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「――――で、俺達にどうしろと言うんだカーラ」

 最初の一撃で戦いを諦めた魔王ラ・カーラは神へ復讐する事にした、グリーチンのジルの戦いを影からこっそり覗いた彼女はやっぱり戦意を失ってしまう。

 その諦めた彼女は傷ついた身体を引きずりつつ、爆炎に紛れて水晶園を囲んでいる穴へ逃げ込みながら考える。そして魔界へ逃げ帰るか戦うかを悩んで、決断をしたカーラは穴の中で何やらゴソゴソと準備をしてから立体映像で騒ぎだしたのだ。

「水晶園ごと首都を吹き飛ばされたくなかったら! この私に……」

「恥ずかしい女だな色んな意味で」

「なんだってもう一度言って見なクソ女!」

「お前は恥ずかしい女だって言ったんだ」

 銀の夜明け団、帝国を揺るがす革命の戦士(予定は未定)、レヴィシアも暴れてたがコソコソ隠れず常に先頭に立って戦ってきた。回りがどう評価してるか知らないが、団長としてのプライドと見栄を彼女は維持してきたつもりだ。

 布地の少ない服について、隠れず表に出てこい蛇女、それでも魔王の端くれかとか拘束されている憂さを晴らすように、レヴィシアは罵詈雑言を浴びせかけていく。

「余り調子に乗らない方がいいと思うんだが」

「今さらどうなったって知るもんか、精々派手に暴れるんだな三流魔王」

「このガキャーーーーー、ジルが居なければあんたなんか瞬殺だよ!」

「やれるものならやってみろーーー三流魔王、露出魔、淫売女、腰抜けめーーーー」

「ぶっとばす、もう全部ぶっとばしてやる! 交渉なんか止めだこんな都市は……」

「止めないか2人とも!」

 カーラがどこにどんな仕掛けをしたか知らないが、本当に吹っ飛ばされては堪らないので慌てた大司祭は、立体映像とフルアーマーを着た女達の間に立って止めに入る。

「師匠もなんか言ってやって下さいよ!」

「そうだな……」

 まずレヴィシアから、逃げるなよ暴れたらまた縛るからなと念押ししてから、ジルは彼女を縛っている骨蛇を影の中に仕舞って解放した。

「ふんやっとか」

 拘束が解かれるとレヴィシアは固まった体を解すように体操を始め、その様子を横眼で伺いながらジルはカーラに話しかける。

「なにが目的だカーラ、なにが欲しい?」

「此れをみなジル、私が持ってるこれをよーーく見るんだよ」

「……なるほどな」

「あれは何なんだジル?」

「私も始めて見る物ですね」

 カーラが手に持って立体映像越しに突き付けるのは、野球ボール位の赤くて丸いダイヤモンドカットの魔法石で、魔法石の中には何やら炎らしい物がちらちら見える。

「あれはシティインクリネーションボムだ」

「どんな物なんです?」

「カーラの上司は四大魔神の1人、炎獄の支配者、極炎竜神アルティメットフレアドラゴンなんだが、そいつが最後の切り札として配ってる戦略兵器があれだ。あれ一つで並みの都市なら焼き尽くせる位に凄い魔法石なんだぞ」

「なるほどな」

「そうですか。ははははは……」

 正体が分かれば目的も分かる。グリーチンはカーラに怒りたいが、召喚したのは自分なので強く言いにくいから丸投げする事に決定、神と魔王が向き合いやすいように立体映像から少し距離を取って行く末を見守る。(不安だなぁ大丈夫かなぁ……)

