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35:極光六愿学園



 神楽坂は朝倉が爆破したトレーラー付近まで進んでいた。


 近づくにつれ光は強くなり、その光は何かが燃えた為に発生していることも分かった。

 交通事故だろうか、と一瞬考えたがここが異世界である事を直ぐに思い出す。


「・・・・国道だってのに車やらが全くいないってのはどうなってんだ・・・・?」


 目的地へ向かいつつも周囲を観察する。

 赤黒い光だけの世界は目が痛くなるが少し慣れてきた。


 少し進むと何かが燃えている事を再確認した。

 トレーラーだろうか、横転した状態で車体の大部分が焼け黒くなっている。

 軽く走り距離を縮めようとした時だった。


「・・・・・・・誰かいやがるな。」


 燃え上がるトレーラーの手前に数名の人が何か話していた。

 神楽坂は気づかれないように歩道へ入り街路樹を利用して足を進めた。

 近づくにつれ話声も聞こえてくる。




「そうですか、折角見つけたというのに・・・・・。」


 小さな眼鏡を掛けた男は人差し指でそのズレを治した。


「Project S.O.Wにはあのデータは必須です。

 研究所での騒動が起こってから4年間、貴方達は何をしていたのですか?」


「ち、違うんだ!?ラオス!我々は・・・!!?」


 ラオスと呼ばれた男は部下に指で合図を送る。

 取り乱す男は二人の黒服に押さえつけられるようにしてセダン車内へと押し込まれた。



「4年も放置していた者がいくら言い訳しようと見苦しいだけです。

 貴方の処分は後で下すとしましょう。」


 ラオスは眼鏡のズレを人差し指で直す。





「・・・・・・・なんだか穏やかじゃねぇな。」


 神楽坂は大きな幹を持つ街路樹の裏に息を潜めた。

 もっと近づきたいがこれ以上は見つかってしまう。

 声は何とか聞こえるが、内容まではハッキリと聞く事ができなかった。




「・・・・・あの無能のお陰でProject S.O.Wは大幅に計画変更をしなければなりません。

 ジョシュアも我々の動きに薄々気づき始めている頃ですし、あの方も待たせています

 早い所特異点である「六愿学園」へ向かいましょう。」


 その後部下と話した後、黒いセダン車に乗り込み謎の集団はその場から走り去っていった。




 神楽坂はトレーラーの手前までやってくる。

 本当なら照明の変わりになるものを探しにきたのだが、なにやらきな臭い現場を目撃してしまったようだ。


「・・・・・・・あの連中は一体何者なんだ・・・。」


 車が走り去った方向を見据える。

 特にあの眼鏡を掛けていた男、見た感じから外人のようだ。


 それに何故こんな異世界に人間がいるのだろうか。

 今は自分の目的を0時までに果たさなければならないが、あの男が最後に言った言葉を見逃す訳にはいかなかった。



「六学に行くとか言ってやがったな・・・・・チッ、異世界とはいえ俺達の学園でコソコソされるのは面白くねぇな。」


 車の後を追う為に六学に向かおうとした時、炎の光が地面のある物に反射し神楽坂の目に入った。

 それは銀色のジュッポライターだった。

 神楽坂はそれを拾いズボンのポケットに入れ込みセダン車を追って六学へと走った。






 途中で拝借して自転車はブレーキが劣化しているのか甲高い音を立てた。

 学園に到着した神楽坂はその有様を見て驚愕した。

 建物はほぼ全壊、通路、木々、フェンスといったものも無残な姿を見せていた。


 まるで爆撃でもされたかのような光景だ。

 直ぐに背後の町並みを見てみると六学だけが被害を受けているようだ。


