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60話 大爆発


 プリムラによる貴族との交渉が上手くいったようで、嫌がらせを受けていた彼女の店が再開出来るようになった。

 早速、街で借りている倉庫での仕込みも開始されて、支店も始動。

 店は開店休業中だったが、育成した人材の流出を防ぐために、休業にもかかわらずに店員には給金が支払われており、すぐに店を再開出来た。

 プリムラのチェーン店に出資を行ない協力していた支店長アイリスの親も、胸を撫で下ろしているだろう。


 そして、商売が再開すると、店先はすぐに客で溢れた。店の再開を待ちわびていた客が沢山いたのだ。

 問題なく営業が再び軌道に乗ったので、プリムラはサンタンカの村へとプレゼンを始めた。

 湖で採れる魚を使って、干物やスモークサーモンを生産させて、それを街で売るためである。


 俺のようなオッサンが行っても警戒されてしまうだろうし、クロトンの件で村とは少々揉めているからな。

 その点、彼女は有名なマロウ商会の娘。ダリアの大店であり、ドライジーネを作ったマロウ商会はアストランティアでも名前を知られている。

 やはり信用が違う。彼女は干物やスモークサーモンのサンプルを持って、交渉に当っているのだが、プリムラはマロウ商会でも、マロウさんの右腕として働いており、交渉術にも長けている。

 そりゃ子供の頃から、商売や交渉の手ほどきを受けているんだ、英才教育ってやつだろう。


 その彼女に、村へのお土産も持たせた。俺が使っているのと同じ、高さ60㎝の燻蒸器だ。

 運んでいるのはニャメナだが、トタン製でペラペラなので、そんなに重くはない。

 ちょっとオーバーテクノロジーかもしれないのが気になるが――まぁ、似たような物を鋳物や木の板で作れない事もないから、大丈夫だろう。

 後は、スモーク用のチップだが、村には獣人もいる。彼等の鼻を使えば、香木を見つけるのも難しくないと思われる。


 ――そのプリムラが帰ってきた。


「村の反応はどうだった?」

「とても良かったです。燻製もとても美味しいと評判でした」

「作ってくれそうか?」

「はい、村長も乗り気になってましたが――それから……あの」

 なにやら、プリムラが言いにくそうにしているのだが、何かあったのだろうか?


「ん? どうした?」

「湖で爆発を起こすのは止めてくれと言われました。魚が採れなくなるからと」

「ああ、それは悪い事をしたなぁ。何かお詫びの品を持っていくか? 何か良い物はないかな?」

「村では、油を欲しがっていましたから、それでどうでしょう?」

 油なら、シャングリ・ラで買えばいいからな。安上がりだ。

 しかし、容れ物が無いな――シャングリ・ラで壺を検索。3升(5.4L)入る信楽焼の壺がある。これでいいだろう。

 壺と一緒に、一斗缶入りのキャノーラ油を購入して、容れ物の中を満たす。

 今度、村へ行く時にニャメナに持っていかせればいい。


 村の方はプリムラに任せていいが――さて、俺はどうしようかといえば……。

 アネモネの騒ぎで有耶無耶になってしまったが――崖に穴を開けて、アネモネの魔法で発破を掛けられないかの実験だ。

 発破が出来れば、他の場所で鉱石を掘ったりするのに使えるかもしれない。

 一度、試してみたい。


 プリムラとニャメナが街へ出勤。ミャレーが狩りに出かけた後、アネモネに魔法の実験を頼んでみる。


「アネモネ、君の爆裂魔法エクスプロージョンで試したい事がある。手伝ってくれるか?」

「いいよ」

 彼女の了承を得たので、計画を進める事にしたのだが、さて……どうするか。

 コ○ツさんの油圧ブレイカーで採掘するために、足場をずらしてしまったので、登るためのスペースが無い。

 再び、足場をずらすのも、新規に足場を組むのも面倒だ。

 

