21:疫病神
・・・何時からだっただろうか、周囲から冷たい目で見られ避けられ始めたのは。
自分でも「何故」なのか全く理解できない。
しかし自分を中心に起こる怪現象、「疫病神」と呼ばれている事実は変わる事はなかった。
「・・・・・」
不意に目を覚ました彼女は枕元に置いていたピンク色の携帯を見た。
時刻は夜中の2:00になったばかりで布団に入ってまだ数時間だった。
部屋の明かりをつけたまま寝る事がいつの間にか習慣となり、室内を見る事ができる。
彼女の部屋には沢山のぬいぐるみが机や家具類の上に置かれていた。
彼女は寝付けないのか上半身を起こして枕にしていたクッションを抱きしめ周りを視線だけで見た。
まるで「何か」を警戒しているかのようだった。
「・・・大丈夫・・大丈夫・・・・・。」
自分にそう言い聞かせ体を横にし眼を閉じたその時だった。
「!?」
彼女は眼を見開いた。
微かだったが誰かがクスクスと笑う声が聴こえてきた。
目を閉じたまま周囲の気配に集中し鼓動が一気に早くなった。
今まで寝ている時は何も起こらなかったはず、いや「夜」に何も無かった事自体不自然だったのかもしれない。
彼女は日が昇るまで布団の中に潜り込み恐怖に耐えるしかなかった。
日が昇り長沢はA校舎の窓から登校してくる生徒達を見ていた。
「・・・・・・・。」
長沢は窓際で腕を組んで見下ろす。
その視線の先にはオリエンテーションの際に会話した海羽紅葉の姿が映っていた。
海羽は少し元気がないように見受けられる。
そして高所から見て彼女と周りの生徒との間隔が異常なまでに空いていて彼女の現状が痛い程見せ付けられた長沢は思わず両手に力を入れた。
「・・・力が不安定になる前に手を打たないとね。」
そう呟いた時、背後に人の気配を感じ振り返った。
「あら、こんな早朝から私に何かご用でも?生徒会長さん?」
気配は生徒会長の雹牙だった。
雹牙は4年生で生徒会会長を務める人物で長沢同様、学園に強い影響力を持つ。
薄碧の髪を持ち首にリングを付けているのが特徴で、長沢にとっても一番の要注意人物でもある。
なぜなら長沢の力を使用しても一切が不明だからだ。
一切が不明。
これが長沢には引っ掛かる。
今まで過去未来を見ることができなかった事は一度も無かった。
必ず何かしらのビジョンが見えたはずだ。
だが、この雹牙という男は未来どころか過去生い立ちすら不明であり長沢は警戒していたのだった。
「・・・随分と早いな。」
雹牙は静かな口調で言った。
「ま、気まぐれってヤツかしらね?会長さんこそ今日は‘かなり’早かったみたいだけど?」
「・・・フ、私も今登校してきたのだよ。」
そう言うと雹牙は長沢に鞄を見せた。
「何時も早いから学園にでも住んでるのかと思ったわ。」
長沢は軽く冗談を交えつつも探りを入れる。
雹牙も彼女の意図に気付いたのか必要以上の会話はせずに早々に切り上げてその場を立ち去った。
「・・・新品同様の靴底で何言ってるのかしらねぇ。」
雹牙が去って行った方向を尻目に見つつ再度窓の外を見た。
彼女にとって悩み事はもう1つあったようで苦笑いを浮かべている。
「それはそうと10つ視たビジョン中8つもアイツの姿が映ってんのよねぇ・・・・。」
長沢は窓枠から両手をダランと出す形でその場に座り込むように中腰になった。
複雑な表情の彼女が言うアイツとは誰なのかは分からないが、只者では無いことは間違いないだろう。
「・・・・やれやれですなぁ。
とりあえず摩琴っちゃんに言って委員会乗っ取らせてもらうとしますかね。」
そう言うと長沢はクラスへと戻っていった。
3時限目が終わり合間の10分休み、神楽坂達に珍しい生徒が尋ねてきた。
それは星龍と蒼芭の二人だった。
「珍しいな、お前等がウチのクラスに来るなんてよ。」