「その程度で俺を脅せると思うのかカーラ?」

「その程度だと! C・I・Bを今すぐ爆発させてもいいんだよジル」

「やって見ろよカーラ自殺する覚悟があるならな」

「この魔法石が一つでないとしたらどうだい?」

「水晶園を囲むようにして6つ置いてあるな、六芒星の魔術にして破壊力を上げたいんだろうがもう無いと思うぞ」

「なんだって!!!!」

 地下道を慌てて走り出した立体映像は、何かを探すようにキョロキョロし続いて「泥棒ーーーーーーそれは私の魔法石だぞ返せーーーーーーーー」と騒ぎだす。

「何が起きてるんだジル?」

「此れだよこれ」

 ジルが手を翳すと影から魔王ラ・カーラが持つのと同じ、C・I・Bを6つ咥えた骨蛇達がニョキニョキと現れた。

「さすがと言いますか何と言いますか……」

「カーラは逆らう相手が悪かったようだな」

「よくも、よくも……」

 カーラは今にも泣き出しそうだった、恨みまがしい鋭い蛇の目でジルを睨みつけつつ何かを言おうとするが、言葉が出て来ずただ怒りを込めて睨むだけになる。

「畜生め! こうなったらーーーーー」

「ああっ」

「突っ込んで来たぞジル!!」

 逆上して考えるのを止めたカーラは、両手でしっかり持ったC・I・Bに魔力を注いて起爆寸前の状態にしつつ、穴から飛び出してジルに頭から突撃を敢行。

「私と一緒に死にな! クソ神めーーーーーーーー」

「やれやれだ」

 よっはっとジルは何やら屈みながら手印を結び始めて、組み終えたら地面に両手を当ててつつ「秘儀モジャモジャの術ーーーー」と高等忍術を発動させた。

 (あの術は5代目様の!!!)

 両手を当てた所から正面の半円状へ一斉に草が生えてくる。此れは植物ではなく魔法でそれらしいのに似せて作られた物であり、草むらは飛び込んできた来た獲物を捕まえようと長く葉を伸ばしてレヴィシアへ絡みついていく。

「こんな物で私を!!!」と褐色肌の蛇女は抵抗しようとしたが、両手でC・I・Bを抱えているので思うような抵抗が出来ない。赤い魔法石に魔力を送って安定させてないと爆発してしまうからなのだが、「くたばれクソ神ーーーーーーー」と草に絡み取られる前にカーラはそれを投げつけて来る。

「よっと……」

 モジャモジャの術を右手から放出する魔力で支えつつ、左手を魔法石に向けたジルは魔力を放出させてそれを捕まえた。

「あっああああ……」

「こんな危ない物は処分させて貰うからな」

 カーラの手から離れて爆発寸前になった魔法石からは、ゴウゴウと大きな炎が昇り始めている。その下からジルが呼び出した骨蛇が現れると、魔法石を咥えつつ勢いよく天に昇って行き気付いたグリーチンが何か言うより先に、ドッゴォーーーーンと首都全土を震わせるような轟音と共に大爆発をしてしまうのだった。

「絶対に許さない殺してやる殺してやる……」

 爆発の衝撃で氷点下だった周囲の空気が少し暖かくなる。さすがに黙っていられないと帝国軍は騒ぎ始めたようだがそれは後にするとして、呪いの言葉を掛ながら睨んでくる魔王ラ・カーラに近づいたジルは、落ち着いて話をしないかと彼女に提案してみた。

「何を話すって言うんだいさっさと私を殺しなよ」

「何のために?」

「なんのって……」

「ややこしいのでここは私に任せて貰えないでしょうか?」

「そうかなら任せる」

 青い肌に仮面をつけた大司祭がそう言うので任せたジルは、レヴィシアと一緒に少し離れた所へ行って焼け残った椅子を立たせるとそこに座る。


 グリーチンが何のかんのと魔王と長めに話し合い、どうにか宥めて魔界へお帰り願った頃の事。空で炸裂した大爆発を聞いてギャリギャリギャリと戦車が動き、ドスンドスンとゴーレムが歩いて、ズラズラワーワーと陸軍の兵士達が水晶園に集まって来た。

「次は彼らですか、どうするんですか師匠?」

「どうするって聞かれても困るんだが。なぁ……」

 一重二重にと水晶園を取り囲んだ軍隊を眺めながら、その中心にいる3人は首を傾けつつ大いに悩んでしまう。右側にいる大司祭に縋られた神は、左側にいるテロリストの団長へと丸投げして「私は何も悪くない! 全部お前らがやった事じゃないか」と言い返されて本当に困ってしまった。