「う~ん、また文明の利器に頼るか? 掘り出した薔薇輝石は沢山あるしな」

 シャングリ・ラを検索すると、M菱キ○ンターの高所作業車が350万円で売っている。

 アームの長さは15mで、その先に付いている作業スペース――プラットフォームも広い。


「こいつか……」

 当然中古だが、走行距離は2万kmとこの手の機械では、まだ新品同様ってところだ。

 こいつもディーゼル機関なので、俺が作っているバイオディーゼル燃料が使える。

 う~ん、買おうか買うまいか、それが問題だ――しばらく悩んだのだが……。


「よし、ポチッとな」

 崖の側でシャングリ・ラの購入ボタンを押すと、空中から現れた長いアームを備えた青い車体が地面にバウンドする。

 ここは、コ○ツさんで整地した場所なので、硬さは十分だろう。


 結局、買ってしまった。金がちょっと入るとすぐに無駄遣いをしてしまうんだ。昔からそうだ。

 だから、お金が中々貯まらない。そして、たいして使わない道具やアイテムがドンドン増えていく……根っからの貧乏性なんだな。

 だが、わかっちゃいるが止められない。


「新しい召喚獣だ! これは、何をしてくれるの?」

「あの長い首を伸ばして、俺をあそこまで運んでくれるんだよ」

「凄い!」

 ――とは言ったものの、こんな機械は扱った事がない。試行錯誤が必要だ。

 まずは、車に乗り込み位置を微調整――運転席のインパネを見る。燃料は心配無いな。

 そして車体を固定するための4本の脚――アウトリガーを設置。

 プラットフォームにアネモネと一緒に乗り込み、そこにガソリン発電機と、ハンマードリルをアイテムBOXから取り出して並べる。

 操作盤のレバーを操作すると、油圧アクチュエータの音と共に、俺等を乗せたプラットフォームが移動を開始した。


「動いた!」

「こんなの初めて動かすからな」

 おっかなびっくりの操作だが――それでも、操作盤には上下、水平、旋回等々の文字が書かれているので、なんとか解る。

 エンジンのONOFFも、ここから可能みたいだ。


 初めての操作に苦労しながらも、鉱石が露出している場所へ到着したので、エンジンを停止。

 発電機のエンジンを掛けると、一番短いドリルで岩を掘り始めた。

 岩肌を叩く振動と白い粉が舞う。


「マスクした方が良いかな?」

 シャングリ・ラから、20枚入りの防じんマスクを購入――1500円。

 アネモネにもマスクを着けさせて、ドリルを徐々に長い物に交換しながら、1時間程掛けて深さ1mの穴を掘った。

 ビットは、折れずになんとかなったようだ。


「ふう……」

「これ、本当に穴が開いてるの?」

「もちろん」

 マスクを外して、発電機のエンジンを止める。プラットフォームの操作盤で、収納スイッチをいれると自動で定位置まで戻った。

 高所作業車から降りると、上を見上げる。


「穴が……見えないよな」

 作業車をアイテムBOXへ収納すると、50m程離れた場所に再び設置した。

 そして、アームを伸ばして宙に浮く。


「この距離じゃ双眼鏡も無理か……天体望遠鏡だと、逆さまに映るしなぁ」

 シャングリ・ラを検索して、スポッティングスコープを探す。バードウォッチング等に使う単眼の望遠鏡だ。

 光学系に金をケチるとロクな事がないので、奮発する。K○WAのフローライトレンズ仕様――18万円也。

 前々から欲しかったりしたアイテムなのだが、今なら買える! こんな異世界で。

 傾斜型といって、上から覗き込むタイプにしてみた。こちらの方が覗きやすい。

