65:長沢志穂の何でも相談室その後
「はぁ・・・はぁ・・・。」
様々な洋服を無理やり着せられた蒼芭は、疲れ果てたのか両膝を折り、両手を床に付いていた。
「まぁ~だまだあるわよぉ~?」
「も、もう堪忍して下さい・・・・!」
「ふっふっふ・・・・逃げても無駄よぉ~。」
長沢は邪笑を見せ、両手をワサワサを動かしながら逃げる彼女を追い詰める。
既に何着かは良さそうな物もあったのだが、長沢はまだ気が済んでいないようだ。
「観念しないさい!」
「で、できません!それよりその怪しげな手の動きは何ですかっ!」
「・・・ん?これって・・・・。」
天河は苦笑いながら次に試着させる洋服を手に取った。
それはチアリーダーのユニフォームだった。
「な、何ですかっ、あの服はっ!?」
「ん?あぁ、可愛いっしょ?チア部の知り合いから借りてきたの♪」
「だ、だから寮内を走り回ってたのね・・・・。
でも、何でユニフォームが2着もあるんだろう。」
「佐由っちだけ恥ずかしい思いをするのは可哀そうじゃな~い?」
「えっ!?志穂さん、それってどうゆう意味・・・・。」
「ふっふっふ・・・・。」
また長沢の目がギラリと光った。
「取り合えず、私達も着替えるから覚悟決めておいてね☆」
「な、何で私まで・・・・。」
「ひぃ・・・・!」
二人が着替えている間にドアノブを回すがロックされているので逃げられない。
「逃げようとしても無駄よん。」
「て、天河先輩!助けて下さいっ!」
「えっ。え~っと・・・。」
「何故、目を逸らすんですか!?」
-数分後。
「おまたせ☆」
「・・・・・・ちょっとサイズが小さい気が。」
「気にしない、気にしない。」
長沢は赤が主体のチア服。
少し恥ずかしそうな天河は青いチア服を着ている。
「さぁ、私達も着たんだから佐由っちも着ない訳にはいかないよねぇ~?」
「わ、私は一度たりとも着て欲しいとは言ってませんが・・・・!?」
ピンク色のチア服を持って迫る長沢に、蒼芭は後退る。
だが、既に壁際で逃げる事は出来ない。
「佐由っち、何事も諦めが肝心よ?」
「後生ですからそれだけはぁーっ!!」
「・・・・???」
再び、室内から声が響き、通路を歩いていた女子生徒がドアを見て通過していった。
―更に数分後。
「似合うじゃない!」
「う、うぅ・・・・。」
恥じらいながら短いスカートを押さえる。
髪型もロングから後ろに纏めたポニーテイルにされていた。
「背も高いし、モデルみたいでカッコイイよ♪」
「も、物凄く、その心許ないのですが・・・・。」
制服のスカートよりも短く、生地も薄いチア服に困惑する。
少し動いただけで見えてしまいそうだ。
「う~ん・・・・何か違うのよねぇ。」
「し、志穂さん、そろそろいいんじゃ?」
流石に蒼芭が可哀相になってきた。
「う~ん・・・・。」
「な、長沢先輩・・・・?」
「カッコイイじゃ駄目なのよ!それじゃ何時もの佐由っちと変わらないじゃない。」
「し、しかし、これ以上どうしろと・・・・。」
「露出が足りない。」
「ろ、露出!?」
「主旨が変わってきてる・・・・。」
「と、行きたい所だけど、もうすぐ夕食だし「佐由っち可愛い化計画」は次の機会にしよっか。」
「次の機会は無くていいですっ!」
「えー?」
蒼芭に合う服を選ぶ所か、完全に長沢の自己満足で終わった。
「せ、先輩ありがとうございました。」
ようやく長沢から解放され、一礼する。
手には二人が選んだ服(結局天河の服になった)の入った紙袋を持っている。
「ご、ごめんね~。」
天河と長沢も着替えるついでに私服になったようだ。
「チア服のままでいいのに・・・・・・。」
「どれだけ未練があるんですか・・・・。」
「か、勘弁してください・・・・。」
蒼芭は苦笑いながら部屋を後にしていった。
「・・・・佐由里ちゃん大丈夫かな。」
「誰かさんと違って積極的だし大丈夫っしょ?」
「だ、誰かさんって誰ですか!?」
「さて、誰の事かなぁ。そ・れ・よ・りも・・・・。」
長沢はニヤリと笑いながら天河を見て、ベットに置かれたチア服を見た。
「い、言って置きますけど着ませんからねっ!?それにもう直ぐ夕食でしょ!」
「まぁまぁ減るもんじゃなし。私も着るからさ?」
ガシッと天河の肩を掴む。
「そ、そういう問題じゃな~いっ!」
今度は天河の叫びが寮内に響いたのだった。
何時かチア服姿の三人を描ければいいなと思いますw