「彼奴らは話して理解すると思うか?」

「しないでしょうね。テロリストがここに居るわけですし」

「レヴィシアを差し出す訳はいかないし……」

「当たり前だ! 私が倒した皇帝が偽物なら、私は罪に問われることは何もしていない事になるじゃないか。全て闇鬼衆が仕組んだ事なんだろ」

「そうなんだよなぁ俺達はどうすればいいんだ大司祭?」

 黑いフード付きローブを被っている神に、赤い全身鎧を着た女性と、ボロボロの司祭服を着た魔神族はお互いに責任を押し付け合っている。3人は押し付け合った末にやはり彼がどうにかするべきだと、2人はグリーチンへ詰め寄った。

 この構図は大司祭がテロリストに迫られるように見えてしまう訳で……

「動くんじゃないそこの2人! 大司祭を解放して両手を上げろ!」とか帝国軍の隊長らしい人に、ジルとレヴィシアは脅されたりするのである。

「逃げるか」

「1人だけ影に潜って逃げるのは無しだからなジル」

「面倒くさいなそれ……」

 向けられる60㎜戦車砲、戦闘用ゴーレムが撃ちそうな魔法攻撃、兵士達が持つ無数の銃口は今にも火を噴きそうで、魔導士らしき人は何かの詠唱を始めている。

 (嫌だなぁ面倒だなぁ……)とジルが悩んでいると、何処かからグワォーーとドラゴンの吠える声が聞こえて来た。

「なんの声だ?」

「地上のでは無いようだな」

「――――ツインヘッドゴルドラゴンです師匠、ほらあれっ!」

「あああれか……」

 大声で吠えたのはオルタナム城の方から水晶園に急行する飛行竜の編隊。ゴルドラゴンを中心にワイバーン改を加えた9体が飛んでいて、殺気だった兵士達を威圧するように繰り返し吠えながらそれらは水晶園の上空を旋回する。

「あの黄金竜は闇帝専用なんだよな?」

「その通りだ」

「という事は本物が来たと考えていいのか?」

「そうなるだろうな。闇帝に斬り掛かるんじゃないぞレヴィシア」

「私は銀の夜明け団で団長なんだが……」(まぁいいか、革命を起こす理由は何か消えたみたいだし、闇帝様の面構えと言うのを拝んでやろうじゃないか)

 (あっあの御方はぁーーーーー)

 空中を旋回して見定めつつ理解した闇帝は慌てて、水晶園の奥にある爆風で焼け焦げた女神と魔神像の前にゴルドラゴンを着地させると降りようとした。

 ドテッと闇帝は何故か、黄金の鱗をしたドラゴンの背中から転げ落ちる。ゴルドラゴンは大きいので地面に伏せてもその高さは、2mを超えるのだが普段の闇帝なら颯爽と飛び乗ったり降りたりと苦にはならない筈だ。

 なのに闇帝は転げ落ちたその姿はまるで……

「闇帝様!」とゴルドラゴンへ一緒に乗って来たらしい、ナース服を着た金髪ダークエルフはそれに続いて飛び降りると相手に駆け寄って行く。

「所詮は闇帝も男という訳か」

 ダークエルフは美人でナース服は短いが、「彼女は魔界の名医でナスメリヤという高位魔神族だな。魔王カーラと似たようなもんだ」とジルは言う。

「よくご存誌ですね師匠」

「彼女は有名人だからな。それにしても……」

「儂に触るでない……はぁはぁナスメリアよ」

「ですがっ!」

 助け起こそうとしたダークエルフの手を払い除けた闇帝は、左手に持った杖を突きながらどうにか立ち上がってゆっくりと歩き出す。


「霊体癌か闇帝はいつ発症した?」

「4年ほど前に発症されました闇帝様はもう長くありません」

「4年も耐えたのか」

 (なんて事だ此れなら偽物の方がまだ闇帝らしいじゃないか……)

 王冠は無く、着ている服は病人が着るような簡素な物、やせ衰えた金髪の老人は左手の杖を前に付くと左足を前にだし、それに力を入れて右半身を引きずるようにしながら一歩ずつジルの方へと闇帝は近付いて来ていた。

