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白と悪魔と  作者: りあん
第三部 繋がる命と共存の悪魔
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ep85.記憶と前進と

 ――シェールと恩人が残るエルの家にて…


「………」


 シェールが謎の男の身体をジロジロと見ていた。


「あの、シェールさん…?」

「…その左腕、やっぱり気になるわ…」


 シェールが謎の男の左腕を見る。


「…ですよね」


 謎の男が包帯を巻いた左腕を見せる。


「あなたに見せていい物かどうか…」

「…こういう時…ランス君ならどうしてたんだろう…」

「ランス…?」

「私なんかじゃ団長務まらないわ…ランス君…私はどうすれば…」


 シェールがそう言うと、謎の男がシェールの顔を見る。


「今…ランスって言いました…?」

「え?えぇ…ランスは…私の恋人で元ラッシュ師団の団長です。えっと…それが何か…?」

「その名前…聞き覚えがあります…」

「聞き覚え…?」


 シェールが首を傾げる。


「なんでかは分からないですが」

「…そういえば…」


 シェールが謎の男の目を見つめる。

 謎の男はシェールの記憶に残る誰かの目に似ていたが、それが誰かは思い出せなかった。


「あなたの目…誰かに似てるような…」

「誰かに似てる…?」

「その…えっと…うーん…」


 シェールが険しい顔をする。


「…顔、怖くなってますよ」

「はっ…ごめんなさい…えっと…」

「…あはは」


 謎の男が笑い始める。


「えっと…?」

「あなたって…かなり人間味があっていいですね」

「えっ…?人間味…?」

「その…何処かの団長って聞くと、凄い厳つい人を想像するので…あなたみたいに少し人間味がある人はいいなって」

「え…えっと…その…褒められてないような…褒められてるような…」


 シェールが顔を赤くする。


「あなたみたいに実際は凄い人なんだけど人間味がある人と…ずっと一緒にいたような感覚があります」

「…ずっと一緒にいたような感覚?そうなると友人…もしくは恋人…的な…?」

「友人…恋人…」


 謎の男が腕を組む。


「…なんだろう、それより上の様な気が…」

「え…っと…そうなると…」


 シェールが腕を組む。


「…あれ、シェールさん」

「…ん?」

「その左手に付けてるそれ…」


 謎の男がシェールの左手を見る。

 シェールの左手の薬指にはランスから貰った指輪が付けてあった。


「あ…これは…」

「結婚してらっしゃるんですね」

「えっと…いや…婚約…みたいな…」


 シェールが顔を赤くする。


「婚約…ですか。そういえば俺も…」


 謎の男がそう言うと、持っている指輪を取り出す。


「あら…あなたも指輪…」

「目が覚めた時には俺もこれを持っていて…でも…これに触れても特に記憶が戻ったりはせず…」

「…そう…なんですね」


 シェールが目を細める。


「若々しいから子どもがいるって事は…ないわよね…」





 ――一方、ジンとエルは…


「ねぇ…ジン」

「…ん?」

「サキュアの復興手伝ってくれてありがとう」

「おう」

「…ねぇ、ホワイト…だっけ?あの子とはどうやって出会ったの?」

「ん、そうだな…俺達は…最初は敵だったんだ…」

「敵…?」

「あぁ…俺がラッシュ師団に入るきっかけは…ホワイトのおかげなんだ」

「へぇ…」


 エルがジンから目を逸らす。


「殺し屋時代に俺は…あいつを…人間共に奪われたんだ…」

「あいつ…?」

「あいつは…当時の俺に依頼をして…だけど俺はその依頼を達成できず…仲間もあいつも失って…それで…」

「依頼…かぁ」


 エルがため息を吐く。


「その依頼主の特徴は?女の子?名前は?依頼の内容は?覚えてる?」

「依頼主の特徴は…」


 ジンが考え始める。

 だが…ジンが言った"あいつ"の名前や顔が思い出せなかった。


「…あれ」

「どうしたの?」

「……は…?」


 ジンが頭を抱える。


「なんでだ…あいつの名前も…顔も…思い出せない…!?」

「…へぇ」

「なんで…何も思い出せないんだ…仲間とあいつを失った事は覚えているのに…俺は…なんで……!」

「…ふーん」


 エルがジンの顔を見つめる。


「…なんだよ…?」

「あなたも…記憶を失ってるんだね」

「俺が…記憶を…失ってる…?」

「否定できないでしょ、あなたが記憶を失ってるのはもう…確定事項だよ」

「っ…記憶を失ってる…か…」

「…その部分だけ記憶を失った原因、何かある?」

「その部分だけ失った原因…なんだ…何が原因だ…?」


 ジンが頭を抱える。


「分からないよね」


 エルがため息を吐く。


「…記憶を失う原因ってさ、私は二つあると思うんだよね。一つは頭に大きなショックがかかった場合、もう一つは…魔力が原因だと思ってる」

「頭にショックと…魔力…か」

「私を助けてくれた恩人さんは…頭から血を流してたから頭に大きなショックがかかって…記憶を失ったって推測してる。君は…頭を強く打ったことがあった?」

「頭を強く打った覚えは…」


 ジンが腕を組む。


「…いや、ないな」

「そうなると魔力だね。記憶に関する魔力を扱える人は身近にいる?」

「身近に…」


 ジンがランスの顔を想像する。


「そうだ…ランスだ…団長には記憶に関する魔力がある。だがあいつは…ラッシュ師団の基礎的な記録を与えたって言ってた。あの時はシェールさんもいたから嘘の判別はシェールさんができた…だからランスでは…」


