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白と悪魔と  作者: りあん
第二部 可能と不可能の根源
68/271

ep66.不可能の災い

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ――時は少し遡り、ホワイトがいる真っ白な世界にて…



「…これくらいにしておきましょうか」


 傷だらけのフランが立つ。


「………」


 その向かいに、ホワイトは剣を持って黙って立っていた。

 ホワイトの剣にはフランの物と思われる血が付いていた。


「ホワイトちゃん…?」


 メアリがホワイトを見ながら首を傾げる。


「…はっ…!」

「ちょっと意識飛んでた?」

「…!フランさん…!?」


 ホワイトが剣を落とし、フランの元へ走る。


「フランさん酷い怪我…!もしかして…私が…!?」

「…御名答ですが、大丈夫です」

「あっ…うっ…えっと…繋命を発動して…剣を作って…そこから…えっと…」


 繋命を発動したホワイトの意識は気付いた頃にはとんでいた。そして…気付かぬうちにフランを攻撃していた。


「…あなたは少し意識はとんでたみたいですが、ちゃんと繋命を上手く扱えてましたね。お見事です」

「っ…フランさん…早くその怪我…治して…!!」


 ホワイトが回復魔法をフランにかける。


「…大丈夫です。さっきも言った通りここは特殊な魔力が施された聖堂…この場所で命を落とす事はありません。どんなに傷つこうが…死ぬことはありません」

「でも…だからって…!――」

「…あなたは優しいのですね」


 フランはそう言うと、ホワイトに回復魔法をかける。


「…!これは…」

「現世にも影響する回復魔法です。これで…あなたの本体も回復できます」

「…!って事は…!」

「はい。あなたの戻りたいタイミングで…現世に戻る事が可能です」

「…!」


 ホワイトが目を光らせる。

 ホワイトの身体がフランの魔力で少しずつ回復していく。


「お姉ちゃんは、ホワイトちゃんが強くなったタイミングで現世に戻すつもりだったんだよねー」


 メアリがフランの頬をつつく。


「…辞めてメアリ。別に私はそんな事…」


 フランが目を逸らす。


「え…そうだったんですか、フランさん」

「…そうよ。でも…私の力が関与されなかったらあなたの回復が遅れていたのも事実。けれど…タダであなたを現世に返す訳にもいかなかった。だから…」

「お姉ちゃーん!」


 メアリがフランに抱き付く。


「…抱き付かないで」

「…ありがとうございました」


 ホワイトがフランに頭を下げる。


「…私は生命の女神の役割の一つをしたまでです。そして…あなたにはもう一つを教えなければなりません」

「もう一つを…教える…?」


 ホワイトが首を傾げる。


「先程も述べた、『不可能の災い』について…です」

「不可能の災い…確か不浄の檻に魂が封印されているっていうあの…」

「その不可能の災いの真の名について…あなたには知る権利があります」

「私に…知る権利が…?」

「そうです」

「でも…名前なんて知ったところで…昔暴れてた災いの事なんて何も分からないんじゃ…」


 ホワイトが首を傾げる。


「その真の名は…『不可能の災いヴィ・ランス』…!」

「ヴィ…ランス…!?」


 ホワイトが驚いた表情をする。

 ランスという言葉にホワイトは強く驚く。

 そして…


「…そして、ラッシュ師団団長のランスの正体…でもあります」

「え…え…ラン…ス…さん…?」


 ホワイトが口を抑える。


「そんな…何かの間違い…だよね…?たまたま名前が被ってたとか…ランス山脈とかあったし…その…たまたま…だよ…ね…」

「…でしたら、追加で教える必要もありそうですね。現世にあるランス山脈は…不可能の災いが宿していた魔力が眠る場所…」

「なっ…」


 ランス山脈…不可能の災い…ヴィ・ランス…ラッシュ師団の団長であるランスの正体が不可能の災いである事には十分すぎる言葉の並びだった。


「そして力の殆どはあの場所に眠っています。そして…先程言った通り肉体と魂と魔力で三分割…魂は不浄の檻に、魔力はランス山脈…そして、肉体はあなた達の団長と言う事で…」

