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125話 お城の蔵書をコピれ


 元王妃――ということになるのだろうか? アマランサスが俺たちと一緒に暮らすことになった。

 血は繋がっていないが、娘のリリスも一緒である。

 すでに籍は抜かれていて、王族ではなくなっているという。仕事が早すぎだ。

 

 皆で朝飯を食べる。プリムラがいないので、スープはインスタントだ。

 作るのが面倒なのもあるが、たまには違う味のスープも食べてみたいじゃないか。

 プリムラの作るスープは、売ったりすることもあるし、ほかの料理のベースになることが多いので、基本が塩味。

 今日は、ちょっと変化球で中華味のスープにしてみた。

 一緒に料理を食べているが――まだ、アキラが寝取りだのなんだのと騒いでいる。


「彼女は、すでに王族じゃないし――日本で言うなら離婚届を受理された後の状態だからセーフ」

「まぁ、しゃーない。寝取りは男のロマンやし。そうそう、あの栗まんじゅうとかに入っているやつやろ? そりゃ、マロンじゃボケェ!」

 アキラが独りボケと独りツッコミをしている。


「どんなロマンだよ。別にロマン目的に、やっているわけじゃないぞ?」

「ふ~ん……それじゃ俺も手を出しちゃおかな~」

 そう言って、テーブルにやって来た、メイドさんの手を握った。


「ねぇねぇ、可愛いメイドさん。おじさんと一緒に遊ばない~? おじさんって結構凄いんだよ」

「はぅん!」

 アキラの言葉とともに、メイドさんがフラフラと倒れて尻もちをついた。彼が持っている、俺と同じ祝福の力だ。


「ほらぁ、気持ちいいでしょ? もっと気持ちいいこと、おじさんとしてみな~い?」

 完全にオッサンである。いや、実際にオッサンなので、致し方ないのではあるが。

 メイドの女の子に近付こうとしたアキラであったが、彼の後ろに黒い影が立った。


「ふうん――アキラ、ずいぶんと元気のようですねぇ。そんなに精力が有り余っているのなら、私の相手をしてもらいましょうか?」

 アキラが声の主を確認するために、そっと後ろを見る。


「はうぁ!? センセ! いつの間に!?」

 彼の後ろに立っていたのは、烏色のドレスに爆乳を揺らした、レイランさんだった。


「豪華な部屋と食事にも飽きてきたところなので、ちょうどよかった」

「あっと、センセ! ちょっと、すみません! 冗談ですから、冗談!」

 アキラの弁解も虚しく、後ろ襟を掴まれたまま、アキラがズルズルと引きずられていく。

 魔導師だというのに、かなりのパワーがある。


「にゃー! アキラ、やるにゃ!? ウチもやるにゃ!」

 引きずられているアキラの周りを、獣人のミャアが、ピョンピョンと跳ね回っている。


「あ゛あ゛あ゛あ゛~」

「南無……頑張ってくれたまえ」

 このあと彼は、いわゆる一つの永久運動装置、セ○○スマッスィーンと化すのだ。

 引きずられていくアキラに、俺は両手を合わせた。


 アキラのことは放置して――食事が終わると、元王族二人の引っ越しの準備が始まった。

 シャングリ・ラから木製の大型パレットを購入して、地面に並べる。


「持っていく荷物はここに置いてくれ。そうすればまとめてアイテムBOXへ入れられる。大型の家具とかは持っていけないぞ?」

「解っておるわぇ」

 リリスもアマランサスもそう言うのだが、大丈夫かな?

