隠された才能
なんだかんだで決闘する事になっちまった・・・。
俺は冷や汗が止まんなかった・・・。
ビーディを侮辱されたからって言って挑発して来た若い冒険者のガルザと戦う羽目になっちまって、俺は今、ギルドの訓練場に居た・・・。
(くそ・・・いくら兄貴を侮辱されたのが許せなかったからって挑発に乗るんじゃなかった・・・そもそも俺戦闘経験なんて全くねえぞ・・・ただ武器作る事にしか人生捧げていなかったからなあ・・・)
俺は戦闘経験は無い・・・。
いくら木剣を使う事になったとしてもこれはないだろ・・・
しかも、何でか観客まで集まってきているし・・・
「おいおっさん!準備は良いか?」
「あ、いや・・・ああ・・・」
「叔父さん頑張って!!」
こうなったら破れかぶれだ!!
「いくぜ!おらあ!」
ガルザは正面から向かってきて、木剣を上から下に振りかざそうとしていた・・・。
(なるほど・・・そう来るか・・・なら、これはどうだ?)
カーン!!
「う!?」
俺はとっさにガルザの持っていた木剣の柄の部分に木剣を当てた。
しかも勢いよく!
その反動でか、奴の木剣は手から離されて吹っ飛んだ。
「なんだ?」
「あのおっさん何者だ?」
「おい、おっさん何したんだよ!?」
「何って、前に覚えた対処法を使っただけだぞ?」
「対処法?」
ーーーーー
俺は武器職人として、武器を扱いに関していくつかの事を学んでいた。
その内の1つとして、武器に関する『対処法』を学んでいた。
『対処法』とは、その名の通り、相手が迫ってくる武器に対して"どのようにすれば攻撃を回避出来るか?"と言うもの。
武器の対処法は武器によって異なる為、俺はすべての武器の対処法を頭に叩き込んでいて、それに伴って武器を製作している。
さすがに粗悪品を取引先に売るわけには行かねえからな・・・。
ちなみに剣の場合は相手の腕の動きをよく見る事で対処出来るって訳だ!
確かに俺には戦闘の知識は無えが武器の性能や使い方は頭に叩き込んでいる!
これくらいは朝飯前だ!
「くそ!何なんだよお前!?ただの武器職人じゃねえのかよ!?」
「武器職人だ!ただのおっさんのな!確かに俺には戦闘経験はねえが、反射的とは言え攻撃の回避ぐらいはできるのさ!」
「ありえねえ・・・"反射的"ってレベルじゃねえだろあれは!くそ、まあいい、今回はこれくらい勘弁してやるよ!」
「おい!兄貴を侮辱した事謝れ!」
「誰が謝るかよ!!バ~カ!!」
ガルザは兄貴への謝罪をしないてあっかんべ~して立ち去りやがった・・・。
子供かよ・・・。
とはいえ、これは俺の勝ちって事で良いのかな?
「叔父さんすごいよ!あのガルザに勝つなんて!!あいつの悔しそうな顔、スカっとしたよ!!」
まあ、リリアもこう言っているし・・・勝ったって事で良いか・・・。
「・・・なあリリア・・・」
「なに?」
「やっぱり俺、冒険者、やってみるよ!」
「本当!?」
「兄貴ほどじゃねえけど、あれだけ侮辱されちゃあ、あの世にいる兄貴に申し訳ねえし・・・それに、最近老眼になったが、武器の動きの対処法でお前をサポートできるかもしれねえから・・・。」
「ありがとう!改めてこれからよろしくね!叔父さん!」
結局何だかんだだが、俺はこの時を持って、冒険者になった。