ep43.繋がる命
廊下を歩くミカとジン。
「あ」
ミカが思い付く。
「ホワイトの実家があった場所に向かえば…お父さんそこにいたりして?」
「…なるほど?」
ホワイトの実家には今誰かが必ずいる訳ではなかった。
だが、手掛かりとしては十分の場所だった。
「あの子の事だし一応それも考慮してるとは思うけど…探る価値はありそうね」
「そうだな」
「ところで…移動手段どうしよっか…歩きで行くにはかなり時間がかかってしまうし、休暇もすぐ無くなってしまうわ」
「そういえば…城下町には電車が通ってた気がするな」
「え、ほんと?」
ミカが首を傾げる。
ネオカオスの件も殆どが解決した事により、電車も運行を再開する事になった。
その電車を移動手段に使えば、ホワイトの実家までもすぐに行ける算段だった。
「となると…明日から電車で移動って感じになるわね」
「そうだな」
「探すついでに…何か面白い発見があるといいけど」
「面白い発見?」
「例えば…魔力の根源が実はもうひとつあるとか…」
ミカが冗談間際に言う。
「また不吉な事を…」
「ないわよね、あはははは」
ミカが笑い始める。
「源だからひとつなんだ。ふたつ以上あるなんて有り得ないだろう」
「まぁ、そうよね」
「立ち話はこれくらいにして…ホワイト一人だと準備が大変なはずだ。すぐ部屋に戻ろう」
「了解」
ミカとジンが部屋へ走り出す。
「えっと…これも持って…これもあればいいかな…?それと…」
ホワイトが荷物を準備していた。
「…あ」
ホワイトは首に付けているブローチに気付く。
ホワイトはブローチの中を開ける。
その中には写真が入っており、ホワイトの家族が映っていた。
「そっか、お母さんもお兄ちゃんも…ずっと守ってくれてたんだね」
ホワイトがブローチを握り締める。
「…このブローチは、ずっと身に付けてなきゃ」
ホワイトは首に付けているブローチを服の中に隠す。
「…よし」
ホワイトがそう言うと、ミカとジンが部屋に入る。
「あ」
「ホワイト、お待たせ。ジン連れてきたわよ」
「ジン君!来てくれたんだ!」
「おう」
ホワイトが座りながら、ジンを見上げる。
ホワイトの顔には笑みが浮かんでいた。
「…ロキ君は?」
「あいつは貰った休暇でしたい事があるってよ」
「そっか…」
ホワイトが少し落ち込む。
(四人ではなく、また三人…)
この四人の仲間達では、いつもロキが欠けていた。
「なんでも、殺戮のデストのベースとなった人間を探したいとか実家に帰るとかなんとか…」
「殺戮のデスト…なんだか懐かしい感じするね…」
「割とつい最近の出来事ではあったんだがな」
三人がかつての出来事を懐かしむ。
「実家…そうだ、お父さんの手掛かり…って訳じゃないけど、もしかしたら私の実家に…って思って。だからその…二人とも来て欲しい…!」
「おう、はじめっからそのつもりだ」
「え?」
「あたし達も、ホワイトの実家を探る価値はあるって話になったところ。ただ…実家の場所はあなたしか知らないから、案内してもらう事になりそうね」
「分かった、案内するね。城下町の電車を使って…大体30分くらいで着くかも」
「30分…了解した」
「2年ぶりに行くからもしかしたら今は何もないかも…」
「2年…かなり行ってないのね」
「お母さんが死んでから2年…ネオカオスを追って私もここまで来てたから…」
「そう…だったな」
ジンがそう言うと、ホワイトは何か閃いたような顔をする。
「そうだ、二人とも。実家に行って特に何もなかったら…の話なんだけどさ…」
「ん?」
「色々…遊んでみたいって言うか…その…少し旅っていうか…してみたいなって…」
少し無邪気な一面が出るホワイト。
そんなホワイトを見て微笑ましく思うジン。
「旅か」
「あっ…勿論二人が嫌なら私一人で行くけど…」
「うーん…」
ミカが考え始める。
「俺は着いていくぞ」
「ジン君…!」
「じゃああたしも行くよ。ジンだけじゃホワイトを守れるかどうか分からないし、何より頼りないし」
「ちょっと待て、どういう意味だ」
頼りないという言葉にジンが反応する。
「そのまんまの意味よ」
「こいつ…」
「あはは…二人ともありがとね」
