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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔
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ep89.悲しみと家族と

 ――夜のサキュアにて…


「っ…!」


 謎の男が目を覚ます。

 ホワイトと夢で会っていた男は…サキュアでシェールが話していた恩人と呼ばれし男だった。


「夢…か…それにしても…あまりにもリアルな夢だった…」


 男が頭を掻く。


「…それにしてもあの子は一体…俺の事をお父さんと言って…となるとあの子は俺の娘…?」


 男が首を振る。


「…いいや、違う。あの子が俺の娘な訳がない…」

「そう、あの子が娘な訳ないの」

「…君か」


 謎の少女が男の前に現れる。

 男が謎の少女と目を合わせる。

 謎の少女が恩人の耳元に囁く。


「私があなたのたった一人の娘。あなたは私のお父さん」

「っ…君が…俺の…」


 男が少女の頭を撫でる。


「ふふっ、それでいいんだよお父さん」


 少女が恩人の唇に口付けする。


「大好きだよ、お父さん」

「あぁ…たった一人の…娘――」


 男がゆっくりと目を閉じる。

 謎の少女は、黒い翼のような物を男に被せるように動かす――




 ――翌朝…カルム師団の基地にて…


「ホワイトちゃん、おは――」


 ナギサがホワイトの寝ている部屋に入る。


「ホワイトちゃん!?」


 ホワイトは涙を流していた。夢の中で見た父親に、自分の事を忘れられていることがあまりにも辛かったのだった。


「っ………」

「どうしたの…!?一体何が…」

「ナギサ…さん………」


 ホワイトがナギサの目を見る。


「っ…!」


 ナギサがホワイトを抱く。

 まるでホワイトを恋人みたいに抱くナギサ。


「何が…あったの…!?」

「お父さん…が……私の事…」

「君の事を…?」

「…忘れて…いて…それで………!」

「…!?」


 ナギサが驚いた顔をする。


「うっ…お父さん…そんな…私の事…」

「…ホワイトちゃん、一回…落ち着いて」


 ナギサがホワイトの肩に手を乗せる。


「…ナギサさん…私は…私は…」

「落ち着いて…事情はよく分からないけど…君のお父さんが君の事を忘れたって…」

「っ………あ…あぁ…うぅ…」

「っ………」

「うわぁぁぁぁん!」


 ホワイトが声をあげて泣き出す。


「ちょっ………やばい…こういう時はどうすれば…」


 ナギサがそう言うと、ルドが部屋に入る。


「どうしたナギサ…ってホワイトさん…!?」

「ルド…!ホワイトちゃんが…!」

「っ…お前が泣かせたのか…?」

「そんな訳ない…そんな事より…ホワイトちゃんがずっと泣いてて…それで…!」

「っ…!」





 ――数分後…

 ホワイトは泣き止むが、精神が酷く衰退してしまった。

 ホワイトは放心状態になっていた。


「…お父…さん………」


 ホワイトがブローチを見ながら涙を流す。


「…ホワイトちゃん」


 ナギサが紅茶を持って部屋に入る。


「…紅茶。飲む…?」

「…ナギサ…さん…」

「ひとまず…甘くした紅茶でも飲んで落ち着いて」

「………いただきます」


 ホワイトがナギサから紅茶を受け取る。

 ホワイトが紅茶を飲む。

 甘い…の一言が最初に出るほどの甘さ。最初から最後まで甘い香りが口いっぱいに広がる。


「………美味しい…そして…凄く甘い…」

「でしょ。これ…ムツミのお気に入りだった紅茶なんだ」

「…ムツミさんの…」

「でも私は甘ったるいのはちょっと苦手だったから、ホワイトちゃんで良ければ残った茶葉を受け取って欲しいかな」

「それは…」

「きっとあの世でムツミも喜んでくれるだろうし…」

「…貰います。ナギサさんの頼みでもありますし…頂かないわけにはいかないです」

「ありがと」


 ナギサが微笑む。


「…ムツミさんの写真って…ありますか…?」

「…あるよ」


 ナギサがそう言うと、ムツミとナギサが映っている写真をホワイトに見せる。


「あっ…」


 写真に映るムツミはシャッターに向かって笑顔でピースしていた。

 ホワイトよりも少し身長が低く童顔の金髪ポニーテールの少女。


「なんか…ミカを凄く明るくさせた人みたい…凄く可愛い…ギャルみたい…。あと、ナギサさんも可愛い…」

「ふふっ、ありがと。ムツミめっちゃ可愛いよね…分かるよ…」


 ナギサが涙を堪える。

 ナギサがホワイトの顔を見る。


「…落ち着いた?」

「…少しは…でも…」

「…ゆっくりでいいから何があったか聞かせてよ。繋命によって見た夢で…何があったか」


 ナギサがホワイトの隣に座る。


「…夢の中でお父さんに会いました…少しやつれていて…髪はボサボサになってました…しかも左腕も包帯を巻いて太陽神の族だって事を隠してたけど…あの声…あの目…あの魔力の気配…間違いなくお父さんでした…でも…お父さんは…私とは違う娘がいるような事を言って…しかも…たった一人って言って…それで…!――」