「・・・どうなってんだ・・・。」


 自転車から降り、崩れた正門をくぐり学園内へ足を進めた。


 崩れた校舎の破片が散乱しているので正規の通路を通ることはできずに進める場所を選んで前へと進む。

 3つの校舎、そして諸施設も全壊しその姿を留めてはいなかった。

 一体何故六学だけがこのような状態になっているのか理由は分からない。


 神楽坂は瓦礫をよけつつ中央広場へ進んだ。

 ここは生徒会を中心に6つの委員会棟と生徒会棟の、計7棟が連なる場所であり除霊委員会棟も存在していた場所だ。

 だがその棟も無残な姿を見せる。


 神楽坂は心に怒りを覚えた。

 現実世界ではないとはいえ自分達の学園がこんな状態になっているのを目の当たりにして平気な訳がない。


 周囲の状況を見回していると、グラウンドに人のような物が映り込み神楽坂は瓦礫を乗り越えグランドへ向かった。






 グラウンドも校舎同様大きなダメージを負っていた。

 学園側からグラウンドへ無数の地割れが走っている。

 それは学園を中心に強大な力が放射状へ広がった事を物語っていた。


 人が落ち込みそうなクレパスをジャンプで飛び越え、グラウンド中央へたどり着く。

 そこにはやはり人間が此方に背中をみせ佇んでいた。


「こいつはお前の仕業か・・・・・。」


 神楽坂は依然背中を見せる謎の人物に質問した。

 良く見るとその人物はかなりの長身、長緒をも越えているだろうか。

 そして一番目につく頭に編み笠を被り、腰には刀を帯びている。



<・・・・ほう、これはまた珍しい客人だ・・・・。>


 編み笠を被る男はそのままの体制でゆっくりと言った。

 神楽坂は直ぐにこの男が人間ではないと察知し、破砕魂を抜ける状態をとる。


<・・・・流石、武神。・・・・・・と言った所か。>


 何故だろうか、首の後ろがピリピリとする。

 自分の勘が、いや自分の魂がその男は危険だと叫んでいるようだ。

 こんな感覚は今まで始めてだ。

 背中しか見せていない男からは発せられる禍々しい殺気が神楽坂の動きを縛る。


<・・・・どうした?このような場所、お前には無関係なはずだがな・・・・?>


 編み笠の男はゆっくりと神楽坂の方を向いた。

 顔は編み笠のつばと影に隠れ見る事はできないが紅く光る眼光だけが鋭さを見せる。


「・・・・て、てめぇ魔族だな、それもかなり上位の・・・・。」


 声に力が入らない。

 だがここで気負けすれば相手の思うがままになってしまう。

 魔族が人間を見逃すとは思えない。


<・・・・そこまで分かるか、覚醒前の武神と死合っても面白くないと思っていたが

 暇つぶしくらいにはなりそうだ。>


 口元が禍々しく歪み腰に差した刀を抜いた。

 その刀は漆黒の刀身でその鍔には大きな目玉が生きているかのように動き回っている。

 それだけで強大な魔力がまるで台風のようにグランドを吹き荒れた。


 神楽坂は上手く霊気を練ることが出来ずにいる。

 初めて霊的干渉を受けた。

 何とか破砕魂の霊刃を発生させ戦闘態勢をとった。



<そうだ、そうしなければ死ぬだけだ。>


「・・・・なっ!!?」


 一瞬で自分の懐に入られた。

 神楽坂は油断していた訳ではない、余りの速度に体が反応する事ができなかったのだ。


 編笠の男は中腰で力を溜めている。

 神楽坂は回避どころか防御の体勢すら満足に取れていない。

 一連の動きがまるでスローモーションのように流れる。

 編笠の男は中腰の体勢から口を歪めつつ紅い目を此方へ向ける。


 次の瞬間。


「ぐぅうううっ!!?」


 編笠の男の繰り出す強烈な攻撃は神楽坂は空高くまで吹き飛ばしていた。


(な、なんつー重い攻撃だよ・・・・!)


