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77話 対ゴブリン戦闘


 皆で泊まれる宿屋を探して冒険者ギルドへ行ったら、ゴブリン退治を頼まれた。

 何を言っているか解らねぇと思うが――マジでどうしてこうなった?

 まぁ、確かに面倒な仕事を押し付けられてしまったのではあるが――。

 今回の仕事は、なんとか困っている農民の願いを叶えてやりたいという、ギルマスの思いから出たものだと思われるし……。

 彼としても、厳しいギルドの経営の中、領主に掛けあっても一向に動いてもらえず、やむを得ず俺に頼ったのだろう。

 それに、あんな子供達の姿を見せられたんじゃ、ここでやらねば男が廃る。


 ――次の日。

 朝飯のパンとスープを食った後、皆で出発の準備をする。プリムラと子供達は冒険者ギルドで待機だ。


「よ~し! これから出発するが無理はしないぞ。危なくなったら、すぐに撤退して作戦を練り直す」

「「「はい!」」」「へい!」「よっしゃ!」

 ギルドからの依頼に失敗しても、明確なペナルティ等は無いが、ギルド内でのランク付けは下がるようだ。

 あまり失敗が続くと、依頼を回してくれなくなったりするらしい。まぁ実力がない奴は、薬草でも探してろって事なんだろう。

 出立式の様子を、ギルドマスターが見送ってくれているのだが、パーティに混じっているアネモネの姿に訝しげな顔している。


「あの~、こんな子供も連れていって大丈夫なのですか?」

「彼女は、俺の部隊パーティの大魔導師だよ。爆裂魔法エクスプロージョンだって使える」

 至高の障壁(ハイプロテクション)の事は秘密にしておこう。だが正直言って、こんな子供を戦闘へ連れていっていいのか悩む。

 獣人達の話では、それが当たり前。冒険者になるなら、避ける事が出来ないと言う。

 そりゃそうだが……。当の本人――アネモネも冒険者になりたがっているし、覚悟は出来ているようなので、何も言えなくなってしまった。


「えっ? こんな子供がですか?」

「ああ、実戦経験も豊富だ」

「そうそう、アネ嬢は街のヘッポコ魔導師より数段実力が上だよ」

 ニャメナが右手を挙げて力こぶを作る。


「そうにゃ」

「にゃー!」

 ベルがアネモネに黒い身体をすり寄せる。


「確かに、昨日の夕飯の時に魔法を使っていましたが……それ程とは……」

「まぁ心配は要らないって事だよ」

「それは解りましたが、これだけの人数をどうやって運ぶのです? 馬車の手配はいたしましたか?」

「いや、俺の召喚獣で運ぶ」

「……噂の鉄の召喚獣が見れるわけですね」

 ギルドマスターは腕を組み、半信半疑といった感じだ。やはり自分の目で見るまでは信じられないのだろう。


「よし、ちょっと場所を空けてくれ! デカいのを召喚するからな。下敷きになるぞ――やって来い来い、M菱キ○ンター!」

 空中から、4tロングボディのトラックが落ちてきて、石畳でバウンドする。


「「うわぁぁぁ!」」「なんじゃこりゃ!」「ひぃ!」

 農民たちは、突然現れた鉄の魔物に腰を抜かしている。街ゆく人々も、目の前に現れた巨大な物体にどよめく。

 どこで出しても大体似たような反応だな。やはり身近に魔物がいる世界なので、魔物の怖さをよく知っているのだろう。


「これが、お前たちを背中に乗せて運んでくれる召喚獣だ。俺の言うことしか聞かないから、襲ったりはしないぞ、大丈夫だ」

「本当に大丈夫なんですかい?」「噛み付いたりしませんよね」

「大丈夫だよ。さぁさぁ皆、荷台に装備を持って乗り込め」

 俺に急かされて農民達も覚悟を決めたようだ。次々と荷台に脚を掛けて乗り込む。

 獣人達は側板を掴むと、ひょいとジャンプして飛び乗った。


