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【二部完結】VTuberなんだけど百合営業することになった。  作者: kattern@GCN文庫さまより5/20新刊発売
第3章 【運営案件】レトロゲータッグマッチ選手権!
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第20話 逆転優勝こそ対決動画の華(前編)

 最終ゲーム直前のチームのポイントは以下の通り。


 赤チーム(秋田ぽめら&八丈島うみ)  : 5pt

 緑チーム(羽曳野あひる&石清水しのぎ): 4pt

 青チーム(生駒すず&五十鈴えるふ)  : 3pt

 黄チーム(青葉ずんだ&川崎ばにら)  : 2pt


 うみとぽめら先輩の赤チームがぶっちぎり。

 次の試合で3位以下にならない限り優勝確定という状況。


 緑チームは次のゲームで1位になっても、赤チームが2位なら同点1位。

 青チームも赤チームが2位なら総合得点で負けて2位。

 そして、黄チームは次のゲームで1位になっても、赤チームにポイントで勝てない状況だった。


 最終ゲーム開始前のアイスブレイク。

 動画に「休憩中」の文字を出しつつ、マイクを切ってしばし歓談。


「まぁ、変に白黒つけるより、同点1位の方がいいか」


 ずんだ先輩がぼやくように言った。


「勝負事は真剣にやらなくちゃ! 仲良く並んで一等賞なんてダメですよ!」


「……アンタって、ほわほわしてるようで結構シビアよね」


「……はい?」


 あくまで勝敗はしっかりと決めるべきだと主張する私に、「分かったわ」とずんだ先輩があきれ顔で頷く。


 なにが分かったのだろう?


 不思議に思う私の前で「ちょっといいかしら」と彼女がBちゃんに歩み寄る。


「最終ゲームだけれど、今のままだと私たち黄チームの単独優勝があり得ないわ。これだと動画的には面白くないわよね?」


「まぁ、確かにそうですね」


「どうかしら、最後のゲームの得点を倍にするのは?」


「オーソドックスですがいい提案ですね!」


 得点2倍なら1位は6点加算。黄チームでも合計8点になる。

 2位の得点が4点なので赤チームと緑チーム以外が2位なら単独優勝できる。


 冴えた提案にBちゃんはすぐさま飛びついた。

 それと同時に休憩終了のアラームが鳴る。


「それでは最終試合をはじめます。ですが、ここで盛り上げるために特別ルールを追加します。最終ゲームの加算点数は――なんと2倍です!」


「えー! せっかく赤チームが勝ち確だと思ったのにー!」


「はい。そうなると場がしらけますよね。最後まで緊張感を持って勝負に挑むためのテコ入れです。これで、黄チームも単独優勝の可能性が見えてまいりました」


「やったバニ! 次こそ1位になって、優勝バニなずんだ先輩!」


「その通り! DStarsで誰が一番のレトロゲーマーか、白黒くっきりぱっちりお見せしてさしあげましょう、でございますわよ!」


「おふたりとも負けフラグ立てるの上手ですね」


「「負けフラグとか言うな!!」」


「さて、最後のゲームは『スーパー』じゃない方の『マリオ』! 『マリオブラザーズ』を協力プレイしていただき、ふたりの得点の合計で勝負します!」


 最終ゲームはまさにレトロゲーム企画のトリを飾るにふさわしい名作ゲーム。

 さらに、コンビ勝負のコンセプトを最大限に活かすゲームだった。


 元祖「マリオブラザーズ」。

 土管から出てくる敵キャラを、下からどついて転がし蹴り飛ばすアクションゲームだ。忘れられがちだが、元々マリオは横スクロールアクションゲームではなく、スコアアタックをするゲームなのだ。


 シンプルかつ奥深い「マリオブラザーズ」は、リスペクトもこめてマリオシリーズの多くでミニゲームとして移植されている。ファミコン版をプレイするのははじめてだが、ミニゲームならプレイした経験があった。


 これなら少しくらいは戦える。

 いや――絶対にこれで逆転してみせる。


「それでは最後のゲームを前に、みなさん意気込みをどうぞ!」


 まずは1位の赤チームにBちゃんが視線を向ける。


 得意満面、すっかり調子に乗っているうみ。

 彼女はふふんと鼻を鳴らすと胸を反らせた。

 そんなうみの横で、ぽめら先輩が鼻をかきながら苦笑いをする。


「まぁ『ドンキーコング』に比べれば、排水溝の中なんて狭い世界ですよ。軽くひねってやりましょう。ねぇ、ぽめら先輩?」


「あははは、完全に調子に乗ってますねこれ」


 続いて、青チームに話が振られる。


「こう見えて、生駒は『マリオブラザーズ』は得意なんですよ! ゲームボーイアドバンスのマリオには、必ず『マリオブラザーズ』のミニゲームが入ってたからね!」


「私もそれやってましたー! これならなんとかやれると思います!」


 すず先輩とえるふが経験者だとここで暴露する。

 ゲーム機は違うが、これは大きなアドバンテージだ。


 けど――すず先輩、アンタ本当に現役女子高校生なのかい? なんでゲームボーイアドバンスなんて古いハードを知っているの?


 17歳なら3DSの世代だと思うんだけれど?


 続いて、緑チーム。


「うーん、拙者は、ちょっとやった覚えがないですねぇ。あひる先輩ごめんなさい、拙者はお役に立てないかもしれません」


「大丈夫だよしのぎ。あひるたちはここまでよく頑張ったよ。ベストを尽くそう」


「……あひる先輩!」


 こちらは既にあきらめムード。壊滅的にゲームセンスがないことを自覚したあひる先輩がそう言うと、素直にしのぎは従った。


 どうでもいいけど、なんかふたりとも距離が近い気がする。

 いや、しのぎの奴があひる先輩にそれとなく距離を詰めているのか。

 しかもなんだ、その恋する乙女のような顔は?


 こいつまさか――!


「では、最後に残った黄チーム! 意気込みをどうぞ!」


 同期の怪しい素振りに不安を感じた矢先、Bちゃんから話を振られてしまった。

 気持ちを切り替えると、私はすっと息を吐いて川崎ばにらの仮面を被る。


「あー、『マリオブラザーズ』? ばにーらたちは、つい先日『スーパーマリオブラザーズ』をやったばっかりバニですから物足りないですな。ねぇ、ずんだ先輩?」


「まったくもって、おっしゃる通りでございます」


「まぁ、軽くひねってやりますよ。ねぇ、ずんだ先輩?」


「まったくもって、ばにーらさんの、おっしゃる通りでございます。この勝負、私たち、負ける気がいたしません。対戦、よろしくお願いいたします」


 先日の併走配信を引き合いに出してビックマウスを叩いておく。

 すると満足げに頷いたBちゃんが「ありがとうございます」と頭を下げた。


「ほんと、ふたりは負けフラグを立てるのお上手ですね」


「「だから負けフラグじゃない!!」」


 かくして、最終ゲーム「マリオブラザーズ」がはじまった。

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