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白と悪魔と  作者: りあん
第二部 可能と不可能の根源
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ep74.神への抗い

 スピアがホワイトの方へ歩き始める。


「嫌…だ…来ない…で……」


 スピアが拳に魔力を込めながらホワイトへ近付く。


「ん?貴様よく見たら…面白い魔力を持っているじゃないか」


 スピアが目を赤く光らせ、ホワイトを見る。

 スピアはホワイトではなく、ホワイトの魔力に興味津々だった。


「女神族の魔力の気配とは別で異様な気配を感じる…欲しい…!」

「っ…!まさか…繋命の事…!?」

「繋命…聞いた事のない名だ。それが貴様の放つ異様な気配か」


 スピアがナイフを持つ。


「その魔力、寄越せ」


 スピアがホワイトに近付き、ナイフを刺そうとする。


「っ…!」

「ホワイトちゃん…!!」


 咄嗟に現れた剣…

 ナギサがスピアのナイフを剣で押さえていた。


「ナギサ…さん…!?」


 ナギサは身体中から血を流していた。

 瀕死の重傷とも呼べるその身体を振り絞って、ホワイトを守ろうとしていた。


「ホワイトちゃん…私がスピアを押さえてる…その間に…皆を回復して…!」

「ナギサさん…!で…でも…!」

「皆重傷だけど魔力の気配はある…まだ助かる見込みがある…ホワイトちゃんの魔力なら…!」


 ナギサがそう言うと、スピアがもう片方の腕でナイフを生み出す。


「っ…ナギサさん…!」

「早く…!」

「っ…ごめん…なさい…!」


 ホワイトが倒れているミカに回復魔法をかけ始める。


「ミカ…お願い…治って…!」

「ぐっ…!」


 スピアは隙を見逃さず、ナギサにナイフを刺す。

 ナギサの右肩にナイフが刺さる。


「…!ナギサさん…!」

「っ…まだ…まだ私は…」


 スピアがもう片方の手に持つナイフでナギサの腹を刺す。


「がはっ…」


 ナギサが吐血する。


「っ……ごめ……ホワイト…ちゃ…」


 ナギサがその場に仰向けに倒れる。


「…!!」

「あの頃よりは強くなってたみたいだったが、残念だったな」


 スピアがナギサの右肩に刺さっているナイフを抜く。


「さてそろそろ貴様の魔力を…」


 スピアがそう言うと、銃声と共にスピアの頬が出血する。


「…あぁ?」

「っ…」

「…!ジン…君…」


 ジンがホワイトの後ろからスピアの頬を撃っていた。


「…貴様が撃ったのか。よくもまぁそんな重傷で立てるなぁ」


 スピアがジンを見る。

 ジンは腹から血を大量に出していた。

 血が地面から垂れ続け、動いているだけで身体全体に痛みが走るほどだった。


「ジン君…!その出血量…」

「…まだだ、俺は戦える…まだ…俺は…」


 ジンがスピアの方へゆっくり向かう。

 スピアが目を赤く光らせ、ジンを見つめる。


「…貴様も面白い魔力を持っているな。その魔力…欲しい…!」

「…ふん、可能の災いとやらは全てを可能と言う割には強欲な奴だな…」

「ジン君喋っちゃダメ…!傷口が更に開いちゃう…」

「興味深い魔力を欲して何が悪い?人間誰しもそう言う思考になるだろう?」

「…本当は全て可能だなんて嘘なんじゃないか?」

「………」


 スピアが黙り込む。

 スピアが自分の腕を見る。


「隙ありだ…!」


 ジンが銃を撃つ。


「…!」


 だが、神の前に銃など小細工当然だった。

 スピアがジンの銃弾を掴む。


「銃弾を…掴んだ…!?」

「…復活の影響か、確かに可能な事は減ったが、貴様等を蹂躙するくらいの魔力は戻っている」


 スピアはそう言うと、ジンの背後に一瞬で回り込む。


「っ…!」

「少し眠れ――」


 スピアがジンの脇腹に蹴りを入れる。


「がっ…!」


 ジンが大きく吹っ飛ぶ。


「ジン君…!」


 ジンが意識を失ってしまう。


「…さて、気を取り直して…」


 スピアが言葉を続けようとすると、ホワイトが剣を魔力で作り出し、スピアに斬りかかる。


「スピア…!」

「っ…!」


 スピアがホワイトの剣をかわす。


「さっきまで使わなかった魔力…そうか、それが女神族の力の一部という訳か」