 ちょっと庶民とかけ離れているところがあるからなぁ。

 新しい生活を始めた彼女たちが、「もうこんな生活には耐えられない!」などと言い出しても、すでに二人には退路はない。

 それを彼女たちも解っているはずだと思うのだが。


 引っ越しの準備は二人に任せて、俺にはやることがある。

 お城の書庫にある本をコピらなければならないのだ。

 この世界では本自体が貴重なのに、お城の書庫にある本は門外不出の貴重な本ばかり。

 これを逃す手はない。しっかりとコピらなければ。

 複製は、以前使ったドキュメントスキャナを使うことにして、同じものをもう一台購入。

 ノートPCももう一台増やした。長時間使うので、大容量のモバイルバッテリーも出す。


 これらのスキャナは、もともとは自炊といって、手持ちの本をデジタル化するのに使うもの。

 本格的に自炊をする人は、本を裁断して取り込むそうなのだが、王族が保有する本に、そんなことはできない。

 今日1日の作業が終了すれば、1日でどのぐらいの量をデジタル化できるか、ペースが解るだろう。

 計算して間に合わないようであれば、なにか手を考えなくてはならない。


 お城の奥にある書庫――古い貴重な本が、細長い吹き抜けの部屋に積み上がる。

 アネモネと一緒に書庫に入り上を見上げると、びっしりと本棚に本が詰まっており、その高さは数階に及ぶ。

 これだけの本を1週間でスキャンできるだろうか? 元世界の常識が俺の思考の邪魔をするが――この世界の本は1ページが分厚く、本の厚さのわりにはページ数が少ない。

 羊皮紙の本などは分厚いのに、1cmぐらいある立派な装丁と数十ページしかなかったりする。

 PCなどの操作に慣れているアキラにも手伝ってもらおうとしたのだが、元帝国人の彼には許可が下りなかった。

 まだ100%信用されていないということだろう。


 俺とアネモネの他、一緒に書庫に入る人間がもうひとりいる。

 以前、俺がこの書庫に入ったときに、監視をしていたメイドさんの一人だ。

 黒いショートヘアの彼女は、ここの管理兼司書をしていて本の配置をすべて記憶しているらしい。


「今日から、1週間ほど、よろしく頼むよ」

「あの……本を複製するとお聞きいたしましたが、いったいどのようにして……」

 ちょっと眠たそうな目をしている彼女だが、もともとこんな感じらしいので、眠たいわけではない。


「大丈夫、本を傷つけたりはしないから心配しないで」

 ――と言葉で言っても訳がわからないだろう。論より証拠――俺はアイテムBOXから、テーブルとノートPC、そしてスキャナを取り出してセットした。


「それは……?」

「初めて見るだろうが、本を取り込む魔道具だ」

 適当な本を1冊持ってきてセット、ノートPCのリターンキーを押して、最初のページを取り込んでみせる。


「このようにして、この板の中へ入れることができるわけだ」

「これで、いつでも本を見ることができるようになるわけですか?」

「そのとおり」

「おっしゃることが本当なら――ケンイチ様のお近くにいれば、私も複製した本が読み放題……」

「もちろん貴重な本ばかりだから、ここと同じように閲覧できるのは限定された人間になるけどね」

 この世界には文字が読める人間が少ないので、必然的にその人数は絞られる。

 魔法に関する本や、王家の秘密に関するものは論外だろうが、普通の歴史書などは開放してもいいかもしれない。


「複製した本だけじゃないよ、誰も知らないような異国の本も読めるよ」

 アネモネが言った言葉にメイドさんが反応した。


「それは本当ですか?」

 アネモネの言葉なのに、なぜか彼女が俺にすり寄ってくる。

 俺はアイテムBOXから取り出した、罠猟の本を見せた。ミャレーとニャメナのためにシャングリ・ラから購入したものだ。

 書かれている言語はもちろん日本語。それを手にとったメイドさんは、ペラペラとページを捲っている。

 

