じゃんけん
告白。自分の気持ちを相手に伝え、された相手はそれに返事を返す。それはまるで後出しじゃんけんのようなものだ。
かく言う高校生の俺の通算は5戦0勝。どれも自分から仕掛けたじゃんけんだった。
俺はどうしてもこのじゃんけんに勝ちたい。そして、そんなチャンスは突然訪れた。
今朝靴箱に入っていたこの手紙には「放課後、屋上に来て」と書かれていたのだ。そして、その差出人は俺がよく知っている幼馴染の女の子だった。
小学生の頃からの付き合いである彼女とは何かと一緒に過ごし、俺が失恋した時は優しく励ましてくれた。
そんな彼女からの呼び出しに最初は疑問を抱いていたが、誰もいない屋上に一人で待っていた彼女が頬を朱色に染め、もじもじとしながら時折こちらに視線を向ける。
その姿に俺が立っている現状をすぐに理解するのは何ら不自然ではない。
しばらくしていると彼女はしわが出来るほど力強く目を瞑り、勇気を振り絞って大声を上げる。
「私と付き合ってください!」
夕日をバックに言い放つ彼女の姿はどこか神秘的で一瞬見惚れてしまうほど綺麗だった。
だけど、これはチャンスだ。初めて俺が後出しの側に回った。
彼女に近づくが、未だに目をぎゅっと瞑ったまま動かない。
ふと、彼女の胸の前で握られている両手が目に飛び込んだ。微かに震え、ほのかに赤くなっている。冬が間近に迫った事を告げるようにいつもより冷たいこの秋風が原因なのだろう。
不思議と俺は彼女の手を温めたくなった。
右手を差し出すと、薄目で見ていたのか、瞼を上げて俺と手を交互に見ると彼女は恐る恐る右手を差し出した。そして、開かれた彼女の手をぎゅっと握る。
驚くほど冷たい彼女の手を握りながら俺は自分の行動を滑稽に思った。勝ちたいと思っているはずなのに右手の形は彼女の〝パー〟と開かれた手を〝グー〟のように握っていた。
そして、自然と口は開いていく。
「お願いします」
大粒の涙をこぼす彼女の冷え切った体を抱きしめ、優しく温める。
結局俺は勝つ事が出来なかった。でも、それでいい。彼女の冷えた手をこうして温められるのなら彼女とのじゃんけんは負けっぱなしでいいと思った。
前に「学校」を題材に1ページ以内で書いた小説が残っていたので投稿しました。
今見直すと中々クサい事を書いているようで少し恥ずかしいです。