椅子に座る神楽坂は既に机の上を片付け腕を組みつつ星龍達に体を向ける。
隣にいる長緒も何事かと小説を取り出しつつ耳を傾けていた。
「突然申し訳ありません。星龍が不穏な妖気を感じ取ったと言うので。」
「不穏な妖気・・・・・・?」
長緒は読もうとしていた小説を机の上に置き神楽坂も真面目な表情をした。
星龍は委員会の管制塔の役割を担う霊能力者だ。
その力はどんな小さな反応でも察知する事ができる。
その彼が神楽坂達でも気付いていない妖気を感じたと言ってきたのだ。
「そ、そや、今日になって急に学園周辺を囲むように現れよった!」
「待て、また化け蜘蛛とか言うんじゃねぇだろな。」
妖蜘蛛に良い記憶がない神楽坂は苦笑った。
星龍は否定して続けた。
「ちゃうちゃう、前回みたく妖蜘蛛じゃないわ、数が段違いやで。」
「情報によると今月から市内に現れる悪霊妖怪の数が著しく増加しているようなのです。」
「・・・・・なるほど、数というのは個体数ということか。
しかも今月になって急に増加した・・・・。」
長緒は人差し指を顎に掛け考える。
いくらなんでも不自然すぎる。
何かしら原因があるはずだと考えた。
「何?また変な事件でも起こるわけ?」
神楽坂の前に座っていた安堂が苦笑いながらこちらに体を向けた。
「いえ、まだ何とも言えない状況ですので・・・。」
「・・・前回は特別だ。俺達は学園の委員会だろ?まだ何も起こってねぇんだ関係ねぇよ。」
確かにその通りだと蒼芭と星龍は思ったが、やはり何か嫌な感じは拭えずにいるようだ。
「・・・だが、一応警戒はしておいて損はないだろうな。」
長緒は机に置いた小説を手に取った。
と、同時に神楽坂がポケットに入れた携帯の着信に気付き取り出した。
「・・・何だ直明か、どうしたんだ?そんなに慌てて。」
電話の向こうの吉原は何やら凄く慌ているようで話から何か問題が起こったようだ。
吉原は窓ガラスがどうとか喚いてる。
「直明?何やってんのあの男は、もうすぐ4時限目よ?」
次の授業まで後5分程、安堂は時計を見て苦笑った。
蒼芭と星龍も取り合えず自分の教室へ戻ろうとした時、今度は緊急の校内放送が聴こえてきた。
それは除霊委員会と風紀特別機動部の出動要請だった。
「第2生物室か!いくぞ!」
立ち上がった神楽坂の掛け声に力強く頷く三人は勢い良く教室から飛び出していった。
生物室前には大勢の生徒が廊下を塞いでいる状態で前に進む事が出来ない。
そこへ天河、篠崎、上村の三人が合流し妨げになっている生徒達を自分のクラスへ戻るよう指示する。
「光志、健一!」
二人を呼び止めたのは先程携帯を掛けてきた吉原だった。
「一体何があったんだ?」
他の委員達は生徒の誘導する中、神楽坂と長緒は吉原の話を優先させた。
「わ、分かんねーよっ!いきなり窓ガラスにヒビが入ったと思ったら粉々に砕けたんだよっ!」
「窓ガラスがか?それで怪我した奴は!?」
「し、心配すんな、取り合えずその場にいた全員大した怪我はしてないようだぜ。」
「・・・分かった。後は俺と光志に任せてくれ。」
「頼んだぜ除霊委員!」
吉原は走って教室へ戻って行った。
「神楽坂君!長緒君!」
次に自分達を呼んだのは天河だった。
既に野次馬は消え廊下には除霊委員会しかいない。
状況を確認しようと前方を見た時異常な光景が広がっていた。
生物室を始め、接する廊下側の窓全てが粉々に砕け床に足場も無いくらい散乱している。
この惨状で怪我人が一人もいなかった事は幸運だったとしか言いようが無い。
「こりゃ凄いねぇ・・・‘石を投げた’ってレベルじゃないよこれ。」
上村は手帳に何かを書きながら状況を分析している。
その姿に随分と真面目にやっているなと蒼芭は気付かれないように覗き込むと・・・・・。
(こ、この男、生徒の誘導をしていると見せ掛けて女子の携帯番号やらを聞き出して・・・!?)