「馬なしの馬車って聞いてたけど、本当に馬がいなくて動くのか?」「さぁ、魔法の事は解らねぇし」「そうだな」

「お父さん頑張れ~!」「行ってらしゃい!」

 荷台に乗る心配顔の大人達へ――プリムラと一緒に残る農民の子供達が手を振るのを見ながら、俺はトラックに燃料を入れた。

 メーター読みでは大丈夫だと思うが、念のためだ。大事な時にガス欠とか洒落にならんからな。


 全員乗ったのを確認すると、エンジンを始動。


「おおっ!」「なんか唸り始めた!」「大丈夫か?」

 後ろから何か聞こえてくるが、まぁ――すぐに慣れるだろう。とりあえず、この街から出なくてはならない。

 ゆっくりと発進すると、街の北門を目指す。


「なんだありゃ」「馬なしで荷車が動いているぞ?」「魔法か」

 荷台にいる農民だけではない――街ゆく人々も、こちらに注目して、あれこれ騒いでいる。

 こりゃ目立ち過ぎだ。さっさと街から出たい。歩いて街を出てからトラックを出すとなると、結構距離があるし時間が勿体無いからな。


 大通りを進み、やっと街を通過して北門を潜ると、真っ直ぐに続く街道へ出る。

 辺りは一面の穀倉地帯で、小麦の緑が敷き詰められている。

 だが、元世界の小麦畑と比べると、少々ヘロヘロだ。ろくに肥料もやってないのだろう。こんな世界だ仕方ない。

 農民の話だと、ここから10数リーグ(20km程)離れた場所にある小さな森の中に、敵が巣食っていると言う。


「10リーグ程なら、半時(30分)も掛からないぞ?」

「この乗り物は――そ、そんなに速いのですか?」

「まぁな」

 運転席の窓を開け、荷台にいる農民達と話をする。

 10分もすると森が見えてきたので右の脇道へ入るが、ここから一本道らしい。それじゃ迷う事もないか……。

 森を半分ほど進み、木漏れ日の薄暗い中――トラックを停止させる。


「よし、ここからは歩きだ。見つかるとまずいからな」

「よっしゃ!」「よし、いくぞ」

 皆が、武器を携えてトラックから降り始めた。


「旦那、このまま突っ込んだ方が良くねぇか?」

 荷台から勢いよく飛び降りた助っ人の獣人の男が、強攻策を唱える。


「いや、戦闘に不慣れな農民ばかりだ、乱戦にはしたくない」

「そりゃ、そうさ。男ってのはこれだからねぇ。突っ込む事しか考えてないんだから」

 同じ助っ人でも、女の獣人は強攻策には反対のようだ。


「まぁまぁ、ここは旦那に従った方が正解だぜ?」

 ニャメナが、爺様をたしなめるのだが、彼は不満顔だ。


「そうだにゃ。ケンイチの言うとおりだにゃ」

「にゃーん」

「しかし、せっかく森猫様と一緒に戦えるってのに、派手にいきたいところだぜ」

 爺様獣人はベルの方を見ながらそんな事をつぶやいたのだが――その言葉を聞いた彼女が黒い尻尾をペシペシと地面に打ちつけて、じっと獣人の方を見ている。


「まぁ、今回の頭は旦那だ。従うけどな」

 爺様獣人としては、森猫様の前で良いところを見せたかったのであろうが、その彼女から否定されてしまっては、意見を引っ込めるしかない。


「助かるよ。それに、獣人達には先陣を切ってもらうつもりだから、森猫様に見せ場は作れると思うぞ」

「へへへ、そうこなくっちゃいけねぇ」

 全員が降りた後に、トラックをアイテムBOXへ収納する。

 辺りを警戒しながら、しばらく歩く。こちらには獣人とベルがいるので敵の気配があれば、すぐに解る。

 そして前方に森の切れ目が見えてきた……あの先が、ゴブリン共がいる遺跡らしい。


「ちょっと待て、俺の召喚獣に偵察をさせる」

「旦那、まだ凄いのを隠しているのかい?」

 爺様獣人が、俺の事をジロジロと見ている。


「隠すなんて人聞きが悪いな」

 アイテムBOXからドローンを取り出すと、すぐに発進させて木々の間から青空が見える真上に上昇させる。