「素晴らしいです。すごく薄くて上質な紙に書かれていますね! それにきれいな文字……」

 もちろん印刷なのだが、それを説明するのは難しい。

 マロウ商会とユーパトリウム子爵に、ガリ版印刷技術を教えたが、あれだって元の原稿は手書きになるからな。

 鉄筆でガリガリと、蝋紙に傷をつけるわけだ。


「もう、離れて!」

 アネモネが、俺とメイドさんの間に入って押し広げた。


「……」

 メイドさんが、何か考えごとをして、フリーズしたままなのだが、俺たちは作業を開始した。

 以前、ここでやった取り込み作業と同じように、アネモネがセットしてページを捲り、俺がリターンキーを押す。

 2台でどうやったら、効率よくスキャンできるかと試行錯誤していると――メイドさんが突然大声を上げた。


「決めました!」

 突然、メイドさんが大声を上げたので、俺とアネモネで彼女のほうを見る。


「何を決めたんだ?」

「マイレン様が、王族の方々と一緒に僻地へ向かう、決死隊の募集をしていたのですが、それに応募することに決めました」

 決死隊って――ちょっと大げさに聞こえるだろうが、お城の人間にとっては、そのぐらい大変なことだと認識されているようだ。

 王都に住んでいる人たちにとっては、地方は前人未到の未開地扱いだからな。


「それじゃ、本を目当てに未開の僻地へついてくるというのかい?」

「はい!」

「言っておくが、お城のような快適な暮らしじゃないんだぞ?」

「解っています。それに私はもともと貧民の出です。貧乏には慣れていますから」

 たまたま貧民窟で知り合ったマイレンさんにスカウトされ、お城で雇われたようだ。

 両親から読み書きは習っていたらしい。


「マイレンさんに恩があるからついていくとかじゃなくて?」

「その……メイド長に助けていただいたことには感謝していますし、仕事の上でも素晴らしい上司だとは思うのですが……その、あの不潔な……」

 ああ察した。夜な夜な繰り広げられる、王女とメイド長のいけない遊びを見てしまったのだろう。

 確かにあれはドン引きする。

 俺は結構楽しくて、危うく一緒に遊びそうになってしまったけど――男なら仕方ない。

 王女とメガネのメイド長が繰り広げる、いけないお仕置きプレー ――あゝ男のロマン。

 まぁ、それはどうでもいい。


 話を聞いても彼女の決意は固いようなので――スキャンを手伝ってもらうことにした。

 彼女たちが、ページを開いてセットしたら、俺はリターンキーを押す。

 大体2秒に1回見開きを撮影できる。毎分30ページだ。単純計算で1時間1800ページ。

 二人いるので、1時間に3600ページを撮影できる。結構いいペースじゃね?

 勿論、本を取ってきたり、セットする時間も含めなくてはいけない。

 それを入れても2000~2500ページ前後は確実にスキャンできることが解った。


 結局、3人とスキャナ2台で、1日200冊弱の本をスキャンすることに成功した。

 ここにある蔵書は1000冊ちょっとらしいので、1週間なら余裕で間に合う計算だ。

 