「ちょ…ちょっと待って…!」


 ホワイトが大きな声を上げる。

 ホワイトは当然現状に納得しなかった。

 あのランスが…敵の可能性があるのだから…


「だとしたら…なんでランスさんは…ランスさんにはランスさんという人間の意思が宿っているの!?」

「…ホワイトちゃん」

「ランスさんは…不可能の災いなんかじゃない…ランスさんは…私達が慕っているラッシュ師団の団長…ただ一人の…!」

「ならばあなたにはもう一つ教えないと行けない事がありますね」

「っ…もう一つ…」

「かつて不可能の災いとして暗躍していたヴィ・ランスには…記憶を操る能力がありました」

「記憶を…!?」


 記憶を操る能力…それは団長であるランスも使える。


「そう…あなた達の団長も…」

「いい加減にして…!」


 ホワイトが怒鳴る。


「ランスさんは…そんな酷い事するような人じゃない!不可能の災いの正体だなんて嘘だ…!私は信じたくない…!!」

「ホワイトちゃん…」


 メアリがホワイトの目を見る。

 ホワイトの目は怒りと悲しみが籠っていた。


「だってネオカオスとの戦いであんなに…皆を思って行動してくれたランスさんが…そんな…真の黒幕みたいな…そんなの…」

「ならば…私達女神族の失態を教えましょう」

「失態…?」

「私達女神族は…彼ら災いの肉体の封印の際に失敗をしたのです。本来の肉体から魔力を分離した際…不可能の災いが持つ魔力によって腐敗が不可能となる肉体にされてしまい…」

「っ…まさか…」

「その魔力を解除する手立てはなく…」

「っ…そん…な…」


 封印の間際…不可能の災いは自身の肉体を腐敗させぬように仕込んでいた。


「元々不可能の災いの肉体は海の奥底に封印していましたが…何らかの影響で陸へ浮上してしまい…それが…」

「…それが…ランスさん…っていう訳…ですか…」


 ホワイトが吐き気を催しそうになる。

 ホワイトが口を押さえる。


「うっ…そんな…ランス……さん……」

「…それでも、あなたは知るべきでした。真の敵は…味方だったという事実を…」

「っ…」


 ホワイトが床に膝を付く。


「…ランスさんが…不可能の災いなんて…信じたくないよ……」

「ホワイトちゃん…」

「私は…私はどうすれば…」

「一つ方法があるとすれば…不可能の災いの肉体と魂と魔力…この三つを同じ場所に揃える事がなければ…不可能の災いの復活は防げるかもしれません」

「っ…そうだ…魔力と肉体は現世にあっても…魂は女神界の不浄の檻にあるから…ずっと近付けさせないようにすれば…」


 ホワイトの言う通り、女神界にランスを近付けさせなければいい。

 だが…それを不可能にさせるかもしれない存在がいる。


「…しかし、向こうには奴がいます。可能の災いディ・スピアが…」

「スピアが…」

「奴が完全に力を取り戻しただけでもまずいですが…完全に力を取り戻したら最後、奴の魔力によってこちらの世界にも関与できるようになってしまうでしょう…推測される被害としては…不浄の檻を無理矢理こっちの世界に引っ張ってきて…不可能の災いの完全復活…」

