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【アニメ化決定!】アラフォー男の異世界通販生活  作者: 朝倉一二三


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250/275

250話 郷長という虎の威を借る狐


 次々と襲ってくるトラブルを片付け、エルフの案内で共和国の村に到着した。

 情報は仕入れられたが、住民はかなりボロボロの状態。

 アネモネは可哀想だと言うのだが、こりゃ他国の問題だからなぁ……。

 ――とはいえ、まったく無視なのも不憫だ。

 幸いアイテムBOXの中には、倒した魔物などが余っている。

 このままじゃ増える一方なので、少しばかり放出。

 塩なども、シャングリ・ラで買えば安いので与えることにした。


 久しぶりのご馳走なのか、住民たちは張り切って魔物の解体を始めた。

 首長の魔物は食えるか心配だったのだが、一口食べてみても鳥のような味で問題ない。

 ドラゴンやワイバーン系の味だ。

 住民たちのリーダーの男に話を聞く。


「塩がないと暮らせないんじゃないのか? どうやっているんだ?」

「そ、それは……」

「エルフとの取引にも塩が入っていたと聞いたが?」

「し、塩はある所にはあるんだ……」

「そうなのか?」

 男が黙って、村の外れにある家を指差した。

 あちこちにあるバラックと違い、板を使ってある高床式の家――玄関には階段が見える。

 立派ではないが、まだ家としての体裁を保つ。

 明らかに村の家とは違う。


「あそこにいる郷長が持っているんだ……」

「ははぁ、中央から配給が来ると、あそこに行くのか?」

「そうだ」

「だが、この村の様子からすると独り占めしている?」

「……そうだ」

「そこからどうやって物資をもらう?」

「女などを差し出す……」

 その話を聞いてアマランサスが憤慨した。


「呆れた為政者もあったものじゃの!」

「送り込まれてきた人材を拒否したりしたせいで、こうなっているのか……」

「そうなのだ」

 中央から約束された人材は送られてこない。

 物資は独り占めされる。


「そんなやつ、ぶっ殺しちまえばいいのに」「そうにゃ」

 獣人たちが物騒なことを言うが、これじゃいつ反乱が起きても仕方ない。


「そんなことをすれば、完全に物資が絶たれてしまう」

「通貨は流通してないのか?」

「中央にはあるらしいが、ここにはない」

 通貨はないし、余っているものもないから、他の村との売買もできないってことか。

 送られて来る物資と自給自足だけでなんとかするわけだ。


「税金は?」

「収穫した麦の5割ほど」

「5割かぁ……それじゃ食うものも残らないだろう」

 ごまかそうにも、郷長という男が作付面積を管理しているので、できないらしい。

 時間がある限り森の中で狩りや食い物を採取して、なんとかしのいでいるようだ。


「それでなんとかするしかないのだ……」

「やれやれ、国を潤したいのか滅ぼしたいのか解らんな」

 アキラの言うとおりだ。


 皆で暗い顔をしていると、1人の男がやってきた。

 中肉中背で、黒い頭はボサボサで無精髭を生やした男。

 顔には大きな鼻が目立つが、そのほかに特徴といったものはない。

 変哲もない麻のシャツとズボン姿だが、村人のボロボロよりはいい服装をしている。

 手にはワイン瓶らしきものを持っており、物資として送られてきたワインも独り占めしているに違いない。

 こんな時間から飲んでいるのか、顔が赤い。


「これはエルフ様! またなにか取引でございますかな?」

 男は広場にいるエルフたちに気がついたようだ。

 当然ツィッツラやセテラは、関係ないので黙って首を振る。


「それにしても賑わっているじゃないか? 新しい獲物が手に入ったのか、ヒヒヒ」

 男が村人たちが群がっている黒狼や首長の魔物を見て、いやらしそうに笑う。


 こいつが郷長という男か。

 中央政府の威光を借りて物資を独り占めしているらしい。

 まさに虎の威を借る狐。


「おお?! なんじゃこりゃ、竜?!」

 男が、デカい獲物に驚いている。

 当然、村人たちからは煙たがられているようで、誰も相手にはしていない。

 完全無視されている状態なのだが、その状態でも態度を崩さないのだから心臓に毛が生えているのか、よほど鈍感なのか。

 エルフがいるのであれこれ媚を売って無視されていたのだが、すぐに俺たちに気がついた。

 そりゃ、村人たちのボロボロとはまったく服装が違うからな。


「なんだお前ら、見ない顔だな」

 下から上まで舐めるような視線で俺たちを見ている。


「はじめまして、我々は商人の一行でして」

「なに?! 商人だぁ? 商人なら、ものはどこにある?」

「私はアイテムBOX持ちでして」

 俺は、シャングリ・ラから買った一番安い赤ワインを買って、男に差し出した。


「むほ! こりゃ良さそうなワインだな! 見事なガラス瓶だ! 素晴らしい!」

「はい」

「どこから来た?」

「それは、ちょっとお話しできませんが、これで一つご勘弁を――」

 俺は、もう1本ワインを男に渡した。


「なに?!」

 男の顔が険しくなる。

 暗にもっとよこせと言っているのだろう。

 意地汚い男だが、学はありそうに見える。

 中央の学校を出て、こんな僻地に飛ばされたんじゃ、ひん曲がるも無理もないとはいえ――。

 俺はシャングリ・ラから、赤ワインの12本セットを買った。

 色々なワインの詰め合わせセットだ。

 紙の箱に入ったワインが落ちてきたので、それを男に差し出した。

 村人たちからどよめきが起こる。


「それではこれで――」

「ふん! おい、いい女を連れているではないか! その女に酌をさせろ」

 男が指差したのはアマランサスだ。

 王国における女性の頂点ともいえる存在に酌をさせるなんて、本当はかなり大それたことなのだが、この男がそんな事情を知るはずもない。

 今いる中で一番いい女を指差したのだろう。

 まさか、エルフに酌をさせるわけにもいくまい。

 彼らはエルフを崇めているからな。


「彼女は私たちの護衛をしている戦闘奴隷でして、そのような教育は受けておりません。なにか失礼があったら大変でございます」

「そのような些事はどうでもいいわ! 俺の相手をしろ!」

 アマランサスがそんなことを聞くはずがない――男の話も聞いておらず、横を向いている。

 だいたい俺がゆるさんし。

 そんなことをさせるぐらいなら、ここで一暴れしたほうが簡単だが、村の住民に迷惑がかかるな……。

 俺たちにやられた鬱憤晴らしに、村人たちにさらなる嫌がらせをするに違いない。

 アマランサスがそっぽを向いていると、男が激昂した。

 

