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白と悪魔と  作者: りあん
第一部 世界の改変
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ep5.正面突破

 ――ネオカオス本拠地への突入をする日が………遂にやってきた。


 ホワイトとジンが部屋で話をしている。


「…ジン君、身体の方は大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ。ホワイトは?」

「うん、平気。調子もばっちり!」

「そうか」


 二人が話していると、ミカが部屋に入ってきた。

 ミカが険しい顔をしながら二人を見る。


「…ミカ!」

「ミカ。何処に行ってたんだ?」

「…いや、ちょっとだけね」

「…?」


 ミカが少しだけ疑問の顔を浮かべていた。

 ミカはネオカオスの本拠地はすぐ近くにあると言う事について疑問を持っていた。


「…さっき団長に教えてもらったんだけど、2kmほど離れたところに、奴らの本拠地はあるらしい」

「なんだと…?」

「え、そんなに近いの…?」


 ホワイトとジンが首を傾げる。

 ホワイトとジンもまた、ネオカオスの本拠地がすぐ近くにある事に戸惑いを隠せなかった。


「で、さっき偵察しに行ったんだけど、その場所に行ったけどただの広い湖だった」

「湖…?」

「…まあ、湖に何かありそうって感じはするんだけど、詳しいことは何も聞いてない」

「…そうか」


 三人が話していると、ランスが部屋に入ってくる。


「よぅお前ら」

「ランス…?」

「ランスさん…?」

「奴等のアジトに潜入する際に、お前らに頼みがあるんだが聞いてくれるか?」

「…頼みってなんだよ?」

「…今回、お前ら三人には一番前の方に行ってもらおうと思ってな」

「…え」

「えっ?」


 一番前、つまり前を切り開いて戦闘をするという事だ。


「…つまり、戦闘員になれと?」

「まあそんなところだ。お前らもここに来てから何ヶ月か経って見違えるほど強くなっただろう」

「戦闘員…か」


 ホワイトは少しだけ不安な顔をする。

 ホワイトはジンと初めて会った時の戦い以外で前線に立った事はなかった。

 ホワイトの不安に気付いたジンはホワイトの肩に手を乗せる。


「…大丈夫、その時は俺がホワイトを守る」

「ジン君…」


 ホワイトがジンの目を見つめる。

 ジンの目を見て安心したホワイトが一息つく。

 それに横槍を入れるかのようにランスが話し始める。


「…イチャついてるところ悪いが、流石に三人には荷が重いだろうし今回は助っ人入りだ」

「助っ人?」


 ランスの後ろから人影が現れる。

 その姿は、三人にも親しみのある人間。


「ロキ…!」

「ロキ君!」

「ロキ…?」


 ロキが部屋に入ってくる。

 挨拶するかのように手を挙げるロキと、それに応じるかのように手を軽く挙げるホワイト。


「よう」

「…あ」

「なんだホワイトも知り合いだったのか。まあ改めて紹介しよう。戦闘員担当のロキだ。今日は奴等のアジトに行く際に四人で行ってもらおうと思う」

「…今回はロキ君も一緒で四人か…」

「なんでアンタが…」

「…まあ、よろしくな」


 ロキがミカの方を見て人差し指を口の前に持っていく。

 静かにな…?という感じをミカに伝えていた。


「………」


