ep88.命の満ち
――『魔限突破』…魔力の限界を突破する秘術。
ホワイトは魔力の限界値をナギサの手によって突破したが、身体にはまだ魔力が馴染んでいない。まだ、許容量がある。
その許容量までに魔力を満たすために、ナギサの誘いで魔力を慣らす戦いが始まる。
「っ…!」
ホワイトが剣に力を込める。
「…まだ足りないよ」
ナギサがホワイトを押し出す。
「うぐっ…!」
「魔力の増加は見込めたけど、まだ使いこなせてない。使いこなしてみなよ…ホワイトちゃん」
「つ…使いこなすって…一体どうすれば…!」
「…その魔力は、どういう理屈で動いているか…それを理解した時に強くなるよ」
「どういう理屈で…」
「例えば私の水の魔力の場合は…体内の血液の循環によって魔力効率を上げたり…身体に含まれる水分…例えば涙とか汗とか…ちょっと汚いけどよだれとか…そういうのも全て魔力の一部にしてる」
「…全てを魔力の一部に?」
「後は自分で考える事だね…!」
ナギサが剣を振るう。
「っ…!」
ホワイトがナギサから距離を取る。
「…自分で考える…考える…。繋命…どういう理屈でこの魔力が…」
ホワイトが左手を見る。
ホワイトの左手の皮膚は少し赤くなっていた。
「…どういう理屈で…」
「隙あり」
ナギサがそう言うと、ホワイトに斬りかかろうとする。
「っ…!」
ホワイトが剣でガードする。
「…ねぇ、ホワイトちゃん」
「っ…ナギサ…さん…!」
「…今さ、私達の魔力同士が繋がってる感じがするよね」
「魔力同士が…繋がって…?」
「水の魔力と繋命…ぶつかり合って…でも合わさっているような感じ…」
「合わさる…」
ホワイトが何かに気付く。
「…そうだ。繋命は…私やお母さんだけじゃない…その前からも繋がっている魔力…皆の命が合わさって…繋がってできてる魔力…そうだ…」
ホワイトが剣に魔力を込める。
ホワイトの身体も魔力に包まれる。
「お?」
ナギサがホワイトから距離を取る。
「………すぅ」
ホワイトが目を閉じ、息を吸い込む。
そして、目を開けてナギサの目を見る。
「…いい魔力」
ナギサが汗をかく。
「皆が繋いできた命を…私が更に繋ぐ…そして…!」
「……ふふっ」
ナギサが汗をかきながらも笑う。
「私が…繋いできた命と共に…助けるんだ…!」
ホワイトが剣にさらに魔力を込める。
魔力によって風が起こる。
「こりゃ、負けそうだ」
「ナギサさん…!覚悟…!!」
「覚悟してるよ」
ナギサが剣を構える。
「はぁぁぁぁぁぁっ…!!」
「………」
「っ………」
ホワイトの持っていた繋命剣は砕け散ってしまっていた。
「…あぶな」
ナギサがホワイトの喉元に剣を持って行っていた。
「見え………なかった…」
「………ふぅ」
ナギサが息を吐く。
ナギサが剣をしまう。
「っ…」
ホワイトが床に膝をつく。
「…はぁ…はぁ…いつも以上に…限界まで…出し切った…のに…」
「……疲れた」
ナギサが座り始める。
「この程度の力じゃ…私は…」
「…そんな事ないよ」
「え…?」
「うーん…まぁ確かに君は私に負けたけどさ。…君の魔力、すっごい感じた。距離を取ってたのに至近距離で感じてるのかって思うくらいの魔力を…感じ取ったよ」
「…!ナギサさん…そんな…お世辞だなんて…」
「お世辞じゃない。君の魔力…凄かった。正直本気出さなかったら危なかったよ」
ナギサが再び息を吐く。
「ホワイトちゃんは少しずつ前進できてるね。その魔力…今後戦闘にも活かせるはず」
「戦闘にも…」
「夢を介して死んだ人に会えたり、魔力そのものを戦闘にも利用できたり…繋命って凄い魔力だね。羨ましいよ」
「そんな事…」
「そんな事あるよ。君はいつか…」
ナギサが言葉を続けようとする。
「いっ…」
ナギサが腹部を押さえる。
「っ…!?ナギサさん…!?」