「このアマ! このワシを誰だと思っているか!」

 こんな男、アマランサスなら片手でひねるところだが、衝突寸前の間にセテラが入った。


「それじゃぁ、私が酌をしてあげるぅ」

「え、エルフ様が、我々の言葉を?!」

 予想もしなかった森の妖精の言葉に男が驚嘆した。


「あらぁ、私じゃ酌の相手に相応しくないって言うのぉ?」

「そ、そんなことは……」

 いきなりの展開に男がしどろもどろになっている。

 まさか、エルフからそんなことを言われるとは思ってもいなかったのだろう。

 弱い者にはとことん強く、強い者には尻尾を巻く。

 なんか小物を絵に描いたようなやつだな。


「まぁまぁ、服などもございますよ」

 シャングリ・ラから一番安い男物のズボンやらシャツを買う。

 安物とはいえ、ここの住民たちが着ているものに比べたらはるかに上等――男は目を丸くした。


「うむ……解った、見逃してやろう……」

「ありがとうございます」

 さすがにビビったのか、エルフの酌は断るようだ。


「おい! 荷物を俺の家に運べ! それから、その肉も半分もってこい」

 男が村人たちが解体している魔物を指差した。


「おい! 商人!」

「はい」

「ワインも足りないぞ!」

「あとで、樽をお持ちいたしますので」

「よし! 中々話が解るじゃないか、わはは!」

 郷長の姿が見えなくなると、俺はリーダーの所に行って話を聞いた。


「肉を半分もよこせって――保存できるのか?」

「いいえ、ああやって村人から巻き上げて権力を誇示しているのです」

 要はただのマウント行為か……。

 保存できない肉はただ腐ってしまうだけ。

 土に埋めたりして肥料にするらしいが、支配している村人の気力を削ぐ意味もあるんだろうな。

 せっかくの肉を切り分けると、支配される側はフラフラした足取りで郷長の所に黙って運んでいく。


「ひでぇな」

 その光景を見たアキラがつぶやく。

 俺も同意見だ。


「独裁国家ってなんで反乱が起きないだろうと不思議に思っていたんだが、こうやって精も根も奪ってしまうんだろうな」

「まぁ、そういうのは話には聞くが、実際に見るとキツイな。帝国が天国に思えてきたぜ」

「まったくひでぇな、こんなの王国だったら反乱間違いなしだぜ」「そうだにゃ」

 黙って見ていたうちの獣人たちが俺の所にやってきた。


「ケンイチ……」

 悲しそうな顔をしたアネモネが、俺の服を掴む。

 解っちゃいるがなぁ……。


 村人たちがセテラの周りに集まり始めた。


「エルフ様! エルフ様のお慈悲を!」

「ええ? 私には関係ないしぃ」

「そんな……」

 いつもなら、エルフとの意思疎通は無理なのだが、セテラには言葉が通じる。

 この機会に! ――とばかりにセテラにすがったのだろうが、彼女のそっけない言葉に、住民たちは言葉をなくした。


「エルフは、只人の社会には常に傍観者だしぃ」

「勝手に崇めて、勝手にすがるなって話だよな」

 ツィッツラもつぶやくと呆れている。

 