「人払いだグリーチン」

「お任せを。水晶園に集まっている兵士達よ……」

 ジルの命令を受けて水晶園の外へと飛んだグリーチンは、各隊長とか責任者に話をして包囲網を解くと帝国兵達を引き上げさせて行く。

「この国難の……際にお、いで頂けるとは、はぁっはぁなんと言うなんと……」

 皇帝の右足から右手までは魔法石の様に結晶化して、使い物にならない。その影響は肺にまで達しているのか闇帝の声は弱々しく掠れ気味だった。

「もう歩くなラクレスそこに座れ」

 右手を翳して黑い椅子を引き寄せたジルは、闇帝の側に置くと座るように命じる。

「ですが」

「座れと言った、その体では長く歩けないだろう」

「申し訳ございませぬ」

 ジルが近づくとやつれた老人はどうにか動かせる左手を、震わせながら差し出して来るので神はそれを握り返した。

「よくぞよくぞ……」

 ジルの手に縋く闇帝は泣いているかの様であった。建国時から今日まで何百年という長い年月をこの帝国に捧げ、戦争とか政界の魑魅魍魎と戦い続けてきた闇帝にとって、唯一絶対に信頼を置けるのがジルという神になる。

「余ほど煮詰まっているらしいなラクレス。俺は追い出された覚えは無いぞ、状況が許さないので距離を置いたが情報は集め続けていた。情報を集めていたから俺は……」


 (たった数歩を歩いただけで息切れか、私はこんなのを殺すために……)

 闇帝と話しているジルの後ろ姿を見つめながら、レヴィシアは突然「はっははは、あはははははははは」と笑い出す。

「何だこれは、此れは一体なんの茶番なんだ新政、ジルでも誰でもいい誰か私に教えてくれサイラスにトーマス、銀の夜明け団はなんの為に戦って来たんだ」

 天を仰ぎ、周囲を見回して居ない誰かに話しかける、酩酊したようにフラフラとレヴィシアは彷徨い始めた。その様子はまるで糸の切れた操り人形のようであり、何もせずに放っておくと彼女は壊れてしまいそうだ。

「どうかレヴィシアを救ってやって下さい。あれは……」

「言われなくても分かってる。お前の計画のために造ったホムンクルスだな、俺が居なければ偽物を殺した後にテロリストして処刑される予定だった」

「その通りで御座います」

「やれやれだ。ナスメリア此れを……」

 そう話したジルは骨蛇で影から取り出した瓶を、闇帝の側にいる看護婦に渡す。

「此れは?」

「万能薬だ」

「まさかエリクサーこんなにも沢山!」

「知っていると思うが少量を様子を見ながら一口ずつだぞ、魔結晶化症候群は治せないが一時凌ぎにはなる筈だ。残りはお前にやる」

「ありがとう御座います。ほら闇帝様……」

「こっちはいいが、あれはどうするかな……」

 (俺的にはえーーーーーーーって感じなんだが。おかし過ぎだろ、幾ら目的を無くしたとは言えあの偉そうだった団長がだぞ……)

「あはははは、あはっあははははは」

「ラクレス! お前はレヴィシアに自壊装置を付けたのか?」

 《自壊装置とはその通りの意味で、特定の条件で発動しホムンクルスとかキメラ達を死なせてしまう安全装置のこと。》

「付けておりません」

「じゃあなぜああなる催眠術とか洗脳魔法は?」

「何も……してははぁはぁおりませぬ。あれは……」

「もういい話すな、話さずにじっとしてろラクレス」

 フラフラと彷徨いながら進んだレヴィシアは、水晶園の回りに空いた大穴の前まで歩いて来た。(ここから落ちれば死ねるかなぁ)とか、(穴の深さが足りないか? 頭から落ちればこの深さでも……)等と、彼女は底を覗きながら考えてしまったりする。

