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はじめに

 はじめまして、こんにちは。僕の名前はアルティエ・ファミルソン。


 ファミルソン伯爵家当主マルセルの孫息子である。彼女なし婚約者無し、貴族的なお仕事も無し地位も無し、将来の出世の予定まったく無しの無い無い尽くしの21歳だ。

 まぁ、一応これには不幸な原因があるので仕方ないことなんだけど。なんて、僕自身も納得済みのことだからいいんだけどね。


 あ、ちなみに特筆すべきことは、僕は魔法が全く使えないということ。使えないというか、僕という存在自体に対して魔法という現象がまったく作用しない、というのが正確なところかな。

 それというのも、僕が幼少時……確か、5歳かそこらくらいだったと思う。幼児の頃、とある魔法実験を施されたためだ。


 その結果、魂だか脳みそだか心臓だかはわからないが、とりあえず僕という存在はちょっと普通の人間とは逸脱したものと化したらしい。実は僕自身そのへんよくわかっていないんだけど。

 別に翼とか獣耳が生えたとか、肌が岩みたいに変質したとかじゃない。残念ながら、腕力が劇的アップしたわけでも、なんでも見通せる千里眼をゲットしたわけでもない。見た目はそこらの普通の人間だし、基本的な能力もごく一般レベルだ。


 では何が変わったかといえば。まぁ、なんていうか、中身がちょっと変わったっていうか。

 なにやら、『異界の囁き』だか『知られざる知』だかなんだかに、僕は憑りつかれたのだそうだ。おじい様が連れてきた魔法使いがそう言っていた。

 ちなみに僕はそれを聞いた時、「それなんて廚二病なネーミングセンス」と思わず呟いた。そしたらその魔法使いに、「それこそが異界の囁き声に憑りつかれた証!」と絶叫された。どうやら『廚二病』というフレーズがアウトだったらしい。

 ……確かに、落ち着いて考えれば、僕はなぜそんな言葉やそれに該当する概念を知っていたのだろう。ただ、閃いちゃったのも理解できちゃったのも仕方ないじゃないか。無意識のうちのことだもん。

 と、まぁそういう、僕が知らないはず……というか、この国の人間には理解できないような知識が僕の中には普通に同居しているのだ。

 そしてその影響だか過程だかで、僕はまったく魔法を受け付けずまた行使できない体質になったというわけだ。


 ちなみに、その問題の魔法実験を僕に施したのは僕の実の父親アルス・ファミルソンである。なぜか「息子になんだか素敵な贈り物をしちゃうゾ」なんていう軽いノリで、よくわからん実験をしてくれちゃったらしい。一応この人なりの愛はあったようなのだが、普通に思いっきり迷惑なギフトである。っていうかもはやそれは嫌がらせでしかないよ父上ェ……。

 そんな父上は、現在行方不明中である。はた迷惑なはっちゃけ実験をやらかした後、事実を知り激怒したおじい様に追放されたらしい。そしてそのまま、おじい様は当時なにもわかっていない幼児だった僕を保護してくださったのだそうだ。


 ただ、どうにもわけのわからん言葉や知識を垂れ流す幼児をそこらに放置しておくのもな……となったのだそうだ。それで僕は、おじい様の領地の端っこの館で、若干俗世から隔絶された生活を送ることとなった。

 僕が謎知識を世間に垂れ流した結果、おかしなこと(例:知識悪用のための誘拐等)が起こりかねないと危惧したのだとか。あと、僕が魔法の治癒も加護も受け付けない体質になってしまったため、幼い孫息子を脅威から守るためという理由もあったそうだ。


 ちなみに、父はもともと放蕩気味の変わり者と名高いお気楽な三男坊だったそうなので、ファミルソン伯爵家的には別に父上追放によるダメージはない。二人の伯父上は両名とも優秀で、それぞれおじい様の後継者として仕事をこなしていらっしゃったり、王城に仕えていらっしゃるそうだ。

 お二人の伯父上の子ども達、つまり僕の従兄弟達もみんなそれなりにしっかりやっているそうなので、僕は引きこもりを全力推奨されサポートを受けている状況である。おかげさまで、僕は生活するうえでまったく不自由していない。


 そして、冒頭の僕の現状につながるわけだ。

 まぁ、とくに現状に不満は無いけどね。何せ僕、例の実験のせいかもともとかはわからないけど、思考に耽るの大好きな引きこもりウェルカム! な性質なもんだから。


 あぁ、前置きがものすごく長くなっちゃった。ごめんね。

 でもまぁ、この前置きがないとこれから先が意味不明になっちゃうと思うんだよね。だから、勘弁してもらえると嬉しいな。

 とりあえず。ここまでで、僕がみんなに把握しておいてほしいことは二つ。

 一つ、僕には『異界の囁き』だか『知られざる知』だかよくわからない、知るはずのない知識や認識があるということ。

 一つ、僕には魔法は効かない、使えないということ。

 この二つだね。


 え、たかだか三、四行で終わるようなことを長々語るな? そんなこと言わないでよ。

 ほら、「人生から無駄が省いたら何が残るんだ。人生は結局は死に向かっているというのに!」ってどっかの誰かが言ってたし。多少の無駄っぽさは大目に見てね。


 ともかく。

 ここから先は、そんな僕と。

 僕に預けられた男の子とのやり取りを書き記していこうと思う。


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