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白と悪魔と  作者: りあん
第二部 可能と不可能の根源
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ep69.後悔と違和感と

 ――ナギサによって伝えられた、ランスとナギサの出会い。

 そしてランスが急変し、ナギサから離れて行ってしまったという、辛い過去。



「…って感じだね」


 ナギサが頭を掻く。


「っ……」

「そんな…団長が…」

「…団長とナギサさんにそんな過去が…」


 三人が絶句する。

 ホワイトが涙を流す。


「…ホワイトちゃん、泣かないで」


 ナギサがホワイトにハンカチを渡す。


「うぅっ…だって…」

「君には教えたでしょ、データ上でだけど」

「それでも…この話は…辛すぎます…」

「過ぎた話だし、私もランスとの事は諦めが付いてるから…」


 ナギサが目を逸らす。


「…さてと、私が話したから次は君達の番だね」

「…」


 ミカがナギサの目を見る。

 目線に気付いたナギサがニヤリと笑う。


「…冗談だよミカちゃん。でも…今の話に君達の持っていた疑惑が確信に変わったはず」

「…そうですね。団長は不可能の災いの一部で…確定しました。記憶が半分…でもその記憶の中に大量殺人のような物…そしてランス山脈の近い浜辺で倒れていた…確定って言ってるようなもんです。…信じたくないけど」


 ミカが拳を握る。


「こういう時、シェールちゃんがいれば私が本当の事を言ってるって証明できるけど…彼女も忙しそうだし…けどこのためにわざわざ呼ぶのも…ね…」

「…いや、ナギサさんが嘘をつかないような人なのはシェールさんから聞いてますから…」

「シェールちゃんから…そう」

「ナギサさん…この話は…」

「…勿論、ここにいる五人だけの秘密。シェールちゃんには心が読まれないように…頑張って立ち回って」

「っ…分かり…ました…」


 ジンがホワイトの傍に寄る。


「…ホワイト」

「うっ…ジン…君…ランスさんを救う方法は…ない…の…?」

「あいつを救う方法か…」


 ジンが腕を組む。


「今の俺には考えれないな…すまない」

「ごめん…」

「そうなったら…――」


 ミカが言葉を続けようとすると、通信機が鳴る。


「…あ、団長からだ」


 ミカが通信を繋げる。


「団長、どうしたんですか」

『皆、至急外に集まってくれ。…緊急事態だ』

「緊急事態…了解」


 ミカが通信を切る。


「…皆、外に行こう」

「…おう」

「…うん」


 五人が基地の外へ向かう。




 ――ラッシュ師団とカルム師団の団長と副団長、そしてホワイト、ジン、ミカ、ロキが基地の外に揃う。


「皆、よく揃ってくれた。正直ここで話している暇もない…駅へ向かうぞ」

「駅へ…?でも何故…」

「可能の災いディ・スピアの居場所が特定できた」

「…!」

「場所は砂漠にある『サキュア』と呼ばれる街…カルム師団の団員が特定してくれた」


 サキュア…それは砂漠の秘境とも呼ばれる街の名前だった。


「…流石、私の団員。魔力の根源を追う過程でそこもマークしてて良かった」


 ナギサが小さく微笑む。

 だが真面目な会話である以上、ナギサもすぐに顔を戻す。


「奴はそのサキュアが目的地だったのか、そこに居座っているらしい。電車で向かう。サキュアに着いたら…ジン、ロキ、ミカ、ナギサの四人が前衛…ホワイトとシェールで前衛のフォロー、俺とルドで皆の指揮をする。後は…サキュアに着き次第、ラッシュ師団の一部団員も呼ぶ事にする」

