クエスト達成の祝杯!!のはずが・・・
初クエストを終えたその夜。
俺はリリアに誘われて町の酒場にやってきた。
正直夜の酒場はあまり好きじゃない。
なぜなら・・・
「おいね~ちゃん!ビール追加で持ってきてくれ~!」
「「かんぱ~い!!」」
このうるささと喧しさが苦手だからだ・・・。
町の端っこの工房でひっそりと武器を作っていたからか、すっかり《ぼっち体質》が板に着いちまったよ・・・。
夜の酒場ってなんでこう騒がしいんだろうな・・・。
「叔父さん何食べる?今日は私が奢ってあげるから何でも言って!」
「おいおい、叔父が姪っ子に奢られるって変だろ、いいよ気にしなくて割り勘で・・・」
「だ~め!今日は叔父さんの初クエスト達成のお祝いでもあるんだから!私に奢らせて!」
あんなはっきりした目で見られちまうと無理って言えねえや・・・。
「分かったよ、お言葉に甘えるか、でもそんなに頼まねえから安心しろ・・・」
ーーーーー
とりあえず俺はビールを注文した。
つまみは一番安い肉の串焼きを頼むか。
「「かんぱ~い!」」
「うんめえ!」
俺は一気にビールをグイっと飲んだ。
仕事終わりの一杯ってやつは本当に美味えや!
「お酒、いいなあ・・・」
リリアがビールを飲む俺の姿を羨ましそうに見てやがる・・・。
「ははは!リリアはまだ17歳だからあと3年は我慢だな!」
「む~!」
なんだかんだ言って、楽しいな…。
誰かと酒を飲むってのはそんな感じだったんだな…。
最近の俺の晩酌と言ったらいつも1人だったしな…。
いつの間にか人付き合いってもんと縁がなくなっていたのかもな…。
「おい知ってるか?」
ん?
となりの席から酔っている男が仲間に何やら口を開き始めた。
「最近新しく冒険者になったやつがあのガルザをこてんぱんにしたんだとよ」
「ああ、聞いたぞ!しかもその新米の冒険者って中年の男らしいんだよな…。」
「ぶー!!」
「お、叔父さんどうしたの!?」
「あ、すまない・・・」
うっかり口に含んだビールを噴いちまった…。
あいつらが今噂にしているのって、間違いなく俺の事じゃねーか…。
まずいぞ・・・
その男ってのが今ここにいる俺だってバレたら・・・。
・・・
バレたら何なんだ?
(そうだよな・・・バレたって別に何にもない・・・よな・・・?)
俺は一気に気が抜けたように感じた。
それもそうだよな・・・
バレたって別に殺されるわけでもないし・・・
そんな大事になるわけ・・・
「その冒険者なら、ここにいま~す!!」
「って、おおおおいいいいいいいい!!」
「は?こいつが?」
「おいおいお嬢ちゃん、何冗談言ってんだよ?」
「冗談じゃないわよ!この人がそのガルザをぶっとばした冒険者の"モーリス・ウェルヴァ"よ!」
おいおい!
話を大きくしすぎてねえか?
「何言ってんだ嬢ちゃん・・・って、嬢ちゃん。もしかしてあのビーディの娘で例の"剣聖"って呼ばれているリリア・ウェルヴァかい?」
「そうだけど、そしてこの人はそのビーディの弟で私の叔父のモーリス・ウェルヴァよ!」
なんか話が本当に大きくなって来てんぞ・・・。