 よし、これでなんとかなる。


 1日のスキャンが終わると、皆のところへ戻った。

 ベルが走ってやって来ると、大きな体をぐるぐると俺の脚に擦り付けた。


 皆は、やることがなく暇そうだ。特に獣人たちは、狩りができないので、やることがないらしい。

 せいぜいお城の裏庭にいる鳥を捕まえるぐらいだ。

 彼女たちは、ゲームがあっても複雑なルールを覚えることができないしな。

 暇なのはベルも同様で、日がな一日中、日陰で寝ていて、大きなあくびをしている。


 まったく、こんなことに巻き込んでしまって、アキラたちには悪いことをしてしまった。

 レイランさんに引っ張られていったアキラ曰く――。


「まぁ気にするなって。追手の心配もなく、まったりとした日々を送らせてもらってるぜ。センセなんて、もうちょっと滞在したいって言ってるぐらいだ」

 まぁ、風呂も入り放題だし、王族が受けるようなマッサージや垢すりなんかもしてくれるらしい。

 それプラス、プリムラが持ち込んでいる、シャンプーやリンスもある。

 女性にとっては、至れり尽くせりの空間だろう。


 彼女たちと一緒にいるプリムラは王侯貴族相手に、俺から持っていった商品を売り捌いている。

 売っているのは主に、シャンプーとリンス。他に代替がないので、多少高くても売れるってわけだ。

 安く大量に、庶民に売ったほうが金になると思われるが――毎日毎日、シャングリ・ラからシャンプーやリンスを大量に購入し、出荷する商売は無理。

 まるで俺が、シャンプーを吐き出す、工場の機械みたいじゃないか。

 そうならないよう、あくまでも王侯貴族用として、少量売る算段になっている。


 シャングリ・ラに100%頼った商売では、俺に何かあった時に、あっという間に商売が行き詰まるのが目に見えている。

 それはプリムラも解っているはずだ。


 皆で飯を食って、風呂に入って寝る。

 デカいテントをアイテムBOXから出して、その前での井戸端会議。


「せっかく家が空いているんだから、家で寝たら? お城の自分の寝室で寝てもいいんだぞ?」

「ケンイチと一緒がいいのじゃ!」

 リリスはいいとして、アマランサスは?


「妾は奴隷なので、聖騎士様のお側におるわぇ」

 その前に、「妾」とかいう奴隷がいるのかよ?


「俺が辺境伯になって、正室はリリスってことになるんだろうけど、アマランサスはどうするんだ? それとも、アマランサスが正室になるのか?」

「妾は奴隷ぞ? 奴隷が正室になるはずがあるまい。側室だってありえぬ」

「それを言ったら、リリスだって王族籍を抜いたんだ、彼女も平民だろ?」

「妾は完全に見放されたが、リリスは復帰の道を残している故」

「ふ~ん、まだ円卓会議の駒として使える余地が残っているから、接触してくる可能性があるってことか?」

「そのとおりじゃ」

 させるかよ、そんなこと。


 結局、皆外に寝ているから、家に泊まるやつがいないじゃないか。


「ミャレーとニャメナ、家のベッドで寝ても良いぞ?」

「ええ? 旦那が外で寝てるのに、俺たちが中で寝れないよ」「そうだにゃ」

 気にすることはないと思うんだが……。


「それじゃ、俺たちが中で寝るか……」

「妾は外で寝るわぇ」

 アマランサスは奴隷に徹するため、外で寝ると言うのだが……。


「アマランサスも中で寝よう」

 俺にそう言われれば、奴隷契約しているアマランサスは逆らえない。


 皆で暗い家の中に入ると明かりを点けてベッドの準備をする。ダブルベッドを2つ出せばいい。

 俺たちと一緒に、メイド長のマイレンさんも入ってきた。


「わ~い、広い!」

 ベッドの上でアネモネが跳ねているのだが――。


「広いベッドが良いなら、アネモネが一人で家で寝ればいいのに……」

「ケンイチと一緒じゃなきゃ嫌!」

「妾もじゃ!」

 アネモネとリリスが一緒に抱きついてきた。


「どうだ、アマランサス? 狭いだろ?」

「確かに狭いが――天幕テントで泊まっていると思えば、どうということはない」

「まぁ、在所に帰ったら、大きな屋敷も建てるつもりだから。家は広くなると思うけどな」

「大きな家を建てるの?」

 アネモネの目がキラキラと光っている。


「人数も増えるし、メイドさんも10人ぐらいついてくるそうだから、その人たちの部屋も用意しなくちゃならない」

「ずいぶんと女の人が沢山増えるんだね……」

 女が増えると聞いたアネモネが少々不機嫌だ。


「勿論、書庫も作るぞ。沢山本を集めよう」

「わーい!」

「でも、元王族にふさわしいような、豪華絢爛な屋敷は無理だぞ?」

 一応、リリスにも確認をとる。アマランサスは、なにもしゃべらない。


「解っておる!」

 ベッドで寝るので、寝間着に着替えさせる。


「はいはい、皆は寝間着に着替えてね」

「は~い」「わかったわぇ」

 三人の寝間着を出すと、皆が俺の目の前で裸になった。

 リリスの美しく波打つ金髪と白い肌、ちょっと膨らんでいる可愛い乳房。

 リリスの着付けをマイレンさんが手伝っているが、アマランサスは自ら裸体を晒し一人で着替えている。

 彼女が、なにを考えているのか、さっぱりと解らない。


「あ~あ、ついにリリスの裸も見てしまったか……もう、後戻りできないなぁ」

「当然じゃ! 妾の夫になる者に肌を晒しても問題はないじゃろう?」

「それはそうだけどさぁ……」

「そなた、まさか――ここまできて逃げるつもりではないじゃろうな?」

「何回も言われるけど、そんなつもりはないよ」

 裸のリリスを抱き寄せると、アネモネも抱きついてきた。

 