「そのとおりぃ」

 彼らは只人のゴタゴタなどに興味はないのだ。


「それにすがる相手を間違えてるわぁ」

 セテラが俺を指さした。


「おい、俺に振るなよ」

「だって領主様じゃない」

「まぁ、そうだけどな……」

 村人を代表して、ここのリーダーがやってきた。


「あなたはいったい……?」

 その前に確かめたいことがある。


「こういう国って密告やら、民が民を監視する仕組みがあったりするんだが? それは?」

「いいえ……他の都市では行われていると聞いたことがありますが、ここの住民は一致団結しています」

 あるらしい。

 本当に、やることはどこの世界でも同じか。


「それじゃ、なにを話しても、あの郷長に漏れることはないと?」

「はい」

 俺は住民たちの顔を見回して、ため息をついた。


「仕方ない――本当のことを話すが、俺は山脈の向こうにある王国の領主だ」

「領主様?」

「まぁな。とある事情でここまで飛ばされてしまったわけだ。それは、そこのエルフが証明してくれる」

「彼が言っていることは本当よぉ」

 今度は俺に村人たちが群がりひざまずいた。


「お助け下さい領主様」「お助けを……」

「おいおい、そういうのが嫌で王侯貴族を倒して、今の国になったんじゃないのか?」

「それは、そうだと聞いておりますが……ここまでひどかったとは聞いていませんでした」

 このリーダーは共和国に代わってからの世代らしいが、年寄連中は王国時代を経験している者たちだ。

 その者たちが昔のほうがよかったと言っており、不平不満を漏らす。

 ここは見てとおりの酷い有様だが、行き詰まっているのは、この村だけではない。

 ほとんどの村や街でも、生産性が落ちて物資不足になっているらしい。


「助けると言ってもどうする? あの山を越えるのか?」

 俺は後ろを見て、白い万年雪を頂き延々と続く山脈を指差した。


「領主様は、峠への道順を我々に聞かれてました――ということは峠から王国へ帰還するつもりなのでは?」

「ああ、そのつもりだ」

「私たちも、連れていっていただきたい!」

「かなりの距離があるんだぞ? 森も続いているし、魔物もうようよいる。途中で命を落とすかもしれない」

「承知しております」

「んだ!」「そうだ」「こんな地獄で朽ち果てるぐらいなら……」

 アネモネがやってきて、俺の服を掴んだ。


「魔物なら私がやっつけるから……」

 俺を見つめる汚れなき大きな瞳。

 それに応えたいのは山々だが、可哀想だからといって、ゆく先々で困っている人を全員助けることはできない。

 彼女ももう少し大きくなればわかってもらえるだろうが……。

 打算もなく純粋な気持ちだけで物事が進むのならいいのだが、世の中はそうもいかない。

 トラブルになると知りつつ、それを選択するのは為政者としては少々まずい。


「う、う~ん」

 俺は悩む。

 小さな大魔導師の信頼も失いたくないしなぁ。

 俺がどんな選択をしても――多分、うちのパーティーからは異論は出ないと思うが……。


「村の獣人たちはどうする?」

 俺が治療をした背の高い女に聞いてみた。


「森猫様が傍にいる只人が悪人のはずがないし……」

「王国の獣人たちは、下に見られることが多いぞ? 俺の領は違うが」

「それなら、旦那の領で暮せばいいんだろ?」

「そうだがなぁ――おい、犬人たちは? 王国は犬人と猫人が分かれて住んでいるんだぞ?」

「旦那のとこもそうなのかい?」

 黒い毛皮を着た狼のような男が答えた。


「いや、一緒だな」