 ジンが上を向く。

 だがもう一度考え直す。


「…待てよ、確かあの時…シェールさんは…ランスが言ってたミカの話に関しては嘘はないと言ってた…だけど俺の話は…?」


 ジンが腕を組む。


「言ってる訳では…無かったよな…」


 ジンが首を傾げる。


「いや…難しく考えすぎか?あの場は緊迫した雰囲気だったから…」

「ジン――」


 エルがジンの肩に手を乗せる。


「少しでも誰かに疑いがあるの?」

「え…?」

「少しでも疑いがあるなら…詰めるべきだよ」

「っ…だけどシェールさんは誰にも真似できないくらい良い人だ…あの人を詰めるような真似は…」

「ジン」


 エルがジンの肩を強く掴む。


「どんなに良い人でもね、嘘や隠し事をする事はあるの。例えそれが…どんなに信頼を寄せれる相手だったとしても」

「っ…お前…!」


 ジンがエルを睨む。


「私も同じ。私は色々話してるのに、恩人さんには隠し事をされてばっかりだから」

「………」


 ジンが頭を掻く。


「…今度、シェールさんに聞いてみる事にする」

「うん。それが良いと思う」


 エルが小さく微笑む。





 ――一方、ホワイトは…


「ジン君、今頃どうしてるかな…」


 ホワイトが携帯を取り出す。


「連絡…しようかな…」


 ホワイトが携帯を握り締める。


「…いや、サキュアの復興を頑張ってるジン君に迷惑はかけられないや」


 ホワイトが頭を掻く。


「でも…何も手掛かりがない…どうすればいいの…」


 ホワイトがジンの連絡先を見る。


「ジン君…会いたい…助けて欲しい…ジン君のアドバイスが…欲しいよ…」


 ホワイトが涙を堪える。


「シェールさんもロキ君も忙しい…ミカもきっと…」


 ホワイトが何かを思い出す。


「…そうだ、ナギサさんだったら…?」





 ――カルム師団の基地にて…


「ナギサ団長、こちらの資料確認をお願いします」

「ん、了解」


 ナギサが団員から資料を貰う。

 魔力の根源に関する資料でナギサは手がいっぱいだった。


「団長、こちらも」

「ん。後で確認するから置いといて」

「ナギサ」


 ルドが団長室に入る。


「ん、何?」

「魔力の根源に関してまた来客だ。どうする?」

「こんなクソ忙しい時に来客なんて…最近仕事が大変だねぇ…」


 ナギサが立ち上がる。

 そして、ルドに資料を渡す。


「来客対応するから、この資料の確認をお願い。問題がなかったらデータ化する事。そして私の通信機に送って」

「分かった」


 ナギサが団長室から出る。



「さてと…こんな忙しい時に誰が来るんだよ…全くもう…」


 ナギサが歩きながら言うと、ナギサの携帯が鳴る。


「…こんな忙しい時に誰だよもう」


 ナギサが携帯を取り出す。


「…あ」


 ナギサが電話に出る。

 電話の相手はホワイトだった。


「もしもし、ホワイトちゃん?」

『あっ…ナギサさん!今…大丈夫ですか?』

「今?ちょっと忙しいかも。ごめん」

『そ…そうですよね…ごめんなさい…』


 ホワイトの声を聞いて、ナギサが考えを改める。


「…いや、大丈夫。私に何か頼み?」

『あっ…いいんですか…?その…私の魔力について…ちょっと…』

「君の魔力…か」


 ナギサが腕に付けている通信機を操作する。


