木に登った子猫ちゃんを助けた令嬢が、王子に気に入られる話を猫から見た的な話
☆貴族学園
オイラは猫ちゃんだぜ。ニャンニャンだぜ。
オイラが歩くと、
「ブサ猫」
「ブクブク太って・・」
「「「可愛いですわーーー」」」
大きな猫たちが騒ぐ。騒ぐ。罪な猫ちゃんだぜ。
「ニ゛ァー」(ご苦労)
「「「「キャーーーー」」」」
「こっち見て、ニ゛ァーですって」
オイラはシマを見回りしている。終わりは、いつもの場所で、お昼寝だぜ。
建物の裏に大きな木がある。
快適な場所だぜ。
ああ?先客がいやがる。クリーム色の毛並みの大きな猫だ。
「グスン、グスン」
チ、オイラは寛大だぜ。なら、お前は、クッションな。
膝の上に乗ってやる。
一緒にいることを許してやる。
「ニ゛ァーニ゛ァー」(ちょいと、ごめんよ)
「ヒィ・・・猫ちゃん。クスッ」
何だ。オイラの毛繕いを始めやがった。そうだ。そこ、気持ちいい。もっとやれ。
「猫ちゃん。慰めてくれるのね・・・グスン、グスン」
私ね。この木でね。子猫ちゃんが、木に登って、降りられなくなっていたのを目撃したの。
用務員さんに頼もうかと思ったけど、その間に、落ちたら大変だわ。私、田舎の男爵家出身だから、木登りが得意で、子供の頃のように、裸足になって、登って、子猫ちゃんを助けたの。
そしたら、殿下達が見ていて、
『キャア、大変失礼しました』
『ご令嬢、君は、下級生だね』
『新鮮だ』
『一緒に、食事をしようよ』
昼食を一緒にするようになって、楽しかったわ。殿下は、見目麗しいわ。側近候補の方達も、皆、親切で舞い上がったわ。
でもね。それから、上級生のお姉様たちから、イジメに遭うようになったの。
『そんな。私は、男爵家です。殿下からお誘いを受けたら、断れませんわ。殿下に言って下さい』
ええ、私物を隠されたり。噴水に落とされたり。
距離を置こうと、生徒会室まで、相談に行ったの。
そしたら、
『ルイーザ、君を愛している。皆、気を利かせて、席を外したよ』
『イヤーーー』
殿下から、婚前交渉を迫られたわ。
それから、殿下の婚約者に相談したら、
『まあ、殿下は、貴方の方から、誘ってきたと言っていたわ。覚悟しなさい。泥棒猫がどうなるか・・』
『そんな。信じて下さい!』
ピクン!
何、泥棒猫だと?狩りだよ。狩り。狩りも出来ない大きな猫のくせに、
「ニ゛ァー!」(ふざけるな!)
「フフフフ、お話を聞いてくれて、有難う。今度は、お魚を持ってくるわ」
それから、毎日、あのクリーム色の大きな猫はオイラの場所にいる。
最近は、一日中だ。
「はい、お魚と、お水よ」
「ニ゛ァー、ニ゛ァー」(ありがとうよ。なでていいぜ)
オイラは、情報を集めた。
サビ色のサビーネだ。
「ニャン、ニャン、ニャア、ニャアーー」(確かに、うちの坊や、あの大きな猫に助けてもらったって)
「ニ゛ァー」(ありがとうよ)
そして、情報ギルドを住処にしているキジトラのキージーに聞いた
「ウニャ、ウニャ、ウニャー、ニャー」(確かに、最近、お世話係が学園に行っているぜ)
キージーの友達猫として、オイラは、情報収集をした。
オイラは、大きな猫言葉を理解できる。
「何だ。友達かよ」
「ニ゛ァー」
分かったぜ。あのクリーム色の大きな猫は調べられている。
あの大きな猫は、淫乱が理由で、親猫の住処は、断絶?になる未来だ。
「可哀想だけど、男爵家はお家断絶、トカゲの尻尾切りだな」
「ああ、今度の臨時のガーデンパーティーで断罪されるんだって」
ほほー、話が見えてきたぜ。
オイラは、猫集会を呼びかけた。
え、猫の集会は、話さないって、違う。心で、話しているんだぜ。
(おい、プチ、若い奴を集めろ)
(ヘイ、親分)
(サビーネは、生後1年の猫ちゃんを集めろ。チビちゃんだと、逃げられなくなるぜ)
(あいよ)
オイラのクッションがいなくなるのは嫌だぜ。
そんな気持ちだぜ。
☆ガーデンパーティー
「諸君、悲しいことだが、これから、断罪を始める。マン男爵家令嬢ルイーザよ。前へでよ」
「殿下、本当のことを仰って下さい!私は、誘っておりません!」
「まだ、言うか」
「これは、大逆罪だ」
「そうだ。学園の自治が決められているから我らが調査した。我の種を欲しがって、子供を産み。王家から多額の養育費を取ろうとしたことは明白、もっとも、我は、少しも、心が動かなかったがな」
「ええ、殿下は、まさに、王族の鏡ですわ」
「そんな。ヒドイ」
なんやら、俺のクッションを虐めている。
今だ。猫ちゃんたち、出撃だぜ。
「「「「ニャー、ニャー、ニャー」」」
「まあ、猫ちゃん達が」
「可愛いけど、場違いだわ」
まず。若い雄猫たちは、あの金ピカの服を着ている奴らを取り囲む。
「何だ。汚い猫だな」
「ヒィ、あっち行きなさい!」
そして、子猫ちゃん軍団は、
「ミャー、ミャー、ミャー」(助けてくれて有難う)
「「「「ニャー、ニャー、ニャー」」」」
クリーム色の大きな猫を取り囲んで、
ニャンニャン攻撃だ。
「子猫が、ルイーザ様のドレスを登って、自ら抱っこされに」
「まあ、ドレスが、猫で隠れたわ」
「ねえ。こんなに、猫に好かれる方が、悪い事をするかしら」
ザワザワザワ~~~
ヨシ、金ピカらには、砂をかける仕草だ。
パッパッパッと後ろ足で、砂をかける仕草をする。
そして、シャアアーーーーだ。
「「「シャアアアアアーーーーーー」」」
「おのれ、クソ猫、断罪を邪魔するとは、マック!やれ」
「殿下、お任せ下さい」
やばい。逃げろ。大きな猫は、ウスノロだが、力は強い。
ヨロ~
オイラは、年だ。それに、ふくよかだ。足を取られた。
ドゴ!