「…スピアの件でのダメージが…まだ響いててさ…でも大丈夫。そんなに痛みは…」
「今治します…!」
ホワイトがナギサの腹部に服の上から触れる。
「いっ…あんまり触らないでくれると…」
ナギサがそう言うと、ホワイトが回復魔法をかける。
「…少しだけ、じっとしててください」
「…ん」
ナギサがホワイトの目を見る。
そしてどういう訳か、普段施す回復よりも強い回復がナギサの身体にかかる。
「…あったかい。この前回復して貰った時よりも…凄く…」
「っ…!はぁ…はぁ…」
ホワイトが息を切らす。
「…ホワイトちゃん?大丈夫…?」
「っ…大丈夫です…でも…瞬間的に強い魔力を使い過ぎて…呼吸が……はぁ…はぁ…」
ホワイトが胸を押さえる。
「…そう」
ナギサがホワイトの背中を摩る。
魔限突破の秘薬を飲んだことによる影響か、ホワイトの身体からいつも以上の魔力の気配を感じるナギサ。
「…こんなに一気に魔力を使ったのに、まだホワイトちゃんの身体に魔力がいっぱい残ってる。魔限突破の効果が早速出てるね。…それ故の呼吸の乱れ…でもあるのか」
「…ナギサさん…怪我の方は…」
「ん、そうだった」
ナギサが自身の腹部を触る。
「え、痛くない…完全に治ってる…凄い…」
「…良かった。うっ…」
ホワイトが横になる。
魔力の使い過ぎかホワイトの身体に疲労が溜まる。
「…少し…横にさせて下さい…」
「ん、おっけ」
ナギサがホワイトの頭を撫でる。
「……」
――数分後…
「……あれ」
ホワイトが目を開ける。
「お、起きた」
「…!ナギサ…さん」
ホワイトが辺りを見渡す。
「あれ…もしかして私…寝てました…?」
「うん、ちょっと寝てたね。と言っても数分くらいだけど」
「やだ…そんな…ナギサさんの前で恥ずかしい…」
「しかもよだれ垂らして寝てた。可愛い」
「っ………」
ホワイトが顔を赤くする。
ナギサの膝枕から起き上がる。
「でも大丈夫だよ。私も魔限突破を使って修行した後はそんな感じだったっけな…」
ナギサが頭を掻く。
「そっか私…寝てたんだ…でも…繋命による夢は見なかった…どうして…」
「うーん。私の推測だけど今のは魔力を休ませるための一時的な睡眠だったりして」
「…なるほど」
ホワイトが手のひらを見る。
ホワイトもまた、自分に魔力が満ちているのを感じていた。
「全身に魔力が…満ちているのを感じます。いつもは意識しないと自分の魔力を感知できなかったのに…」
「そうだね。君の魔力は今…元の三倍くらいに強くなってる。さっきの薬の成分によって魔力が身体全体に行き渡ってる」
「三倍…これが…魔限突破の…」
ナギサが立ち上がり、ホワイトに手を差し伸べる。
「立てる?」
「…はい」
ホワイトがナギサの手を掴む。
「さてと…魔限突破もできた事だし…もう後一歩だね」
「後一歩…」
「君が教えてくれた繋命の…力が強くなれば生きている人とも会えるってところ」
「…!それって…」
「そう、君のお父さんを探すのも…後少しで達成できる」
「後…少しで…!」
ホワイトが服の中に入れてるブローチを見る。
「お父さん…」
「ホワイトちゃん」
ナギサがホワイトの肩に手を乗せる。
「絶対会える、私は信じてる」
「…ありがとうございます」
団長室に戻るナギサとホワイト。
「お、戻って来た」
「ルドさん…!」
「…その様子だと、成功したみたいだね」
「はい…!これでようやくお父さんに近付けました…後は繋命で探って…!」
「あぁ。再開できたら、俺とも是非ホワイトさんのお父さんに会わせてくれよ?」
「勿論…!」
ホワイトがルドの方を見て微笑む。
「ホワイトちゃん。今日はもう遅いし、また私の部屋で寝てっていいよ」
「え…本当ですか?」
「うん。それに寝るって事は繋命の魔力で夢を介して生きているお父さんに会えるかもしれない。もし会えれば、何処にいるか聞いて明日会いに行くって事もできるはずだよ」
