第9話 【突発コラボ】ずんばにスーパーマリオ併走!(後編)
「それじゃばにらちゃん、どれで勝負する~?」
「それはもちろん! やっぱりファミコンと言えばアレでございますよ!」
「アレって~? もしかして――アイスクライマ~?」
「違うわ! そんなマニアックなゲーム、誰も知らないバニよ!」
「なんでぇ! ポポくんとナナちゃん、スマブラ出てるじゃない!」
「出てますけど! そうじゃなくてですね! ほら任天堂と言えば!」
「任天堂と言えば~?」
「やっぱり世界の『マリオ』でございますよ!」
「あ、マリオね~!」
「というわけで! 今日はずんだ先輩と『スーパーマリオブラザーズ』の併走対決をやっていこうと思うバニ!」
ルールは簡単。
1時間でどちらが先までステージを進めることができるか。
禁止事項は「どこでもセーブ」以外に特になし。
ワープあり。鳩(リスナーがコメントで対戦相手の進捗を報告すること)あり。煽りあり。なんでもあり。
とにかく1時間後に先の面にいた方が勝ちとした。
実にシンプルな併走勝負。
お互いのゲームの腕前&知識が勝敗を決する、ゲーム配信系VTuberらしいコラボだ。当然、私のファンもずんだ先輩のファンも喜んでくれた。
ただし――。
「ちなみに、ばにらちゃんは『マリオ』はやったことあるん?」
「前に『ワープなし』の『どこでもセーブ』ありで、『全クリ配信』したことがあるバニです。それ以外では、これが2回目バニな」
「あらあら~? じゃあ、『マリオ初心者』ということですねぇ~?」
「なんバニか『マリオ初心者』って」
「ちなみにずんだは『マリオ』は初代から64まで、最低3回はクリアしてるでな。これは初心者のばにらちゃんにハンデが必要かしらぁ~?」
「煽ってくるバニなぁ! 大丈夫バニ!」
「けどばにらちゃんの『全クリ配信』て、10時間くらいかかってなかった?」
「配信ちゃっかり見てるんじゃねーですか! そうバニよ! 悪かったバニか! レトロゲーみたいなアクションは、苦手なんだバニ!」
そう。
実はレトロなアクションゲームを私はあまりやったことがない。
ゲーム配信系VTuberだが、やるのは最新のゲームがメインなのだ。
レトロゲーもするけれど、主にRPGしか触れてこなかった。
なによりミニファミコンに触るのがこれがはじめて。
小さなこのコントローラーではたしてうまくプレイできるだろうか。
つまり――この勝負は私にとって圧倒的アウェー!
「まぁ、ハンデが要らないって言うなら、ずんだは別に構いませんけどぉ~!」
「余裕バニな、ずんだ先輩! 絶対にキャンて鳴かしてやるバニ!」
「鳴くのはいったいどっちバニかねぇ~♪ それじゃあ、リスナーのみんなも待ってることだし、そろそろはじめよっか!」
「バニ! それではそれでは! ずんばに『スーパーマリオ』併走、開始バニ!」
私とずんだ先輩はDiscordのボイスチャットを切った。
「言ってくれたバニなあのワンころ! ばにらがレトロゲー苦手だって分かってて、煽ってくるなんて! 下剋上するから、みんな見ててくれバニ!」
「強がっちゃってまぁ、かわいいですねぇ、ばにらちゃんてば。まぁ、金盾配信でずんだが救ってあげたんだから、泣かせちゃってもいいよね!」
「「絶対に勝つ!!!!」」
通信が切れた瞬間に相手をディスるのも忘れない。
併走配信の様式美だ。
まぁ、背後にいるんですけれど。
お互いに丸聞こえなんですけれど。
かくして、リスナーたちをしっかり焚きつけて私たちは併走配信を開始した。
まずはステージ「1-1」。
ここはチュートリアルステージだ、あぶなげなくクリア――。
「でゅあああ! てめぇクリボー! 邪魔だぁ!」
(……あ、言ってる傍から死んでるバニな)
と思ったのに、いきなりずんだ先輩の悲鳴が響く。
レトロゲーが得意なずんだ先輩が「1-1」で苦戦するはずがない。
きっとコラボのことを考えてあえてミスったのだろう。おそるおそる後ろを振り返ると――青い顔をしてずんだ先輩が固まっていた。
「嘘でしょ。ミニファミコンのコントローラー小さすぎじゃない」
マイクに拾われないように小声で悪態を吐くずんだ先輩。
あ、これ、ガチで失敗した奴だ。
どうやらずんだ先輩もミニファミコンでの「スーパーマリオ」ははじめてらしい。
プレイする環境が変わればゲームの難易度も変わってくる。
(これはもしかしてワンチャンある?)
希望を抱いた矢先――私もジャンプのタイミングをミスって、穴に落下した。
仲良くふたり揃って「1-1」でゲームオーバー。
なんとなくだがレトロゲー併走コラボは泥仕合になりそうだった。
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はたして「川崎ばにら」と「青葉ずんだ」のどちらが勝つのか? どうやって勝つのか? 気になる方はどうか評価お願いいたします。m(__)m