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十詰
そうしている間に、十兵衛は城下町に着いた。
元は須戸家の治めていた十詰城のある城下町である。
今は役座家当主、役座宗統が治め、
役座家の元の領地の城はその息子に委任されている。
実にこのあたりのものは覚えやすい、
地名が十詰であるので、城も十詰城、城下町も十詰町
十詰和紙や十詰焼など、ほぼすべてに十詰という語が付く、
十詰の詰とは詰所のことである。
かつて十詰の城下にはいたるところに十の詰所があった、
詰所には家臣や兵たちが駐留しており、如何なる有事にも
対応できるようにされていた、しかし、須戸家が役座家に
攻め入られた際は、須戸家に裏切り者がいたため
敢えなく内部より瓦解してしまったのだ。
それはさておき、十兵衛は町の中心より少し離れた
微妙なところに蓆を広げ、風呂敷を開いた、
町民に扮しているとはいえ、十兵衛は元は須戸家の家臣である
いつ如何なる謂われで捕らわれ、刑に処されるか
わかったもんではないのだ。
「気をつけないとね やばいやばい…」