「なるほど…了解」

「っ…いよいよスピア討伐の作戦が…実行されるのね」


 ミカが拳を握る。


「とは言え…サキュアは砂漠の中にある関係で電車が直通という訳ではない。まずは最寄りの駅に向かう」

「サキュアまでの距離は?」

「電車で約3時間」

「は…?」

「そんな…間に合う訳ねぇじゃねえか…!」


 ロキがランスの方を見て大きな声を出す。

 3時間…その間にスピアが力を取り戻してしまったら…世界は終わりだった。


「そうだ、俺達は…気付くまで遅かった…奴等の向かっている先が魔力の根源の傍ではなく…別の場所だって事に…」

「っ…だったらどうすれば…」

「僕が手伝うよ…」

「…!その声は…!」


 ランスが声のする方へ振り向く。

 そこにはフェクトが立っていた。


「フェクト…!」

「馬鹿野郎!その身体で動くな…!それにお前は魔力を殆ど奪われてる…今は安静にしろ…!」

「…今、"殆ど"って言ったよね」

「あぁ…お前が役に立てることはない…早く治しに…」

「…その僅かに残った魔力に、ワープの魔力があったらどうする?」

「…!」


 そこにいたフェクト以外の全員が驚いた表情をする。

 フェクトの身体には少しだけ魔力が残っていたのだ。それが…ワープの魔力。


「偶然にも吸い取られなかったんだ、ワープの魔力だけ」

「っ…だが場所は…場所は分かるのか…!?」

「…サキュアには行った事が…いや、行こうと思っていたけど行けなかったネオカオスのメンバーがいてね…けれど、よく紹介してくれたから座標は覚えてる」

「そんな偶然な…だが…よくやった」


 ランスがフェクトを見て親指を立てる。


「…皆を送れるくらいのワープホールなら作れる。帰りは…自分達で何とかしてくれると助かるよ…」

「よし、頼むぞフェクト…」

「はいよ…」


 フェクトはそう言うと、残った左腕でワープホールを作り出す。


「…作れたよ。この先がサキュアと呼ばれる場所。…とはいえ、今ちょっと無理して動いているから少し座標がズレてるかもしれない…」

「それでも…よくやってくれた…ありがとう…」

「…良いって事だよ。これで僕の罪滅ぼしの一つができたら…いいな…早く入りなよ」

「…あぁ、行ってくる」

「フェクト…ありがとう…」


 ホワイトがフェクトに頭を下げる。


「…ふん」


 ホワイト達はワープホールに入り、その場から消える。


「さてと……もういっか…」


 フェクトの身体がフラフラする。


「休みを…頂こうとしよう…か」


 フェクトがその場に倒れる。






 ――砂漠の街サキュアの、近くの砂漠にて…


「…ここが、サキュア?」

「…いいや、ちょっと違うみたいだ。フェクトも座標がズレてるかもしれないと言っていたし…」

「皆、見て」


 ナギサが指を指した方向には小さな家が何個も見える。

 監視塔のような建物も立っていた。


「アレじゃない?」

「あそこがサキュア…」

「よく見ると…監視塔みたいなのが見える」

「行ってみる価値はありそうだ」

「よし、あそこへ向かうぞ」


 ランス達は監視塔がある方向に向かって歩き出す。


「………」

「…ジン君?」


 動きが止まっているジンを見てホワイトが首を傾げる。


「ジン君、どうしたの?」


 ホワイトがジンを揺する。


「はっ…!あ…ホワイト…?」

「どうしたの?なんかジン君…ワープホール入る前からおかしいよ?」

「あ…そうか…」

「そうかって…」


 ホワイトがジンの頬を抓る。


「いでっ…何するんだ…」

「あ…いや、なんでもない…」


 ホワイトが顔を赤くする。


「…早く、行こう。あそこにスピアがいるかもしれない…だから…」


 ホワイトが歩き出す。


「サキュア…サキュア…何か聞いた事あるような…」


 ジンが呟きながらその場に立っている。


「ジン君…どうし――…ジン君…!?」


 ジンの足が膝まで砂に埋もれていくのを見るホワイト。


「ちょっとジン君…!埋もれちゃう!」

「え…ちょっ…!?」


 ホワイトがジンの腕を引っ張る。


「っ…!」


 ジンがなんとか砂から脱出する。


「はぁ…はぁ…危なかったよジン君…」

「…ここらへんの砂は不安定だな。足を取られないように向かわなきゃだな」

「ジン君…」


 ホワイトがジンの腕を掴む。


「すまんホワイト、俺達も行こうか」

「…うん」


 ホワイトとジンが歩き出す。



「…ねぇジン君」

「ん、どうした?」

「その…間違いだったらごめんなんだけど…サキュアについて何か心当たりあるの?」

「…!」


 ジンが驚いた表情をする。

 ジンには図星だった。


「…いや、なんかランスさんがサキュアの名前を出してから…ジン君が少し何かに囚われている様な顔をしてて…」

「…お前に隠し事は…難しいな」

「隠し事…?」


 ホワイトがジンの方を見る。


「…サキュアって言葉に聞き覚えがある」

「聞き覚え…例えば、誰かに聞いた事があるとか…?」

「…そうかもしれない」

「かもしれないって…曖昧だね…」

「…あぁ、曖昧だ。何故曖昧かは分からないけど…聞いた事ある気がするんだ…」

「…なるほど、ちょっと分からないや」


 ホワイトが考え始める。


「私はサキュアって言葉は初めて聞いたなぁ。お母さんもお父さんもそこまでは行ってなかったのかも。それだけ秘境の地って事…なのかな」

「一応地図見てみるか…」


 ジンは通信機を操作し、地図を確認する。


「えっと…やっぱ基地からかなり離れてるな…。基地から何百kmも…」


 ジンが何かに気付く。


「…あれ…この場所…」


 ジンが監視塔のある方向とは逆の方を見る。

 奥には山が立っていた。


「やっぱり…山が。そしてその下の所に街のような物が地図に…」

「ジン君…?」

「…俺は…この場所を…知っている…」

「え…?」


 ホワイトが首を傾げる。


「知ってるって…えっと…例えば殺し屋時代に行った事があるとか…」

「…そうかもしれない」

「…きっとそうなのかもね。けれど…曖昧なのは一体…」

「なんでこんな曖昧なんだ…?」


 ジンが頭を掻く。


「…サキュアに行けば、この違和感も分かるかもしれない。スピア討伐も勿論大事だが…討伐が終わったらこっちの方も…!」


 ジンが走り出す。


「っ…!」


 ジンが砂に足を取られて転ぶ。


「ちょっ…ジン君…!」

「っ…砂漠…嫌いだ…」

「ほら…手…」


 ホワイトの手を掴んでジンが起き上がる。


「…すまない」

「…皆先に行っちゃってる。でも走ったら今みたいに足取られちゃう。慎重に行きつつ、私達も早く追いかけよう」

「…あぁ、そうだな」


 ジンがホワイトの手を握る。


「っ…」


 ホワイトが顔を赤くする。


「……行こっか」

「おう」


 ホワイトとジンが歩き始める。


「…!」


 ジンの頭の中にジンと別の女性が歩いている情景が浮かび上がる。


「…今の光景…」


 ジンは辺りを見渡す。


「…なんだ…あの光景は…?」

「ジン君…?」

「…いや、何でもない」

「…?」


 ホワイトは疑問に思いながらも砂漠の中をジンと共に歩き続ける。


「やっぱり…やっぱり…」



「――俺はこの場所へ…誰かと向かっていた事がある…?」



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