「違う娘…か。それに…その言い方だとお兄ちゃんはどうなるんだろう…」

「それで…うぅっ……」


 ホワイトが涙を流す。


「…そっか」


 ナギサがホワイトの頭を撫でる。


「…確定じゃないけど、ひとつ君のお父さんに起こった症状があるとすれば…記憶喪失かもしれない」

「記憶喪失…」

「そう。例えば…頭を強く打ったり…何かしら記憶に関する魔力で記憶を消されてしまったか…」

「っ…まさか…」

「お父さんが包帯を巻いてたって言ったけど、それは左腕だけ?頭に巻いてたりは…」

「…頭にはありませんでした。でも、二つとも該当する可能性があります…」

「二つとも該当する可能性?何か心当たりがあるの?」

「…お父さんはお母さんと共にジハと戦って…ジハの攻撃で行方不明になりました…もしかしたらその攻撃で頭を打ったり…若しくは魔力で記憶が消されてしまった可能性も…」

「…なるほど」


 ナギサが腕を組む。


「…その様子じゃ、繋命によってお父さんの居場所は突き止められなかった…っぽいね」

「…はい」

「分かった」


 ナギサがそう言うと、通信機を取り出す。

 ナギサがルドに連絡する。


「ルド?聞こえる?」

『なんだ?ホワイトさんは落ち着いたか…?』

「うん、だいぶ。それより…手が空いてる団員に伝えて欲しい事があるの」

『ん…?とりあえず言ってみろ』

「各地…とりあえずどこでもいいから団員を向かわせて欲しい」

『各地に…?』

「それで…髪がボサボサで、左腕に包帯を巻いた…えっと――」


 ナギサがホワイトの目を見る。


「…ホワイトちゃんのお父さんって…何歳くらい?」

「えっと…もう50にはなってるだろうけど…」

「おっけ。えっと、50歳くらいの男を探して欲しいの。極力多い人数で」

『分かった。それがホワイトさんの親父さんの特徴だな』

「ま、そういう事」

『すぐ取り掛かる。一旦切るぞ』

「ん、了解」


 ナギサが通信を切る。

 ナギサの顔を見てホワイトが首を傾げる。


「…ナギサさん…?」

「カルム師団の団員にも君のお父さんを探させる事にした」

「…!そんな…そこまでする事…」

「君は私の命の恩人だから、じゃ…ダメかな?」

「っ…」


 ホワイトが首を振る。


「だとしても…私なんかのために…ナギサさんや団員さんの皆に迷惑は――」

「ホワイトちゃん」


 ナギサがホワイトの頭を撫でる。


「迷惑だなんて、誰も思ってないよ」

「っ…!」

「少しくらいさ、手伝わせて欲しいんだよね。君のお父さんを探すのを…!」

「…ナギサさん…ありがとう…ございます…」

「ひとまず…まだ君は精神が完全に安定してないはず。今は少し休んで…少ししたらまたお父さん探しを再開しよう」

「分かり…ました…」





 ――サキュアにて…

 シェールとサキュアの民が話していた。

 サキュアの復興は全て終わった。家も元通りになった。

 唯一完全に無くなっていたオアシスも、魔力こそなけれど水が満ちていた。これから魔力が満ちていくのだろう。


「復興作業が全て終わりました。ラッシュ師団の皆様のおかげで早く終わりました。本当に感謝致します」

「感謝だなんてとんでもない。私達は私達で壊してしまった場所を直しただけです」

「いやしかし…太古の時代の化け物がこの地に眠っているとは思いもしませんでしたよ…」

「そうですね。事件は…色々不可解な点を多く残して終わりました。歴史について再度調べる必要があるかもしれません…」


 シェールが腕を組む。

 サキュアの復興が終わった今、次の任務は決まってはいなかったが、今度は魔力の根源の歴史について調べる事になりそうだとシェールは考えていた。


「ふむ…ラッシュ師団としてはまだ忙しいのですか?」

「…そうですね。他にも色々ありますが今は…団員の家族が行方不明になってるのです。その方を探してはいるのですが…なかなか手掛かりは掴めず…」

「なるほど…何かご協力できれば、サキュアの者が助けに出ますよ」

「本当ですか?ありがとうございます…!」


 シェールが頭を下げる。


「シェールさん、そろそろ――」


 ロキがシェールの後ろから声をかける。


「そうね。では…失礼致します」


 シェールとロキがその場から去る。





「んん…これで一通り終わったわね」


 シェールが伸びをする。


「だけれど…まだやる事がいっぱい残ってるわ」

「…そうですね。ホワイトの親父さんの探索…魔力の根源の歴史を探る…そして…」

「…そう、ネオカオスのボスであるジハが、私達がネオカオス襲撃後に本拠地としていた場所の探索…」

「未だに足元は掴めていませんね…」


 ネオカオス襲撃後のジハの本拠地…未だに見つからないものである。

 ネオカオス亡き、魔力の根源亡き今も謎はまだまだ残っていた。


「そうね…ネオカオス四天王であるフェクトも本拠地を知らなかった…そうなると…」

「少し範囲を広げる必要がありそうですね」

「そうね…」


 ロキが辺りを見渡す。

 ロキの視界にはカルム師団の団員が複数いた。


「…そういえば、カルム師団の団員がいるみたいですが」

「そうね。ここに配置されてた者かしら。でも…何か探している様子…」

「聞いてみますか?」

「そうね。ナギサちゃんがもしかしたら何か指示をしているかもしれない」


 シェールとロキがカルム師団の団員に近付く。


「あの」

「…!ラッシュ師団の…!」

「…ここで何をされてるんですか?」

「ふむ…協力関係にあるラッシュ師団にならお伝えしても良さそうですね。カルム師団は現在…とある人物を探しています。そのために各地に配備されている団員も動いていまして」

