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白と悪魔と  作者: りあん
第一部 世界の改変
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ep7.殺戮の襲撃


 ――その日の夜…


「…あれ、ミカは?」


 シャワーを浴びて部屋に戻ったホワイト。白色の長い髪はシャワーを浴びた故か少し乱れていた。

 だが、部屋にいたのはジンだけだった。


「さっき団長に話があるって言って、どっか行っちまった」

「そっか…さっきの話かな?」

「…そうかもな。俺等はもう寝るか」

「そうだね。おやすみ…」


 ホワイトがベッドに入り込む。

 ―――………




 ――一方、団長室に向かったミカ…

 ランスと面と向かって話していた。


「…ねぇ、ランス」

「どうした?団長と呼べ。ジハがなかなか口を割らないモンでそろそろ寝ようと思ってたところなんだが…」


 ため息をついて座っているランスに対して睨み付けるミカ。


「あたしになんかした?」

「…なんか、とは?」

「あたしの記憶…やっぱり一部改ざんしてるでしょ…あなたの魔力で」


 ミカがそう言うと、ランスは少しだけ悩んだ仕草をする。

 ミカは疑問に思っていた、ブラックが何故会ってる覚えのない自分を知っているのか…


「ほう。何故だ?」

「さっきホワイトのお兄さん…ブラックと話した。…その時、あたしに会った事あるような物言いだった…これはどういう事?」

「…なるほど」

「答えて…!」


 ミカがランスに対して怒鳴る。

 ランスは動揺もせず、話し始める。


「答えるも何も…お前の記憶は全くいじった覚えはない」

「っ…!?」

「この前、お前と二年前の話をしたのは覚えてるか?」

「…過去に縋らず…とか喋った時?」

「そうだ。あの時本当は操作しようと思ったんだが、お前の意思を尊重して俺は見ないと決めたんだ。…お前も特殊な何かを持っている事に変わりはないしな…」

「っ…」


 ミカが拳を握る。

 ミカは自分でも分かっていた。自分が…そもそもおかしい事に…特殊な事に…


「…あたしが何か特殊なのは、自分でも分かってる。物を簡単に作れてしまう魔力…そして、あたしが二年前より前の記憶がない事も…でも、身体は18歳に近い。正直不思議な事だらけだよ」

「そうだな。だが、ホワイトもジンも他の奴等も、皆不思議だらけだ。お前だけではない」

「…そうね。あたしの過去の記憶が実際どんなのがあるかどうかを見ようとしないのは、団長の優しさ?」


 ミカがランスの目を見つめる。

 ランスは表情を変えず話し始める。


「お前がそれにより何か嫌な事を思い出し、戦意を喪失されてもらっては困るからな」

「あたしも戦闘員にしようとしてたんだ…」

「お前だって強いからな。…いざという時に皆を守ってくれないと困る」


 ランスのその言葉を聞き、ミカは…ホワイトやジンの顔を浮かべていた。


「そうね…あたしはここでは先輩としてホワイトやジンを守る役目がある」

「そうだ」


 ランスは少しだけ微笑む。


「…ブラックに昔会った時の事は覚えてないけど、きっといい出会いだったんだと思えば、いっか」

「そうだな。…でも、俺の魔力を使いたい時があったら、いつでも来い」


 ランスの言葉に嘘はなかった。

 自分の魔力を使って、ミカの記憶を取り戻せる可能性があるならば…ミカがそう言う決心がついたならば…


「…事件が全部解決できたら」

「そうだな。とはいえ、ネオカオスを捕まえた以上は事件はほぼ解決じゃないか?」

「それもそうですね…じゃあ、後処理が完了次第…お願いするかも」

「はいよ。約束だ」

「約束ですよ」


 ミカとランスが約束を交わす。




 だが…その約束が潰えるかもしれない出来事が起こる。


 ドゴォォォォン!!