「皆を…傷付けて…絶対に許さない…!」

「絶対に許さない…か」


 スピアがホワイトの方を見て微笑する。


「ならば私は…私を封印した人間や女神族共を絶対に許さない」


 スピアがホワイトに近寄る。


「っ…!」


 スピアがホワイトの剣に蹴りを入れようとする。


「…!」


 ホワイトは蹴りをかわす。


「今のをかわすか。それも女神族の力か?」

「っ…!」


 ホワイトがスピアに斬りかかる。


「危ないだろう」


 スピアが剣をかわす。


「…だが、この力は凄い。とても強い魔力を感じる…」


 スピアがホワイトの剣の柄を掴む。


「っ…!」


 だが、スピアの身体に違和感が走る。

 スピアがホワイトの剣の柄から手を離す。


「…なんだ、今の」


 スピアが剣を掴んだ手から血が出ていた。

 スピアが目を赤く光らせ、ホワイトの剣を見る。


「…そうか、剣そのものが魔力…魔力の所有者以外が触れれば当然反発する…」


 スピアが辺りを見渡す。


「…ホワイトと言ったな。私の提案に乗らないか?」

「…!」


 ホワイトがスピアを睨む。


「私は可能の災いディ・スピア。可能と言うからには…貴様の仲間を回復させる事だって可能だ」

「…何が…言いたいの…?」

「簡単に言えば…交渉だ。私の魔力があれば今そこに倒れている小娘も、岩が腹に刺さって今にも死にそうなその小娘も、貴様の想い人とやらも一瞬で治せる」

「……!」


 ホワイトが驚いた表情をする。


「だが私は貴様の魔力が欲しい。回復させる代償としてその魔力をこちらにくれないか?貴様は仲間を回復させたい。どうだ、良い条件だろう?」

「回復………」


 ホワイトがスピアにゆっくり近付く。


「そうだ、元はと言えば私の傲慢のせいで貴様等を傷付けてしまった、貴様の仲間の回復を以て詫びをしよう」


 スピアがホワイトに手を差し伸べる。


「っ…」


 ホワイトが自身の持つ剣を魔力で消し去る。


「そうだ、それでいい」


 ホワイトがスピアの目の前に立つ。


「そして貴様達を――っ…!!」


 ホワイトが魔力で剣を作り、スピアにすぐさま斬りかかる。


「っ…!」


 スピアの身体に切り傷ができる。


「そんな案…乗る訳ない…!!」


 ホワイトが大きな声を出す。


「私まで繋いでくれた命の力…私が責任を持って繋いで見せる…あなたなんかに譲らない…!」

「…残念だ」


 スピアがそう言うと、ホワイトの背後に一瞬で回り込む。


「っ…!」

「無理矢理にでも奪ってやる」


 スピアがそう言うと、ホワイトの首元に噛み付く。


「ぐっ…!?」


 ホワイトがスピアを振り払おうとする。

 ホワイトの首から血が出る。


「動くな、その血と魔力…寄越せ…!!」

「ぐっ…うっ…辞め…て…!」


 ホワイトが抵抗し、剣をスピアの腹に刺す。


「っ…貴様…!」

「離して…!」


 ホワイトがスピアを振り払う。


「っ…」


 スピアが尻餅をつく。


「貴様…よくも…」

「うぐっ…」


 ホワイトがその場に倒れる。

 倒れているホワイトの首元からは血が大量に出ていた。


「よくも貴様、私の腹に…剣を刺してくれたな」

「はぁ…はぁ………」

「…今のでも魔力が吸い取れないのか。魔力を守ろうという意思を感じる…尚更欲しい…!」


 スピアが血の付いた自分の口を腕で拭く。

 スピアが腹に刺さっている剣を抜く。

 ホワイトは立とうとするが、身体全体が痺れて立てなかった。


「っ…起き…上がれない…」

「ただ噛み付いただけじゃない。吸い取るついでに貴様の体内に麻痺毒を注入した。あの女の残存魔力だ。貴様は暫く動く事が不可能だ」

「っ…嘘………」

「抵抗しなければよかった物を…可哀想に」


 スピアが魔力でナイフを作り出す。

 そのナイフはフェクトにも使った魔力を吸い取るナイフだった。


「このナイフを貴様に刺せば…どうなると思う?」

「っ…」

「たちまち貴様の魔力がこのナイフの中に貯まり…魔力が貯まったナイフを私に刺せば…私が貴様の魔力を得られる」

「辞め………て……」

「終わりだな、ホワイト」

「辞めて……!!」


 スピアがホワイトにナイフを刺そうとする。