 ミカはロキの合図に気付き、その後に目を逸らす。


「で、三人とも、俺とちょっとだけ今回の作戦に関する話をしてくれないか?」

「あぁ、いいぞ」

「…うん!」

「…えっ?」

「決まりだな」

「じゃあロキ、後は頼んだぞ。今回の作戦は大体ロキに伝えているから分からん事あったら今のうちに聞くように」


 ランスは部屋を出る。


「ちょっ…」


 ミカがランスを止めようとするが、行ってしまう。


「…あたしはまだいいって言ってないのに…」

「ミカ、お前と話すのは久々だな」

「そうね…って、勝手に話を進めないでくれる?あたしはまだいいなんて一言も…」


 ミカがロキを信用してないかのように見る。


「ミカ、俺らを信用してくれないか…?」

「あたしはただ…ホワイトが心配なだけなのに…」


 ミカが少しだけ暗い顔をする。

 ミカはロキやジンよりも何よりホワイトの事を気にかけていた。

 ジンの時の出来事…ホワイトが怪我をするような真似は…もうしたくなかった。


「ミカ…」

「…それに、一番前で行くってことはホワイトの母親を殺した張本人のところに団員内で最速で行くってことでもあるのよ…?」

「…確かに仇をぶっ倒す機会ができるのはいいけど、そもそも人を殺すような奴がまんまと作戦に引っかかる訳がない…」

「そうだった…」

「なるほどな。だがミカ、それに関しても考慮しての作戦だ。聞いてくれるだけでもしてくれないか?そっからお前の返事を聞きたい」

「はぁ…」

「俺も、お前を信じてる」


 ロキがミカを真剣な眼差しで見る。

 ロキはこの中でも長い付き合いであるミカを何より信用していた。

 ミカもその眼差しには流石に答えない訳にもいかなかった。


「…分かったわよ、聞くだけ聞く」

「…ありがとう。それじゃあ説明に入るぞ」


 ロキが通信機を取り出し、地図をホログラム化して開く。


「この地図機能、ホントすごいな。ホログラムみたいに写せるの便利」

「実際凄いよな。この師団が成り立つのも、この通信機を作ってくれた奴のおかげだ」

「作った人に感謝だね!」

「…うるさい」


 ミカ以外の三人がミカを褒めるような言葉をかける。

 ミカが少しだけ顔を赤くする。ミカもまた、あまり褒め慣れていなかった。


「本題だが、ネオカオスのアジトに入るには少し離れた湖にかけられている術を得く必要がある」

「術…?」


 ロキがそう言うと、ホログラムに写っている湖が城のような建物に変わる。


「わぁっ…」

「なかなかハイテクだな」

「だよな。で、本当はこのようにネオカオスのアジトがある。だが普段はここは湖になっている。ネオカオスが使っている魔力が、城を異空間に飛ばしている事が分かった」

「…でも、なんでそんな隠れている拠点が急に分かったの?」

「ここ最近の目撃情報で、ある人間から湖の中に人間が入っていくのを見たという情報が入ったらしい」

「…それが、ネオカオスだったと」

「断言するにはちょっと早かったから、シェールさんにその場所の空気に異常があるか確認を頼んだんだ」

「シェールさん、そんな魔力持ってたんだ?」

「いや、ランスさんに一時的に魔力を借りたらしい。ランスさんの魔力は時間や空間、それに記憶を読み取る力があるらしく、ついでにそれを他人に一時的に讓渡できるらしい」

「…すごい…」

「ハイスペックだな…」


 ホワイトとジンが感心する。

 それと同時に、ランスとシェールに対する恐怖も覚えていた。


 (この人達を敵に回したら…危ないな…。)


