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Wing2  作者: Fill
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変貌を夢見る青年

Wingの続編となっていますが、Wing2から初めて読む人にも分かりやすく書いたつもりです。

ですから、気軽に読んでいけたら光栄です。

  Wing2 変貌を夢見る青年



 「伝助、また薬草を探しに行くのか?」

女の人が赤ちゃんを抱きながら言った。

 「ああ、行って来る。2、3時間で戻る。」

王が帰還してから4年の月日が過ぎた。俺は、もう22歳になった。こっちの世界の獣人族でも小人族でもない俺と同じ普通の女と結婚して、今では赤ん坊もいる。いや、ちょっと普通じゃないかもしれないけど。

王は鳥人族以外の種族を皆滅ぼし始め、俺たちは地下に逃げ込んだ。驚くことに、地下は広く、水もあり、人間が住むには適していた。といっても、地下水の量はほんのわずかだ。

 しかし、やはり、太陽の光が恋しい。そのせいか、植物の育ちも悪い。病に犯される人も増えている。だから地上に行き、薬草や食料を調達してこなければならない。

 地上で鳥人族に見つかれば、即地下の入り口を見つけられて、皆殺しにされる。前に3回そんなことがあった。俺たち家族は裏側から逃げたから無事だったが・・・。

 キョロキョロッ

 「どうやら近くに鳥人族はいないようだ。」

 伝助は砂の色に着色したマンホールのような扉を軽く持ち上げて地上の様子を見た。

 元々ここはスマラの村があった。そして森と滝があった。けれど、今じゃ水が枯れ、森も鳥人族が伐採したせいでもはや砂漠になりかけ。地面も乾ききってあちらこちらにひびが入っている。あるのは岩と少々の雑草だけ。その中からわずかな食料と薬草を探していく。日が照り、サウナに入るより暑い。しかし、水も豊富ではない俺たちは、のどが干からびようと、水を飲むことは許されない。

