


「そういえば、あれが使えないかな?」

 俺は、アイテムBOXからお城で仕留めたレッサードラゴンを取り出した。

 地響きと共に現れる、鱗に覆われた黒い巨体。


「くっ! それは私のドラゴンなのに!」

「俺が仕留めたんだから、もう俺の物だろ? ねぇ、王女殿下?」

「まぁ、そういう事になるかの」

「……」

 メリッサは実に悔しそう。だが、召喚魔法ってのはどういうものなのか、彼女に召喚魔法についてあれこれ聞きたいのだが――。

 俺の重機や車も召喚魔法だと言っている手前、それを尋ねるわけにもいくまい。


「旦那、もしかしてレッサードラゴンを食うのかい?」

「そうだ、ドラゴンってのは美味いんだろ? レッサードラゴンだって美味いだろ?」

「そういう話は聞くにゃ」

「試しに食ってみようぜ。そこにいる召喚主には悪いけどな」

「くっ!」

 ちょっと嫌味が過ぎたか。これから共闘しないと駄目だし、なるべく仲良くしないとな。


「ああ、自分の召喚したドラゴンを食いたくないなら、他の食い物を用意するけど……」

「別に構わないわ」

「愛着があったりしないのか?」

契約コントラクトしたとはいえ、魔物だし……」

 召喚して思い通りに動かすには契約が必要になるのか――なるほどな、それがないとタダの魔物だからな。

 自分に襲いかかる可能性もあるだろう。


「飯が出来るまで時間がかかるから、アネモネに召喚魔法の簡単な説明でもしてやってくれないか?」

「貴方が教えればいいじゃない!」

「俺のは自己流でな。説明が上手く出来ないんだよ。ちゃんとした学校を出た、正統派の魔法理論ってやつを披露してくれよ」

「ふん、いいわ。初歩の初歩ぐらいは教えてあげる――」


 メリッサは、召喚魔法について説明を始めた。


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