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なによ  作者: 茶樺ん
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思い出の店

*ジャンルとしては恋愛ですが、まだ恋愛の手前の話です

 あそこは思い出のお店だったのよ?

 それがなによ。

 私が勇気を振り絞って誘ったのに断って、それなのにあんな若い女と一緒に来るなんて。確かに私はあのお店に連れて行って貰った立場だから、誰と行っても構わないわよ?でもなによ。

 確かに今日になってやっと声を掛けた私も悪いけど、お店の予約を取った時に直ぐに言おうとは思ったのよ?思ったんだけど、だって、まだ、恋人って言う訳じゃないし、何度か食事に誘って貰っただけだし、だからこそイベントがあった今夜はお礼に私がご馳走しようと思ったのに。

 それなのになによ。腕なんか組んじゃって。


「あの~どちらまで?」

「あ、すみません」


 いけない。行き先を告げてなかった。

 あ?うっかり自宅の住所を言っちゃった。

 ヤケ酒しようと思ってたのに。家にはろくに買い置きもないのに。


 もう。

 SNSで写真を上げる約束なんてしなければ良かった。そうすれば今日だって、予約をキャンセルしたのに。

 そりゃあ当日キャンセルはキャンセル料が100パーセントだからって、一人で行った私もバカだけど。

 でもだからって、女連れで来ているとは思わないじゃない。

 二人分のカトラリーが並んでるところを見られちゃったわよね?それも一人分は使われてないままなのを。

 そのうえなに?もうお代は頂いてますってなによ?なに余裕見せてるの?恋人の前で良いところを・・・良いところ?

 他の女の食事代を支払ったりするの、恋人が許したのかしら?恋人に隠れてコソコソと支払ったんなら、好い気味だわ。


 でも私の分を支払うなんて、まだ私との関係を続ける気?

 まあ、関係も何も、何度か食事を奢って頂いただけですけど?出掛ける約束もお互いの予定が合わなくて、延び延びになってるだけですけど?趣味も合いませんけど?

 それなのに私に気付いたら、後で連絡しますなんて囁いて、期待をさせて。


 もし言い訳に、あれは妹だとか言ったって、お兄さんしかいない事、聞いてるんだから。


 ・・・お兄さんがいるのは本当よね?もしかして本当は妹しかいないとか、ないわよね?


 ヤメヤメ。もう止めよう。

 確かに恋人がいるかどうかなんて訊かなかったし。

 でも、でもね?何度も誘って貰ったら、私に気があるのかなって思うじゃない?

 それなのになによ。


 ・・・一緒にいた女性、お兄さんじゃないわよね?


「こちらでよろしいですか?」

「あ、はい。ありがとうございます」


 スーパーかコンビニに寄って貰おうと思ってたのに、マンションに着いちゃった。

 お酒は1つだけあるけど。いつか部屋に招いたら、なんて妄想に走って、好きだと言うお酒を買ってしまっているけど。

 まあいいわ。今夜はあれを開けよう。つまみもなにもないけど開けちゃおう。

 万が一を考えて明日の仕事は休みにしたから、一人であれを空けちゃっても構わないわ。

 ホントなら店の予約や休暇を取る前に声を掛けるべきだった、なんて後悔を忘れるくらい飲んでやる!


 タクシーを降りると、エントランスの前の人影が、こっちに真っ直ぐ向かって来て怖い!


「運転手さん?乗せて貰える?」


 私とすれ違い際に微笑んで、タクシーの窓を敲くと、開いた窓に向けてそう言ったのが聞こえた。


「はい、どうぞ」


 運転手さんはそう答えると、私が降りて閉めたばかりのドアを開ける。


「あの、どうして?」

「あ、いや。メッセージも電話もブロックされたみたいだから、もしかしたら何かあったのかと」

「あの~お客さん?」

「ああ、いま乗ります。それじゃあ」

「あ、はい」


 タクシーはドアを閉めると、ウインカーを出して、走り去って行った。


 タクシーのテールランプを見ながら、その場でメッセージを送ろうとしたけど、なによ?なんて送れば良いのよ?

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