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86話 宮廷料理人は凄い


 ただいま、お城の地下でネズミを退治中。俺の殺鼠剤作戦は的中したようで、大きな麻袋で14袋分のネズミが捕れた。

 一袋50匹なので、全部で700匹だ。だが、ネズミはまだいる。

 再度、毒をバラ撒いて明日潜る事になった。

 汗をかいたので、今日は井戸の水浴びではなく風呂に入る事にした。

 しかし、水汲みは大変だな、井戸に電動ポンプを付けたいところだが……色々と聞かれると面倒だ。

 まぁ、全部魔法で動いている、全部秘密です――で押せない事もないのだが。

 風呂から上がり、しばし考える。


「あっ、そうだ」

 そういえば、帝国からガチャポンプが入ってきているじゃないか。マロウさんの所でデモを見たしな。

 あれなら問題ないだろ。

 シャングリ・ラでガチャポンプを検索する――2万円ぐらいだな。

 こいつに取り付ける塩ビ管と、台座に使うコンパネを買う。

 塩ビ管はオーバーテクノロジーだが、見えないからいいだろう。

 井戸に、穴を開けたコンパネで蓋。そこに塩ビ管を通して、ガチャポンプに接続する。最後にポンプを台座にボルトで固定すりゃいい。

 俺のポンプの設置風景を皆が見ている。プリムラはマロウ商会でポンプのテストに立ち会っているので、これが何か知っているのだが――。

 

「旦那ぁ、こりゃなんだい? 井戸を塞いだら、水が汲めないだろう?」

「これはガチャポンプといって、井戸から水を汲み上げるカラクリだよ。帝国で流行っているんだぞ、なぁプリムラ?」

「はい。これはとても便利な物ですよ」

 ガチャポンプの中に呼び水を入れて、文字通りにガチャガチャとポンピングする。

 すると――滔々と鉄の口から水が溢れでた。


「水が出てきたにゃー」「なんだこりゃ、すげー! 旦那の魔法かい?」

「違う違う、普通のカラクリだから、お前等がやっても水は出るぞ」

「旦那、俺にもやらせてくれ」

 ニャメナが、レバーを上下させて、感動している。


「すげー! なんじゃこりゃ、帝国もたまには良い物作るじゃねぇか!」

「そうだにゃー!」

 これで、水汲みは楽になるぞ。


 ――そして、夕方。

 また王女がやってくるのかと思ったら、やっぱりやって来た。だが少々様子が違う。

 後ろに大きな寸胴鍋らしき物を抱えた、白装束の男たちが控えているのだ。

 白いつなぎのような服なのだが、その格好から察するに料理人だろうか。


「ケンイチ、今日は妾が馳走するぞ」

 王女がそう言うので、テーブルをアイテムBOXから出した。

 その上に寸胴が置かれて、蓋を取られる。その中にあったのは、ドロドロの緑色の物体。


「これは……でも、なんだか匂いはカレーのようだけど」

「そうだよ旦那、こいつはカレーの匂いだ」「ウチもそう思うにゃ」

「そうだ。これは、其方から貰った香辛料を、宮廷料理人達が複製をしたものだ」

「なんと、一発で複製出来たのでございますか。さすがは宮廷料理人ともなると、非凡でございますねぇ」

「うむ、この者達も、数日で複製が出来ると豪語したので、任せてみたのだ」

「どうですかな? 我々のカレーとやらは?」

 前に歩み出て得意気なのは、金髪の髪と金髪のカイゼル髭を生やした紳士。どうやら料理長らしい。


「これは素晴らしいです。香辛料の違いのせいか、色が違う以外は完璧です」

「そうだろう」

 料理長は鼻高々だが、これは確かに凄い。一発コピーとはな。

 多分、料理を食べたりスープを飲んだだけで、材料が解っちゃったりする人なのだろう。

 まるで、美味○んぼだな。


「ケンイチ、これを皆で食おう。あの白い穀物を出してたもれ」

「はは~っ! 王女殿下から、馳走していただくとは、私の一生分の運を使い果たしそうでございます」

「そのような貴族臭い台詞は要らぬ」

 どうも王女は、常日頃からこういう台詞を聞かされて、うんざりしているせいか、否定的だ。

 でも、やらないと、周りから無礼だと言われるかもしれないし……。


 突然の出来事で飯は炊いてないので、シャングリ・ラからパック飯を買う。特盛りとかいう、デカいのを見つけたので、こいつでいいだろう。

 この王女様は大食らいだしな。パンもまだ焼いていないので、シャングリ・ラから購入。


 テーブルの上に皿が並び、今日は緑色カレーの日になった。元世界にもグリーンカレーってのがあったので、俺は気にはならない。

 昨日と同じように、護衛の女騎士が王女の隣に座っている。俺と揉めた騎士はお役御免だろうか?