 突如、基地の入り口の方から大きな爆発音がする。


「!?」

「なんだ…!?」


 ランスが椅子から立ち上がる。

 そして、ランスの部屋にシェールがすぐさま駆けつけた。


「ランス君…ゲホッ…入口の方から…」


 駆けつけたシェールは左腕の方から出血していた。

 ランスがシェールの左腕を見て心配する。


「シェール…!お前…その怪我…」

「急な爆発に…巻き込まれちゃったわ…うぐっ…」

「爆発…だと?」


 シェールの左腕から血が垂れ、床に付く。

 そして…その後から足音と声が聞こえる。


「ガハハハ…ジハ様を助けろ!」

「ウイーーー!!」


 足音と声の正体はネオカオスの下っ端だった。


「ネオ…カオス…何故…!?」

「牢屋から脱出を…!?いや、そんなことより!」


 ミカが銃剣を取り出し、ネオカオスの下っ端の方へ向かう。


「待て!ミカ!」

「皆を助けるの…優先…!」

「っ…!仕方ない…」


 ランスは壁にかけていた通信機を掴む。


「緊急連絡だ!全団員に告げる!入り口付近で爆発事故が発生した!避難口を使って速攻非難せよ!」






 ――ミカが向かった方向には、ラッシュ師団の一部の団員が多く倒れていた。

 そして、団員を切ったような跡と、壁が焦げたような跡がいくつかあった。


「そんな…皆…!」


 ミカは倒れていた団員の息を確認するが、既に息は無かった。

 血だらけで倒れる団員…火傷している団員…沢山倒れて地獄の光景だった。


「………くそッ!!」


 ミカが拳を強く握る。だが…怒っている場合ではなかった。


「ラッシュ師団をまた見つけた!殺せ殺せー!」


 ミカの後ろからネオカオスの下っ端が何人も現れた。


「っ…!よくも……っ!」


 ミカは瞬時に動き、右手に持った銃剣でネオカオスの下っ端を斬り裂いた。


「ぐあああっ!」


 他の下っ端も連続で斬り裂いた。

 ミカはすぐさま走り、爆発の原因を調べに基地の入口へ行こうとしていた。


「…何が…起こってるんだ…」




 ――基地の入口に到着するミカ。


「っ…!」


 燃え上がる火をバックに多くのネオカオスの下っ端。

 そしてそこに、巨大な剣を持った男が立っていた。


「……ネオカオス…!」

「…あ?てっきりこの辺は全員死んだと思ったけど、誰だお前?」


 男はミカの方を見る。


「…お前が…犯人か…!」


 ミカが銃剣を構え、男に向ける。


「俺はデスト。殺戮のデストの異名を持つネオカオス四天王の一人だ」


 デストと名乗った男がそう言うと、ミカは驚いた表情をした。


「殺戮のデスト…ネオカオス四天王…!?まさかジハはこれを知ってて…でもなぜこの基地の場所を…」


 殺戮のデストにネオカオス四天王…聞いた事の無い言葉だった。

 ミカは頭では理解できなくても…身体で理解していた。

 目の前に立っている男は………強いと。


「捕まってる雑魚下っ端の魔力は全然感じられなかったが、ジハさんの魔力は馬鹿ほど感じられるからなぁ…思わずこっちに引き寄せられちまったぜ。そしたらこの基地があったから無理矢理入口をこじ開けさせて貰ったぜ。その衝撃で何人か逝っちまったみてえだがな」

「くそっ………」


 ミカは銃剣を構え、デストを斬ろうとする。

 だがデストはその場から動く事なく、それを軽々と大剣でガードした。


「おっと…危ない」

「…お前ら…ネオカオスの残党か…?」

「残党…と言うよりかは別の場所で待機してただけだ。他にもアジトがあるもんでな」

「なっ…」

「おっと、うっかり話しちまった。だが、どうせ死にゆく者に喋ったとて意味はないだろう」


 デストはそう言うと、着地したミカに大剣を振り落とす。


「っ…!?」


 ミカは咄嗟にガードしたが、持っていた銃剣が割れてしまう。

 ミカは銃剣から手を離し…後ろに回避した。


「…こいつ…強い…」

「当たらないか…まぁいい、これで丸腰だな」


 デストはミカの方へゆっくりと歩く。

 少しずつ歩くデストに対し、ミカは少しずつ後ろに下がる。


「っ…打つ手立てが……」

「どうせ全員殺す予定だから、お前から殺してやろう」

「っ……」


 ミカは身体が震えていた。

 が、ミカは少しだけ笑った。


「殺すなら…遠慮はしない方がいいんじゃない?」

「…何?」


 (あたしにはこの魔力がある。そして…)


 ミカは右手から魔力を使って閃光弾を作り、デストの目の前に投げた。


「ぐおおっ…!?」


 デストは思わず目を左腕で塞いだ。

 ミカはデストの目くらましを図っていた。今は戦闘よりも救助優先…皆の無事が大事だと…


「っ………!」


 (今のうちに…!)

