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第70話 君は百合営業を感じたことがあるか?(後編)

 はたして私は金装備でエンドに戻って来た。

 黒い空を『エンダードラゴン』が舞う死地へと――。


「みなさん! お待たせしました! 川崎ばにらただいま戻りました!」


「ばにらちゃん! ばにらちゃんが、黄金聖衣を装備して帰ってきた!」


「ネタにのってこないでください、すず先輩!」


「ばにら! 金ぴかじゃねえか! あと、さっきからりんごとずんだが言ってる――なんちゃら聖衣がどうとかって、どういう意味?」


「あひる先輩! オタクじゃない貴女のままでいて!」


『(インドネシア語)ばにら社長! まさか黄金聖衣を身に纏って帰ってくるなんて! 流石は私の敬愛する社長です! とてもとても似合っています! エンドラ討伐が終ったら、ぜひ一緒に写真を撮らせてください! あぁ、本当に素敵!』


「ニーナちゃん! なにを言ってるのかさっぱり分からないけど――これだけは聞かせて! ドゥユーノウ、セイントセイヤ?」


「イエスアイドゥ! アイライクイット!」


「オッケー! セイントセイヤイズ、グローバルコンテンツ!」


 まったく緊張感のない再会だなぁ。


 ただ、今はなにも言うまい。

 まずは『エンドラ討伐』だ。(現実逃避)


 私の戦線離脱で攻撃の手が緩んだのだろう、未だ『エンダードラゴン』のライフは満タン状態。塔の上にも幾つか『エンドクリスタル』が残っている。

 はやく『エンドクリスタル』を破壊しなくては。


 とはいえ、「ないよりはマシ」の金装備。

 できればダイヤ装備と交換したい。


 私の装備はあひる先輩が集めてくれていたが――。


「ばにらすまん! まだ、『逆バニ刀』しか回収できてない!」


「オッケーですバニ! あとは自分で回収しますんで、あひる先輩は『エンドクリスタル』の破壊に向かってください!」


「それなんだけど――もう、『低速落下のポーション』の効果が切れちゃって!」


 わちゃわちゃとやっている間にあひる先輩のポーションの効果が切れていた。


 塔を『低速落下のポーション』を飲まずに登るなんて自殺行為だ。

 翻訳要員とはいえ、あひる先輩は私よりマシな装備をしている。

 彼女が抜けてしまえば、さらに討伐は難しくなる。


 戻ってきたが絶体絶命。

 あひる先輩から『逆バニ刀』を受け取った私は唸った――。


「塔の上の『エンドクリスタル』は残り二つ! どちらも弓で狙えない高さだ! これはもう、回復されるのを承知で『エンダードラゴン』に挑むしか!」


「なるほど……あと二つ『エンドクリスタル』をどうにかすればいいんだでな!」


「どうやら……ギリギリ出番に間に合ったようだね!」


「そ、その声はまさか!」


 そんなシリアス展開をブチ壊す声が二つ。

 さらにその声に、ノリノリで合せる声が一つ。


 流石は特待生同士。

 息ぴったりでいいですね。


 まーた茶番がはじまる。(白目)