「はっ!?( ̄○ ̄;)」
蒼芭に竹刀袋に入った日本刀でシバかれたのは言うまでもない。
「と、取り合えず生物室に入ろうぜ。」
「せ、せやな。」
篠崎と星龍が苦笑いつつ足元に注意して室内に入ると廊下側と同じように窓ガラスの殆どが粉々に割れ散乱していた。
「こ、これは・・・・・。」
天河の目の前には生物室の窓ガラスが全て割れ作業用の長机や床に散乱していた。
廊下側より窓が多い分その被害も大きい。
各自、室内の状況を見渡していると教壇の方から女性の声が聞こえてきた。
「だ、大丈夫ですか!?」
しゃがんでいるようで長机が死角になり姿が確認できないが、直ぐに自分は大丈夫だと返事が返ってきた。
除霊委員達はガラスを踏まないように注意しながら女性教諭の元へ進むと、要約その姿を確認する事ができた。
女性教諭は隣にいた女子生徒を介抱するように寄り添っており、女子生徒は俯き右肩を左手で押さえながら床に両足をくの字にして座り込んでいる。
「海羽さん!海羽さん!」
女性教師は必死に呼び掛けるが放心状態の彼女はピクリともしない。
「・・・多分ショックで気を失ったのね」
天河は優しく彼女の左手に触れた。
「・・・ちょっと待って。」
彼女の手に違和感を感じ、触れていた自分の手を見ると紅い鮮血で染まっていた。
「彼女怪我してるわ!」
彼女の右袖口からは肩の出血が腕伝いに流れ床に小さな血溜まりを作り出していた。
パニックになる女性教師を落ち着かせる天河は蒼芭と篠崎に保健室と職員室へ行くよう指示する。
天河は海羽の左手の上からヒーリングを掛けはじめた。
「治療は天河に任せて問題は・・・」
「・・・これをやらかしやがった野郎だな。」
聞き慣れない声に振り返ると体格の良い男子生徒が腕を組んで室内を見回していた。
太い腕部に巻かれた腕章には「風特機」と書かれている。
「おやまぁ朝比奈先輩ではあ~りませんか。」
上村の軽口に間髪入れずに朝比奈は有無を言わさず正拳を喰らわせた。
「ぶへっ( ̄○ ̄;)」
「上村・・・・てめぇ、ウチにどれだけ被害届が出てると思ってんだ?」
「被害届?チッチッチッ、・・・」
朝比奈の前で一差し指を3回横に降って見せた。
「ファンレターさ・・・!」
「朝比奈、後で報告書を提出してくれ・・・そして上村、お前、死刑な。」
上村の軽口を待っていたかのように廊下側から女子生徒の声が聞こえた。
そして姿を見せる事なく、床に散乱しているガラスを豪快に音を立てながらその場を去っていった。
「Σ( ̄○ ̄;)」
「ウチの大将、容赦ねぇからな。ま、その・・・短い人生だったな。」
朝比奈は上村の肩に手を置いて哀れんだ。
「馬鹿な奴だな・・・・。それより被害調査しなくていいのか?」
「だな、阿呆のせいで確認がおくれちまったが彼女の怪我の具合はどうだ?」
それには天河本人が答えた。
「今終わった所、幸い傷は浅かったし保健室で休ませればいいわ。」
「はい!俺保健室に連れていきます!」
「お、お前は有り得ねぇだろ!てかなんだその手はっ!」
風特機隊長から死刑判決を受けたばかりで本当なら凹んでいるはずの上村に朝比奈は柄にも無く突っ込んでしまった。
上村の、ワサワサと動く両手は明らかに下心全開だ。
今いる中で一番力があるのは朝比奈で人格も信用できる。