 二人はそう思っていた。


「ほんとあの人は敵に回したくないよ…。それで案の定ネオカオスの居場所が分かったと言うわけだ」

「案外見つかるのもあっけないとも言えるが…」

「奴等は俺らを警戒してはいたが、一般人までは警戒が回らなかったみたいだな…。それにネオカオスという団体はあまり知られていないしな」

「ネオカオスは知られてない…あれ、二年前のあの事件は…?」


 二年前…リュンヌとミカを殺したあの事件、ラッシュ師団の団員は忘れる訳もなかった。


「二年ともなれば、皆忘れてしまう。その後は暫くの間大きな事件なしだったからな」

「なるほど。ネオカオスも表舞台にあまり出てこないなんて、なかなか姑息だね…」

「ホワイトの口から姑息って言葉が出るとは思わなかった」

「…そこ?」

「姑息なのは確かだとして、ミカのとある発明器具を使えば隠れた異空間をこっちに呼び寄せれるんだ」

「なるほど!」

「なるほどじゃないわよ…簡単に言っちゃってくれてさ…」


 ミカがため息をつく。


「その器具ってなんだ?」

「ん」


 ジンが聞くと、ミカが物を取り出す仕草をする。

 そしてミカの手元からナイフが出てくる。


「この小型のナイフ。…小さいけど、空間を切り裂ける能力がある」


 ミカの魔力によるお手製のナイフ…空間を切り裂ける能力があり、虚空を切る事で別次元にも繋がる可能性がある。

 小さい見た目に反してとても恐ろしい武器だった。


「ナイフか…なんかてっきり時空転移装置的なアレが出るのかと思ってた」

「一応あたしが作るのは武器専門なので…本当はもっと大きくしたいんだけど、貴重な素材を使うし、何より空間を切り裂くほどの危険な武器だから小さめに作った」

「…なるほど」

「…これをあたしが持って4人一緒で湖のところまで行く。そして、奴らの居城の道を作って順に潜入って感じ…よね」

「まぁそんなところだ」

「…はぁ」


 ミカが優れない顔をする。


「…どうしたの?ミカ」

「…あたしは大丈夫だけど、皆は怖くないの?」

「俺は戦闘員だしそんなに怖くはないな」

「俺も元殺し屋だったから」

「…ホワイトは?」


 ミカがホワイトの目を見つめる。

 ホワイトは少し身体が震えていた。


「…正直少し怖いけど、ジン君やミカ、ロキ君がいるし、何より師団の皆がいるから大丈夫だと思ってる」

「…そっか。ホワイトが大丈夫ならいいんだ」

「…ミカ?」


 ミカが少し顔を暗くする。

 ミカはホワイトが不安だった。ホワイトが危険な目に遭うのが恐ろしかった。


「じゃあ、時が来たら行こうか」

「わかった!」

「承知した」

「…」






 ――そして、遂にその時が来た。

 四人はネオカオスの目撃情報があった湖の前に到着した。


「…ここか」

「綺麗でとても大きな湖だけど、ここにネオカオスの拠点があるんだよね?」

「そうだな。ミカ、頼むぞ」

「…わかった」


 ミカは空間を切り裂ける能力があるナイフを取り出し、湖の上の部分に投げる。

 

 小さめの刺突音が鳴る。

 ナイフは空中にいる透明な物に刺さったかのようにその場に止まった。


「…!」

「刺さった…!」


 ナイフから磁気のようなものが発せられる。

 そして…そこに隠れていた大きな城と、そこにあった湖が入れ替わるかのように…その場に変化が起こる。


「…これが、ネオカオスのアジト…?」

「奴等のマークのようなものもあるし、その通りだな」


 城の外観は黒く染まっており、ネオカオスのマークが描かれていた。


「…行くぞ」

「うん…!って…どうやって!?」


 ホワイトが戸惑う。


 (入口はどこ…?いや…そもそもどうやって入り込むの…?)