「それなら問題はねぇ」

「そうか? いきなり文化が違うから、面を喰らうことが多いと思うぞ」

「俺たちは普通に働けて飯が食えればいい」

「そうだ」「そうだ」

 初めて見たのだが、犬人の女もいる。

 最初はオサゲかと思ったのだが、どうやら垂れ下がった長い耳らしい。


「お願いします!」

 改めて、住民たちのリーダーが懇願する。


「……この場で決めることはできない。そちらも皆で飯を食いながら話し合ってみてくれ」

「……はい」

 村人たちも納得してくれたようだし、腹も減っているのだろう。

 食事の準備を始めるようだ。


 俺たちもコンテナハウスを出した。

 ここに長居するつもりはないし、できれば明日には出発したい。

 そろそろ昼なので昼飯の準備をしながら皆と話す。


「ケンイチ、どうする?」

 アキラが心配そうだ。

 さすがに、こいつは国際問題になるからなぁ。


「う~ん、まいったね」

 村人はおよそ70人。

 70人の人間を引き連れて、旅をするシミュレーションをしてみる。

 まぁ、彼らも苦しい旅になることは承知の上、一か八かの勝負に賭けるつもりなので、多少の苦労も理解しているだろう。

 苦労といっても、俺のアイテムBOXに入っている物資とシャングリ・ラを使えば、ここで暮らすよりはマシな旅ができる――はず。

 多分、彼らが決死の覚悟をしているよりは楽ちんな旅になる。


「俺は旦那に従うぜ」「ウチもにゃ」

 獣人たちは俺の決定に従うらしい。


「いいのか?」

「旦那の言うことに間違いはないし」「ウチもそう思うにゃ」

 信頼してくれるのは嬉しいけどなぁ。


「当然、妾もじゃな」

「私も!」

 アネモネも手を挙げた。


「私たちは、どうでもいいかなぁ」

「そうだね、エルフには関係ないことだし」

 エルフは我関せず。


「俺も部外者だしなぁ」

「だがアキラ。あれだけの人数を引き連れていけば、絶対にトラブルに巻き込まれるぞ? それはいいのか?」

「まぁな。俺たちで行ってもどうせトラブルになるし、ははは」

 彼は、自分のアイテムBOXから出したビールを、ツィッツラと回し飲みしている。

 彼の言うとおり、俺たちが峠の入り口まで行ってもすんなりとはいかないだろう。

 そこには国民を逃さないためのなんらかの防止策があるに違いないし、それを突破しなければならない。


「そうなると――どの道、国際問題になるのか……」

「まぁ、強引に国境を突破したとなれば大問題だな。どうせ大問題になるなら、アネモネちゃんの大魔法で盛大にドカンといくか、ははは」

「いっくよ~!」

 アネモネが張り切っているのだが、穏便に済ませたいところ。

 まぁ、無理だろうなぁ……。


 昼飯を食い終わると、あのリーダーがやってきた。


「どうした?」

「全員で決めた。あなたについていく」

「もう決めたのか?」

「ああ、すでに後がないんだ。今年は不作で、税で半分取られたら何人生き残れるか解らない」

 それでもここは森があるので、まだマシな状態らしい。

 森が近くにない街や集落では物資不足から人身売買などが横行して、人肉食も行われているという。


「しかし、そんなに不作になるかなぁ……」

 農具がないとか問題は多々あるだろうが、なにかが根本的に間違っているのではないだろうか?

 そう思って彼らに話を聞いてみると、色々とありえないことをやっているようだ。

 彼らの長いスコップのような農具を見せてもらう。

 地面に差し込む農具のようだが、なんに使うのだろうか?


