異世界転生のやり直しを要求する
かつて、異世界へと転生したひとりの男がいた。
男が生まれたとき、世界は魔族に脅かされ、人々は恐怖に包まれていた。
男は人々を見て思った。
これは魔王を倒したらハーレム作れるやつじゃねーか。と。
男は旅に出た。
仲間ができなかったので魔王をひとりで滅ぼし、
魔王が死に際に異界より呼び寄せた邪神もひとりで滅ぼし、
邪神の降誕により悲鳴を上げた星の声により目覚めた星神もひとりで滅ぼし、
ついに世界を滅亡の危機から救った。
さて、
人類を脅かす存在もいなくなったし、もういいかげん、ハーレムでも作ろうかな。
と男が思ったのと時を同じくして、
魔王が復活した。
ハーレム作る方が大事なので世界はもう救いたくありません
なんて今さら言える雰囲気ではなかった。
男は再び旅に出た。
誰も戦いについて来れないのでひとりで復活した魔王を滅ぼし、
魔王の残滓を依代に復活を果たした邪神もひとりで滅ぼし、
邪神復活で悲鳴を上げた星の声に応え再び蘇った星神もひとりで滅ぼし、
その後もなんやかんやあって
都合100回、ひとりで世界を救った。
そして昨年、
ついに星を完全に埋め立て、人工惑星化することで、星神を完全に滅ぼしたのだった。
英雄の中の英雄、
ジェラキュール・アザゼリウス・ラグナガイン。
108歳にしてようやくの完全勝利であった。
英雄の中の英雄は、世界中の人々に惜しまれる中で永遠の眠りについた。
老衰であった。
歴史書にはこう記される。
その男の生涯には
ただの一度の敗北もなく、
ただの一度の敗走もなく、
そして、その男は終生、神に操を捧げていた。と。
男は終生、童貞であった。
死後、男はその功績を認められ神の園へと召し上げられた。
神は問うた。
おお、英雄の中の英雄よ。生涯すべてを隣人に捧げし真に偉大なる英雄よ。
汝の望みを言うがいい。その働きに報いたい。お前が望むものならば、なんでもひとつ叶えてやろう。
男は答えた。
「異世界転生もう一回やり直させてください!!!」