ep45.虚ろの思い出
――電車を降りるホワイト、ジン、ミカの三人。
「この街は…」
「ここには初めて来るな」
駅の時点で既に人混みがあった。
「ここはラルの街の駅。ラルの街は太陽と月が同時に輝く街とも言われてるよ」
「太陽と月が…同時に?」
ラルの街…太陽神の族と月神の族と呼ばれる人達が強力して作り上げた街。
数年前…太陽神の族と月神の族が協力して悪しき一族を討ち倒したという歴史があった。
その歴史から、太陽と月が同時に輝く街って言われてるんだ。
「太陽神の族と…月神の族」
「…聞いた事あるわ。太陽神の族と月神の族は…あなたのお父さんとお母さんも関係してるから」
「え?そうなのか?」
ジンが首を傾げる。
「あっ…そうだよ。言って無かったけど…私のお父さんが太陽神の族、お母さんが月神の族の生まれで…」
「…すげえ一族から生まれてきてるのか、ホワイト」
「私自身はあまり凄くないけどね…」
ホワイトが苦笑いをする。
「となると…ここにはその一族の人達が住んでるって事になるのか?」
「そうだね。例えばだけど…あの人見て」
ホワイトが指を指す。
ホワイトが指を指した人の左手は黄色く輝いてた。
「あの人…左手が黄色く輝いてると思うんだけど」
「手が輝いてる…もしや月神の族の?」
「いや、あの人は太陽神の族の人だよ」
「太陽神の方か」
ジンが右手に闇の力のような物が宿っている人を見つける。
「となると…あの右手に闇の様な力があるのが月神の?」
「正解だよ。太陽神の族は太陽や昼や光を、月神の族は月や夜や闇に関する魔力を使えるんだよ」
「へぇ…となると、ホワイトもその力の一部を使えたりするのか?」
「いや…私は普通の人間として生まれたからその力はちゃんと扱えないんだ…。扱えるのはお父さんが元々持っていた回復の魔力と…お母さんが元々持っていた気配を消す魔力だけ」
「ふむ、原理がよく分からないな」
「私もよく分からないや…でも…いつかは扱えるようになりたいなって思う」
ホワイトがそう言うと、ホワイトが先頭を歩き出す。
「私の実家は駅出て右の方。着いてきて」
「おう」
「ん」
ミカとジンがホワイトについていく。
――ラルの街を歩く三人。
街には太陽神の族と月神の族の人間で賑わっていた。
「それにしても…さっき言ってた一族の人ばかりだな」
「ここは元々何も無かった場所だったんだけど、30年前くらいに太陽神の族と月神の族が協力して立ち上げた街だからね。だからその一族の人達が多いんだ」
「へぇ、30年前。結構近いんだな」
「私達は生まれてないけど、意外と最近かも」
「かなり栄えているし…もっと昔からあるものだと思ってた」
ミカが辺りを見渡す。
家が何軒かあり、古いレンガのような家や新しい木の家と…少し違和感のある並びをしていた。
「よく見たら…家の中にも古いような感じと新しい感じの家があるわ」
「太陽神の族は昔ながらの文化を大事にしてて、月神の族はこれから作り上げる文化を大事にしてるんだ」
「へぇ」
ミカが感心していると、後ろから声が聞こえる。
「ホワイトお嬢!」
「あ」
ホワイトが後ろにいた男に反応する。
その男は右手が黒く輝いてた月神の族の人だった。
「帰ってたのですか?」
「はい、お久しぶりです」
「2年も帰ってこないから心配してましたよ…」
「…色々あって」
ホワイトが苦笑いをする。
「でも無事で良かったです。お嬢、この人達は?」
「あっ…ラッシュ師団ってところで知り合ったジン君と、ミカです」
ホワイトが紹介する。
ジンが頭を下げる。
「ジンです。えっと…あなたは?」
「俺は月神の族のブランという。ホワイトお嬢のお仲間なら歓迎致します」
「…ミカです」
ミカが目を逸らす。
「ラッシュ師団…聞いた事あるな。確かリュンヌさんの…いや、この話はお嬢の前であまりするべきじゃなかったな…」
「…大丈夫です。お母さんは今も私を見守ってくれてると思うので…後、お嬢って言うのちょっと恥ずかしい…」
「これは失礼しました…リュンヌさんの娘さんとなると丁重に扱わねばという一心が…」
「あはは…」
ホワイトが苦笑いする。
「ルーナさんは元気ですか?」
「えぇ、元気ですよ」
ホワイトが言ったルーナという人物…それはブランの妻にあたる人間だった。
「そっか、良かった」
「今日は何用で此方のラルへ?」
「えっと…お父さんが帰ってきてないかな…っていう感じで…」
「お父様…ソレイユさんか…」
ブランが険しい顔をする。
「…お父さんは、帰ってきた…?」
「ここ2年間帰られていませんね…。太陽神の族の者が探しに行って出ましたが…結局見つからず…」
「…そっか…」
ホワイトが落ち込む。
「お嬢の実家でしたら、俺がいつでも確認できる位置にありましたので今も問題なくあるかと。ただ、出入りしている者は当然いないので…一応鍵は預かっているので此方に」
ブランがホワイトに鍵を渡す。
「…そっか、ありがとうブランさん」
「えぇ。お二人も本日はゆっくりしていってくださいね」
「喜んで」
「…ん」
ブランはその場を去る。
「…ホワイト、あの男の人…めっちゃ言葉遣い丁寧じゃないか?」
