星の魔法
「ねえ知ってる?」
「何を?」
「満月の日にね、二人っきりでお月様を見るとお願い事が叶うんだって」
「なんでも叶うの?」
「そう。なんでも叶うんだよ。」
「そっかー。なんでもかー」
「・・・ねえ。試してみない?」
「なにを?」
僕は意地悪く微笑んで、
「月の魔法をさ」
~10年後~
「じゃあ今夜あのベンチに集合な」
「分かった。じゃあね」
今日は10年に一度の満月の日。
本来なら今日は魔物が出現するので外出は禁止されている。
だが、俺たちは10年前の約束を果たしに月を見に行く事にした。
そして、俺はそこで告白しようと思っている。
10年前のあの日からの思いを今日伝えるつもりだ。
それと、あとで聞いた話だが満月の日は星の呪いというのもあるらしい。
片想いの相手に自分を忘れさせない呪いなんだとか。
まあ、俺たちには関係のない話だ。
夜。
俺は少し早めに家を出た。
魔物が一番活性化するのが深夜を過ぎてからなので、その前に終わらせてしまいたい。
「寒いなぁ。」
気温は夜にしては寒いほうだった。
(待たせないように早くいこう)
少し駆け足でベンチまで急ぐ。
幸い、まだ魔物には会わなかった。
ベンチにはまだ誰も来ていなかった。
(まだ来ていないのか)
先にベンチに腰かける。
ふと空を見上げると、太陽の倍はありそうな月があった。
(綺麗だな)
月を見ながらこのあとのことについて考えた。
(告白したら二人で月を見ながら一つになるんだ。)
ちょうど足音が聞こえてきた。
ベンチに腰かける気配。
やあ、きたかい。
そう声をかけようと思っていたが二人とも静かに月を見ていた。
(この時間が永遠に続けばいいのに)
柄にもなくそんなことを考えていた。
だんだん意識がぼんやりとしてきた。
何かとひとつになっていく感じ。
存在ごと消えていくような・・・
(ま、いっか)
そう思って目を閉じる。
翌日、川の下流で魔物と少女の残骸が見つかった。
少女の体からは、星の呪いを使用した後が見つかったという。