「黄金聖闘士――イヌ座の青葉ずんだ!!!! 見参!!!!」


「同じく! 黄金聖闘士――ネコ座の津軽りんご!!!! 参上!!!!」


「黄金聖闘士だ! 黄金聖闘士が来てくれたぞ! やったこれで勝つる!!!!」


「スズちゃん! 『エンドクリスタル』の破壊は、僕たちに任せて!」


「殴ってボコってくればいいんだでな! 大丈夫! ブランチマイッチングで、土と丸石はいっぱい持ってるでな! どこまででも登ってあげるから!」


「頼もしいぞ! さすが黄金聖闘士! 生駒も今から金装備にしようかな!」


 すず先輩、惑わされないで。

 アンタまで紙装備にしてどうするんや。


 なんと私を追っかけて、美月さんとりんご先輩がエンドにやって来た。

 ちょうど破壊しなくてはいけない『エンドクリスタル』は二つ。素手攻撃が危険を伴うことは身をもって知っているが――ここは二人にお任せするしかない。


「ずんさん! りんご先輩! お願いできますか!」


「「まかセロリ!!!!」」


 息ぴったりで返答すると、二人は塔を登り始める。


 流石は「ゲーム特化型VTuber」の特待生。

 美月さんもりんご先輩も、あっという間に塔の頂上へと到達し、『エンドクリスタル』へと肉薄する。こちらがダイヤ装備を集める方が遅いくらいだった。


「喰らうでな――鳳凰幻魔拳!」


「なんでフェニックス一輝! 主人公じゃないですやん!」


「いくよー! オーロラエクスキューション!」


「こっちも! いや、黄金聖闘士の技だけれども!」


 そこは『ペガサス流星拳』じゃろがい。


 こっちは必死になってエンドラ討伐してるのに――楽しそうでなんかずるい!


「あべし!!!!」


「ひでぶ!!!!」


「やられ方が違う漫画!!!!」


 二人の尊い犠牲により『エンドクリスタル』が破壊された。


 回復手段を失った『エンダードラゴン』。

 空飛ぶ黒竜に向かい、すず先輩とニーナちゃんの神AIMが炸裂する。

 二人はライフゲージをすごい勢いで削っていく。なんていうか「『エンドクリスタル』を破壊する意味あった?」と思うほどの、それはそれは恐ろしい矢の雨だった。


 そんな味方の猛攻の中、ようやく私は金装備からダイヤ装備に換装する。


 その時だった。


「あぁ! エンダードラゴンが止まり木に!」


『(英語)今がチャンスです! 全員で近接武器でたたみかけましょう!』


「待ってたぜェ!! この”瞬間”をよォ!!」


「あひる先輩! ツルハシ持ってそれ言うのは反則ですバニ!」


 空を飛んでいた『エンダードラゴン』が止まり木に着地する。


 これで近接攻撃が届く。


 無限弓からネザライトの剣に切り替え、すず先輩とニーナちゃんが殴りかかる。

 あひる先輩が鉄ツルハシで特攻する。


 そんな中を、私は『エンダードランゴン』に向かって一直線に疾駆すると、えるふから預けられた武器をその頭蓋に向かって振り下ろした。


 ありがとうえるふ。


 お前にもらったダイヤの剣。

 ちゃんと見せ場があったよ。

 だから――この技はお前に捧げる。


 お前の大好きな漫画の技で、この『エンドラ討伐』を終わらせるバニ。


「喰らえぇぇ!!!! 飛天御剣流九頭龍閃バニィ!!!!」


「きちゃぁあああああ!!!! 飛天御剣流だぁあああああ!!!!」


「もうどうにでもなれバニ!!!! インドネシアのリスナーのみなさん、ごめんなさいバニ!!!! けど、これがDStarsなんじゃぁああああ!!!!」


 往年の名作剣客漫画の必殺技が『エンダードラゴン』の頭を砕く。


 ジャンプ斬りでダメージ増加。

 さらに、殺意マシマシのエンチャント効果。

 その一打で『エンダードラゴン』の残りライフは削り取られた。


 止まり木から飛び立ち暗黒の空を飛び回る『エンダードラゴン』。

 その身体から白い光が漏れ出すと――マインクラフトの世界を支配する暗黒竜は、爆発四散してついに息絶えたのだった。


 私たちが囲っていた止まり木の下にワープホールができあがる。

 それは、最後の戦いが終った証拠――。


「……か、勝った! 勝ったよ、すずちゃん! ばにら! ニーナちゃん!」


「第三部完! ビシィッ!」


「いや、もうパロディはええですやん! 集英社から怒られますって!」


『(インドネシア語)かっこよかったですばにら社長! 最後の飛天御剣流、本当にサイコーでしたよ! クールです! 一生着いて行きます!』



 私たちはついにマインクラフトをクリアした――。



『進捗達成! エンドの解放!』



 画面に表示される進捗達成のメッセージ。

 それと共に、世界の支配者の断末魔が、サーバー全体に響き渡った。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 そしてタイトル回収。

 ピンチに仲間が駆けつける展開は王道ですよね。(おめめぐるぐる)

 ノリノリでずんだとりんごに即座にあわせるすずちゃんも流石。VTuberは、これくらいの応用力が無いと務まらないのであった。


 それにしても、ジャンプネタはやっぱり便利ですね――。

 

 聖闘士星矢はグローバルコンテンツ! コスモが燃えた方は――ぜひぜひ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m

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