「私もぉ~!」

「もう大人になったんだから、抱きつくのを止めなさい」

「や! ケンイチに抱きつくと、お腹の中から嬉しいのや楽しいのが、一杯来るんだもん」

 彼女の説明を聞いても、よく解らん。

 

 リリスの着替えを手伝っているマイレンさんにも、俺たちと同行することについて聞く。


「マイレンさん。10人ほどで決死隊を組んで、僻地へ同行するつもりらしいけど?」

「地の果てまで姫様にお仕えするつもりなので、当然です」

「アマランサスにはお仕えしないんだ?」

「あ、あの……それは……しますけど……」

 それを聞いたアマランサスが拗ねている。

 

「どうせ、妾は嫌われ者じゃ!」


「アマランサス――ほら、おいで」

 俺が両手を開くと、彼女が俺の胸に飛び込んできた。


「よしよし……アマランサスが、国と民のために進んで嫌われ役をやっていたことを俺は解ってるから」

「聖騎士様ぁ……」

「よしよし」

 ベッドの縁に腰掛け、俺の胸に顔を埋めるアマランサスの金髪をナデナデしていると、外からガリガリ扉を擦る音が聞こえる。


「ベルだな。マイレンさん、扉を開けてやってくれ」

「はい――あの、我々のご主人様にもなられるので、マイレンで結構ですから」

「解った。マイレン、扉を開けてやってくれ」

「承知いたしました」

 扉が少し開くと、黒光りした毛皮がするり――一直線に俺の所にやって来るとベッドの上にジャンプ。

 腰掛けている俺の背中に、スリスリと身体を擦り付けた。


「私も~!」

「妾もじゃ!」

「はいはい……それじゃ寝るとするか」

「その前に! ケンイチ、そなた――妾にいつ手をだすのじゃ?」

「え、え~と、そのうち……」

「そなた! やる気があるのかぇ?」

「まぁ、あるよ。だから、そのうちな」

 リリスの頭をナデナデしながら、寝転がると――俺の腹の上に、ベルが載ってきた。


「お母さん、重いんだけど……」

「にゃー」

 俺の言葉を無視するように、彼女が喉を鳴らしている。


「気のせいか――森猫より妾の優先順位が低いような気がするのじゃが……」

 リリスの愚痴は放置。


「わーい!」

 アネモネが、俺に載ってるベルの背中に載った。


「ぐえぇ、ちょっと重いから」

 用が終わったのか、マイレンが出ていこうとするので、呼び止めた。


「マイレンはどうするんだ?」

「外に控えております」

「ええ? ここはお城の中だからいいけど、荒野で野宿する時はどうする?」

「もちろん、同様に……」

 彼女はそう言ってるが、そうもいくまい。何か考えないとな。


「俺たちと一緒に寝てもいいんだぞ?」

「そうはまいりません……」

 王女との、いけないお仕置き遊びも見てしまったし、いまさら恥ずかしがることもないと思うんだが……そうじゃないのか?