「っ…!」


 ホワイトが息を詰まらせる。

 スピアが力を取り戻し、不浄の檻の魂を呼び寄せてしまえば…


「スピアが力を取り戻すのは…時間の問題…ですか…?」

「…奴はまだ自分の本来の肉体を手に入れてません。本来の肉体を手にする前に奴を討伐できれば或いは…」

「っ…なるほど…でも力を取り戻す前でもあの強さ…私達に勝てる見込みが…」

「…そのために、先程繋命を鍛えたじゃないですか」

「っ…そうだ…私には…繋命がある…でも…私の力だけでは勝てない…だとしたら…」


 ホワイトが考え始める。

 そして…ひとつの考えに至る。


「皆に協力を…!」


 ホワイトが空を見上げる。

 ホワイトが決心する。


「フランさん…メアリちゃん…私を…現世に戻してください…」

「勿論そのつもりです。私達は…今はあなたの脳内世界を経由してでしかあなたに協力できない…ここで得た情報と力を…現世で奴に…」

「勿論です…!」


 ホワイトがそう言うと、世界にヒビが入る。


「っ…!このヒビは…」

「私達には何も見えませんが、どうやら現世の回復が進んであなたの脳内世界を保てなくなっているようですね」

「…って事は…」

「もうすぐ…あなたは現世に戻れます。そして…」


 ヒビ割れが強くなる。


「そして…?」

「私達の…」


 フランが言葉を続けようとするが、ホワイトの目の前は真っ白になる。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「そうだ、帰ったら皆に言わないといけない事あるんだった……」


 ホワイトが走りながら呟く。


「ランスさんの…事…それももしかしたら………」


 ホワイトが走っていると…


「ホワイト!?」

「ジン君…!」


 ホワイトの目の前にはジンが立っていた。


「丁度お前の眠っている医療室に行こうとしてたところだったんだが…もう大丈夫なのか…!?」

「…うん。今はもう平気。ちょっと身体は痛いけれど…」

「…そうか。無事で良かった…」


 ジンがホワイトに抱き付く。


「ちょっ…ジン君…ここ廊下…」

「おっとすまない…ホワイトが起きたことを喜びたいが…そう言ってる場合でもなさそうだな…」


 ジンがホワイトから離れる。


「ジン君、外の状況って…どうなってるの…?」

「あぁ…それも順を追って説明する。まずは集合しよう。ロキも帰ってきている」

「ロキ君も…!」

「すぐ案内する」


 ジンとホワイトは廊下を走り出す。




 ――フェクトの下っ端が眠る医療室にて…


「ホワイト…!」


 ミカとロキがホワイトの顔を見て驚いた表情をする。


「ミカ…ロキ君…!」

「もう…大丈夫なの…?」

「うん。少し身体中は痛いけれど…大丈夫」

「良かっ…た…」


 ミカはホワイトに抱き付く。


「…うん」

「ホワイト、久しぶりだな」

「ロキ君も…帰って来たんだね」

「あぁ。久々に問題児四人組が揃ったな」

「…そうだね。あの時以来…」

「喜んでる所悪いが、ホワイトに今の状況を順を追って説明しないといけないぞ、ミカ」

「…そうね。何処から説明すればいいか…」


 ミカが悩み始める。


「えっと…シェールさんから聞いた事だと…私が刺されてから…今ナギサさんがランスさんに連れ戻されている最中で…フェクトがスピアに魔力を抜き取られてて…それから…」


 ホワイトが状況を整理する。


「…で、今スピア討伐のためにラッシュ師団とカルム師団で協力して鍛錬している最中。けれど…スピアと対峙した際に本格的な戦闘をするのはかつてネオカオスとの戦闘で活躍した面々…」

「えっと…それって…」

「…つまり、俺達って事だ」

「…!」

「人数が多すぎても帰って無駄死にを増やしてしまう可能性があるし、これが最善だという団長の判断だ。ホワイトが眠っている間、俺達は戦闘力を強化していた。仕上げと言うにはまだ早いが、俺達が束になればスピアに太刀打ちできるかもしれない」

