生業
城下町の中心部より少し離れたところで
風呂敷を広げた十兵衛は、按摩道具などの入ってある
小さい木箱に腰掛け、木彫りの工芸品を並べてゆく。
すると、1人の老人が寄ってくる。
「これはこれは十兵衛さんじゃねぇかぁ、
久しぶりだのぉ。」
「久しぶりって、つい2、3日前にも会ったじゃない
ですかー。」
「そうだったかのぉ、ほっほっほ!どれ、おー…
またまた丁寧なお手前で…、この木彫りの魚なんて
いまにも風呂敷の上を跳ね回りそうじゃのぉ。」
「どうってことねぇよぉ爺さん。
十詰須戸湖で釣れる 魚を毎日見て、食って、
そんで作ってるんだから、さ。」
「いやはや…、
十兵衛さんの工芸品は繊細だってんで、
知り合いにも好評なんじゃよー。」
「いつもお知り合いの分まで買って頂いて
ありがとうございます。」
「なんのなんのー。年寄りの楽しみじゃよー。」
工芸品を買っていった老人と入れ替わるように、
今度は粋な町民が尋ねてくる。
「お?十兵衛じゃねぇかぁ!
今夜も一杯吞みに行こうぜ?」
「オッスオース ごんぞうさん、後で
いつもの吞み屋で会いましょう。」
「おうよ!待ってるからなー!」
五つばかり作った工芸品も全て売れた。
「売れスギィ!ウレシイウレシイ……」
十兵衛は按摩道具の入った木箱を風呂敷に
包むと、小路に入ったところにある、
古民家を訪れる。
ガチャン、ゴン…
「婆さーん?来たよー?」
すると奥から老婆が現れる
「おやおや、十兵衛さんや、よく来たね。
じゃあいつもの按摩、頼みますよ~。」
「わかってますよー。寝て、どうぞ。」
「あいあい……」
元は須戸家の武将であった十兵衛は、
当然ながら武芸を嗜んでいた。
人体や気功に関しては多少なりとも心得が
あったのである。
「腰の血の巡りを良くしないと内臓が弱っちゃう
やばいやばい…。」
「ほぉ~気持ちええのぉ~。いつもごめんなさいね
小銭しか払えんで。」
「いいのいいの、婆さんの調子が良くなって
くれればそれで。」
「すまないねぇ……また今度もお願いしますよ。」
「オッスオース じゃあまた来るからねー!」
按摩の仕事を終えた十兵衛は、ごんぞうとの
待ち合わせ場所、いつもの吞み屋へ向かう。
時はすでに夕刻であった。
「遅れちゃう、やばいやばい…」
次から書き方変えよっかなー、俺もなー