 ついでに、60倍までズーム出来る接眼レンズも購入。三脚も購入して、プラットフォームの上に設置する。


「どれどれ~おおっ! 見えるぞ、私にも敵が見える!」

 敵って誰だよ。


「見せて見せて!」

 アネモネにも見せてやる。


「すご~い! あんな遠くなのに、凄く近くに見える!」

「そんな召喚獣を出して、何をしてるにゃ? また新しいやつにゃ?」

 下を見れば、ミャレーとベルがいたのだが、アームを伝ってスルスルと俺達の所までやって来た。


「ここから、崖の1点を狙って魔法が使えるか実験をしようと思ってな」

「1点にゃ?」

 ミャレーにスポッティングスコープを覗かせる。


「にゃ?! にゃにゃ?!」

 ミャレーは、接眼レンズを見たり崖を見たりして、何度も見比べている。


「崖が凄く近く見えるにゃ! 魔法かにゃ?!」

 当然、魔法という事にする。


「どうだ、アネモネ。これを覗きながら、あの穴の奥に爆裂魔法エクスプロージョンが使えるかな?」

「う~ん、やってみないと解らないけど……失敗しても怒らない?」

「はは――怒るわけないだろ。実験だからな。こんなの無理を承知で言ってるんだから」

「解った、やってみる」

 一応、安全のために、アイテムBOXからポリカーボネート製のロングシールドを取り出す。シャガの討伐戦に使ったやつだ。


「すーはーすーは」

 アネモネは手を広げて、深呼吸を繰り返す。そして、ミャレーと同じように、崖を見たりスコープを覗いたりを何度も行う。


「ん~ん~」

「無理しなくていいんだぞ?」

「黙って!」

 そして、スコープの接眼レンズを覗いたまま、動かなくなった。


「どうしたにゃ?」

「しっ!」

 小声で聞いてくるミャレーを制して、準備をする。


爆裂魔法エクスプロージョン!」

 彼女の声と同時に崖の一部が大音響と共に吹き飛び、白い土埃が宙に舞う。

 だが、崖の表面で爆発したようで、然程崖は崩れてない……失敗だ。


「ごめんなさい」

「ああ、いいよいいよ。気にするなって。あんな遠くの直径数センチの穴の奥に魔法を入れようなんて、ちょっと無理があったな」

「あんな遠くの小さな穴に魔法を使ったにゃ?」

「そうだ、崖は崩せなかったが、こいつを覗きながら魔法を使えるのは解った。遠くにいる魔物の退治とかも出来るぞ?」

「そうにゃ! 目で見えないような遠くから仕留められるにゃ」

「けど、爆裂魔法エクスプロージョンなんて使ったら、獲物がバラバラになっちゃうけど……」

「う~ん、それもそうか。でも、あんな遠くに魔法を使えるのは凄いぞ!」

「本当に? えへへ……」

 アネモネは照れ笑いをしているのだが、マジで凄いと思う。

 これは使えるぞ。


 ------◇◇◇------


 シャングリ・ラでパラソルとデッキチェアを購入する。リゾート地の海岸等に並んでいるやつだ。

 パラソルは1万円程――デッキチェアは木枠に布が張ってある物を購入。映画でもこういうのが出てくるよな。

 いっぺん使ってみたかった――7000円だ。

 湖畔に設置したデッキチェアに寝転がり、パラソルの日陰でアイスコーヒーを飲む。


「ふう~」

 アイスコーヒーは、紙パックに入っている安物だけどな。まぁ、気分ってやつよ。

 サイフォンとコーヒー豆をシャングリ・ラで買って、淹れてもいいんだけど。

 氷は、太陽電池パネルからモバイルバッテリーに充電し、製氷機を動かしている。

 一度氷が出来たら、アイテムBOXへ入れておけば、いつでも氷が使えるしな。

 どこか寒い地方にでも行った時は、大量に氷をストックするのも手だろうし商売にも使えるかも。

 

