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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔
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ep92.甘い匂いの支配

 ――サキュアの監視塔の前にて…


「ここか」

「魔力の気配は微かに感じるけど…」


 ホワイトが塔を見上げる。


「………」


 ナギサが辺りを見渡す。

 ジンがナギサの動きを見て疑問を抱く。


「ナギサさん…?さっきから周りを見渡して…どうしたんです?」

「…いや、少し妙な気配をずっと感じててさ」

「妙な気配?」

「ここに来てからずっと感じるんだ。何か…少し変な香りがして…」

「え…?」

「なんか…砂漠なのに少し甘い香りがしてる気がしてさ」

「俺はそんな感じ…しないですけど…」


 ジンが腕を組む。

 ジンには甘い匂いが分からなかった。


「ホワイトちゃんはどう?」

「私…?私は………」


 ホワイトが辺りの匂いを嗅ぐ。

 ホワイトの鼻の中にも甘い匂いが入り込む。


「………あ」

「何か分かったのか?」

「微かに感じます…。それにこの香り…」


 ホワイトがジンの目を見て匂いを嗅ぐ。


「…ジン君からしてる?」

「え…俺?」

「ほんと?」


 ナギサがジンに顔を近付ける。


「っ…顔…近…」


 ジンが顔を赤くする。

 年頃の男には女性に匂いを嗅がれるのは少し刺激が強かった。


「…ほんとだ。本当に微かだけど…ジン君からも同じ香りがする」

「俺から…どういう事ですか…?」


 ジンが自分の匂いを嗅ぐ。


「…いや、俺からはそんな甘い匂いはしないって言うか…」

「そうなると…本人は気付きづらい匂い…って事か。ジン君本人は自分の匂いに気付けないし…後は、ホワイトちゃんや私からはその香りは感じない」

「俺からはするのに…ホワイトやナギサさんからはしない…?」


 ジンがそう言うと、ホワイトがジンに近付き匂いを嗅ぐ。


「ちょっ…ホワイト…?」

「…この匂い…甘くて…でもずっと嗅ぎ続けると…頭がおかしくなりそう…」

「頭がおかしく…なりそう?」

「…なんか…この匂いに乗っ取られそうな感じがする…」

「…!それって…!」


 ジンが驚いた表情をする。


「…ロキが言ってた洗脳に…関係する…!」

「洗脳…?」

「あぁ…シェールさんが…洗脳されてるかもしれないって言う推測をロキから聞いてな…」

「え…シェールさんが…!?」

「え」


 強く疑問を抱くホワイトと、小さめなリアクションをするナギサ。


「もしかしたらシェールさんからも同じ匂いがするかもしれない…」

「シェールちゃんは、今どこに?」

「えっと…今は団員を集めて基地へ戻る準備してるはずです」

「そっか、了解。シェールちゃんの元へ案内してくれる?」

「はい、此方へ」


 三人がシェールの元へ向かう。


「そうだ、ホワイトちゃん」

「はい…なんでしょう?」

「念のためなんだけど、鼻が利きやすい君に一つ頼みがあるんだ」




 ――それから数分後…

 サキュアの外の柵近くにて…


「サキュアには数人だけ配置して…それから…」


 シェールがそう言うと、三人がシェールの元に駆け付ける。


「シェールさん…!」

「あれ、ジン君…と、ホワイトちゃんにナギサちゃんまで…?いつの間にサキュアに来てたの…?」

「そんな事より、ちょっと失礼…!」


 ナギサがシェールの首元の匂いを嗅ぐ。

 ナギサの鼻息がシェールの首に触れる。


「ちょっ…ナギサちゃん!?くすぐった…」

「………ありがと」


 ナギサがシェールから離れる。


「え…ちょっと…どういう事…?」

「シェールちゃん、最近変わった事とか特別な事あった?」

「特別な事…?サキュアの復興をしてて…記憶喪失してた男性…もといアルシエルさんと話をしてて…それから…」

「他には…?」

「他に…?えっと…何でそんな事を…?」

「兎に角変わった事があったら教えて…!」


 ナギサが大きな声を出す。


「ちょっとナギサちゃん…少し落ち着いて…!ホワイトちゃん達からも何か…」

「シェールさん、もしかして…気付いてないんですか…?」

「え…?何を…」


 ホワイトがシェールの匂いを嗅ぐ。


「ちょっ…ホワイトちゃっ…くすぐった…」

「…やっぱり、この甘い感じ…ジン君からと一緒だ…!」

「え…?」


 シェールが首を傾げる。

 シェールからもまた、ジンと同じ甘い匂いがした。


「ジン君と一緒って…まさか…!?」

「シェールちゃん…君…ランスという男がいておきながらジン君に手を出すなんて…」

「ちょっ…!?は…え…!?」

「シェールさん…嘘ですよね…?」

「ホワイトちゃんまで!?」

「え…ちょ…ナギサさん…ホワイト…?」