 皿に盛ったカレーを、地面に座っている獣人達の所へ持っていったのだが、何か躊躇をしている。


「ええ? 旦那、宮廷料理人が作った料理を、俺達が食ってもいいのかよ……」「そうだにゃ……」

「リリス様、よろしいのでしょう?」

「ああ、構わぬ。のう? サンバク?」

「姫殿下がそう仰るのであれば」

 料理長が深々と礼をする。許可が出た獣人達はカレーに飛びついた。


「うめぇぇ! こりゃ、上物の香辛料の匂いがぷんぷんするぜ」「いい匂いだにゃ~」

 そして、俺も食ってみる。作りたての香辛料のせいか、香りが鮮烈だ。

 カレーじゃベルは食べられないので、鳥と猫缶を開けてやる事に。アイテムBOXの中にはネズミが山のように入っているが、毒を使ったので食えない。


「確かに、これは香辛料の香りが鮮烈でございますね。私の香辛料は作ってからかなりの日数が経っていますから」

 それに、あれは大量生産品だしな。王宮に集まってくる香辛料なら、一級品ばかりなのだろう。


「そうであろう。サンバク、これは城の新しい名物が誕生したの?」

「その通りでございます、姫殿下」

「また貴族共がくやしがる顔を、眺められるというわけじゃな」

 どうも王族ってのは、貴族をからかって楽しんでいるようだ。


「どうだ、アネモネとプリムラは?」

「美味しいね! ケンイチのも美味しいけど、これも美味しい!」

「そうですわ。多分、使っている香辛料も目が飛び出るぐらいの値段なのでは……」

「なかなか、鋭いですね。大変貴重な香辛料もふんだんに使わせていただきました」

 料理長の目がきらりと光る――さすが王宮だ。


「それでは、これを街で流行らすわけにも参らぬのう……」

 そもそも、王都にもスパイスシンジケートが存在しており、スパイスを使えるのは金持ちだけだ。


「ケンイチ、昨日の妾が食べた肉のスープはまだ残っておるか?」

「はい、ございますが……」

「このサンバクに食わせてやってくれ」

 アイテムBOXからビーフシチューの入った鍋を出すと、皿に盛って料理長へ渡す。

 そして男がスプーンで一口食べて驚きの声を上げた。


「これは、美味い。口の中に広がる、なんというコクと旨味……」

「どうじゃ? 中々美味であろう」

「ううむ……肉と、野菜がたっぷりと――トロみは小麦粉、そしてソースとこの酸味はなんであろうか……野菜か果物の酸味だと思われるが……」

 俺もビーフシチューの原料は知らん。何かでケチャップを使うとか読んだ事があったので、酸味はケチャップかもしれない。

 だが、この世界にはトマトはないようなので、他の果物か野菜で代用するしかないだろう。

 でも、カレーをコピー出来る人なら、デミグラスソースは問題ないのではないだろうか。

 そんな話をしながら、王女が次々とカレーをお代わりしていく。ご飯を追加購入して、アネモネに温めてもらう。


「それでサンバク。それと同じ料理を作れそうか?」

「おそらくは……」

「よし、その料理も食卓の品に加えるがよい。むしゃむしゃ」

「ははっ!」

「じゃが、ケンイチ」

「なんでございましょう?」

「其方のアイテムBOXの中に、サンバクに再現出来ないと思われる食い物はないか?」

 え~? またそういう事を言い出す。


「リリス様。それはまた随分と意地悪なご希望でございますね」

「いつも、この者が作れない料理はないと、豪語しているが故」

 それが原因で、この有能な人がやめちゃったらどうするつもりなんだろうか。

 まぁ、辞めるなと勅令を出せば。それに従うしかないのだろうけど。


 俺は、しばらく悩んで、シャングリ・ラからチョコレートを買った。

 有名なゴ○ィバ製で、20個5400円である。購入ボタンを押すと、金の箱が落ちてきた。


「それは?」

 目の前に現れた金の箱に、王女が瞳を輝かせた。


「これは、食後のお菓子にどうぞ」

 俺が蓋を開けると、正方形に仕切られたスペースに様々な形のチョコが並んでいる。


「なに?! 菓子じゃと! ちと待っておれ! これを食ってしまう故」

 カレーを必死に食べている王女であったが、それを見た料理人達が複雑な表情をしている。