 自分と編笠の男の側足との間にギリギリで破砕魂の霊刃を割り込ませ防ぐ事ができたが、それで精一杯だった。

 神楽坂は空中で何とか体勢を建て直し地面に着地した。


<・・・・・・今の攻撃、よくぞ防いだ。>


 編笠の男は側足の構えを解き自然体の構えになった。

 今まで戦ってきた魔物と比べて桁違いの強さだ。

 神楽坂の表情が険しくなる。


 とてもじゃないがあの速度を回避する事はできない。

 人間を軽々と吹き飛ばす程のパワーの前には防御も無意味だ。


 破砕魂による接近戦は分が悪すぎる。

 相手との間合いを保ちつつ反撃のチャンスを狙うしかない。


 しかしどうやって間合いを保てばいいのだろうか、手持ちの武器は接近戦用の霊剣破砕魂しかない。


 いや、一つだけあった。

 それは佐久間から譲り受けた霊銃だ。

 これなら間合いが離れていても相手を牽制する事ができる。


 神楽坂は破砕魂を左手に持ち切っ先を編笠に向けつつ、空いた右手で右大腿部に装着していたホルスターのフックを外し霊銃を抜き取る。



<・・・・・・飛び道具か、我は構わんぞ?>


 余裕の笑みを見せた。


「そうかい、そいつはありがてぇな。」


 皮肉を言いつつ右手の霊銃と左手の破砕魂を同時に左右に投げ交換する。

 神楽坂は左手に持つ霊銃の銃口を編笠に向けた。


 編笠はニヤリと笑うと刀を一度鞘に納め抜刀術の構えになり、神楽坂の懐に入る為凄まじい速度で間合いを詰めにきた。

 まるで氷の地面を猛スピードで滑っているかのようだ。


 神楽坂も二度も懐に入られる訳にはいかない、向かってくる編笠に向かい数発の霊弾を発射する。

 霊銃の機関部から薬莢の変わりに霊気の残りカスが排出される度に編笠との間合いは縮まっていく。


 相手は自分に一直線に向かってきている。

 しかし焦る神楽坂は照準を上手く合わせる事ができず1発も着弾することなく編笠の横をすり抜けていった。


「くっ・・・・!?」


 いきなり実践に使う事は難しい。

 霊銃による牽制は無理と判断し、右手の破砕魂を前にだした。



<果たして腕一本で我の斬撃に耐えれるかな・・・・・?>


 編笠の言う通り左手は霊銃で塞がっている。

 あの攻撃を片手で受け止めるのは自殺行為に近い。

 だがもう遅い、編笠は既に自分の間合いに入り右手は今にも抜刀するかの状態だ。


 神楽坂は咄嗟に破砕魂を逆手に握り地面に伸びた霊刃に右ひざを当て左手の代用に攻撃に備えた。


 バキィィンッ!!


 と、金属音に似た音が聞こえたかと思うと神楽坂は土煙をあげつつ地面と沿うように吹き飛んだ。

 同時に土煙が覆った中から2発の霊弾が発射され一発は外れたが残りの一発は編笠の左肩に着弾し弾けた。


 編笠は意外な表情を浮かべ被弾した左肩に右手を当てると前方に舞い上がる土煙を見やった。

 土煙は次第に晴れていく、そして煙の中から編笠の強烈な攻撃に耐えつつ銃口を向けている神楽坂の姿が映った。


 まさかあの状況で反撃してくるとは、編笠は予想すらしていなかった。



「はぁ・・・はぁ・・・・・舐めるな・・・よ・・・っ!」


 衝撃で衣類は破れ体はボロボロになりつつも何とか立ち上がった。

 満身創痍だがその眼光だけは今にも自分に斬りかかってくるかのような鋭さだ。


<ククク・・・素晴らしい、我が攻撃を一度ならず二度も、更には一矢報いるとは・・・・・!>


 人間でありながら魔族である自分と対等に渡り合おうとする神楽坂に編笠は歓喜した。

 まだ殺すのは惜しいと編笠は判断し神楽坂に向かって数回拍手を送った。


「・・・な、なんの・・つもりだ・・・・・!」


 神楽坂の体は限界にきている。

 破砕魂の霊刃も形成を保つ事も儘ならなくなってきていた。


 同時に自分の霊気の高さに感謝した。

 編笠の斬撃に載った魔力をなんとか相殺することができたからだ。

 だがその代わりに自分の霊気が殆ど残っていない。

 今から精神を集中できるほどの余裕はなく、万事休すだ。


「チッ・・・・このままじゃ・・・マ・・ジ・・やべぇ・・・・・・。」


 視界が霞みだす。

 皮肉なのか拍手をする編笠の姿も朧げになり、遂に意識を失って地面に倒れてしまった。


<・・・・・ここまでか、武神として覚醒した時が楽しみにでならぬな

 そうであろう?朝倉崇よ。>


 背後に殺気を感じ振り向いた先には殺意と喜びが混じったような表情をしながら走りこんでくる朝倉の姿が映った。


「テンジンっっ!!」


 その手には斬魔刀”双呀”が握られ紅蓮の炎が立ち上っていた。





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