「空を飛んだ?!」「なんだ?」「これが召喚獣なのか?」

 周りの農民達が騒いでいるが、辺りを偵察――なるほど、その先は開けて広場になっているようだ。


「おいおい、あまり騒ぐな。見つかるだろ」

「なんだ? 小さな窓に景色が写っているぞ?」「なんじゃこりゃ!」

 皆が、俺が持っているドローンのコントローラーに映る映像を食い入るように見つめている。


「あの空飛ぶ召喚獣から見た景色が写っているんだよ」

「魔法なのですか?」

「まぁ、そんなところだ」

 周囲を警戒しながら、身を低くしてドローンの画像を見ながら付いていく――その先に見えてきたのは、崩れている遺跡だ。

 崩壊した石造りの建物が野ざらしになって、草や蔦に覆われているのだが――上からみると辺りの状況がよく解るな。

 建物の入り口だったらしい場所に穴が開いていて、歩哨のゴブリンが二匹。

 小さく黒い身体に、粗末で最低限の布のような物を巻きつけている。

 入り口の上は崩れた壁が踊り場のようになっており、弓を持ったゴブリンが二匹、ウロウロと歩き回り辺りを警戒中だ。

 その先は――屋根が落ちたホールだろうか。周囲を石の壁に囲まれた大きな部屋になっており、そこを子鬼達は根城にしているようだ。

 俺の現在位置は木の陰に隠れており、ドローンの回収は難しいので、目立たない所へ着地させた。戦いが終わった後で回収すればいいだろう。


「敵の大体の配置は解ったな」

 仲間を全員集めて作戦を伝える。


「よし、さっきも言った通り――先ずは、助っ人の獣人の2人に突っ込んでもらう。上にいる弓兵は、ミャレーとニャメナが仕留めてくれ」

「よっしゃ! 暴れるぜ!」「任せておくれ」

 助っ人の獣人は気合充分だ。こういう時に、勇ましい獣人は本当に頼りになる。


「任せろ旦那。クロ助、ヘマするんじゃねぇぞ」

 ミャレーとニャメナが、コンパウンドボウとクロスボウを構える。


「誰に物を言ってるにゃ。トラ公より腕は上だにゃ?」

「なんだと?」

「お前等、後にしろ」

「うっ!」「ふにゅー」


「旦那、これは誘き出しだね?」

 女の獣人が俺の作戦に気がついたようだ。


「そうだ、派手に暴れてくれ。そして奴らの仲間が遺跡から出てきたところを大魔法で吹き飛ばす」

 女の獣人に圧力鍋爆弾を渡して作戦を説明する。


「この鍋を入り口の前に置いてくればいいのかい?」

「なんで鍋?」

 爺様獣人が不思議そうな顔をするのだが、鍋の正体を説明する。


「そいつは魔法で爆発する鍋だ」

「うおっ!」

 俺の話を聞いて、爺様獣人が慌てて鍋の側を離れた。


「はは、逆に魔法を使わないと爆発しないって事だろ?」

「その通りだ。無理をする事はないぞ。誘い出せればいいんだからな。逃げ遅れると、魔法に巻き込まれて吹き飛ばされるぞ」

「おほっ! 剣呑剣呑」

 爺様が首をすくめる。


「中にいる連中は火を掛けられれば簡単なんだがなぁ」

「魔導師様! 中に囚われた女や子供がいるかもしれません。それはちょっと待っていただきたいのですが」

「ああ、そうか。そういう事も考慮しなくっちゃなぁ」

 そして大魔法で数を減らした後は、中から出てくる敵を遠距離から狙い撃ちする作戦だ。

 ギルドの裏庭でやった訓練通りに、2人1組になって、ポリカーボネートのタワーシールドの陰に隠れて、装填と攻撃を繰り返すのだ。

 これなら戦闘を経験した事がない農民達でもなんとかなるだろう。

 本格的な戦闘なので、アネモネに魔法の触媒に使えるアルミ板を渡す。


「アネモネ、必要なら使え。判断は任せる」

「うん!」

「よし! 作戦開始だ!」

「よっしゃ! 行くぜ!」「あいよ!」

 助っ人の獣人の男女が気勢を上げ、カットラス刀と透明なバックラーを掲げて、ゴブリンの歩哨がいる入り口へ吶喊とっかんする。


