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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔
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ep91.秘境再び

 ――アルシエルに対して行う予定だった質問と、実際に訊いた質問の相違…それにロキは疑問を抱いていた。

 そしてひとつの結論に至った、シェールは洗脳されている可能性にあると。


「…やっぱりか」


 ジンが腕を組む。ジンもまたある程度は察していたのだろう。

 シェールが洗脳されている可能性…

 本来問い詰める性格をしているシェールが、どうしてその手を取らなかったか…

 二人の予想は、シェールが洗脳されている事だった。


「シェールさんが何者かに洗脳されていて…それで意図的に答えから遠ざかろうとしてたら…」

「…なるほどな」

「それに…洗脳されている確証が持てる情報がもう一つある。シェールさんは…俺がアルシエルに関して追おうとしたらこれ以上の模索や深追いは良くないと言った…」

「…なるほど」

「ラッシュ師団として模索はかなりしてきたはずだ。それなのに…それを禁ずるなんて…」

「…信憑性はあるな。だが…いつから洗脳されたか…」


 ジンの言う通り、何処から洗脳されたかが不明だった。

 何がトリガーで洗脳か…魔力が原因か…或いは…


「いつからかは分からない…俺もずっとあの人といた訳じゃないからな…」

「…そうか」

「俺は副団長な以上シェールさんと共に基地へ帰る義務がある。あの人にかかってるかもしれない洗脳は俺が探ってみる。だから…今はお前にしか頼めない。お前に…アルシエルを追って欲しい。あの人は記憶を失ったソレイユさんかもしれない」

「…分かった、サキュアに残ろう。その人については俺が追う」

「助かる。宜しく頼む」





「…とは言われたのはいいが…俺一人でアルシエルとやらを追えるのか?誰か頼りになる人間が欲しい…」


 サキュアで一人で歩くジンが腕を組む。


「…そうだ、ホワイトだ。ホワイト本人をサキュアに…いいや、ホワイトをここまで呼ぶのは少し迷惑か…」


 ジンが上を向く。


「…一応…やってみるか」


 ジンが通信機を使い、ホワイトに連絡する。


「………ホワイト」





 ――カルム師団の基地にて…


「そう、了解」


 ナギサが通信機で団員に連絡を取っていた。


「ナギサ、こっちもダメだ」


 ルドが団長室に入る。

 ナギサとルドはソレイユ探しに団員を使っていた。

 だが何処も手掛かりはなかった。


「…ん、分かった」

「各地に団員を向かわせたが、なかなか見つからないな」

「…そうだね」

「ナギサ…さん」


 ホワイトがナギサの方を見る。

 ホワイトが頭を下げる。


「その…皆さんも…ありがとうございます」

「いいよいいよ。君のためってのもあるけど、元より私がやりたい事でもあったし」

「…ナギサさんは優しいですね…」

「…そう言われるとちょっと照れるかも」


 ナギサがホワイトから目を逸らす。


「…私も、いつかナギサさんを助けて…」


 ホワイトが言葉を続けようとすると…

 ホワイトの携帯が鳴る。


「…!ジン君…!」

「お、恋人からじゃん」

「っ…!違います…!」


 ホワイトが顔を赤くする。


「出なよ。君を頼ってるから連絡してるんでしょ」

「…失礼します」


 ホワイトが携帯を持つ。

 電話に出るホワイト。


「…もしもし」

『ホワイト…!』

「ジン君、今…何処にいるの…?」

『俺は今サキュアにいる。サキュアの復興は終わったんだが少しやりたい事が残っててな』

「やりたい事…」

『それでお前も来て欲しい。できれば…ホワイトと一緒にやりたい事なんだ』

「私と…一緒に…」

『もしかしたら…お前の親父さんが関係してる事かもしれないんだ。…サキュアにお前の親父さんがいるかもしれない』

「…!!」


 ホワイトが立ち上がる。


「…行きたい。私は…お父さんと直接会って…それで…!」

『分かった、待ってる。今すぐじゃなくてもいい、ゆっくり来てくれ』

「うん…!」

『…ホワイト』

「…なあに?」

『…その、大丈夫か?』

「っ…」


 気を遣ってくれるジンにホワイトの壊れた心が少しずつ治っていく。


『辛い事があったら…いつでも相談してくれ』

「…ありがとう…」


 ホワイトの目から涙が出る。


『…待ってる。遠い場所になるから気を付けてきてくれ』

「…うん!」


 ホワイトが通信を切る。


「ナギサさん、私…行かないと行けない場所があります」

「…そっか。それは良かったよ」


 ナギサが微笑む。


「行っておいで、恋人の元へ」

「だから恋人じゃないです…!」

「でも好きなんでしょ」

「…好きです。あの時から…ずっと…」

「へぇ、羨ましいなぁ」

「…私、行ってきます。ジン君を…助けに…!」


 ホワイトが携帯を握り締める。


「ちょっと待ちなよ」


 団長室に何者かが入る。


「…!その声は…」

「久しぶりだね、ホワイト」

「フェクト…!」


 ホワイトが向いた方向にはフェクトが立っていた。


「ジンの元に行きたいんだろ。ジンは今サキュアだ。あの場所には電車は通っていない。ここからでも歩いていけば最低でも3時間はかかる。君の体力じゃ尚更遅くなる。でも、すぐに着きたいんだろ?」

