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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔
89/271

ep87.魔限突破

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ――数年前…


「っ…大丈夫…近くにいる団員は呼んだ…まだ助かる…まだ…」

「…ナギサ…最期に…お願い…が…ある…の…」


 少女がナギサの前で腹から血を大量に流しながら倒れていた。

 ナギサが必死に少女を助けようとしていたが、彼女の願いは少しずつ遠くなっていく。


「っ…最期だなんて…そんな悲しい事…!!」

「あた…しが…あみ出し…た…魔限突破(まげんとっぱ)…あれは…もう……禁忌…技とし…封印…て………もうあ………誰…も…バレ…行けない………悪の手に…染まっ……し……前…………封印を……」


 ナギサに必死に話し続ける少女。

 意識が朦朧とする、傷口が広がる、身体が冷たくなってきた。

 もう…死んでしまう。


「っ………喋っちゃ…ダメ…傷口が…開いちゃうから…」

「…でも…もしも………心優しくて……この…狂った世界…を…任せ…る……ような…人……出会っ………その…きは………」

「…その…時は…」

「…その人に………託し…ほしいの………お願い………ナギサしか……任せら……………」


 少女はそう言うと、ナギサの腕の中で静かに息を引き取ってしまう――







 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ――ホワイトとナギサが別れてから数時間後…

 カルム師団基地の団長室にて。


「………」


 ナギサが自身の右手人差し指に付けている二つの指輪を見る。


「……漸く、君の最期の願いを…叶えてくれそうな相手が見つかった…かも」


 ナギサがそう言うと、ルドが団長室に入る。


「ナギサ、ひとまず現時点での資料は全部片付いた。一先ずは休憩できそうだ」

「ん、了解」


 ナギサが右手の指輪を隠す。


「…何か隠したか?」

「いや、なんでもないよ」

「そうか」


 ルドがナギサの横まで歩く。


「…何?」

「…やるよ」


 ルドがそう言うと、ナギサに缶コーヒーを差し出す。


「コーヒー…」

「飲まないなら、いいが」

「飲む」


 ナギサが左手で缶コーヒーを掴む。


「…ルド」

「どうした?」

「…この世界って狂ってるのかな」

「狂ってるかどうかは知らないが…ネオカオスもスピアも亡き今、平和には近付いてきているだろう」

「平和…か」


 ナギサが椅子を引く。


「…あの時の平和が…ずっと続いてたら良かったのにな…」

「ナギサ?」

「…ちょっとあの子の事を思い出しちゃってさ」

「あの子…ムツミ…か」

「…そう」


 ルドが腕を組む。

 ムツミという名前、かつてカルム師団の団長を務めていた少女の名だ。そして、ナギサの親友だった存在…


「…ムツミは、絶望していた私に手を差し伸べてくれた…まさに希望だった。それなのに…」


 ナギサが落ち込む。


「…ナギサ」

「あの時…私達がカルム師団を結成しようなんてならなかったら…ムツミを失う事は無かったのかな…」

「…そうだな。カルム師団を作ったから…お前は親友であるムツミを失った」


 ルドが上を向く。

 二人の言う通り、ムツミは既に亡くなっていた。

 ナギサの付けていた二つの指輪は、ムツミの形見だった。


「…だけど、得る物も沢山あっただろ…?」

「…そうだね。カルム師団を立ち上げて…皆で得た物はいっぱいあった。だけど…私には…」

「ナギサ団長、失礼します!」


 団員が団長室に入る。


「…何?」

「ナギサ団長に会いたいという来客です」

「はぁ、資料片付いて漸く休憩に来客…ついてないなぁ」


 ナギサが頭を掻く。


「どんな人?」

「えっと…結構美人で…」

「結構美人?」

「確か名前は…ホワイトと言ってました」

「…!」

「ホワイトさんが?」


 ルドが首を傾げる。

 ナギサが立ち上がる。


「分かった、すぐ行く」





「お待たせ、ホワイトちゃん」


 座っているホワイトにナギサが話しかける。


「あっ」