 デストから距離を取り始めるミカ。

 だが………


「…こんな小細工が効くとでも?」


 デストの声がすると、ミカの腹に…デストの持っていた大剣が刺さる。


「がっ…!?」


 大剣がミカの身体を貫通する。ミカの腹から大量の血が出る。

 デストは刺した大剣をミカの身体から抜く。


「がはっ…」


 ミカが吐血してしまう。

 腹からの大量出血に加えて大量の吐血…ミカの立っている場所が一気に血だまりと化す。


「…あいにく目はいいもんでな。…だがこれくらいじゃ死なないのか。タフだな…」

「っ…こんくらいじゃ、お互いダメってこと…ね…」


 ミカが腹を押さえる。

 ミカの血が床に垂れていく…


「だがそちらは結構致命傷だろう?」


 デストはそう言うと、自身の持っていた大剣を片手で構えた。

 大剣を振り下ろしただけでミカを殺せる位置に立ち…


「このまま死ね…」

「くっ…」


 デストが剣を振ろうとしたその時だった。

 銃声が鳴った。

 そして…デストの右胸を銃弾が貫く。


「ぬっ…!」

「大丈夫か…ミカ!」

「ロ…キ…!」


 銃を撃ったのはロキだった。

 ロキが身体中をボロボロにしながらもデストを睨む。


「………いい銃…だな…」


 デストが床に膝をつく。


「ミカ、その血の量…!」


 ロキが致命傷のミカの方を見る。

 瞬時に治せる方法が今のロキにはなかった。

 この場に…この場に回復できる人間はいなかった。


「うぐっ………」


 ミカの身体は既に外部から内部までボロボロだった。内臓を出血し、血が止まらない状態だった。

 だが…ミカはロキを不安にさせまいと言葉を振り絞る。


「…大丈夫…内臓とかもズタズタで…結構ヤバいけど、これくらいじゃ死なない…」

「そうか…」


 ロキはミカの心配よりも、ミカの言葉を尊重した。


「なら、ここは任せろ」


 ロキがデストに向けて銃を構える。


「…でも…」

「ホワイトやジン達が逃げてるか不安だ。…そいつらの避難を優先してくれ」

「…分かった…」


 ミカがそう言うと、ロキがミカに瓶の様な物を投げる。


「…応急薬だ。ホワイトに作ってもらったやつだし、役に立つだろう」

「……ありがと…」


 ミカは腹の傷を左手で押さえ、その場から離れようと歩く。


「さて…閃光の目潰しも効かないし…」


 膝をついたデストが立ち上がる。

 ロキがデストの方を見るが…デストの胸から血は出ていなかった。


「…なんか出血してねえし…お前は一体なんなんだ?それとも、お前の魔力か?」

「さぁな?内緒だ」

「…お前は何が目的だ」

「ジハさんの奪還…ってとこだなぁ」

「…やはりか…」


 ロキが銃の引き金に指を持っていく。


「それと、この基地の爆破も目的だ。今頃下っ端共が至る所に爆弾を仕掛けてるところだろう」

「っ…!」

「おっと、うっかり話しちまった。だが、もう気付く頃には遅いしな。後30分もすればこの基地は木っ端微塵だ」

「っ……じゃあ…その間にお前を倒さなきゃ…だな…」


 ロキが銃を強く握る。


「ははっ…精々頑張れよ?」


 デストが大剣を構える。






 ――一方…ラッシュ師団基地で部屋で睡眠を取っていたホワイトとジンは…


「ホワイト…!起きろ…!」


 ジンがホワイトを揺する。


「っ…な、なあに…?まだ寝始めたばっかり…」

「それどころじゃねえ…!」


 ジンが寝ぼけているホワイトを必死で起こす。


「ランスが通信機を使って避難指示を出した…」

「え…?なんで…?」

「爆発事故…らしい」

「爆発…?」

「兎に角起きろ…!」

「えっ…う…うん…!」


 ホワイトがベッドから起き上がる。

 起き上がった後…部屋より遠くの位置から爆発するような音が聞こえる。


「…ほんとだ…なんか遠くから騒がしい音が…」

「事故…とは思えないな…もしかしたら…」

「…?」

「…最悪の事態も考えなければ…な…」


 ジンはそう言うと、部屋を見渡し、部屋の窓に銃弾を撃つ。

 窓ガラスが割れ、外に出られるようになる。外には真っ暗な平原が広がっていた。


「こっから早く出るぞ…」

「っ…うん…!」


 ホワイトとジンは窓から外に移動する。


後書き~世界観とキャラの設定~


『ブラック』

…黒髪と赤色の瞳をしたホワイトの兄。ホワイトとは7歳上になるので25歳。

とあるきっかけからネオカオスの総帥であるジハのボディガードを務めていた。

剣術に長けており、臨戦態勢を取ろうとしたジハを一瞬で止め、降参に追いやった。


『魔力の根源』

…ジハが狙っているとされる物なのか概念なのか現時点では分からない物。

ブラックの推測によると、この世界で人間が魔力を持つようになったきっかけにあたる。

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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
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