「これは?」

「コレは種を植えるときに使います」

 彼の話では、地表から50cmほどの深さに種を植えるらしい。


「なんでそんな深さに……」

「根が沢山伸びて、丈夫に育つのです」

「はぁ……」

 悪い予感がしたが――密集農法も行われているようだ。

 つまり農作物を密集させて植えれば、同じ面積でも倍採れるという理屈に基づく。

 ぶっちゃけありえないのだが。


「おい、ケンイチ……これって」

 一緒に話を聞いていたアキラが渋い顔をしている。

 彼もこれを知っているようだ。


「ああ、たまたま似たような考えを持ったやつが中央政府にいたのか――それとも俺たちと同じ転移者か?」

「ありえるな」

 エルフの原始共産制を参考にしたと言っていたが、そういう人物が中央にいる可能性も出てきた。


 なにはともあれ彼らの決意は解ったし、ここで農業をやってもこれじゃ発展は望めない。

 このままでは、いずれは全滅する。


 俺は彼らを助けることにした。

 リーダーには仲間の下に戻らせて、いつもの生活をしてもらい、箝口令も敷く。

 そりゃ、足抜けがバレたら大変なことになるからな。


「さて、そうなると、あの郷長ってやつが邪魔だな」

「片付けるなら俺が殺ってやるぜ? ケンイチには無理だろうし」

 俺だってやるときにはやるが――。


「まて、俺にいい考えがある。任せてくれ」

「はいよ」

 俺の言葉を聞いた獣人たちが騒がしい。


「旦那のいい考えって絶対にヤバいやつだろ?」「トラ公の言うとおりにゃ」

「そんなことないよ」

「ぜってー嘘だ」「そうだにゃ」

 どうも獣人たちには、逆の意味で信頼が厚いらしい。


 やることが決まったので、まずは本格的なワイン樽を買う。

 1樽2万5000円で、立派な樽が落ちてきた――高さは70cmほど。

 新品なのでピカピカ――3樽買う。

 次に、こいつは樽だけなので、中身をどうにかしなければならない。

 シャングリ・ラで、一番安いワインを探す。


 郷長という男に渡したものが安かったが、この樽を満杯にしなければならないので、大量に必要だ。

 もっと大容量のワインを探すと、バッグインボックスというものがあった。

 こいつは安くて3Lで1500円ぐらいだが、あまりに不味いと意味がないので一つ購入してみた。


 購入ボタンを押すと、ドスンとぶどうの絵が描いてある立方体の紙の箱が落ちてきたので覗く。

 紙パックなのか? ――と思ったら、紙の箱の中にプラ製のナイロンバッグのようなものが入っている。


「へぇ、こういうものもあるのか」

 試し飲みをしてみる。

 シャングリ・ラからスポイトを買って、グラスに注いでみた。

 赤い液体がグラスの中に溜まる。


「聖騎士様、その絵の描いている紙の箱は?」

「これはワインだよ」

 酒の味にうるさい、アマランサスに試飲を頼む。

 グラスを受け取った彼女は、クルクルと回すようにしてから一口含んだ。


「ふむ――若いですが、これは上等のワインですわぇ」

 この世界では、少々とんでもない代物でもワインとして流通しているので、元世界の安物でも十分に美味いワインということになるのだろう。

 こんなの飲んだことがなかったので少々心配だっだが、アマランサスがOKだというなら、問題はない。


「ケンイチ、俺にもくれ」

「旦那! 俺にも!」

 ウチの飲んべぇグループがワインの試飲をせがむので、注いでやった。


「こりゃテーブルワインなんだろうけど、十分だな」

「うめー! こりゃ、うめー!」

 そりゃ街の食堂なんかで出てくるものよりは、遥かに上等だ。

 セテラも飲みたそうなので、飲ませてやる。


「あら、これは美味しいわぁ」

 エルフの口にも合うようだが、ツィッツラは飲まない。


「でも、ケンイチ――これでなにをするんだ? あの男にやるのか?」

「まぁな。だが、ただでやるつもりはない」


 俺はアイテムBOXからメスシリンダーを取り出して――シャングリ・ラからエチレングリコールを購入した。


「これが最後の決め手だ」

「ケンイチ、まさか――」

 アキラも落ちてきた透明な瓶を見て、俺のやろうとしていることに気がついたようだ。


「そのまさかだな」

「いいのか? それに使うことで、もしかしたら関係ない善人も巻き込まれることになるかもしれないぞ?」

「それも覚悟の上だ」

 獣人たちも俺の用意したものに気がついたようだ。


「旦那、それって……甘い毒ってやつだろ?」

「そうだ」

 ニャメナの顔が恐怖に染まり、尻尾が逆立って極太になる。


 彼女たちから、なにを言われても仕方ない。

 他のいい方法が思い浮かばないのだ。



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