「うおおおっ!」「いやぁぁぁっ!」

 突然の襲撃に対処が遅れたのか、歩哨の頭蓋に刀が深く食い込むと、辺りに脳漿をまき散らした。


「ギァ!」「ギィィ!」

 突っ込んできた獣人に、上から弓矢の照準を定めようとした黒い子鬼の頭に矢が突き刺さる。


「アグ」「ギ!」

 無論、即死である。この距離から一発で仕留めるとは、やはりミャレーとニャメナの腕は凄い。

 いくら凄いコンパウンドボウやクロスボウでも、狙撃となれば非凡な腕が要求される。


「やるにゃ、トラ公」

「クロ助もな!」

 突然の騒ぎに、辺りが騒然となり始めた。奥のほうでギャアギャアと何かが叫ぶ声が聴こえる。

 会話のようには聞こえないのだが、彼等はれっきとした言語を持っているという。

 敵の大軍の接近を感じた獣人達は、圧力鍋爆弾を入り口へ置いて戻ってきた。


 出てくる出てくる、黒いのがワラワラと――まるで虫。


「アネモネいけるか?」

「うん! 大丈夫だよ」

 ポリカーボネートのタワーシールドを斜めに構えて、アネモネが圧力鍋爆弾に狙いを定める。

 まさか、あの鍋が爆弾だとは思うまい。


「皆! 伏せろ! 透明な盾の陰に隠れるんだ!」

「ん! 爆裂魔法エクスプロージョン(小)!」

 圧力鍋が一瞬で白い煙を上げて弾け、周辺に破片と数百本の釘をまき散らす。魔法の爆発と違うのは、その速さだ。

 爆裂魔法エクスプロージョンを使うと、ゆっくりとした爆炎が見えるのだが、こいつは一瞬で弾ける。

 文字通り吹き飛んだゴブリン達は、内臓をぶち撒けてバラバラの死体と変わり果てた。

 バイオレンスルートは避けようとしていても、結局こうなってしまうという。

 俺が力を持っていると解ると、それを当てにして群がってくる連中が沢山いるのだ。

 元世界と違い、この世界に必要なのは純粋な力。力こそ全て。


「うわぁ……」

 いくら魔物とはいえ、人型がバラバラになっているのは、ちょっと堪えるな。

しかも血まで赤い。魔物らしく、黒や青い血が流れてくれればS○N値が減らなくて助かるんだが……。

 別に、こいつらに恨みはないのだが……この世界のルールならば仕方ない。

 こちらが攻撃しなくても、向こうは敵意を剥きだしにして襲ってくる。しかも話し合いは不可能。

 殺られる前に殺るしかない。


「な! なんだぁ!」「これが爆裂魔法エクスプロージョンだってのかい?!」

 助っ人の獣人達が驚く、この2人は爆裂魔法エクスプロージョンを見たことがあるのだろう。

 土埃が晴れると、入り口が大きく崩れて塞がれていた。


「おい、チャンスだ!」

「ちゃんす?」

「あ、いや、好機だ、好機! 皆で突撃だ!」

「は、はい!」「行くぞ!」「おおおおっ!」

 ゴブリン達の死体を乗り越えて、皆で遺跡へ押し寄せるが、当然入り口は塞がっている。

 ここで秘密兵器をアイテムBOXから出す。崖の上まで行ける9mの足場だ。こいつなら崩れた遺跡の上に登るなんて余裕。

 皆で足場を駆け登ると遺跡の上に出る。そして遺跡の内部を見下ろすと、20匹ぐらいのゴブリンがまだ残っていた。

 黒いのがわらわらと――俺はその光景を見て、越冬するてんとう虫を思い出した。

 派手な格好したちょっと大きめな個体もいる。あいつが小ボスだろう。


「袋のネズミだ! こちらは地の利を得たぞ! 落ち着いて狙え! 撃ち方はじめーっ!」

 訓練通りに盾に隠れつつ装填し、そして射撃をする。下から、弓矢や石礫の攻撃があるのだが、こちらには地の利がある。

 そんな攻撃ではポリカーボネートの盾は抜けないしな。

 ベルが突っ込んでいくかと心配していたのだが、彼女は殊の外賢い。上からじっと攻撃が終わるのを待っている。


「このこの!」「くらえ! 女房の仇!」「死ねぇ!」