 なんという長閑で平和な景色。

 そんな景色の中で、俺はのんびりと読書。電子書籍で読んでいるのは、爆発物について。

 爆裂魔法エクスプロージョンでの発破に失敗したので、爆薬に頼ってみようと思う。

 それに、この世界では洞窟で戦ったデカい蜘蛛のような、巨大な魔物に襲われる可能性があるのが解った。

 蜘蛛戦では、なんとか勝てたが、強力な武器が必要ではないかと考えたのである。

 アネモネも爆裂魔法エクスプロージョンのような強力な魔法を使えるようにはなったが、日に何発も撃てるわけではない。

 やはり、攻撃の選択肢は多いほうがいい。


 銃も選択肢に入れたのだが――本体はモデルガンの機構を参考になんとかなりそうでも、弾を作るのが難しい。

 そんな怪しげな改造銃を実戦に使うのも、躊躇ためらわれる。肝心な時に暴発、故障、不発――とてもじゃないが使えない。

 武器というのは信頼性がモノを言う。

 先込め式のパーカッションならなんとかなると思うが、近距離ならクロスボウと然程威力も変わらないだろう。

 多数を揃えて、部隊で運用するなら威力大であるが、先込め銃が1丁あっても……つまり、余りメリットがない。


 試しに、ミャレー達に拳大の石を投げさせてみると、200m以上の遠距離投擲をこなした。こりゃ、発射装置も要らないじゃないか。

 要は爆発物だけあれば銃は要らないって事だ。


 さて、爆発物――所謂いわゆる火薬だが、異世界で定番になるのは黒色火薬だ。

 幸いシャングリ・ラには、黒色火薬の原料になる物が揃っている。木炭は普通に売っているし、硫黄も入浴剤として手に入る。

 問題になるのは硝石(硝酸カリウム)だが、これも何とかなる。

 硝石自体は売ってないが、シャングリ・ラで手に入るゴニョゴニョの中身が過塩素酸カリウム――こいつが酸化剤として使用可能だ。


 もう一つの候補は――液体を分ける魔道具を持っているので、シャングリ・ラで揃う物から、濃硫酸も濃硝酸も作れる。

 トルエンやらセルロースも売っているので、TNTトリニトロトルエン火薬やニトロセルロースも作れるって事になるが――。

 科学実験レベルでこういう物を作っても、実用に耐えられる物が出来るか疑問が残る。

 

 第一候補は、やはり黒色火薬だろうが、試してみたい物がある。

 普通に売っている肥料を爆薬に使う、硝安油剤爆薬――アンホ爆薬だ。

 農協に肥料の硝安が袋詰で山積みになっているのをみて、いっぺんやってみてぇ!

 ――常日頃思っていたのだ。勿論もちろん、元世界でそんな事をすれば、すぐに白黒の車が赤色灯を回しながらすっ飛んでくるだろうが、ここは異世界。

 自重する必要はないのだ。幸い、シャングリ・ラにも肥料として硝安は売っている。

 売っていなければ、叩くと冷えるゴニョゴニョの中身が硝安なので、こいつが使える。

 アンホ爆薬の原料は硝安とゴニョゴニョを少量ゴニョゴニョするだけ――実に簡単だ。しかも、滅多に爆発しないので、安全性も高い。

 ――というか、爆発させるのが難しい。火をつけても、電気を流しても爆発しないのだ。

 プライマーに別の爆薬が少量必要。黒色火薬は不可。


 だが、俺の下には、爆裂魔法エクスプロージョンという魔法を使える少女がいるではないか。

 彼女の魔法を使ってアンホ爆薬を起爆出来るかもしれない。こいつが使えれば彼女の魔法も節約出来るし、薔薇輝石を採掘するための発破に使えるのではないか?