 ザッザッザッ

 岩々が並ぶ中、伝助はただ一人、歩いていく。風が吹く度に砂が舞い、視界がぼやける。強い風が吹けば、砂は全身を叩きつける。とても痛い。まるで雹が降っているようだ。

 「 !! 」

 砂あらしの隙間から、人影が見えた。鳥人族だろうか・・・。しかし、倒れている。鳥人族だろうと、助けてあげなければ・・・。

 伝助は人影の方へ駆け寄った。

 「大丈夫か?!」

 「・・・・・。」

 返答がない。脈はある。息もわずかだが吸ったり吐いたりしている。

 外見は一見普通の人間だった。しかも、18歳くらいのただの青年だ。鳥人族じゃなくてよかった。

 「待ってろよ!すぐ治療してやるから!!」

 伝助は、青年を背負い、来た道を帰っていった。



 「・・・・ん・・・・?」

 青年が恐る恐る目を開けると白い壁で覆われた部屋のベッドに寝ていた。

 「目が覚めたか?」

 伝助が部屋に入ってきた。

 「あ・・・えっと・・・ここは?」

 「教会だよ。ここは病院も兼ねてて怪我人や病人を寝かせる部屋が何個もあるんだ。」

 改めて青年を見ると、金色の髪、蒼く透き通った瞳、とても丈夫そうな服装というか鎧姿だった。

 「あの・・・僕の腰に提げていた剣は・・・?」

 青年は部屋の隅々まで見渡した。

 「ああ、あの剣なら先端が少し曲がってたから鍛冶屋に直してもらってる。俺の嫁が頼めばすぐ直してくれるからな。」

 青年は安心したのか、ほっと胸を撫で下ろした。

 「そういえば、名前もまだだったな。俺は伝助。薬草売りをしてる。」

 「・・・・・僕の名前は・・・・・ライト・・・・ライトって呼んでください。ところで、伝助さん・・・。」

 「さん付けしなくても、伝助でいいよ。」

 「気を悪くしたらすいませんが・・・・・その右腕、どうしたんですか?」

 伝助の身体を見ると、右腕が不自然というより、右腕が無いといった方がいいだろう。

 「はっはっはっはっ・・・・とても馬鹿げた話だが、切られちまった。」

 伝助は無理に笑っているようだった。

 「何で切られたんですか?」

 ライトは質問を続けた。

 「・・・・・・・王と話し合おうとしたんだ。俺は地球界の人間だから特別に会うことができた。といっても、手錠をつけられ、足には鎖を巻かれ・・・



 「レイズ王!何故、魔族を滅ぼし、鳥人族以外の種族まで、滅ぼそうとするんだ?!」

 俺は跪かされたまま叫んだ。

 「・・・・・そうだな。鳥人族も滅ぼしてもいいかもしれない・・・。」

 「 !! 」

 「私の邪魔になるものは全て消してしまうだけ。他に理由はない・・・いや、もう一つ理由があるかな。私には、もうこんな世界に価値はないと思うから・・・。」

 「・・・月華の言う通りだった・・・話し合っても意味がない!!」

 唇を噛み締めて王に言ってやった。

 「・・・・口の減らない餓鬼だ。斧をここへ。実験体にするものだが・・・腕と脚は一個で充分だろう・・・?」

 王は白衣を着た人の方を見た。

 「は、はひ!はい!お、おお、王様!!腕と脚は一個づずずずつで充分です!!!」

 白衣の人はまるで脅されているみたいに片言な喋りだった。

 「そうか。ならば・・・」

 ザンッ

 「ああああぁぁぁあああぁぁぁぁぁ!!!!」

 王は颯爽と斧を手に取ると、刃先を振りかざし、一瞬で俺の右腕を切った。言葉にはならない程の激痛が全身を走った。

 「私の手を汚してまで処刑しているのだから、光栄だと思いなさい。」

 そういい、王はまた斧を振りかざした。

 バキンッ!!

 運がいいことに、王は俺の脚ではなく、足に巻かれた鎖に斧の刃先をぶつけた。

 ダッ

 僕は命からがら部屋から抜け出した。

 「チッ・・・逃げたか。追って、捕まえろ。見失ったら、右腕から流れた血の跡を追えばよい。」

 王は頬に手をつき、暇そうに遠くを見た。



 俺は逃げていたが、城の構図も、出口さえ分からず、ただ逃げ回っていた。

 「出口はこちらです!!」

 声がした。誰の声かは分からなかったけど、それを信じるしかなかった。

 声のした方へ行くと、使い古しの暖炉があった。使っていないせいか、蜘蛛の巣があちこちに張り巡らされていた。

 「こちらへ早く!!」

 下のほうから声がする。暖炉の真下を見ると、重そうな鉄でできた蓋があった。

 ガラガラガラ・・・

 蓋を除けると、女の子が居た。

 「早くこの中に入ってください!あ!!その前に傷口にこれを当ててください!」

 女の子は俺にガーゼのハンカチをくれた。そして、女の子は素早く床に零れた血を裾で拭き取った。

 「さあ、こちらへ。」

 暖炉の下の蓋を閉じ、女の子についていくと、地下の村らしきところに着いた。

 


 女の子に訊くと、俺が捕まってセシディアの城に行っている間に鳥人族が住む以外の町、村全て焼き払われたらしい。それでみんな地下に逃げてきたらしい。

 しかし、数ヶ月して、その地下も鳥人族に見つかり、爆弾を放り込まれた。他の地下に行っても同じ事の繰り返し。そして、いつの間にかセシディアの地下に居たはずなのに、スマラまで追い込まれちまった・・・・ひどい話だろ?ははは・・・」

 伝助は、ライトにまた無理して笑ってみせた。

 「・・・あの、地上に連れて行ってくれませんか?」

 ライトはいきなりそう言うと、布団を跳ね除けた。

 「え・・・・?」

 「身体はもう大丈夫ですから。お願いです、地上へ行かせてください。」

 ライトは必死に伝助の裾にしがみつき、お願いした。

 「・・・・・。」

 伝助はぽかんとした表情だったか、クスッと優しい笑みを浮かべた。

 「分かった。だけど病人を連れ出したと知れたら俺がシスターに怒られちまう。だから裏の出口から地上に出るぞ。それでもいいな?」

 「はい。それでいいです。」

 伝助についていき、ライトは教会を後にした。



 「・・・・・ここ・・・・は・・・・?」

 暗い闇を潜り抜けると、紅い光が差し込んだ。地上は夕方なのだ。

 そして、辺りを見渡すと、十字型に組み合わされた枝やパイプがあちこちに地面に刺さっていた。地面には掘られた跡の膨らみがいくつかある。

 「お墓さ、ここにいた人たちの・・・。」

 伝助の髪が風でなびいた。ライトは、お墓の一つ一つを見た。そして一つのお墓が目に留まった。跪き、そのお墓をよく見た。

 ≪ Setu ≫

 干からびたこけを纏った十字型の木の枝にはそう書かれていた。

 「俺と一緒に旅をしてたよ、そいつ。とてもいいやつだたった・・・いや、この墓場で眠ってるやつ全員いいやつだった・・・・それなのに・・・。」

 伝助の瞳は儚く遠くを見つめていた。

 「あの、これで全部ですか・・・?」

 ライトは目の前に果てしなく広がる墓場を見て言った。

 「見つかった遺体だけだよ・・・ここにあるのは・・・。あと二人、見つからないんだ。まだ生きているのか、それとも遺体もろとも粉々に砕けたのか・・・。」

 「・・・・・・僕が・・・ここへ来たのはこの世界を変えるためです・・・・だから・・・」

 ライトは曲げていた膝を伸ばし立ち上がった。一旦夕日を見て、その次に伝助の振り向き、顔を見た。

  

 「僕はこの世界を変えてみせる・・・!!」

 


  To be continued


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