「此れは邪魔だな」

 そう言いつつ彼女は両手で頭から兜を引き抜いた。赤い色とその兜に付いている銀色をした太陽の飾り、この色と飾りは組織の象徴であり彼女の誇りだったが「改めて見ると変な色と形だな」と、レヴィシアは手に持った兜を穴へと投げ捨てる。

「私なんか生きていても……」

 ジルには理解できないが、思いつめた人には優しく接しなければならない。穴の淵ギリギリに立つレヴィシアを驚かすと落ちてしまいそうなので、途中に落ちていた彼女の長剣を拾いあげつつゆっくりと近付いて行く。

 (――――ってあーーーーーーーー)

 彼女を気遣いつつ歩いてたらジルが到達する前に、炎爆の戦乙女は頭から穴の中へと落ちてしまう。(なにか声を掛けるべきだった)慌てて骨蛇を呼び出そうした神だったがその必要は無さそうなので、レヴィシアが地上に上がって来るのを待つ事にした。

「なぜ私を助けた猛雷、死なせてくれればいいのに……」

「何となくだよ何となく」

 蒼雷の軽鎧を着た忍びがFボードに乗って穴の中から浮き上がる。両手を目一杯伸ばしてフルアーマーを着た女性を抱えている男は、持ちにくいのか地上へ来ると直ぐに着地してレヴィシアを地上に降す。


「お前は私を殺すつもりじゃなかったのか?」

「それが俺の任務だったからな」

「じゃあどうして?」

「短い付き合いとは言え共に戦ってきた仲だ、自殺なんて下らない終わり方にはして欲しくない。団長はなぜこんな事をしたんだ」

「何故ってそれは……」

 立ち上がった戦乙女は元副団長に向き合うと、皮手袋を嵌めた震えている両手を何かを求めるように突き出していく。

「なんだそれは? 俺に愛の告白でもするつもりかよ団長」

「変態めそうじゃない。私の両手は……」

 【人の血で汚れているんだ】とレヴィシアは言う。眼に涙をためて今にも崩れそうだが我慢しつつ「私は此れまで何のために戦って来た、お前は答えられる筈だぞ猛雷」と銀髪の女性は重ねて話しながら相手の返事を待つ。

「何故そんな急な考えになる?」

「皇帝は放っておいても何れ死ぬし、私は偽物を殺すために作られた偽人間だ。こんなに馬鹿げた話があるか? 私は何人殺してきたと……」

「あーーーそれはそのぉ」

 (泣かないでくれぇ、俺にどうしろって言うんだよーーー)彼女を直視できない猛雷は空を見上げながら考えた。

 (俺には立場ってもんがあるし、任務の内容は話せない。団長より俺の方がずっと汚れているんだが困ったな……笑って元気づける×、真実を話す×、同情なんかしても恨まれるだけだろうし、同じように泣いてみるとか? イヤイヤうーん……)

「答えられないのか猛雷? 私は何百人もの命をこの手で奪ったんだぞ」

 (こいつの精神年齢は……25式バレット号改を両断してリーダーの家を爆破し、現金輸送車やら軍の輸送部隊を襲ったりとか色々やったもんな……)

「え〜〜だからな、そのぉなんだほらっ」

 襲撃計画を立てたのは殆どが元副団長・猛雷であり、後ろめたさが山のようにあって彼は逃げ出したい衝動に駆られるが、そんな恥ずかしい真似はプロとして出来ない。

 掛ける言葉が無くなり2人で見つめ合うこと一分弱。

「あの〜〜もし宜しければですね」

 悩んで悔やんで後悔する男女の横から聞こえた、少し前に聞いた事があるような間の抜けた声、彼女らが横を向くとそこにはローブ姿の男が立っている。その男は自分を指差しながら「そういう時はですね、神に縋って懺悔するのがいいと思いますよぉぉぉ」と2人に提案して行くのだった。

「ジルに懺悔するとか質の悪い冗談だな」

「逆に悪化しそうなんだが……」

「まぁそう言わずに騙されたと思ってほらどーぞ」

「ジルを崇めるなんて変な気分になる」

「懺悔させて何かに利用するつもりじゃないのか?」

「そこまで言わなくてもいいだろ」

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