 彼等の囁きに聞き耳を立てると、いつもはこれほど料理を美味しそうに食べる事はないらしい。

 それ故、自分達が作っているいつもの料理が王女にあまり評価されていないのでは? ――とそう考えたようだ。

 カレーを食い終わった王女がスプーンを置くと、駆け寄ってきたメイドさんが、王女の口の周りを拭いている。


「これが菓子か――見たこともないの」

 王女が箱の中心にあったチョコレートを指で摘むと口へ放り込んだ。箱のどこを取るかで性格も解りそうだな。


「んっんっ――おおっ、甘い! そして、コクと甘みが舌の上でとろけるぞ! これは一体、何で出来ているのじゃ?」

 王女が目を見開き、舌の上でチョコレートを転がしている。


「植物の木の実と、植物の油、それと牛乳の成分と砂糖かと――あいにく私が作った物ではありませんので」

「ん!」

 王女がもう1つチョコを口へ放り込むと、箱ごと料理長の前へ差し出した。

 そして彼も1つ摘んで、口へ運ぶ。


「こ、これは何という、深い甘みと味わい……かなりの苦みがあるが、それが深いコクを生み出しているのか。し、しかし、頭の中に、使用している原料が全く思い浮かばないとは……」

 料理長は、脂汗を流しながら下を向いてしまった。


「どうじゃ? これと同じ物は作れそうか?」

「随分と過酷な問いに聞こえますが……」

「そうか? サンバクよ?」

「いいえ、宮廷料理人たる者、王族のお求めになる料理を作るのが、その務め――ですが……」

「料理長殿が菓子の原料で悩んでおられるのは、この国に存在していない材料を使用しているせいだと思われます」

「さもありなん、我が国に類似する物が一切ないのであれば、そのような事もあり得るだろうの」

「くくく……畏れ多くも姫殿下、今の私では、これと同じ物を作るのは困難だと言わざるを得ません」

「ほう、其方でも作れない物があるのか、ははは」

 他の料理人達にもチョコが振る舞われたが、皆が首を傾げるばかり。

 そりゃそうだ。未知のお菓子なんだからな。

 王女は、なんだか楽しそうだが――意地悪いなぁ、もう。


 真剣に悩んでいる料理人達を見ると、ちょっと気の毒になってしまったので、ヒントになればと、シャングリラで、カカオニブという物をゲットした。

 紙袋に入った物が落ちてきたが、カカオの実を砕いた物らしい。


「この木の実が原料なのですが。とても栄養があり、薬としても利用されています」

 料理長が紙袋からカカオを取り出すと、口に入れた。


「こ、これは、単体でも苦いですな――しかし、サクサクとした歯ごたえとコクがある。これを、あのような洗練された菓子に昇華するとは、これを作り出した者はただ者ではない」

 そういわれれば、チョコは誰が作ったんだろうな。聞いたこともないな。どこかの原住民が飲んでいたみたいな話は何かで読んだが。

 料理人達が円陣を組んで、あーでもないこーでもないと、会議が始まってしまった。


「ケンイチ! 私も食べたい!」「私もですわ」

 アネモネとプリムラからチョコレートのリクエストだ。

 同じゴ○ィバのチョコレートで、ちょっと小さめな箱を買う。再び現れた金色の箱に王女がつぶやく。


「この箱は紙か? その上から金箔を貼り付けたのか? たかが菓子の箱に、この造りは凝り過ぎであろう」

「王侯貴族様に喜ばれるでしょう?」

「その通りじゃが……この箱だけでも欲しがる者は多いじゃろうの」

「ふあぁぁぁ、甘くて美味しい……」「なんという官能的な香りと甘さ―― 一粒だけでも、このお菓子の虜になりそうですわ」

 チョコを、傍観していた獣人達にも差し出してみる。


「ええっ? 要らないよ、旦那」

「どうした? 何か嫌な匂いでもするのか?」

「そうじゃないけどさ……これ以上美味い物を食っちゃ、旦那から離れられなくなりそうで……」

「うにゃ~トラ公は、ケンイチの所から出るつもりにゃ? 後はウチに任せるにゃ」

 ミャレーがチョコの1つに手を出した。


「誰もそんな事は言ってねぇだろ!」

「う、うみゃー! 甘くて美味くて甘くて美味いにゃ!」

 同じ事を繰り返しているが、語彙が少々足りないのであろうか?