「君が来たって事は…覚悟が決まったって事かな?」

「…はい。もう覚悟は決めてます。魔限突破を…させてください」


 ホワイトがナギサの目を見る。


「ん、分かった。先に言っておくけど…後には戻れないからね。まぁ強くなる事に越した事はないけど…禁忌の技ではあるから」

「…そんなの、覚悟の上です」

「決まり、じゃあ行こうか。こっちおいで」


 ナギサがホワイトを団長室まで連れていく。




 カルム師団基地の団長室にて…


「ルドさん…お久しぶりです…!」

「おぉ、久しぶりだね、まさかまた会えるとは思わなかったよ」

「…さてと」


 ナギサが団長室にある机の下を見る。


「えっと…これかな」


 ナギサがボタンのような物を押す。

 すると、机が勝手に横に動き出す。


「…ん」

「…え」


 机の下から地下に通じる階段が出てくる。


「地下への階段…?」

「そ。この先に禁忌の技を封印してる」

「封印…」

「あんまりなりふり構わず得る物じゃないからさ。限られたメンバーしか知らない訳。さっきも言ったけど、今生きてる人だと私とルドしかこの情報は知らない」

「ナギサさんと…ルドさんだけが…」

「…俺はその技を使った事はないがな。今後とも使う気もないが」

「え…えっと…」

「ホワイトちゃん、着いてきて」


 ナギサが階段を降り始める。


「あっ…はい」


 ホワイトがナギサに着いていこうとする。

 ルドの方を振り向くホワイト。


「…ルドさんは、来ないんですか?」

「あぁ。なりふり構わず得る物じゃないからな…」


 ルドが腕を組み、目を逸らす。


「…?」


 ホワイトが疑問を抱きながらも階段を降りる。




 二人の階段を降りる足音が鳴り響く。


「それにしてもこの下…真っ暗なんじゃ…既に暗いし…」

「いいや、そんな事ないよ」


 ナギサがそう言うと、突如明かりがともる。


「っ…眩し…」


 ホワイトが目を開ける。

 そこには何もない広い部屋が広がっていた。


「…!」

「ようこそ、カルム師団の地下室へ」

「地下室…」


 ホワイトが辺りを見渡す。

 広い部屋には違和感すら感じ取れた。


「何も…ない…。電気以外…何も…」

「あの子が大きく作りすぎてしまった物だから、あまり気にしないで」

「あの子…?」


 ホワイトが首を傾げる。


「私さ、実は二代目団長なんだよね」

「二代目団長…?」

「そっちはシェールちゃんが二代目団長でしょ?」

「あっ…そうですね。ランスさんが立ち上げた師団だから…」

「そう、ランスね…」


 ナギサが目を逸らす。


「ナギサさんの前に団長をしてた方がいたんですね…」

「…うん。初代カルム師団の団長は…ムツミって名前の子でさ、私の一番の親友…だった」

「一番の親友…そんな人が何故団長を辞めて…?」

「…殉死」

「え…今なんて…」

「…ムツミは死んだの。ネオカオスによって…」

「っ…!?」


 ホワイトが驚いた表情をする。

 ナギサが下を向く。


「そ…そんな…ネオカオスが…カルム師団にまで手をかけてたの…?」

「…ネオカオスはカルム師団に入り込んでたって、さっき話したよね…」

「っ…まさか…」

「…そう。ムツミは察しが良すぎたの。そのスパイによって…殺されたの」

「っ……まさかネオカオスが………そんな…!」


 ホワイトが拳を握る。


「…そのせいで…君には…いや、ラッシュ師団の皆には迷惑をかけちゃった…この魔限突破をネオカオスの連中に知られて…ネオカオスのジハはそれに伴って強くなって…」

「っ…」


 ホワイトが絶句する。


「…でもさ…私が悪いんだよ。ムツミを守れなかったのも…ネオカオスを強くしてしまったのも…ランスがラッシュ師団を辞める程のダメージを負った原因も…全部…私が…」

「そんな事…ない…!」


 ホワイトが大きな声を出す。


「ナギサさんは…確かに抜けてる所も変な所もあるけど…全部が全部あなたのせいじゃない…!」

「…ホワイトちゃん」

「ナギサさんは…カルム師団の…いや…皆の…(かなめ)です…!」

「ホワイトちゃん…」


 ナギサがホワイトの目を見る。


「ナギサさんがいたから…ラッシュ師団である私だってあなたのために命を張れた…あなたと共に…皆が命を懸けて戦ってくれた…だから…全部が全部あなたのせいなんかじゃない…!」