しかし彼は早急に報告書を作成しなければならないと辞退し、結局長緒が海羽を保健室へ連れていく事になった。
「お願いね・・・。」
「・・・・問題無い。」
長緒は海羽を抱き抱え、小笠原と共に保健室へ向かった。
「さて、現場検証ってやつだが・・・」
改めて室内を見回す朝比奈だが自分達風紀の管轄外だと実感する。
話によると生物室と接する廊下側の窓ガラスが一斉に割れ、砕け散ったとの事だ。
どう見ても人の仕業とは考え難い、何か特殊な現象が起きたと考えた方が自然だ。
「ま、室内に何か投げ込まれたっちゅーわけでもなさそうやし、
不自然に残っとる妖気の方が怪しいわなぁ」
神眼を使う星龍には既に犯人の目星がついているようで神楽坂も彼が見ている方向に不自然さを感じた。
「・・・なぁるほどな。」
不自然さに気付いた神楽坂はゆっくりと教壇へ向かう。
「それじゃこいつは悪霊妖怪の仕業で間違いないんだな?」
「はい、間違いないと思います。」
「・・・割れたガラスは廊下も合わせて35枚か・・・・・」
数を数える朝比奈に神楽坂が割り込んだ。
「いーや、36枚・・・だ!」
「ちょ、ちょっと!?」
天河の制止は間に合わず、神楽坂は黒板消しを思いっ切り割れ残った窓に投げ付けた。
室内と廊下を隔てる窓ガラスはとても薄く、音を立てて割れる。
と、同時に割れたガラスから小動物の悲鳴と蜥蜴の形をした妖怪が消滅していく光景が映った。
「い、いまのは何だ?」
「名前まではわからへんけど今のがガラスを割りよった犯人や。」
「あの壁ちょろは‘鏡走り’っつーんだが、少し妙だな・・・。」
「鏡走り(かがみばしり)」は外見は蜥蜴に似た姿をしている妖怪で硝子から硝子へと移動し、移動した際それを割って行くといった習性を持つ。
窓ガラスが多い学校等の施設に多く現れる妖怪である。
「・・・ま、また学園の備品がぁ・・・・・。」
天河はまた始末書が増えた事に嘆いた。
「お前も相変わらず後先考えねぇな、知らねぇぞ俺は・・・・・。」
神楽坂の強引さに流石の朝比奈も苦笑うのだった。
長緒達は保健室に到着し彼女を先に蒼芭が用意したベッドに寝かせた。
今は授業中で保健委員は不在で保健医の先生は職員室へ車の鍵を取りに行っていると蒼芭から報告を受けた。
「え、えっと私も職員室に報告しに行くから貴方達は保健の先生が来るまで海羽さんを看てて貰える?」
「分かった。」
長緒が一言答えると小笠原は走って職員室へ向かった。
「・・・・・・・。」
長緒と蒼芭はパイプ椅子に座って今だ意識が戻らない海羽の様子をただ静かに見守った。
「・・・先程、風紀委員長と名乗る先輩から聞いた話なのですが、彼女の周りでは不可解な現象が頻繁に起こっているようです。」
蒼芭は小さな声で話す。
例え気を失っているとはいえ、それが彼女に対する気遣いだ。
「・・・そうか。」
長緒も静かに答えた。
「今回の件も初めてではないようで・・・風紀も対応に困っているようです・・・。」
「・・・・・だろうな。先ずは原因を突き止める必要がある。」
二人は海羽の顔を見る。
特に強い霊気を感じるわけでもなく、また何かしらの呪術に掛かっている訳でもなさそうだ。
「先輩、私は一旦報告に戻ります。それから‘こちら’の方でも調べておきます。」
