プロローグ
完結済みのお話です。
一気に読んでいただけます。
既に載せている『カイルザークの森』連載中の『魔憑きの少女は女誑しの捕縛師に愛される』と同じ世界となっております。
よかったら読んでみてください!
あんまりじゃないっ。
あたしを追い出して、一体どこへ行っちゃったのよっ。こんなに探してるのにちっとも見つかりゃしないわっ。
あたし、あんたがいなかったら生きていけない。このままここで悲しい気持ち抱いたまま空気に溶けていくってぇの?
そんなの、冗談じゃない!
はぁ、あの時無理にでも着いて行けばよかったのよ。あたしったら変なところで聞き分けがいいんだもの、バカよね。
だってさ、あんまり我侭言ってあなたに嫌われたくなかったのよ。やだ、健気だわ、あたしったら! ちょっとは惚れ直してっ。
って、こんな場所でそんなこと言ってたって仕方ないわね。早く探しに行かなくちゃ。どうしてこんなときに限ってあたしの力、使えないのかしら。半人前である自分がこんなに情けないと思ったのはじめてだわっ。あなたといたときは、半人前の自分を可愛いと思ってたの。だって、あなただって半人前。二人揃ってやっと一人前、って、なんだか素敵じゃない? だけど駄目ね。こんなに簡単なトラップに引っ掛かって抜け出せないんだもの。実体が出せるようになるにはもう少し時間が掛かるって言ってた。今すぐに飛んでいきたいのに、あなたの居場所も見えないのよ? こんな屈辱ってないわ!
ああ、あの男達。絶対に許せない! あたしからあなたを奪って、その上あたしにこんな思いをさせるなんてっ。今に天罰が下るんだから。いいえ、あたしが裁いてあげるわっ。あなたの元に戻れたそのときには、あたしの力でこてんぱにやっつけてやるっ。そんでもってあたしはあなたに誓うわ。もう二度と離れ離れにはならない、って。例えあなたがなんと言おうと、あたしはあなたなしでは生きられないんだから。
……あら?
あらら?
まぁ! こんな場所に人間がやってくるなんて! しかもちょっとハンサムだわっ。……っと、そんなこと言ってる場合じゃない。助けてもらう大チャンスよ! あたしってほんと、運が強いわっ。
問題は、彼にあたしの姿が見えるかどうかね。ほんとに、どうして人間って人によって見えたり見えなかったりするのかしら。あたしからは全員見えてるっていうのにさっ。
ちょっと!
そこのお兄さんっ!
ねぇ、助けてよーっ。