「…ふふっ」


 ナギサが笑い出す。


「ナギサさん…?」

「…ほんと、馬鹿だなぁ」


 ナギサが振り向く。


「っ…ナギサさん…馬鹿ってそれ…私の事を…?」

「…な訳ないでしょ」


 ナギサがホワイトに顔を見せないように涙を流す。


「…君は優しいね。その優しさ…ずっと続けて欲しい」

「…ナギサさん」

「…ムツミはさ、この魔力を…心優しくて…この狂った世界を任せれるような人に出会ったら技を託してほしいって言ったんだ」

「ムツミ…さんが…」

「…その人が君なんだよ、ホワイトちゃん。君なら…この狂った世界も任せられそうな予感がするんだ」

「っ…そんな大袈裟な…私にはそこまでの力は――」


 ホワイトがそう言うと、ナギサが思い出したかのように話し始める。


「…あの時皆を救ったの、君でしょ」

「あの時…?」

「…世間一般では、魔力の根源の暴走によりジハが死亡と決定づけられた時のちょっと前」

「っ…それって…」


 ジハが魔力の根源を得て完全な存在となった時の事…

 ミカやジンがジハによって魔力と魂が吸われた時…


「あの時さ…皆急に苦しんで倒れててさ…私もそれに巻き込まれて……」

「っ…あの時のジハの魔力にそこまでの影響が――」

「…やっぱり、そっか」

「あ…」

「意識がない間…夢なのか夢じゃないのか分からないけど…ずっと真っ暗な場所にいてさ…凄く怖くて…苦しくて…でも、その場所には途中から一点の光が現れて…凄く暖かくて優しい光だった…一気に辺りを照らしたと思ったら…気が付いたら目が覚めて…皆は困惑してたけど…私はその時思ったんだ。誰かがジハを…ネオカオスを…世界の改変を止めてくれたって」

「………」


 ホワイトが黙り込む。


「それが君なんじゃないかって、君に出会ってからずっと気配を感じ取ってた。君が皆を…世界を助けてくれたんだと思ってた。世間一般では魔力の根源の暴走って言ったけど…私は仮にもカルム師団の団長で魔力の根源を追ってた身だからそれだけで片付く訳ないと思っていた」

「…ナギサさん」

「君はこんな狂った世界を…任せられる人だ」

「………!」


 ホワイトがナギサの背中を見る。


「それに私は…ネオカオスの件も含めて…君に二度も命を助けられてるんだよ。私情だけど、この私情もあるからこそ…君に託せれる」

「ナギサさん…」


 ホワイトが胸に手を当てる。


「…正直私には…何がなんだか分かりません。あの時発現した繋命…魔力の根源にも匹敵するほどの強大な力…私があの時…あの瞬間に繋命という強大な物を扱ってたなんて…今でも信じられません」