 ゴブリン達は勝てないと悟ったのか、奥の扉から逃げようとし始めた。

 だがそうなれば、俺達はその1点を攻撃すればいい。


「む~! 憤怒の炎(ファイヤーボール)!」

 仲間を盾にして逃げようとした小ボスが、ファイヤーボールを食らって火だるまになる。

 アネモネにとっても、初の人型モンスターだったのだが、躊躇したりとかはしないようだ。

 こういう戦闘が身近にある世界なので、一度踏ん切りが付けば問題ないのか。

 そしてクロスボウからの集中砲火が浴びせられて、残りのゴブリン達も全てハリネズミになった。


「よぉし! 撃ち方やめぇ!」

 下に広がる広間は子鬼の死体で埋め尽くされているのだが、魔物でも血は赤く――文字通りの血の海。

 外から登れないこの壁も内側には階段がある。その階段を皆で降りて下へ行く。

 獣人達が、うごめいてるゴブリンに止めを刺し始めた。


「こいつらは、死んだ真似が上手くてな」「こっちは、あたいに任せな」

「おい、クロ助、どっちにする?」

「右にゃ」

「何の話だ?」

 彼女達の話によると、討伐の証明のために耳や牙が必要なのだと言う。

 そのため、切り取る耳をどちらかに統一しないと、左右で1匹とカウントされて損をするらしい。

 そりゃ、50匹やったのに、25匹とカウントされたら損するわな。

 今回の依頼は討伐数で褒賞の金額が変わるわけではないが、討伐の証拠は必要だ。


「おおい、手の空いている者は、矢の回収を手伝ってくれ」

 アルミとステンレス製の矢は、この世界ではオーバーテクノロジーだ。しかも、アルミは魔法の触媒に使える。

 こいつが出回るとまずい。幸い上からの撃ち下ろしなのでロストする事もなく、回収は容易だろう。


「しかし臭ぇな」

 獣人達の言う通り、この中には異臭が充満している。鼻の良い獣人達には応えるだろう。


「旦那、そっちの扉からも音がするぞ?」

「なに? 生き残りか?」

 皆で囲み――獣人の男に突入してもらう。中は窓も明かりもなく真っ暗だ。


「くそ!」

 中に入った獣人が吐き捨てる。

 中にいたのは、さらわれていた女達。素っ裸で嬲られていたようで殆ど死んでいたが、3人だけ息があった。


「ふう……火は使わなくて正解だったな。この死体も村に運んだ方がいいのか?」

 余りの悪臭に思わず吐きそうになるが、なんとか持ちこたえている。


「いえ、これでは……ここの森に埋めてやろうと思いますが……」

 この世界では余程の要人以外、墓は無い。普通にそこら辺に埋めて終了だ。

 遺族に出会っても、森に埋葬したといえば安心するのだ。

 それでなくても死体は野ざらしになって、動物や魔物に食い荒らされたりする事が多い。


「ああ、それなら俺に任せろ。召喚獣ですぐにやってやる。ミャレーとニャメナには剥ぎ取りを任せるぞ。ろくな物がないとは思うが……」

「旦那、そんな事はないよ。旅人や冒険者から奪った装備もあるようだし」

「そうか任せる」

「はいよ~」「にゃー」

 剥ぎとった装備や、ゴブリンの耳を入れるためのプラケースをアイテムBOXから出す。

 皆が慌ただしく、装備の剥ぎ取り作業をする姿を、ベルが香箱座りでじっと見つめている。

 女達の死体や、おびただしい骨をプラケースに入れてから、アイテムBOXへ収納する。

 こんな惨事を平気でやらかす、相手は人型に見えても本当に魔物って事か。これじゃ有無を言わさず殲滅もやむなしって感じだな。


 女達の死体もステータス画面のゴミ箱へ入れれば簡単なのだが、それは出来ない。弔ってやらねば。

 遺跡の外へ出ると――俺は犠牲者達の遺体を埋葬するため、森まで行ってコ○ツさんを召喚した。



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