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宝の地図  作者: xxx
3/12

寅 宝の地図

 作業をして蔵から出てきた時には日差しが幾分かましになっており、私もおじいちゃんも埃まみれになっていた。そのまんま家に入ろうとしたら先に家に帰ってきてたお母さんにこっぴどく叱られた。おじいちゃんは私をかばってくれたけど、結局はおじいちゃんも私の横に並んでお母さんに叱られた。

 私は金庫から発掘してきた「お宝」を大事に机の上に置き、お母さんに言われるままにまずはシャワーを浴びた。横でお母さんがブツブツ言いながら私の制服を洗濯してる声がお風呂の中から聞こえた。

「もぉ、麻衣子ったらどうしていつも元気余ってるのかしら……」

お母さんのブツブツは私に聞こえるように言う「何でお母さんは聞こえるように独り言を言うのかしら」って言おうとしたけど今日は止めた。そんなことより早くあの紙切れが何なのかを見たかった。


 私はお風呂から上がり服を着替えると、真っ先に部屋に駆け込み、長い眠りから解き放たれた一枚の紙切れを眺めた。蔵の中では気付かなかったけど、紙は古い匂いがして、紙質は分厚くて固い正方形でところどころ黄ばんでいる。

 紙にはおそらく墨をつけた筆で図が書かれている。少し雑な感じもするけどそれが地図であるのは私にもわかった。


  紙の上の方には二つの山

  中央には縦に川が流れ、

  横には海岸線沿いに道があり

  下の方は多分海だと思う

 

  右の山には木が一本だけあり

  そのすぐ下途中まである線は線路かな? 

  左の山の中腹まで道があり

  行き止まりには×の印がついている


 紙の裏には縦書きの文章で、

  文丗日ノ日沒 川ノホトリノA 


と書いてあった。達筆なのかそうでないのか、私には読めず、意味もわからなかった。私にとってはこれはもはや暗号で、いつ頃、どこを、何のために書かれたものかは私には全くわからなかった。

「これって、もしや……?」

 開かずの蔵の開かずの金庫から出てきたこの一枚、これは宝の地図に違いない。私はそう思うと、心臓がドキドキしてきた。


***


 それから私たちは四人で一緒にご飯を食べた後、お父さんたちが野球中継を見てゆっくりしているところに例の地図を持って、テレビの前に割り込んだ。

「みんな、注目」

「なんだなんだ。ちょっと邪魔しないでくれよ」

お父さんは私をややこしそうな顔で見ている。そんなことお構いなしにこの家にいる人みんなの記憶という知恵を借りたかった。

「これ見てよ、これ」私はソファの前にあるテーブルに地図を置いた。おじいちゃんだけはすぐに注目してくれた。お父さんと、台所で後片付けをしていたお母さんも最初は「また麻衣子の大袈裟な話だ」と言ってたけど、最後は私の熱意がをわかってくれた。

「これがお婆さんの金庫に入っとったものか?」

「お婆さんの金庫?」おじいちゃんがそう言うと、私は頷きながら質問を返した。

「ワシのお婆さんの金庫なんじゃ、アレは」

 おじいちゃんのお婆さんということは私はそのお婆さんの玄孫ってことだ。「やしゃご」という言葉は聞いたことがあるけど、その逆は何て呼ぶのか知らない、私が生まれる前から亡くなっている人はすべて「ご先祖様」だ。仏間の上にある写真のうちの一人がその人だろう、多分。知った人は二年前にここに並ぶことになってしまった私のおばあちゃんだけだ。

「みんな、これって何の地図かわかる?」

「さぁ、果たしてこれはどの辺なんじゃろか」

 地図を見てみんな静まり返った。誰も心当たりがないらしい。興味津々に思っているのは私だけで、みんなあまり真剣に聞いてくれない。

「これはね、宝の地図だよ絶対!みんな真剣に考えてよ」

 私が痺れを切らして沈黙を破ると、さらに静まり返った。テレビの野球中継から歓声が聞こえたと同時に部屋にいる大人三人が大きな声を出して笑い出した。

「麻衣子は真剣にこれが宝の地図だと思ってるのか?」

「代々農家のウチに宝なんてないわよ」

「ワシもそんな話は聞いたことないなぁ……」

 私は半分涙目になった。じゃあ何のためにご先祖様が大事にこの紙切れを金庫に入れて守ってきたのよと聞きたかったが誰も聞く耳を持っていなかった。私は悔しくなって、何も喋らずに地図を片手に自分の部屋に戻った。それから私は開けていた窓を閉めてカーテンを掛けてクーラーのスイッチを入れ、ベッドにダイブした。窓の外にある大きな蔵は見えなくなった。

「あれは何なんだろう……」 私は寝るまでその地図のことが頭から離れなかったけど、この謎を解く手がかりは一つも思い浮かばなかった――。

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