 だが、銃声が鳴ると同時に銃弾がスピアのナイフを弾く。


「……あぁ?」

「………!」


 スピアが銃声のした方向を向く。


「………ランス………さん……」


 スピアの向いた方にはランスが立っていた。


「………ほう」


 ランスはスピアを強く睨み付けていた。


「ランス……さん………」


 ホワイトの目の前が霞んでいた。


「…助けて…くれ…たんだ…」


 ホワイトが目を瞑る。


「ランス…そうか貴様がラッシュ師団の団長…」


 スピアがナイフを持つ。


「お前が可能の災いディ・スピアとやらか…」


 ランスが銃をスピアに向ける。


「その小さい豆鉄砲で私に勝てるとでも?」

「………」


 ランスが銃を向けながら周りを見る。


「…俺の仲間を…よくもやってくれたな」


 ランスの腕が震えていた。


「…!」


 ホワイトが目を開け、思い出す。


「そうだ…ランスさんは…確か…」


 ホワイトが立ち上がろうとする。

 ランスは不可能の災いの正体…『不可能の災いヴィ・ランス』という事を…

 この場で動けるただ一人…ホワイトだけが知っていた。


「うぐっ…」


 ホワイトが首の傷口を押さえる。


「はぁ…はぁ…」

「スピア…お前は俺がここで殺す…!」

「やってみろ、ラッシュ師団団長…!!」


 ランスが銃を打つ。

 スピアがそれを瞬時にかわし、ランスに近付く。


「すぐ楽にしてや…」


 ランスが銃でスピアの顔面を殴る。


「ぐっ…!」

「…楽にしてやるのはこっちの台詞だ、スピア!」

「貴様…女の顔を躊躇なく殴りやがって…!」

「女…あぁ、確かにお前は女だな。実際に可能の災いディ・スピアという存在は見た目はか弱い少女だったんだろう」


 ランスがスピアに銃を向ける。


「だが…お前は俺の仲間を傷付けた。女だろうと容赦せん」

「っ…!」


 ランスが銃を撃つ。

 スピアは銃弾をかわす。


「危な…っ!」


 ランスがスピアに銃で殴りかかる。


「っ…」


 スピアがナイフで銃を押さえる。


「スピア…お前は絶対この俺が…殺す!!」

「…ふん、物騒な物だな、団長さんよ」


 ランスがスピアのナイフを吹き飛ばす。


「…物騒なのはどちらだ、可能の災い…!」

「ランス…さん…!」


 ホワイトがランスの傍による。

 ホワイトの首から血が垂れているのをランスが凝視する。


「ホワイト…その首の怪我…」

「っ…大丈夫です…それより…皆が…!」

「…ミカとジンが特に重傷だ。奴等の事だから大丈夫…という訳にも行かない。すぐ治してやってくれ」

「っ…分かりました…!」

「スピアは俺が相手する。皆の意識が戻ったら…すぐ逃げろ」

「っ…ランスさんは…」

「俺は平気だ。何せ今…奴と対等にやり合えてる。このまま行けば或いは…」

「っ…」


 ホワイトがランスの方を見る。

 不可能の災いの正体かもしれない。この人を信じてしまえば、敗北してしまうかもしれない。

 …だが、この人を信じるべきだとも思っていた。


「…分かりました、あなたを…信じます…!」


 ホワイトがミカの元へ走る。


「…お喋りなのだな、ランスよ」

「喋るのは大好きな物でな」

「…貴様はまだ何も知らない。私にはまだ手があると言うことを」


 スピアが魔力弾を作る。


「貴様と遊んでたさっきまでの時間はほんの余興だ。ここからは…この身に宿る魔力を更に使わせて貰う」

「…まぁそうだろうと思ったよスピア。俺も…本気を出そう」


 ランスが銃を捨て、魔力で槍を作る。


「潰す」


 スピアが魔力弾を何個も放つ。


「っ…!」


 ランスが槍を振り、魔力弾を消し去る。


「…!」

「お前には命をもって罪を償って貰う。お前は…この世にいては行けない存在だ…!」

「ふっ…笑わせてくれるな、ランスよ」


 スピアが魔力で槍を作る。


「ならば、槍と槍…ぶつかりあおうじゃないか」

「…お前も槍か」

「あぁ、私の得意分野だ。今まで憑依してた身体では少し扱いが難しくて見せてなかったがな」

「…まるで、血の分けた兄弟みたいだな」

「その場合、私が姉だな…!」


 スピアはそう言うと、自分より丈のある槍を軽々と振るう。


「っ…!」

「弟よ、姉に逆らった事、後悔してやる!」