 ジンが二人の顔を見る。


「冗談だよ。それよりこの匂い…シェールちゃんとジン君からする匂い…微かに魔力の気配も感じる」

「魔力の気配…?」

「恐らくだけど、気付かない間にシェールちゃんとジン君には魔力によって意図しない行動をさせるようにされてる。洗脳されてるみたいにね」

「せ…洗脳…!?」


 シェールが驚いた表情をする。


「私が洗脳されてるって事…!?でもなんで…?いつに…誰が…?」

「なんでか、誰がまでは分からないけど、いつかは推測できるかもしれない。えっと…シェールちゃんとジン君は一旦お互いの匂いを嗅いでみて」

「え…えっと…」


 シェールがホワイトの目を見る。


「…大丈夫?」

「…この際…大丈夫です。嫌だけど…」

「…ジン君、失礼するわね」

「…はい。こちらも」


 ジンとシェールがお互いの匂いを嗅ぐ。


「…この匂いか?シェールさんからは凄く甘い匂いがする。なんというか自然な香りの…」

「…え、私はジン君からは甘い匂いがしないけれど…」

「え…?」


 ジンが首を傾げる。


「そ…それって…?」

「ただ単にシェールちゃんからいい匂いがするだけで、ジン君からはそんな匂いはしなかった…そういう事でしょ」

「あぁ…そういう…」

「…洗脳されている者は匂いを感知できない…か」


 ナギサが腕を組む。


「それより…その洗脳ってなんなのかしら…?私に洗脳された覚え…意識が奪われたような覚えはないけれど…」

「…シェールちゃん、再度確認だけど変わった出来事はあった?」

「変わった出来事…いえ、さっき述べた物以外には…特に…」

「…そう」


 ナギサが指を咥える。


「洗脳されているからそういう事しか喋れないって推測もできるか…」

「…ナギサちゃん、私は洗脳されてないわ。現に私は自分の意思でサキュアも復興させたし、自分の意思で基地に戻ろうとしてるわ」

「自分の意思で…か」

「そう。私はそろそろラッシュ師団の基地に戻らないといけないから、そろそろ失礼するわ。皆、準備して」

「承知しました」


 シェールが団員を指示する。


「………」


 ナギサが目を逸らす。


「ナギサさん…」

「…やっぱりおかしい。シェールちゃんが…ランス…じゃなくて、前団長よりも計画的なシェールちゃんが一刻も早く基地に戻ろうとしてるなんておかしい。サキュアの復興が終わって疲れているからってのもあるだろうけど…うーん…」


 ナギサが腕を組む。


「…仕方ない、この件の真相は三人で追う事にしよっか」

「…はい」

「…分かりました」





 ――それから数分後…シェール含めラッシュ師団の団員はゆっくりと基地へ戻ろうとしていた。

 サキュアにて…


「とりあえず…シェールちゃんとジン君から同じ甘い匂いがした。その甘い匂いはずっと嗅いでると頭がおかしくなりそうで乗っ取られそうな感じ…間違いなく洗脳に近い魔力が施されているのは確かね」

「うーん…」


 ジンが腕を組む。


「それに、シェールちゃんからはその匂いが少し強かったようにも感じた。だから…洗脳の強さが強くて自身が洗脳されている事にすら気付けてない…。だから…」

「あの…ナギサさん」

「ホワイトちゃん?どうしたの?」

「その…シェールさんが洗脳されているのは分かったとして…ジン君は…?」

「ジン君…あぁそっか。ジン君も洗脳されている可能性があるのか…」

「…そうか、俺も一応容疑者みたいな感じではあるのか」

「…そうね。今この一瞬も洗脳されている可能性があるね。えっと…」


 ナギサが腕を組む。

 ホワイトが割り込む。


「ちょっと…いいですか?」

「ホワイトちゃん?」

「その…シェールさんは心を読める魔力を持ってます。あの人を洗脳するのって難しいんじゃないんですか…?」

「ん…あぁ。なるほど」

「仮にシェールさんを洗脳しようとしたところで…その洗脳しようとした人の心の声をシェールさんが感じ取ったら…シェールさんはそれを避けようとするはずです。だから…!」

「ホワイトちゃん、その推測は正しいとは思うよ。けれど…厳密には違う」


 ナギサがホワイトの口に手を当てる。


「厳密には違う…?どういうことですか?」

「ホワイトちゃんはマインドコントロールって言葉、知ってる?」

「聞いた事はあります。洗脳に似てる言葉で…えっと…」

「ホワイトちゃんが言ってるのはそのマインドコントロールって奴。洗脳は例えば…直接手をくわえて強制的にやる事だけど、マインドコントロールは言葉とかを巧みに使ってやる手法であって直接手を下さないんだよ」

「あ…なるほど…」


 厳密にはマインドコントロールと洗脳は違うというナギサの知識。

 ホワイトは少し頭が混乱していて判断が付いていなかった。


「シェールちゃんにはマインドコントロールは当然効きづらい…どころか効かないと思うけど、洗脳だったら直接触れてやる訳だから心の声がバレる心配もあまりない。だからシェールちゃんは洗脳されているって思った訳」