 だが、チョコを食べたミャレーがいきなり俺に抱きついてきた。


「こら、ミャレーちょっと待て! 人前だから!」

「クロ助、てめぇ俺の前で何やってんだ?!」

「抜ける奴には、関係ないにゃ」

「誰もそんな事言ってねぇ!」

 そう言ったニャメナは俺の手渡したチョコを口に放り込んだ。


「……確かに、甘くて美味くて甘くて美味くて……ちくしょう――これが褒美だっていうなら旦那の言う事をなんでも聞いちまいそうだ」

「なんでそうなる?」

 俺と獣人達の絡みをみていた王女が、笑い声を上げた。


「ははは、確かにのう。これは危険な菓子じゃ。この味に取り付かれた貴族の女どもが、菓子欲しさに股を開くかもしれぬ」

「またぁ、リリス様。王族の口からそんなお話を」

「十分に考えられる事じゃぞ? サンバクが複製に成功しなければ、この蠱惑の菓子が存在するのが其方のアイテムBOXの中だけ――という事になるであろ?」

「その通りでございますが。まぁ、王宮御用達という事にすれば、他の貴族様には手出しが出来なくなるでしょう」

 それに、王宮の料理人達は優れた能力を持っているようだ。原料さえ手に入れば、意外と早くコピーを作るかもしれない。


「なるほどのう……とりあえず、この菓子と、その原料の見本は買い取る、幾らじゃ」

「う~ん、原料込で金貨3枚(60万円)ですかねぇ」

「かなり、足元を見よったな……しかし他では手にはいらぬ。あい解った、払ってつかわす」

「ありがとうございます」

 この会話を聞いていたニャメナが驚いた。


「菓子に金貨……とんでもねぇ物を食っちまった……」

 文字通りの山吹色のお菓子でございます――だ。


「もう、戻れないにゃ。にゃはは」

「笑い事じゃねぇぞ、クロ助。多分、一生夢に出てくるかも……」

 そんなに衝撃的だったか?

 だが、チョコを食べる獣人達を見て、思い出した事があった。

 猫にチョコってダメなんじゃなかったか? でも獣人は人で、猫ではないって話だったから――玉ねぎも大丈夫だったし。

 心配で、しばらく彼女達の様子を見ていたのだが、問題なさそうだ。


「この箱には12個入っていますから、全部で金貨2枚(40万円)として――1個小四角銀貨3枚(1万5千円)以上……」

 咄嗟とっさに、プリムラが単価を計算してブツブツと言っている。アネモネは喜んでいるが、獣人達は複雑な表情。

 あまりに現実と乖離し過ぎているのか。


「ケンイチ、その者達は放っておいて、ネズミの件はどうなったのじゃ?」

「アイテムBOXの中に入っておりますが――おいしい食事の後で、あれをご覧になるのですか?」

「やむを得まい、確認して代金を支払わねばならぬ故」

「承知いたしました」

 俺は、アイテムBOXからネズミの入った麻袋を取り出した。ネズミがパンパンに入っている袋が14――巨大なネズミが5匹だ。


「きゃぁぁ!」

 それを見ていたメイドさん達から悲鳴があがる。


「これが全部地下にいたのか……」

「まだ残っておりますので、明日もう一度潜ります」

「むう……上は綺羅びやかだが、下はネズミで溢れている――実に我が城を象徴しているの」

「恐れ多くも殿下――地下にゴミを捨てているようですが、それを改めた方がよろしいのでは? ネズミは多くの疫病を媒介いたします。これだけのネズミがいれば、疫病の発生源がお城になる可能性も上がるかと……」

「正に、その通りじゃな。一番、ゴミを出しているのは、厨房じゃぞ? サンバクよ」

「ははっ!」

 話を聞けば――数百人いるお城の警備や騎士団の食事を賄う下級厨房も全部ゴミを地下に捨てていたようだ。

 そりゃ、そんな事をしたらネズミが増えるのに決まっている。当たり前田のクラッカー。

 それどころか、どんなにゴミを捨てても溢れてこないので、これは便利と思っていたらしい。

 そんなわけあるか!