 とりあえず母屋の隣に設置した小屋に、ベッドを出してメイドの控室にした。

 双方に、シャングリ・ラで買った乾電池式のワイヤレスインターホンを設置。

 マイレンにも使い方を教えて、これを使ってもらう。

 インターホンはボタンが1個ついている白い板で、上にマイク兼スピーカーがついている――親子機セットで8000円だ。


「リリス、メイドに用がある時は、このボタンを押して話しかけるんだ」

「これじゃな! マイレン! 聞こえるかぇ?」

『はい、聞こえます。姫様』

「これは便利な魔道具じゃの! そなたが、妾たちを乗せた召喚獣で使っていたものと似たようなものか?」

「これはずっと単純で、隣の部屋との間でしか使えないけどな」

「う~む……」

 リリスが、腕を組んでなにかを考えている。

 もしかして、なにか良からぬことかもしれないので、聞かないでおく。


 ダブルベッドで3人と1匹で寝る。アマランサスは一人でダブルベッドだ。

 別に無理して、一人で寝ることもないと思うのだが、どうしても奴隷契約を外さない。

 そのうち飽きるかもしれないので、そのままにすることにした。


 ------◇◇◇------


 ――次の日。

 朝早く、プリムラが戻ってきた。

 話を聞けば、アキラの家族の乱交がものすごくて、寝ていられなかったようだ。


「そんなに凄いのか?」

「……はい」

 プリムラの顔が真っ赤だ。どんなプレイなんだよ。逆に気になるじゃないか。

 彼女が恥ずかしそうに話すには、「くっころ、くっころ、死ぬ死ぬ」と大騒ぎ。

 プリムラだけではなく、お城のメイドさんも顔が真っ赤だったらしい。


 その騒音もさることながら――そろそろ豪華な食事や、おもてなしにも飽きてきたと言う。


「……それに……」

 彼女が横を向く――家族に女が増えることに対し、機嫌が悪いのか。

 商売でそれを忘れていたのかと思ったのだが、そうでもないようだ。

 彼女を抱き寄せて、耳元でささやく。


「じゃぁ、今日はプリムラの日だな?」

「……はい」

「プリムラが気になっているようなら――アキラの家族みたいに、皆でする?」

「い、いえ! あんなの絶対に無理ですから!」

 プリムラの顔が耳まで真っ赤だ。


 その話は置き――彼女が戻ってきたので、いつものようにスープを仕込んでもらう。

 パンもアネモネの焼き立てのパンだ。やはりこれが我が家の味――ということになるのだろう。

 皆で食事を摂っていると、アキラも戻ってきた。


「お~っす! ケンイチ悪い、朝飯恵んでくれぃ」

「いいけど、アキラの家族はどうした? あまりの乱痴気乱交っぷりに、プリムラから苦情が入っているんだが……」

「あ~ワリィワリィ、ははは。久々だったから、センセ溜まってたようでさぁ。離してくんねぇの。いやぁ参った参った、隣の神社」

「ずっとやってたのか?」

「ふぁぁ~もう、ほぼ丸一日だな。ほとんど寝てねぇ。ヨッコイショウイチっと~!」

 椅子に座ると、大きなアクビをしたアキラだが――最終的には、彼の能力を使いノックダウンさせたらしい。


「あれなら半日は動けねぇ」

「それでも半日かよ」

「センセは自分で回復ヒールも使えるからな」

祝福回復(ヒール)VS魔法回復(ヒール)。まさに永久運動装置……」

 いくら回復ヒールが使えるとはいえ、腹は減るからいずれエネルギー切れになるのだが。


 朝飯の後、再びお城の書庫で本のスキャンを開始。

 協力一致の作業の下――5日で、すべての入力を終了した。


 リリスとアマランサスの引っ越し準備作業も進んでおり、すでに各々パレット5枚分の荷物を、俺のアイテムBOXに収納した。

 最後に、彼女たちの財産を収納することになっているが、所有している土地や建物などは短期間では処分不可能なので、名義はそのままになっている。

 王族籍がなくなった彼女たちの財産が本当に保証されるのかは不明だ。

 まぁ、本当に平民や奴隷になって下野するならともかく、一応辺境伯である俺の庇護の下に入るわけだから、お城の王族たちもあまり無茶もするまい。

 国難などに協力が得られない可能性が出てくるからな。


 スキャンしたデータを裏庭で整理していると、お城の料理人サンバクさんが現れた。

 


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