「…!そっか…そうだ…!」
魔力の増幅によって夢を介してソレイユに会える…つまり、ホワイトの目標が達成されるという事だった。
「今日はその祝賀会として、私とルドが御馳走を進ぜよう」
「ちょっ…勝手に俺まで巻き込むなナギサ…」
「本当ですか…!」
「…まぁ、別にいいよ。ホワイトさんならね」
「やった…!!」
――その日の夜…
「………」
ホワイトはナギサの部屋のベッドに寝転がっていた。
「…本当に…このまま寝て…お父さんに会えたら…終わり…なのかな」
ホワイトが寝返りを打つ。
「ミカは今頃…基地で何してるのかな…シェールさんに振り回されていたから愚痴でも言いながら…でもちゃんとやってるのかな…」
ホワイトがあくびをする。
「ジン君は…サキュアの復興に向けて頑張ってるけど…体調崩してないかな。…大丈夫かなぁ」
ホワイトが寝返りをする。
「…そういえば、ネオカオスの件が全て終わって晩餐をした後の日…ジン君が言ってた…私のお父さんを見つけるまではこの気持ちは伝えないって言ってたけど…この調子だともうすぐお父さんとも会えるし…」
ホワイトの顔が赤くなる。
「っ…恥ずかしい…お父さんと会えたら…私…ジン君に告白されちゃうのかな…」
ホワイトが手で顔を隠す。
暫くしてホワイトがブローチを見る。
「………お父さん…」
ホワイトがブローチを胸に当てて、眠りにつく。
「………」
ホワイトが目を覚ます。
「…あ」
ホワイトは真っ白な世界に立たされていた。
「この場所…もしや繋命の世界…!と言う事は…!」
ホワイトが辺りを見渡す。
「…でも、今回は誰もいない」
ホワイトが息を吸う。
「お父さん…!私だよ…ホワイトだよ…!」
ホワイトが声をあげる。
だが世界は静かなままだった。
「…ダメ…か」
ホワイトが下を向く。
「…まだ繋命を完全に扱えてないって事…かな。…でも、そうだよね。そんな簡単にお父さんに会えちゃ…」
「あれ…」
ホワイトの後ろに謎の男が現れる。
謎の男は左腕に包帯を巻いていた。
「ここは何処だ…?」
「っ…!?」
ホワイトが振り向く。
「…!その顔…!」
ホワイトは男の顔を見て確信する。
「お父さん…!!」
「…お父…さん…?」
男が首を傾げる。
ホワイトはその男がソレイユだと言う事に気付いていた。
「…良かった…私の魔力は…強くなってた…生きてる人と会えた…これでやっと…」
ホワイトが涙を流す。
「お父さん…!今…お父さんは何処にいるの…!?」
「っ…!なんなんだ君は…!」
男がホワイトから距離を取る。
「え…」
「君は一体…誰なんだ…!?」
「…!?」
ホワイトが驚いた表情をする。
衝撃的な言葉にホワイトが息を詰まらせる。
「俺にいる子供…娘なんて…ただ一人の…」
「は…え…なんて………」
ホワイトが男の目を見て絶望の表情を浮かべる。
「お父…さん…?」
「っ…君は一体…!それにここは一体…夢なのか…?なんなんだこの場所は…?」
「っ…」
ホワイトが絶句する。
「お父さん…いや…お父さんだよね…その顔…絶対お父さん…」
「っ…!」
男が距離を取る。
「…君が誰かは分からないが…俺にはただこの世界に一人しかいない子ども…一人の娘がいるだけで十分だ…もう…俺はこのままでいいんだ…」
「っ…!?」
「もう…いいんだ」
男がその場から去ろうとする。
「待っ…」
ホワイトが男を追いかけようとするが…
男は突如姿を消してしまう。
「っ…!?お父さん…?お父さん…!?」
ホワイトが辺りを見渡す。
ただ一人残されるホワイト…ホワイトが涙を流す。
「…どういう事…?お父さんが…お父さんじゃないみたい…それに一人しかいない子どもって…だとしたらお兄ちゃんは…?」
ホワイトが床に膝を付く。
「っ…!お父さん…!」