 俺はネットで見かけた、死体がなくなる井戸の話を思い出した。

 男が殺しをして、井戸に死体を投げ込むと、いつの間にかなくなるという話だ。

 最後は、うざかった母親を殺して井戸に投げ込んだら、いつまでも死体が残ったままだった――というオチ。


 それはおいといて、ネズミをこれ以上増やさないようにするために、生ごみを地上で処理する方法を考えなくてはならない。

 殿下に土とおがくずを混ぜて堆肥にする方法を提案してみた。


「何? 肥料とな」

「はい、その肥料でお城の花壇や、裏庭に畑をつくるのもよろしいかと。そうすれば、料理に新鮮な野菜を使えます」

「なるほどのう――一考の余地ありじゃな。それにしてもネズミで金貨7(140万円)枚、巨大ネズミで金貨5枚(100万円)、合計で12枚(240万円)か――高くついたのう」

「ネズミは、まだいますからね」

「其方の見立てでは、後どのぐらいじゃ」

「ネズミが300~400匹、大ネズミはちょっと解りません」

「なんという事じゃ……」

 今後の事を話し合っている王女の下へメイドさん達が集まってきた。


「姫様――昨日、お話ししていた事もお願いしたほうがよろしいのでは?」

「何? おるかどうかも解らぬ世迷い言を頼めと申すのか?」

「しかし……絶対に何かいますよ」「私もそう思う……」「いつも何かに見られている気がするし……」

 一体、何の話なのであろうか?


「リリス様、何のお話でしょうか?」

「ああ――すまぬが、笑わないで聞いてやってくれ。メイドや、その他の者も、城に何かがとり憑いていると申すのだ」

「ははぁ、昨日話していた、ゴーストやらレイスの件でございますね。確かに、獣人達が言うのには何かがいる気配がするのは間違いないようですし……」

「なるほどのう」

「それでは、ネズミ退治が終わったら、再度そのお話をするという事でよろしいでしょうか?」

「うむ! 頼む」

 後ろで話を聞いてた料理人達も、ざわざわと話している。彼等も何かの気配を感じる事が多いと言うのだが……。


「しかし、俺もアネモネも退魔(ターンアンデッド)等や浄化ピュリフィケーションの魔法があるわけじゃないからな」

「旦那、そういう魔法は特殊な人間しか使えないぜ」

 当てずっぽうで言ってみたが、マジでそういう魔法はあるようだ。だが使える人間は少ないと言う。

 まぁ、それは後で考えよう。


 ------◇◇◇------


 ――そして次の日。再度地下に潜り、ネズミの死骸を7袋と巨大ネズミを2匹回収した。

 正確な数は数えていないが、追加で金貨5枚と銀貨2枚をゲットした。合計で金貨17枚と銀貨2枚。

 報酬を王女から賜る。


「はは~っ、王女殿下、御自ら賜るとは光栄の至り」

「うむ、この度は大儀であった」

 4人で分けると、金貨4枚(80万円)と銀貨1枚(5万円)と小四角銀貨5枚(2万5千円)である。


「それと、リリス様。この大量のネズミはいかが致しましょう」

「これだけ大量だと処分にも困るのう」

「私のアイテムBOXへ入れたまま、どこか森の奥にでも捨てておきましょうか?」

「やってくれるか、助かる」

 ――といいつつ、ステータス画面のゴミ箱へ捨ててしまうのだが。仕留めるのに毒を使ったので、こいつが市場へ流れたり、他の動物が食べたりするとヤバい事になる。

 ゴミ箱へ捨てるのが一番よいだろう。そして、今回手伝ってくれた3人への金の分配が終わった。


「旦那の取り分が多くてもいいのに」「そうにゃ」

「そうはいかんよ――それじゃ皆、俺のアイテムBOXへ入れておいていいんだな」

「いいぜ。それが一番安全だし」「いいにゃ」「うん」

 金貨を持ち歩いているなんて、狙われやすいからな。それに金を持っているとバレると、まとわりついてくる人間が増える。


「けど、アストランティアに戻ったら、ギルドへ預けた方がいいぞ。アイテムBOXは、俺が死んだら取り出せなくなるからな」

「ははは、その時はその時さ」

「ウチは、ギルドに預け分がまるまる残ってるからにゃ」

「だいたい旦那の所にいたんじゃ、金を使う事がねぇ。美味い飯は食えるし酒も飲める。その上武器まで支給ときた」

「そうにゃ~」

 たいしたトラブルもなく、ネズミ退治出来てよかった。

 だが普通の人間が中に入ったら、結構大変だったろうと思う。


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