 スピアが連続で突きをする。


「あぶっ…!」


 ランスが突きを避け続ける。


「さっきまでの威勢はどうした、ランスよ」

「っ…」

「この槍があれば私は何でもできる。そう、貴様を殺す事どころか世界を掌握することすら…!」


 スピアがランスの右胸に槍を刺す。

 ランスの右胸から血が大量に出る。


「っ…」

「…良い入りだ」

「…ふん」


 ランスがスピアの頭を掴む。


「なっ…貴様何を…!」


 ランスが魔力を発動すると、スピアの頭に電撃が走る。


「っ…!」


 スピアがランスの腕を振り払う。


「ぐっ…」


 ランスの右胸から槍が抜ける。

 ランスの口から血が出る。


「……貴様…何をした?」

「ちょっと…な」

「…小細工か、ならばこちらも小細工を…」


 スピアがランスに指を向ける。


「魔力弾!」


 スピアが魔力弾を人差し指の先に作ろうとする。


「…あ?」


 だが魔力弾は作れなかった。


「どういう事だ…?」

「ふん…!」


 ランスがスピアを槍で突きにかかる。


「っ…!」


 スピアが咄嗟にかわす。

 スピアがランスを睨む。


「……もう一度問おう。貴様、何をした?」

「…何、お前の記憶にちょっと細工をしただけだ」

「記憶に…だと?」

「記憶の一部を消させて貰った」

「…ふん、そんな事をしたところで私が怯むとでも?」

「現にお前は魔力弾を撃ててないじゃないか」

「っ…!」


 スピアがランスを強く睨む。


「まさか…魔力弾の作り方という記憶を…削除した…!?」

「まぁそんなところだな。俺の内臓はちょっとやっちまったが…まだ、大丈夫だ」


 ランスが錠剤の様な物を取り出し飲み込む。


「…その錠剤…さながら回復薬と言った所か…」

「正解…!」


 ランスの右胸の出血がおさまり、ランスは槍でスピアを突きにかかる。


「っ…!」


 スピアが突きをかわし続ける。


「可能の災いたる私が…押されるだと?」


 スピアが槍を槍で押さえる。


「…いいや、魔力弾を作る能力を失ったとて…私は最高級の魔力を使える…何でも可能なのだ…何でも…」

「…お前、まさか自分の本来の肉体が戻って慢心してるんじゃないか?」

「っ…!?」


 ランスが槍を振るう。


「お前の本来の肉体がサキュアに封印されていたとして…その肉体がお前本来の魔力を制御できるままだと思うか?数百年…いや、数千年飲み食いもしていないその身体で…お前…」

「っ…封印の余波とは…そういう事かっ…!!」


 スピアが距離を取る。

 スピアは身体が戻った影響で魔力を完全に制御できると思い込んでいた。

 だが、数千年にも及ぶ封印が身体を万全には動かさせなくさせていた。

 今のスピアは完全な存在ではなく、完全な存在に近付いた不完全な存在だった。


「チッ…」

「…さっきのデカい力を見た時は終わりだと思ったが…寧ろさっきので魔力がかなり擦り減ってたみたいだな」

「………そうか、そういう事か…」


 スピアが拳を握る。


「人間である俺が人間とはかけ離れた力を持つお前と対等に戦える理由が…それだ」

「……ククク」


 スピアが笑い始める。


「…そうだ、私は慢心したのだ。傲慢故にあの頃も人間共に負けた。そう、私は強いと思い込んでいたからだ」

「……」

「…そう、私だけだったら…あの場は切り抜けられなかった…!」


 スピアが魔力を人差し指に溜め始める。


「…ならば…一か八か、再び奴にかけてみようではないか…!」

「…奴?」

「…今の私には当時の自由自在な魔力を使いこなせるのは文字通り不可能だ。だが………奴ならどうだ?」


 スピアが天に向かって人差し指を指す。


「…不可能の災いよ…今この現世に…現れよ…!」


 ――スピアの人差し指から魔力によるものか、青い電撃が天に向かって飛び始める。


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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
も連載中!
是非こちらも御覧ください!
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