「っ…そうだけど…遅くなってでも、ジン君の元に行かないと…!」

「僕の魔力、忘れた?」

「魔力…まさか…!」

「そうだよ、魔力はかなり失ってしまったけれど、ワープの魔力は使える。これで君をサキュアにまで送る事くらい造作でもないよ」

「ほんと…!?」

「あぁ。君が望むなら、ジンの元にまで繋がるワープホールを作ってやる」

「…お願い!」


 ホワイトがそう言うと、フェクトがワープホールを作る。


「この先にジンがいる。早く会いに行ってあげなよ」

「ありがとう…!」

「…ん」


 ナギサが眉をひそめる。

 ワープホールの奥からナギサが異質な魔力を感知する。


「ホワイトちゃん」


 ナギサがホワイトの肩に手を乗せる。


「ナギサ…さん?」

「…少し、嫌な予感がする。もしものために私も行く」

「え…でも…ナギサさんは忙しいんじゃ…」

「行ってこい。カルム師団は俺がなんとかしてやる」


 ルドがナギサにグッドサインを見せる。


「ふふっ、ありがとルド」

「ナギサ団長、僕は君を入れる予定はなかったんだけど?」

「そんな硬い事言わないでよ、フェクト」

「まぁ、ホワイト一人を向かわせるのに不安があるのは分かるけど」


 フェクトがため息をつきながらもワープホールを維持する。


「この先がサキュアだ。一方通行だから帰る時は頑張って」

「フェクト…ありがとう…!」

「…早く行けよ、ジンが待ってるんだろ」

「うん…行ってくる…!」

「気を付けて」


 ホワイトとナギサがワープホールに入る。






 ――サキュアにて…


「よっと」


 ナギサがワープホールから飛び降りる。


「うわわっ…!!」

「…!?」


 ホワイトが飛び降りるのを失敗…

 下にいたジンの上に乗っかる。


「いてて…はっ…!?」

「いった…その声…ホワイト…か?」

「あぁっ…!ごめん…!すぐ退く…!」


 ホワイトが顔を赤くしながらもジンの上から降りる。


「…いや…いいよ。もう少し乗っかってても…良かった…」

「え…?」

「…なんでもない」


 ジンが目を逸らす。


「…で、なんでナギサさんもいるんだ」

「あれ、いちゃダメだった?」

「…別にいいですけど。あんた…団長の仕事は?」

「ん、任せてきた」

「っ…あんたって人は…」


 ジンが呆れた顔をする。


「…ジン君、久しぶり」

「まぁ、久しぶり…だな」


 ジンがホワイトの目を見る。

 ホワイトの魔力の増幅をジンは見抜いていた。


「ホワイト」

「…なあに?」

「その、少し変わったか?」

「えっ…!?もしかして…太ってる…!?」


 ホワイトが自身の身体を触り、体型を気にする。


「…いや、そうじゃなくて、魔力の感じが…凄いなって思って」

「魔力の感じ…」

「その…強くなったか…?」

「…!」


 ホワイトが驚いた表情をする。


「…なんか、見違えたって言うか…」

「あっ…これはえっと…禁忌の…」

「ホワイトちゃんは私と一緒に修行したんだよ」


 ナギサがホワイトの言葉に割り込む。


「ナギサ…さん?」

「…あんたがホワイトと修行…か。やっぱ強い人と修行すると変わるんだな」

「そうだよ。君も私の元で修行しない?」

「…いや、俺はいいかな。俺は俺で強くなる方法を考えたいです」

「それはそれでいいね」

「あっ…ジン君…それで…お父さんは何処に…?」

「あぁ、案内する。エルって奴…覚えてるか?」

「…覚えてる。このサキュアに住んでて…ジン君にいきなりキスしたっていう…」

「…まぁその覚え方になるか」


 ジンが目を逸らす。


「今はそいつの家に住んでるらしいんだ」

「エルの…家に…?」

「あぁ。ロキからも聞いたんだが…あの人は記憶喪失しているらしい」

「記憶…喪失…!」

「…やっぱりか」


 ナギサが腕を組む。


「やっぱりって…何か分かったきっかけとかあったんですか?」

「ホワイトちゃんは…修行して強くなった影響で魔力によって夢の中で生者とも会えるようになったの」

「…繋命って奴か。その力で親父さんと既に会ってたって事か…」

「話が早くて助かるよ、ジン君」

「…それでお父さんに私は会えたけど…お父さんは私の事を…忘れてたみたいで…」

「っ…なるほどな」


 ジンがホワイトの頭を撫でる。


「ジン君?」

「…家族に自分の事を忘れられてしまうのは辛かっただろうに」

「っ…正直…今でもちょっと心に来てる…」

「…ホワイトの親父さん…ソレイユさんの記憶が戻ったら、一発殴ってやらないとな」

「え…!?」

「冗談だよ」


 ジンが微笑する。

 ジンが家の方を指指す。


「そろそろ行こう、親父さんはあの家だ」

「あっ…うん…!」


 ジンとホワイトが歩き出す。


「………」


 ナギサが辺りを見渡す。

 ナギサの鼻の中に…甘い匂いが入る。


「…やっぱり、変な香りがする」





 ――エルの家の前に訪れる三人。


「エル、いるんだろ」


 ジンが扉を軽く叩く。


 だが応答はなかった。


「じゃあ…アルシエルさん、いますか?」

「アルシエル…さん…?」

「あっ…アルシエルってのは…記憶喪失してるホワイトの親父さんが自分の名前をそう呼んでたんだ」

「アルシエル…」

「何か心当たりはあるか?」

「…心当たりはないや…」

「そうか」


 ジンが扉から手を離す。


「…出掛けてる?」

「…そう…みたい?」

「…そういえば、エルは初めて会った時はあの監視塔にいたな」

「監視塔…も復興してるね」


 ホワイトが監視塔の方へ振り向く。


「もしかしたらあの場所に…」

「行ってみよう…!」

「おう」

「……うん」


 ナギサが辺りを見渡す。

 ――サキュアの街に感じた、微かな匂いに疑問を抱きながら。






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