「んなの決まってるだろ?」


 戸惑うホワイトにロキがホワイトを押し出すかのように声を出す。

 そしてロキは持っている銃を構え…


「正面突破…だよ!!」


 扉の様な場所をロキが見つけ、銃弾を打ち込む。

 扉を無理矢理、破壊。


「ちょっ…ええっ!?」

「何してんだ!行くぞ皆!」

「くっそ…こうなるからあたしは嫌だったんだよ…!」

「どの道こうなる運命なのは分かってたが…仕方ねえな…!」


 三人がネオカオスの拠点を奇襲するかのように走り出す。


「わわわっ!待って皆…!!」


 慌ててホワイトもついていく。

 破壊した扉の中に四人は入っていく。




 ――城の中に入る四人。

 四人は廊下のような場所を走り続ける。


「侵入者!?しかもラッシュ師団だと!?」

「構わん!殺せ!」


 中には当然ネオカオスの下っ端が大勢いた。

 ネオカオスの下っ端が銃を向ける。


「わわっ…ネオカオスがいっぱい…!」

「当たり前だ、何せ敵の居城なんだからな…!」

「…久々に燃やしていくか…!」


 ロキとジンは持っている銃でネオカオスの下っ端を撃ち、倒していく。


「…あんまり殺しは趣味じゃないんだけど」


 ミカも剣を魔力で生み出して攻撃をしながら進む。

 三人の戦闘により、ネオカオスの下っ端は次々と倒されていく。


「皆強い…」

「ホワイト…!」

「あっ…はいっ…!」

「ホワイトは後ろからその麻酔銃で敵を眠らせてくれ!お前に殺しはさせない…!」

「あっ…分かった…!」


 ホワイトも麻酔銃を敵に撃つ。

 ジンに向けた時と違って腕が震える事はなく、ちゃんと狙って当てる事ができていた。


「…当たった…」

「…そろそろ後ろから応援も来るし、あまり敵に構わず進むよ…!!」

「おうよ…!」

「うっ…うん!」


 四人は敵を倒しながらどんどん前に進んでいく。




 ――後ろからランス達も追って敵地へ潜入する。


「…ランス君。ホワイトちゃん、強くなったね」

「まあな」


 ランスとシェールが銃を持ちながらゆっくりと歩く。


「…でも、何で麻酔銃なんて持たせたの?」

「あいつに殺しはさせたくないからな。母親を殺されたから自分も殺してやる…ってのはダメだ」

「へぇ、案外人の心があったんだ」


 シェールがランスを見て少し笑う。

 ランスにも人の心はあったのだと安堵していた。


「俺をなんだと思ってる…一応団長だぞ」

「ごめんごめん…!君の心はどうしても読めなくてさ」


 シェールの魔力で読み取れないランスの心…そんな彼にシェールは少し惚れていた。


「…そうだな」

「…ところで、ネオカオスの気配…?なんだけどさ」

「どうかしたか?」

「いや…なんていうかさ…――」


 シェールが険しい顔をする。


「少ない…気がするんだよね…」




 ――前線を突き進む四人。

 ジンが目の前の扉を破壊すると、そこには牢屋のような場所があった。


「牢屋…?」


 牢屋の中…そこには閉じ込められている人が沢山いた。


「ラッシュ師団か…!?助けてくれ…!」

「…!助けなきゃ…!」


 ホワイトがすぐさま牢屋の鍵を開けようとする。


「ホワイト、何してるんだ?そいつらは後で…」


 ロキがホワイトを止めようとするとジンがそのロキを止める。


「ここはホワイトに協力するぞ。師団以外の人も救うのも、大事だ」

「…それにはあたしも賛成」

「…わかった」


 ホワイトが助けているところに他の三人もかけつける。


「…なぁ、もしかしてランスが俺等と一緒に戦闘不向きの魔力を持つホワイトを連れてきた理由って…」

「こういうことでしょ。というかアンタ、男としてそれはないわよ」

「ロキ…それ女に言われちゃまずいぞ…」

「…マジか」

「皆何してるの?早く安全な場所に送らなきゃ!」

「…だな」


 ジンとミカがホワイトに対して少し微笑む。






 ――閉じ込められていた人を助け出し、更に奥へ進む四人。

 敵の数が段々と少なくなっていながらも着実に奥に向かっている。


 そして…


「…っ!あそこ…!」


 薄暗い廊下から明るい部屋が見えてくる。


「…来たか」


 その部屋には黒いマントを着る中年の男と、男の隣に黒いフードを被っている男がいた。


「…外が騒がしいと思ったら、やはりラッシュ師団か…!」

「お前が…!」

「ククク…私がこのネオカオスを統率する、ジハだ」


 四人の目の前に立っていたのはネオカオスのボス、ジハ本人。


「ジハ……!」

「この人が……お母さんを……!!」


 ホワイトの足が震えている。

 ホワイトは目の前にいる男に自分との実力の差を感じていた。


「そうか、貴様があの女の娘のホワイトか!母の死は残念だったなぁ!」


 ジハが高笑いする。ジハが紫色の眼光でホワイトを睨む。


 遂に仇との対面…

 ホワイトの身体は恐怖で震えていた………

後書き~世界観とキャラの設定~


『ロキ』

…ラッシュ師団に所属する赤色の瞳に、黒みの強い紫色の髪の少年。

ホワイトやミカ達と同年齢。

自身の肉体を魔力で強化するという自己強化の魔力と言う物を持っている。

ラッシュ師団にある牢屋で捕らえたネオカオスに対して尋問をする事もある。

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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
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