「とある人物?」

「そうです。特徴は…髪がボサボサで左腕に包帯を巻いた50歳くらいの男と」


 曖昧な特徴を伝えるカルム師団団員。

 シェールが疑問に感じる。


「何それ、誰がそんな特徴を当てはめたの?」

「ナギサ団長です」

「ナギサちゃんかぁ…」


 シェールが苦笑いする。


「もしラッシュ師団の方々もそのような方を見かけたら我々に教えて頂ければと」

「えぇ、分かったわ。ちなみに…何故そんな人を探してるかは聞いていいかしら?」

「どうやらナギサ団長の友人であるホワイトさん?とやらのお父さんに当たる人だとかなんだとか」

「え…」

「ホワイト…!?」


 シェールとロキが驚いた表情をする。


「カルム師団がホワイトちゃんのお父さんを…探してるですって!?」

「一体何が目的で…って思ったが、ナギサさんの事だしただ単に協力してるだけ…だろうか」

「恐らくそうかと。あの方の考えは私達でも掴みづらいですから…」

「…なるほど。ご協力感謝します。私達もホワイトちゃんのお父さんを探している最中です。何も情報は掴めてないけれど…」

「ふむ、承知致しました。ナギサ団長にもお伝えしますね」


 カルム師団の団員が通信機を使ってナギサに連絡する。


「ナギサ団長、サキュアにてラッシュ師団のシェールさんと合流致しました」

『え、あ、本当?シェールちゃんそっちいるの?』

「はい、代わりましょうか?」

『うん、お願い』


 団員が通信機をシェールに渡す。


「ナギサちゃん!」

『シェールちゃん!久しぶり!元気…って訳でもないか』

「そうね、サキュアの復興で身体をかなり動かしたわ…毎日筋肉痛よ」


 シェールが肩を叩く。


『あぁ、そうだったね。ところで…今大丈夫?』

「えぇ、丁度あなたと話したかったところよ」

『そっか、なら丁度いいや。もしかしたら団員から聞いてるかもしれないけど、ホワイトちゃんのお父さんを探してるの』

「ホワイトちゃんのお父さんを…でも何故急に?」

『何故って…そりゃホワイトちゃんは私の命の恩人だから…でいい?』

「…なるほど」

『髪がボサボサで左腕に包帯を巻いてる50歳くらいの男の人、見つけたら教えてよ』

「えぇ、勿論。にしても…その情報はどうやって手に入れたのかしら?」

『ホワイトちゃんから直接聞いてね』

「直接…と言う事は、今ホワイトちゃんはそちらにいるの?」

『うん。ただ…今はちょっと精神的に弱っている状態で…』

「精神的に…?」

『シェールちゃんは、ホワイトちゃんの魔力について知ってる?』

「ホワイトちゃんの…いいえ、詳しくは知らないわ。回復を扱うのは知っているけれど…」

『…そう。ならいいけど』

「…?」


 シェールが首を傾げる。


『とにかく…今多くの団員を使ってホワイトちゃんのお父さんを探してるの。一刻も早く…ホワイトちゃんに会わせて…それで…』

「…それで…?」


 シェールが聞くが、ナギサが少し黙る。

 少し間が空いて、ナギサが話し始める。


『…なんでもない。ホワイトちゃんが絶望してしまう前に…ホワイトちゃんのお父さんがホワイトちゃんを完全に思い出せなくなってしまう前に…ホワイトちゃんの精神が…完全に壊れてしまう前に………』

「っ…」

『じゃ、見つかったら教えてね』


 ナギサが通信を切る。


「…完全に思い出せなくなる…?壊れてしまう…?」

「…一体何を言ってるんですかね、あの人は」


 ロキが腕を組む。

 ナギサの言葉を理解できなかった二人。


「さぁ…ナギサちゃんはナギサちゃんで不可解な事が多いもの…」

「…それにしても…髪がボサボサで左腕に包帯を…という点なら、エルの恩人さんが該当しますが」

「そうね。とはいえあの人は記憶喪失だから…うーん…」


 腕を組むシェール。


「話を聞くだけならタダです、聞いてみましょう。もしかしたらあの人にソレイユって名前を出せば…何か思い出すかもしれません」

「そうね。ここで止まってても仕方ないわ。行きましょう、あの人の家へ」


 シェールとロキは、再び恩人の元へ行こうとする。


 ――恩人の正体がホワイトの父であるソレイユかどうかを、確かめるために。



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悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
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