「…そう…だったんだ…」


 ホワイトが目線を下に向ける。


「カルム師団から得たかつての伝承として…スピアもまだ復活したばかりか本調子じゃないと推測できる」

「あの戦闘力で…本調子じゃないんだ…」


 ホワイトが拳を握る。

 そして…ランスの事について話すことを決意した。


「…そうだ、皆に言わないといけない事がある…」


 ホワイトが顔を上げる。


「ホワイト?」

「…脳内世界で女神様と話したの」

「…そうか。それって…癒しの神って奴か?」

「…いや、今回は違う二人と話したの。そして私の魔力を鍛えてくれたの…」

「魔力…繋命って言ってた奴?」

「そう…。そして…不可能の災いの話も聞いたの」

「不可能の…」

「災い…?」


 ミカとジンが首を傾げる。


「女神様達の話だと、昔の時代にスピアと共に暗躍してた人間…そして…」

「そして…?」

「…真の名は『不可能の災いヴィ・ランス』…!」

「…!?」

「ヴィ…」

「ランス…!?」


 三人が驚いた表情をする。

 そして…ホワイトが女神界であったことを更に詳しく話す。


 それを聞いて驚く一同…


「………!」

「不可能の災いと呼ばれている存在は…強すぎる力のせいで魔力、魂、肉体で三つに分けられて…それぞれランス山脈…女神界…そして…ランスさんがその肉体…って…」

「っ……」

「嘘…だろ…」

「…」


 三人が絶句する。


「だったら…団長を殺さないと行けないって事か…?」

「っ…色々掴み所のない団長が…まさか忌みの名だって事…」

「私だって…信じたくなかった…でも…女神様が言ってるって事はきっと…」

「…ホワイト」


 ミカが目線を下に向ける。


「ミカ…?」

「ホワイトはどうしたい…?」

「え…えっと…」

「…その不可能の災いとやらの完全復活を阻止するために団長を殺すべきか…或いは…」

「っ…」


 ホワイトが拳を握る。


「…私は、あの時ランスさんに拾われた身だから…ランスさんを手にかけるような事…したくない…」

「…決まりだね」

「え…?」


 ホワイトがミカの方を見る。

 ロキとジンも頷く。


「…あたしの推測だけど、その三つが無ければ不可能の災いとやらは復活しないはず…だとしたら、魂が女神界に封印されているなら殺す必要はない。そして…団長をランス山脈に近付けさせないようにする…そうすれば…」

「ミカ……」


 ホワイトが息を呑む。


「…ありがとう。…私だけだったら…何も考えれなかった…何も…思い浮かばなかった…」

「まぁ、あたしはアンタがしたいだろうって事を推測して言っただけだから…」

「ミカ…」

「但し…この話はあたし達四人だけの秘密にする事」

「え…?」

「団長にこの事が知れたら当然団長は気を使うだろうし…シェールさんもきっとそう。ナギサさんやルドさんも…たぶん」

「…そうか…そうだよね…分かった」

「ナギサさんは特に…ね」

「…え?」


 ホワイトが首を傾げる。

 ミカはナギサを警戒していた。


「なんでもない」


 ミカが腕を組む。


「…計画を立てなきゃね。ジンとロキ、手伝ってくれる?」

「あぁ」

「了解」

「ホワイトはそうだな…起きてまだ少ししか経ってないだろうし…身体を休めて欲しい。魔力の方も問題がないか、確認しておいてほしい」

「…分かった。なら…他に傷付いてる人達を回復してくるね」

「…ん」


 ミカがそう言うと、ホワイトは医療室を出る。


「…ホワイト」


 ジンが医療室を出るホワイトを目で追う。


「心配か?」

「…少し」

「じゃあ行ってこい」

「でも…計画の方は…」

「俺とミカだけでもいいだろ、そんなの」


 ロキの言葉を聞いてジンが悩む。


「…行ってあげて」

「…え?」


 ジンがミカの方を見る。


「…たぶん、アンタはホワイトの心の支えになれるだろうから」

「…そうか。分かった」

「こっちの方はミカと俺に任せておけ」

「…あぁ」


 ジンがホワイトを追いかける。



「――あたし達も行こう、会議室に」



後書き~世界観とキャラの設定~


『ランスの正体…?』

…その正体は、不可能の災いヴィ・ランスと言う存在。かつての時代にスピアと共に暗躍していたとされる存在。肉体と魂と魔力で三分割されて封印されていた。

つまり、味方であった団長が真の黒幕なのである。

肉体は海の奥底に封印されていたが、何らかの影響で海面上に浮上してしまったらしい。


…だがランス本人の肉体には、魂にも魔力にも関係ない人間の意思が宿っている。

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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
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