死神と始まり
「やぁ、久しぶりだねアリア」
「急に呼び出してすまないなストラード」
彼女は僕の知り合いのアリア・イノセント。セミロングの黒髪に整った顔立ちは10人に聞いたら10人が美少女と答えるだろう。そんな彼女はとある組織のボスをしており、可愛らしい顔立ちとは真逆の威圧感を感じることが出来る。
ちなみに僕は彼女がリーダをやっている組織のことはもったいぶってるのではなく、本当に詳細を知らない。何たって、彼女とは偶然の出会いを通して知り合っただけの関係性でお互いのことはそこまで知らないのだ。
「で、今日は何で僕を呼んだんだい?」
「あぁ、エトムントと結婚することになったんだ」
「……」
「エトムントと結婚することになったんだ」
「はぁ!!」
「……冗談だ」
「……」
エトムントとは僕とアリアの共通の知人であるオーガだ。一応種族はヒューマンだが、2m以上ある身長とそれに負けないぐらいの横幅、さらには獣のような顔つきに溢れるでる戦闘狂のオーラ。まさに接近戦大好きっていう見た目とそれない負けない破壊力のある攻撃を繰り出す男だ。アリアと結婚なんてしたら、まさに美女と野獣と言った感じだろう。
「茶番も終了したところだし、そろそろ本題に入ろう」
「あぁ、そうしてくれ」
「さっそくだが、とある依頼を君にお願いしたい」
まぁ、アリアからの相談内容については概ね予想通りだ。ここに来るときは基本的に7対3ぐらいの確立で依頼についての話しだからな。
「なるほど、それでどんな依頼なんだ?」
「ルセイヤン王国が勇者召喚を行ったららしい」
「へぇー、勇者か」
僕も話しを聞いたことがあるが本当に存在したのか。異世界の住人をこちらの世界につれてくることで、その連れてこられた人間は強大な力を得ることが出来るとされている。そして魔王を倒すために呼ばれてきた彼ら彼女らを勇者という呼ぶ。
「最近魔族たちが活発に動いているだろ」
「そうだね」
「先月は小国が滅ぼされたり、二―シュー帝国が魔族に惨敗したりで、徐々に魔族の領地が広がっている」
「さらには言えば、隠したがっているが魔王とその直属の配下数人に帝国はやられたという話しだからな」
「あぁ、その話しを聞いたルセイヤン王国は魔族に対して後手を踏まないためにも勇者召喚を行ったらしい」
二―シュー帝国が惨敗したということは、その流れでルセイヤン王国も襲われるかもしれない。とは言え、この段階で勇者召喚を行うのは早すぎる気もするが。
「でも、なんで勇者召喚なんてもんが成功したんだ?あれは謎に包まれていたはずだろう?」
「さぁな」
「さぁなって……」
「ルセイヤン王国が勇者召喚に成功した理由はよく分かってないんだ」
まぁ、そんな簡単に手に入る情報ではないか。しかし、勇者ってどのぐらい強いのか気になるな。
「というわけで、王国にあるアンシュー学園に通ってくれないか?ストラードだって気になるだろう?」
「うーん、報酬は?というか依頼内容は?」
俺にやって欲しいことが勇者絡みなのは話しの流れで分かっていたが、「というわけで」じゃないだろ、急すぎるわ。
「依頼内容は勇者の力や伸びしろなどがどんなもんか教えてくれ、報酬は私たちの組織に幹部として入れるというのはどうだ?」
「依頼内容については分かった、報酬の方は前に断っただろ」
「前に行っていた、何にもとらわれずに自由に動きたいというやつか」
「あぁ」
「しかし、私たちの組織はかなり自由だぞ?」
「……その話しはまた今度な、今は報酬についてだ」
「……分かった。変わりにウチの組織が無料で依頼を受けるというのはどうだ?」
まぁ、正直報酬については何でも良いんだが。そんな直近でやりたいこともないし、勇者にも学園生活にも興味があったから、暇つぶしには丁度良い依頼だ。
「うん、報酬はそれでいいや」