遺された家族
祝杯から一夜明けた。
目を覚ますと俺は見慣れない場所にいることに気が付いた。
「あ、叔父さん起きた?おはよう!」
「え!?リリア!?なんでお前ここに?」
まさか俺、姪相手に何か疚しいことでもしてしまったか!?
おいいいいいいいこれって一大事じゃねえの!?
せっかく冒険者になれたってのに・・・
これじゃあ、俺のお得意さんに迷惑が・・・、それに、リリアの冒険者としての名声が・・・。
「モーリスくん、おはよう!昨夜はぐっすりだったみたいね!」
「え?サクナ義姉さん!?」
驚いた。
リリアに現れたこの女性はリリアの母親、つまり兄貴の妻にして俺の義姉である"サクナ・ウェルヴァ"だった。
にしても、なんでこの親子がここに・・・?
「なんでって、ここ私の家だもん!」
「え!?」
「昨日叔父さん酔いつぶれて眠たそうだったから、一番近い私の家に連れてって寝かせたのよ!」
「本当に驚いたわ、まさかリリアがモーリスくんを連れてくるなんて・・・」
恥ずかしいぜ・・・。
いい年こいてあんなに飲んで酔いつぶれた挙句、姪に担がされた上に家に運ばれるとは・・・。
しかし、何も起きていないようでよかった・・・。
ーーーーー
「はいモーリスくん!コーヒーよ!」
「ありがとうごぜえます!」
サクナ義姉さんが俺に目覚めのコーヒーを淹れてくれた。
お陰で眼が覚めたよ・・・。
「ん?」
俺はふと棚に飾ってある写真に目が行った。
その写真は幼いリリアと若き日のサクナ義姉さん、そして今は亡き俺の兄ビーディの3人が写っていた家族写真だった。
幸せそうな家族だな・・・。
「そういや、兄貴亡くなってからもうする10年経つんだよな・・・どうだい義姉さん、いい加減再婚とか考えねえのか?」
「馬鹿言わないでよ・・・」
「でもよ、未だに兄貴の性を名乗っているのもどうかと思うけど・・・?」
「モーリスくん、あなたのお兄さんが家庭ではどれだけすごい人だったか知ってる?」
「え?」
そう言われると、俺は思った。
俺は冒険者としての兄貴しか知らず、家庭ではどんな奴だったかは分かんなかった。
ただリリアの反応を見る限りは家庭内暴力とかの問題は無いように思える。
「あの人はね、何より私達を大事にしていたわ・・・」
「・・・?」
義姉さんの話を聞いていると、俺は次々と家庭内での兄貴の事が分かっていった気がした。
どれだけ兄貴が奥さんや娘を大事にしていたのか。
どれだけこの家を大事にしていたのか。
何もかもが分かっていった。
「多分リリアは、モーリスくんの面影があの人に似ていたから冒険者に誘ったんじゃない?聞いたけど、冒険者頑張っているみたいね。」
「そりゃまあぼちぼち・・・。ってそりゃ似てて当然だろ、兄弟なんだから・・・」
でも、なんか兄貴の話をする義姉さんは楽しそうにしてやがるな・・・。
よっぽど兄貴の事を愛していたんだな・・・。
「なあ義姉さん」
「ん?」
「俺に兄貴の代わり・・・出来るかな?今の俺はリリアを守れるかなって思って・・・」
「・・・モーリスくんなら出来ると思うわよ!だからこれからも娘を、リリアをよろしくね!」
「あ、ああ!」
俺は兄貴じゃないけど、兄貴の代わりならできる。
そんな気がしていた・・・。