「そうだね。君の身体からはちょっと想像できないかも」

「…けれど、私はあの出来事のおかげで…お母さんと…いいや、自分と約束しました。絶対…皆を助けるって」

「…皆を助ける…か」


 ナギサが上を向く。


「その自分に刻んだ約束を叶える為にも…私は覚悟を持ってここに来ました。私は…自分に約束したから…皆を助けたい…皆を助けるために…私は強くなりたい…!」

「…そっか。良い目標だね」


 ナギサが涙を拭う。


「…君に覚悟があって良かった」

「…ナギサさんのおかげでもあります」

「…長くなったね。そろそろやろうか。禁忌の技…魔限突破を…!」

「…!」

「この部屋の更に奥にある、着いてきて」


 ナギサが歩き出す。




 ――大きな部屋にある扉を開ける。

 そしてそこにある小さな部屋に入る二人。


「ここだね」

「ここは…」


 ナギサとホワイトの目の前には小さなケースがあった。


「この中の秘薬が…魔限突破の薬」


 ナギサがケースから秘薬を取り出す。

 何個も並んでいた。


「…あ、ケースに何個も入ってる…」

「はい、ホワイトちゃんの分」


 ナギサがホワイトに秘薬を差し出す。


「…ありがとうございます」


 ホワイトが秘薬を受け取る。


「…これを…どうすればいいんですか…?」

「ん、飲めばいいよ」

「え…飲むだけですか…?」

「そう」


 ホワイトが秘薬を眺める。

 秘薬は緑色をしていた。


「なんか変な色してる…」

「飲まないの?」


 ナギサがホワイトの目を見つめる。


「これを飲んだだけで…私の魔力が…?」


 ホワイトがそう言うと、ナギサが秘薬の蓋を開ける。


「ん――」

「んぐっ!?」


 ナギサがホワイトの口に無理矢理秘薬を入れる。

 ホワイトの喉の中に薬が入る。


「っ……ん…う……」

「どう?美味しい?」

「…ゲホッ…まず…」


 ホワイトが咳をする。

 ホワイトの舌に苦味とも辛味とも呼べる謎の感触が襲い掛かる。


「うん、まぁまずいよね。高級な食品ってあんまり美味しくないよね」

「…言いたい事は分かります。…まずい………」


 ホワイトが舌を出す。


「…こんなまずい薬…ナギサさんは我慢して飲んだんですか…?」

「いや、調味料感覚で料理と一緒に」

「ならなんで私は直に飲まされてるんですか…しかも無理矢理…ナギサさんって優しくないですね…」


 ホワイトがそう言うと、ナギサがホワイトの方を見て微笑む。


「なんで笑ってるんですか…」

「いや?なんか面白くてさ。それより…どう?力はみなぎってくる?」

「力は…」


 ホワイトが自身の手を見る。

 まだ実感が湧かないホワイト。


「…あんまり分かりません」

「そっか」


 ナギサがそう言うと、剣を取り出す。


「じゃあ、ちょっと私と戦おうよ。魔力を出せるだけ出してみてよ」

「えっ…!?」

「まだ感覚は来てないみたいだけど、君の身体にはもう既に魔限突破が刻まれてる。まずは…小手調べに私と戦おう」

「っ…ナギサさんと…戦うなんて…できないです…!」

「…君の覚悟はそんな物なの?」

「っ…」


 ナギサがホワイトの目を見る。


「…私を倒すつもりで、かかっておいで――」


 ナギサがホワイトに剣を向ける。


「っ…」




 ――広い部屋に移動する二人。


「これだけ広ければさ、戦えるよね?」

「っ…」


 ホワイトが額の汗を拭う。


「…ナギサさん」

「何?」

「…その…もしも…繋命が強くならなかったら…もしも逆に強すぎて…ナギサさんを――」

「そんな心配してるの?」


 ナギサが震えるホワイトの目を見て微笑む。


「…そんな実力じゃ、お父さんに会えないよ」

「っ…!」


 ホワイトが魔力で繋命剣を作り出す。


「…やっぱり。家族の事を言ったら…本気(マジ)になれるんだ」

「…ナギサさん、ズルいです」


 ホワイトが剣を構える。


「…いい事だと思うよ。だからこそ…本気でぶつかってきてよ」

「…分かりました。死んでも…恨まないでくださいね」

「恨まないよ。繋命を持つ君に殺されるなら本望だ」


 ナギサがそう言うと、ホワイトの目の前に瞬時に移動する。


「…!」

「まぁ死ぬつもりもないけど」


 ナギサがホワイトの首元に剣を振る。


「っ…!」


 ホワイトが繋命剣でガードする。


「いい動き」

「っ…!」


 ナギサがホワイトから距離を取る。


「…今の君となら、本気でやれそう」


 ナギサがそう言うと、剣に水の魔力を宿す。


「…本気でぶつかり合おう、ホワイト…!!」

「…お願い…します…!」


 ――ホワイトとナギサの剣が再びぶつかり合う。



後書き~世界観とキャラの設定~


『ムツミ』

…カルム師団初代団長で、ホワイトよりも少し身長が低く童顔の金髪ポニーテールの少女。

過去にネオカオス四天王をやっていた者によって死亡。死に際にナギサに魔限突破の管理を託す。

ナギサが付けている二つの指輪はムツミとのペアリング。


…そして過去にムツミを殺したネオカオス四天王はデスト、ルキ、フェクト、メタリーの四人ではない。


『魔限突破』

…魔力の限界を突破する禁忌のやり方。肉体の魔力許容量を増やす事が可能で、ホワイトの元ある魔力の許容量を三倍にまで引き延ばせる。魔力の許容量が上がると言う事はそれだけ強くなれるという証であり、魔限突破をする薬を飲んだホワイトはナギサとの戦闘で全身に魔力が行き渡り、自身の魔力を感知しようとしなくても感じられる程に強くなった。

その反則にも似た術はネオカオスにとっても興味深い物であり、この術がネオカオスの内通により、ネオカオスに流れてしまった事によりジハは強くなってしまったとナギサは推測している。

現在この術を使用している生者はナギサとホワイトの二人のみとなっている。

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悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
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