 ナギサの言う通り、シェールにも理論上洗脳が効く。

 だが一つ疑問が残る。


「…だとしたらジン君は?ジン君も同じ匂いをしてたから…ジン君も洗脳…直接手をくわえられているってこと…ですか?」

「そこなんだよね。その犯人の魔力が直接触れなくてもいいって事ならジン君から甘い匂いがするのも分かるんだけど。うーん…」

「…ジン君、サキュアにいた時に何か直接誰かに触れられたような事はある?」

「触れられたような事…いや、ないな」

「そっか…ごめん」

「いや、大丈夫だ」

「…待てよ」


 ナギサが考え始める。


「…ホワイトちゃんのお父さんであるソレイユさん…もとい現アルシエルは…記憶喪失してるって言ってたけど…もしかして…?」

「…ナギサさん?」

「アルシエルって名前…もしかして…自分が名乗ってるのではなく、人によって名付けられた…?」

「名付け…えっと…え…?」

「例えば記憶喪失している所を付け狙い…記憶喪失のソレイユさんを洗脳し…前の記憶を思い出しづらくするためにアルシエルという名前を名付けた。そして…洗脳を更に加え、ホワイトちゃんを娘と認識しないようにするようにして…って行けば…」

「っ…!?」


 ホワイトが驚いた表情をする。

 そして…シェールに会う前にホワイトがしていた行動についてナギサが触れる。


「…ホワイトちゃん、さっきあそこにいた団員に同じ匂いを発していた人はいた?」

「同じ匂いを発してた団員…いや、いませんでした。匂いを発していたのはシェールさんだけでした」

「シェールちゃんだけ…か。シェールちゃんの所へ向かう最中は?」

「えっと…サキュアの人って事ですよね?村の人達からは…その匂いがする人とそうでない人がいました」

「する人とそうでない人…なるほど」

「えっと…つまり?」


 ジンが首を傾げる。


「…犯人はサキュア全体に洗脳を広げてる可能性があるわね」

「っ…!」

「サキュア全体に…!」

「目的は分からないけど、サキュアの人を洗脳して何かを得ようとしている。けれど、団員にはシェールちゃんとジン君以外には匂いを付けられていない。接触したのはこの二人だけ…」

「…サキュアにそんな奴が…潜んでいるのか」

「これが正しければ、その犯人はサキュアの人全員に何れ匂いを付け、洗脳しようとするはず。なんの目的のためにそんな事をしてるかは分からないけど…もしかしたら…!」

「…あ、そういえば」


 ホワイトが何かを思い出す。


「匂いがした人には…男の人が多かったです」

「男の人が多かった?」

「はい…いや、それどころか女の人からその匂いを発してた人はいませんでした」

「女の人からはしない…?」

「シェールさん以外の女の人からはそのような匂いはあまり感じられませんでした」

「…あ」


 ナギサが腕を組む。


「…少し近付けたかもしれない」

「ナギサさん、これは私の推測ですけど犯人はもしかしてサキュアに住む…男の人って可能性が一番高いですか…?」

「…いいや、その逆だよ。サキュアに住む女の人。男性にだけその匂いがあったなら、その匂いを…直接付与できるのは男が見惚れる程の女…」

「…!」

「犯人はサキュアに住んでる女…!」


 ホワイトとジンが驚いた表情をする。


「…いや、もっと言うと…犯人はサキュアに住んでないんじゃないかな」

「は…どういう事ですか?」

「今はサキュアに住んでるけれど、本当はもっと別の場所に住んでいる人かもしれない」

「別の場所に住んでる人…!」

「そう。サキュアに住んでいる人は基本この街で生まれこの街で育ってこの街をずっと愛してる、カルム師団が収集したデータではそういう記述をしているしね」

「この街を愛してる…か」

「そんな人がサキュアの人達を洗脳するような考えに今更至るのはおかしいと思ってる。そして…ラッシュ師団とカルム師団を除く人にこの街に住んでないという情報が該当する人がこのサキュアに二人いる…」

「…!まさか…!」


 そう、エルとソレイユ…もといアルシエルの二人だけだ。

 エルはジンとの会話から推測できるにサキュアの出身ではない。

 アルシエルもまた、アルシエル本人の言葉から推測できるにサキュアの出身ではない。


「エルと…」

「お父さん…!」

「そして、ホワイトのお父さんは当然と言えば当然だけど男性。でもエルは女性だ」

「っ…まさか…!!」


 ジンが驚いた表情をする。



「――犯人は…エルだ」

後書き~世界観とキャラの設定~


『ホワイトの鼻』

…ホワイトは人よりも鼻が利く。ホワイトはナギサに指示された通り、サキュアにいる住民の匂いを少し嗅ぎ、甘い匂いがする人を探していた。

そして、甘い匂いがする人には男性が多い事が分かった。

鼻が利きやすいのは人と比べて利きやすいとういう意味なので魔力的な意味は全くない。


『サキュアの人々』

…サキュアの人々はこの街で生まれこの街で育ってこの街をずっと愛してる。

そのため、今回の洗脳の犯人という容疑者からは外れる。

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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
も連載中!
是非こちらも御覧ください!
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