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プロローグ

「なあ、末田まつだ。お前、暗号とか興味ないか?」


 大学の学友、槻英介けやきえいすけが放課後のサークルで唐突にこう切り出した。


「暗号? いきなりなんだよ」


「いやさ、お前よく推理小説読んでるし、興味があるんじゃないかと思ってさ」


 確かに、好きなジャンルの本だし、暇さえあれば読んでいる。最近は先が気になる本と出会うと、講義中でも構わず読み耽ってしまうので、単位が危ぶまれている。しかしそうは言っても、人よりちょっとたくさん読んでいる程度。古今東西の推理小説を知っているというわけではない。

 まあ、ミステリマニアとは言えないまでも、ミステリファンとは言えるだろう。

 もちろん、暗号への興味も少なからずある。

 しかし、彼の意図するところがわからず、俺は困惑していた。


「まあ……そりゃ、ないことはないけど」


「詳しかったりするか?」


 そう訊かれると、返事に困る。暗号と言ってもいろいろな種類があるのだ。推理小説に出てくるような、人にも解ける単純な暗号は勿論、戦中に使われ、現在でも様々なところで主流に使用されている鍵暗号。それに、特定の人間にしかわからないような隠語の類。それらも更に色々な種類に分類される。

 俺は別に、そのどれもに精通しているわけでもない。だから曖昧に返事をした。


「さあ、そこまでは」


「じゃあ、これから予定あるか?」


 また話が飛んだ。

 よくわからないが、とにかく彼の質問に答えるべく、スマホのスケジュール帳で確かめてみる。今日は週末だし、バイトもたまたまシフトから外れていた。月曜までは完全に自由だった。


「いや、ないけど」


「じゃあ決まりだ。今から一緒に来てもらいたいところがある」


「は?」


 突然の有無を言わさぬ申し出に、俺は思わず面食らった。鳩に豆鉄砲を食らうという顔は、まさしく今の俺の表情にピッタリだっただろう。


「ほら、早く行くぞ」


「……行くって、どこに?」


「俺の実家さ」


「はあ?」


 益々、意味がわからない。

 呆気にとられている俺の腕を掴んで、大学から出て駅へと向かう英介。

 俺は状況が飲み込めぬまま、英介に連れられ、気がついたら上越新幹線の車内で駅弁を食べていたのである。

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