「・・・分かった。」
そう言うと蒼芭は天河に報告するために保健室を後にした。
保健医も職員室から戻るのにまだ時間がかかるようだ。
一体彼女に何が起こっているのか考えていると要約意識が回復したのか両目を開け天井を見つめている海羽に気が付いた。
「・・・・私・・・。」
何故自分が保健室のベッドに寝かせられているのか、現状が把握できないまま天井を見るしかない海羽は横に長緒がいる事にも気付かずにいた。
「・・・気が付いたか。」
「・・・ぇ!?」
不意に掛けられた声に顔を傾けると長緒の姿が映った。
「な、長緒先輩・・・!?」
どうして長緒がここにいるのか理解できない海羽は取り合えず上半身だけでも起こそうとする。
だが、急に体を起こしたせいで軽い目眩が彼女を襲った。
「・・・無理はするな。もうすぐ保健の先生が戻って来る。」
「は、はい・・・。」
海羽は大人しく体を元に戻し布団を首元まで被り長緒を見た。
「あ、あの私どうなったんですか?
その・・倒れる直前の事を良く覚えてなくて・・・もしかしたらまた・・・・。」
「・・・貧血だ。授業中にな。」
貧血で倒れたのならば長緒がこの場にいるはずがない。
矛盾した理由だが海羽はそれで一応は納得した。
恐らく長緒の気遣いに応えたのだろう。
間違いなく自分のせいで何かが起こったはず、それは切り裂かれた制服がそれを物語っていた。
暫くして息を切らせた保健医が到着し彼女を病院へと連れていった。
「・・・・・・」
自分の役目も終わり、長緒は生物室へ戻ろうと出口へ向かうと一人の女子生徒が話掛けてきた。
「中々優しい所あるじゃな~い?」
その女子生徒は長沢だった。
軽い口調で話す彼女の内容から一部始終を盗み聞きしていたようだ。
「・・・今は授業中のはずだが?」
初対面の長緒にとっては変な奴にしか映っていない。
「随分な挨拶ねぇ、神楽坂君から聞いてない?
超絶ミステリアス美少女、長沢志穂ってのは私の事よ?
今のテストにでるからメモっとくように。OK?」
「・・・・・で?何か俺に用か?」
「つれないわねぇ、まぁおふざけはこのくらいにして・・と、ちょっと海羽ちゃんの事でね。」
「・・・・長沢志穂と言えば学園公認のアドバイザーだったか、占いが得意だと聞いたが・・・。」
「そこまで知ってるなら話は早いわね。」
長緒は前回の妖蜘蛛の時も神楽坂に助言していた事を思い出した。
「・・・これは風紀の桐嶋湊にも知らされてないんだけど、
彼女は霊能者よ。それもかなり強力なね。」
「・・・しかし彼女からは何も感じなかったが?」
長沢は腕を組んだまま右一差し指を振った。
「甘いわねぇ長緒君。霊気が無ければ霊能者では無い。そうでも無いでしょ?」
長沢の口調は全て知っているかのようで長緒もそれに気付いた。
「・・・・まるで全てを知っているかのようだな、何故回りくどい事をする?」
「ま、あくまで助言だから。私の言葉を生かすも殺すも貴方達次第って事ね。」
「成る程、あの妖蜘蛛の件も無関係ではないという事か?」
「・・・まぁ流石。とだけ言っておくわ。」
長沢は手をヒラヒラと降りながら保健室を後にしていった。
「・・・長沢志穂。一体何者だ・・・。」
長緒はただ彼女の背中を見送る事しかできなかった。