「ブランさんはあんな感じだよ。アレで実は50歳超えてるんだよ」
「50か…50!?多く見積もっても20歳後半…くらいにしか見えなかったが…」
ジンが驚いた表情をする。
「あはは…太陽神の族と月神の族は若い状態の美貌を保てる凄い種族だからね…」
「…すげえ。となるとお前のお父さんとお母さんも…」
「うん…凄く若く見える」
「…マジか」
ジンが驚愕する。
「ブランさんがあの言葉遣いなのは…お母さんが原因だったりするんだよね」
「ホワイトのお母さんが?」
「うん…ブランさんって凄い強そうに見えるじゃん?」
「そうだな、結構凄い筋肉をお持ちで」
「…で、ブランさんは実はお母さんにボコボコにされた事があって…」
「…は?あの人が…お前のお母さんに…?」
ジンが驚愕する。
あの大男のような人間が…?とジンは思っていた。
「うん…それ以来頭が上がらないみたいで言葉遣いもあんな感じになって…」
「お前のお母さんどんだけ強かったんだよ…」
「あはは…」
ホワイトがそう言うと、ミカが目を細める。
「…なんだろう、あの人昔会った事ある感覚がある…絶対初めましてのはずなのに…」
「ミカ?」
ホワイトがミカの方を横目で見る。
「…なんでもない。ホワイトの実家、行こっか」
「うん」
「おう」
三人は再び歩き出す。
「ここが私の実家だよ。…ちゃんと家あった」
ホワイトの実家の前に三人が着く。
「…意外と豪華な家なのね。庭に池もあるし」
「ブランさんの言う通り、人が出入りしてる気配はなさそう…。ここも綺麗なままだ」
ホワイトが綺麗な玄関を見つめる。
ホワイトが家の鍵を開ける。
「…たぶん誰もいないし、入っていいよ」
「おう、失礼するぞ」
「…お邪魔します」
三人が家に入る。
玄関で靴を脱ぐ三人。
ホワイトは下駄箱を開ける。
「…あ」
ホワイトは下駄箱に入っている一足の靴を見つける。
「これ…確か私が16歳になった時に貰った…」
ホワイトが靴を手に取る。
「16…となると、2年前の…」
「…うん。とても大事にしてたけど…あの後…すぐにいなくなっちゃって…それで…」
「…その靴、履いてかなかったんだ」
「この靴、お洒落だけどちょっと歩きづらかったから…大事な人と一緒に出掛ける時に使う用だったんだよね。まぁ…大事な人なんて当時は家族しかいなかったんだけど…」
「…そうか」
ジンが目を逸らす。
ホワイトは靴を入れ戻し、下駄箱を閉める。
「…お父さんの手掛かり…探そう」
「…ん」
リビングに出る三人。
無駄に広く…綺麗に片付いていた。
「…広いわね」
「…こんなリビング、なかなか見ないな。ラッシュ師団の基地の俺等の部屋より広くないか?」
「…そうね。あの部屋でも結構広かったから、ここはだいぶ広いわね」
ミカがそう言うと、ホワイトは辺りを見渡す。
「あ」
ホワイトが写真立てを見つける。
その写真にはホワイトの四人家族が笑顔で映っていた。
「…これ、ちゃんと残ってたんだ」
「この左腕が黄色く輝いてる人が、お前の父さんか?」
「…うん」
「優しそうな人だな」
「…でしょ。騒がしいお母さんとは対照的に意外と物静かな人だったなぁ」
ホワイトが写真立てを手に取る。
そしてホワイトは涙を流す。
「…ホワイト?」
「お父さんの魔力の気配…ここじゃ…何も…感じ取れない…」
ホワイトが床に膝を付く。
「ちょっ…ホワイト…?」
「うっ…ごめん…でも…お父さんの手掛かり…何もない…何も…ない…」
ホワイトが手で涙を拭く。
「っ…やっぱり…お父さんは…死んじゃって…」
「そんな事ない…!」
ジンが声を上げる。
「…ジン君…?」
「お前の父さんは…きっと生きてる。そして…絶対お前の事を思ってる…絶対だ…」
「…そんな事言ったって…お父さんが繋命の力で追えないくらいに魔力が薄れている状態で死んでたら…」
「…そんな事…言うな…」
ジンがホワイトを抱く。
「っ…」
「まだ希望を捨てちゃダメだ…」
「…そう…だね…ごめん…泣いちゃって…」
「…別にいい。お前の涙は…お前が大事にしたい人のために…流すべきだ」
「…うん」
「…」
ミカが黙って二人を見る。
「魔力の気配…か」
ミカが上を向く。
「それにしてもホワイトの実家…凄いな。皆の写真が飾ってあるし、家族の仲は良かったのか?」
「…うん。お父さんもお母さんもお兄ちゃんも…皆優しかった…皆…好きだった…」
「…お前のその人を思いやれる心…一生大事にしてくれ」
「…うん。勿論…」
ホワイトがそう言うと、ミカが話し始める。
「ねぇ、ホワイト」
「…どうしたの?」
「その…あなたのお父さんやがずっと大事にしてた物とかってないのかしら?例えばアクセサリーとか…」
「アクセサリー…お父さんはあんまりお洒落はしないしあまり物も持ってないけど、結婚指輪は付けてた…くらいかな…」
「…そう。それに宿ってる微量の魔力を辿れれば、あなたのお父さんに辿り着けるかもって思ったけど…ダメか…」
「…待てよ…?お父さんの部屋になら…?」
ホワイトが考え始める。
「…二人とも、ちょっと着いてきて欲しい」
「…ん」
ホワイトについていくミカとジン。