腹を蹴られた。
「「「「ニャー、ニャー!」」」(親分!)
「ニ゛ァーゴ!」(逃げろ!)
【何をしているのですか?ダーレス!猫を蹴らせるとは!】
「ヒィ、お祖母様、これは、違うのです。マックが勝手に」
「そんな殿下の命令ですよ」
おろ、何だ。年老いた大きな猫がオイラを抱く。
尻尾を凝視し、触る。玉玉を見るのか?やだな。オイラは、大きな猫に発情はしないのだよ。他を当たってくれ。
「猫を傷つける者は、いずれ、人を殺傷するようになります・・この学園内は、アニマルセラピーの目的で、猫は自由に過ごさせています。
この猫は、ツーテールですね。ツーテールの猫は、人語を解するといいます。公的機関で調査をします」
「そんな。学園は自治ですよ」
「ですから、理事長の私が、再調査を命じます!ダーレスは、昔から、臣下に罪をなすりつける性癖がありましたね」
ザワザワザワ~~
「そう言えば、殿下、生徒会の失敗を、書記に押しつけたな」
「ああ、責任者は、殿下なのに・・・」
「まあ、じゃあ、ルイーザ様も、もしかして、じゃなくて、無罪?」
「猫ちゃん!猫ちゃん!しっかりして!」
オイラは、クリーム色の大きな猫、オイラのクッションが、泣き顔で、オイラに話しかけているのを最後に意識を失った。
おい、子猫が頭の上に乗っているぞ。
ああ、もう、春を10回経験した。10回目で、尻尾が二つに割れて、大きな猫の言葉が分かるようになったけど、こんなことなら、分からない方がよかったかもな。
☆マン男爵家
その後、オイラは、この大きなクッションの家で、暮らしている。
クッションから、お世話係に格上げをしてあげたぜ。
オイラのことを、『ニ゛ァーゴ』と呼びやがる。
「フフフ、お食事を、お持ちしましたわ。お魚を練ったものですわ」
「ミャー、ミャー」(わーい、やったー)
「ミルクもありますわ」
「ウニャー!ニャン、ニャン!」(気が利いている!大好き!)
・・・・
「食後は、運動ですわ。私、ニ゛ァーゴちゃんが長生きして欲しいの。猫じゃらしですわ」
フリフリフリ~~
チィ、まあ、遊んでやるか。
「ミャン!ミャン!ミャン!」(楽しいな。おい、何で楽しいんだ)
「あ、お父様」
「ニ゛ァーゴちゃんは、ルイーザと男爵家の恩人でチュ。はい、抱っこでちゅよ」
「ニ゛ァーゴ!」(おい、やめろ)
ストン!
「お父様、嫌がってますわ」
「そうか、この子のおかげで、ルイーザの無実が証明され、殿下達は、謹慎処分になったから、当主直々に抱っこをしてあげようと思ったのにな」
「それが、いけませんわ。猫は自由ですわ」
・・・おい、何で、この男、オイラに話しかけるときは、赤ちゃん言葉なんだよ。
意味不明だ!
早く、お散歩に行きてえな。
「ウニャ、ウニャ、ニャンニャン!」(ママー、お散歩だぜ。早く学園の手下に会いたいぜ)
「はい、はい、ハーネスを持って来ますわ」
ニ゛ャーゴは、いつのまにかに、ルイーザの事を母親と思うようになった。本猫も気がつかない。
子分達は、家猫に豹変したかつての親分をどのように思ったのか。知るよしはない。
しかし、毎日、行きたがっている様子がルイーザの日記に記録されている。
あながち、変な反応はされていないのだろう。
最後までお読み頂き有難うございました。