 ――そういう結論になった。


 早速行動に移す。

 シャングリ・ラから硝安を購入――ステンレスボウルにピンク色の粉を空け、アイテムBOXに入っていたゴニョゴニョと混ぜ混ぜする。これだけだ。

 容れ物はどうしようか……ここは、過激派御用達の圧力鍋爆弾だな。

 シャングリ・ラで一番小さい圧力鍋を購入して、圧抜きの非常弁を叩いて殺す。

 そして、鍋の中に出来上がったアンホ爆薬を詰めれば完成――簡単。実戦では、威力を増すために釘を混ぜればいい。


「お~い、アネモネ~また魔法の実験を手伝ってくれ」

「解った」

「何するにゃ?」

 一緒にいたミャレーも気になるようだ。


「魔法の実験だよ」

「またにゃ? 賢者様は色々と考えるにゃ~」

「まぁな」

 アネモネにヘルメットを被せると、湖畔をオフロードバイクで飛ばす。あまり近くで爆発物の実験を度々すると、またサンタンカから苦情がくるかもしれない。

 湖沿いに10km程やって来たが、ミャレーも走ってついてきた。

 アイテムBOXから圧力鍋爆弾を取り出す。


「ミャレー、こいつを向こうへ投げ飛ばしてくれ」

 湖の岸沿いを指さす。


「解ったにゃ~!」

 鍋の黒い柄を持って彼女がスイングすると、圧力鍋は放物線を描いて、かなり遠くまで飛んだ。

 湖畔に落下してゴロゴロとバウンドしたが、これでも爆発はしない。


「鍋でも、こんなに飛ぶのかよ。すげぇパワーだな」

 アイテムBOXからレーザー距離計を出して、鍋との距離を測る――98mだ。凄すぎるだろ。

 湖畔にしゃがみ、スポッティングスコープとポリカーボネートのタワーシールドを出す。


「アネモネ、あの鍋の中に爆裂魔法エクスプロージョンを使えないか? 威力はなくていいから」

「小さい爆裂魔法エクスプロージョンでいいの?」

「ああ、ぽん! ぐらいでいいと思う」

「やってみる」

 彼女も、シールドに身体を半分隠しながらスコープを覗く。


「これは的が大きいから、前より簡単だと思う」

「出来そうか?」

「うん」

「じゃぁ、やってみてくれ」

 アネモネが精神統一をして魔法の準備にはいった。


「む! 爆裂魔法エクスプロージョン(小)!」

 ――その瞬間、白い土埃を残し大音響と共に鍋が破裂した。

 爆裂魔法エクスプロージョンは爆炎を生じて赤い火が上がるのだが、こいつは純粋な爆発だけ、地面を這ってくる衝撃波が俺達を襲う。

 使った爆裂魔法エクスプロージョン以上の爆発が起きているので、これは起爆成功だろう。


「凄い音だにゃ! 爆裂魔法エクスプロージョンとは違うのにゃ?」

「錬金術を使い、少しの魔法でも大爆発を起こすのが可能なんだよ」

「へぇぇ、ケンイチ凄い!」

「これがあれば、大量の敵に囲まれても、何回も爆裂魔法エクスプロージョンと同じような爆発が使えるだろ?」

「うん!」

 魔物には魔法は効かないというが、こいつは純粋な化学反応なので、効くんじゃないのか?

 試してみないと解らないけどな。


 家に戻ると、アイテムBOXから再び高所作業車を出して、以前開けた穴に、ピンク色のアンホ爆薬を詰め込む。

 的が解りやすいようにピンクのスプレーで○を書いてみた。


 そして、離れた場所から再び発破に挑戦する事に。

 今度は、崖の表面を狙えばいいので、高所作業車に乗る必要もないだろう。

 アイテムBOXから盾とスポッティングスコープを出して、発破に備える。


「今度は、穴の中を狙う必要はないから、粉が詰まっている表面に小さい爆裂魔法エクスプロージョンを当てるだけでいい」

「う~ん、それなら出来そうな気がする」

「それじゃ、やってみてくれ」

「うん」

 彼女がスポッティングスコープを覗いて、精神統一をする。


「紅く丸が書いてある真ん中を狙えばいいの?」

「そうだ」

「む! 爆裂魔法エクスプロージョン(小)!」

 大砲のような音と共に、崖が大きく崩れて、白い煙があがる。


「やった、成功だ!」

「上手くいった?!」

「ああ! 凄いな! アネモネやったな!」

 彼女を抱きかかえると、小さい脚が宙に浮く。


「えへへ……」

 爆裂魔法エクスプロージョン(小)なら、1日何回でも使える。発破し放題だ。

 それから、3回程発破を掛けて、1000万円分の薔薇輝石を回収。

 高所作業車の元は十分に取った。

 そして、オレンジ色の石の鉱脈もそれで尽き、採掘は終了となったが、アンホ爆薬も十分に使える事が解った。


 こいつは色々とはかどるねぇ……楽しみが増えたぜ。

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