「分かった、何処にいる?すぐ行く」

『え?えっと…忙しくないんですか?』

「今の仕事は後回しにする事にする。今は何処にいるの?」


 ナギサが自身の部屋に向かう。


『えっと…ラルの街です』

「そっか、分かった。少し待ってて。数分で行く」

『え…でもカコウの街とラルの街の距離ってかなり遠いですよ…?少なくとも一時間はかかります…!』

「まぁ、ちょっと待っててよ。それじゃ」


 ナギサが電話を切る。


「さてと…」


 ナギサが通信機をルドに繋げる。


「あ、もしもしルド?」

『ナギサ?どうした?さっき団長室から出たばっかりだが何かあったか?』

「その、来客任せていい?」

『は?』

「ごめん、大事なお友達の頼みなんだ。私が行かないと行けない」

『…そうか。分かった。資料は後に回す。行ってこい』

「ありがと」


 ナギサが通信を切る。


「さてと…」


 ナギサが部屋に入り、私服に着替えを始める。


「…こんなんでいっか」


 ナギサが眼鏡をかける。

 ナギサが部屋を出る。




「さてと…」


 ナギサが医療室に入る。


「君の助けが必要なんだ。任せていいかな?」

「…いいですよ」


 ナギサがフェクトと会話していた。

 魔力の根源の件が終わった後…ラッシュ師団の医療室に入れられていたフェクトは今はカルム師団が医療室に入れていた。

 カルム師団で預かった方が後々役に立つだろうというナギサの考えの元、フェクトは引き取られた。

 だが、ナギサもタダで引き取る程の鬼ではない。


「約束ですよナギサ団長」

「…うん。いつか君の魔力を完全に取り戻せるように私達も善処してる。これはその余興だと思ってくれればいいよ」


 ナギサが腕を組む。


「ラルの街までお願い」

「分かりました」


 フェクトはそう言うと、左腕でワープホールを作る。


「…ねぇ、フェクト」

「なんだい?向こうの団長に一生片思いしてた団長さん」

「怒るわよ」


 ナギサがフェクトの頬を抓る。


「いでで…パワハラですよ」

「…フェクト。死者に会える方法って…あると思う?」

「死者に会える方法…ですか」


 フェクトが指を咥える。


「魔力によっては…会える方法もあるんじゃないのかい?」

「魔力によって…か」


 ナギサがフェクトの目を見る。

 そして、ナギサが微笑む。


「…ありがと。じゃ、行ってくる」

「はい。戻る時は頑張って」

「…ん」


 ――助けを求めるホワイトに会うため、ナギサがワープホールに入る。

 


後書き~世界観とキャラの設定~


『フェクトの行方』

…ラッシュ師団で一時的に治療していたフェクトだったが、シェールとナギサの間で交渉の末、カルム師団で預かる事となった。

ナギサはいつかフェクトの魔力を完全に取り戻せるように善処している。

魔力がスピアによって殆ど奪われてしまっているが、それでもワープの魔力は使え、人の転送もお手の物だった。



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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
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