「旅もそうだけど…何よりお前の父さんを探すのが一番大事だな」
「そうね。一番の目的はそれな訳だし。休暇と言うより、新しい任務ね…」
「新しい…任務」
ホワイトが気難しそうな顔をする。
「それって…」
ホワイトが二人の腕を掴む。
「すっごく…面白いかも!」
「…面白いのかしら?」
ミカが首を傾げながらジンの方を向く。
「俺に聞くな」
「じゃあ明日出発ね!二人とも…宜しくね!」
「おう」
「ん」
三人は部屋で再び荷物の準備を始めた。
――ラッシュ師団基地の団長室にて。
「団長、御報告が」
「おう」
ランスが腕を組む。
「先程ネオカオスの下っ端を捕らえました」
「ご苦労。それで…奴等から何か情報は得られたか?」
「いえ…下っ端の連中からは特に…」
「そうか」
ランスが立ち上がる。
「…それにしても…色々不可解だな」
「…研究所の件ですか?」
「あぁ」
ランスはあの後ネオカオス研究所の跡地をくまなく探した。
瓦礫の中に埋もれたネオカオスの研究の成果品は何個も見つかった。
だが…暗殺のルキの遺体は見つからなかった。
ルキの物と思われる血も殆ど無かった。
「…となると」
「暗殺のルキは…恐らく生きている」
ランスの目付きが変わる。
暗殺のルキは恐らく生きている。
遺体を見つけられなかった。
遺体が無い事が必ずしも生きている証拠にはならない。
だが逆を言えば、遺体が無い事は生きている可能性が十分にある。
「それって…」
「奴がネオカオスとして再び動くか…或いは…」
「何れにせよ…奴が生きている可能性がある以上、奴の魔力への対策を練らないといけませんね…」
「あぁ」
ランスが再び椅子に座る。
「魔力の根源の件については…どうしましょう?」
「元々俺達が追っていたのはネオカオスだ。魔力の根源は奴等に見つかる前に此方で確保したかっただけであり、ネオカオスの首領であるジハが死亡となった今必要ないだろう」
「…そうですね」
団員は魔力の根源に興味を示していたが、ランスは興味を示すどころか…軽蔑していた。
「お前も見たはずだ。スピアマウンテンの中から湧き出る凄まじい魔力…あの力を俺達が確保できたとて扱えやしないだろう」
「それもそうですね。となると…今回の件で魔力の根源が無くなったのは寧ろラッキーと言う事ですか?」
「そうだな。ネオカオスの残党が魔力の根源を探す事も不可能となっている。かなり運がいいな」
ランスが少し笑う。
「…それについてなのですが」
「ん?なんだ言ってみろ」
「ネオカオスの残党は…何故我々から逃げるのですかね?」
団員が疑問を吐く。
ランスが少し考えた後、憶測で話し始める。
「そりゃそんなの…捕まりたくない一心からだろう」
「それはそうなのですが…首領亡き今、我々から逃げ続けるのは寧ろ逆に得策でないっていうか…」
「ふむ」
ランスが腕を組む。
確かにネオカオスの残党の行動は得策ではない。
統率者であるジハを失った今、投降した方がネオカオスにとっても悪くない方向に進みやすかった。
「何れにせよネオカオスの残党も殆ど少なくはなってきてるだろう。全員捕らえれば関係のない話になるだろう」
「…それもそうですね。失礼致しました」
「ジハの魔力の反応も各地にいる団員の報告からして無いと断定された。奴はもう死亡確定でいいだろう」
ランスが通信機を操作する。
「残るネオカオスの下っ端を全員捕らえて、ラッシュ師団とネオカオスの長きに渡るこの戦いに終止符を…!」
「了解…!」
――翌日…ウィッシュ城下町の駅にて。
「ホワイト…結構な大荷物ね」
ホワイトは両手に荷物を抱える。
武器に、着替えに、非常食に…色々詰まったリュックサックのような物。
「そういうミカは…あんまり荷物ないんだ」
ミカは片手に少し大きめのカバンを持っていた。
最低限の着替え程度しか入っていないカバン。
最悪、ミカの魔力で作ってしまえばいい物は自分で調達する…そんなスタンス。
「まぁ…別にこれくらいあればいいかなって。休暇とはいえ…そんなに基地から離れるって訳じゃないし。何より団長に呼ばれたらすぐ行けるようにしとかないと…」
「…ミカって案外仕事熱心なんだね」
「もうラッシュ師団に完全に染み付いてるからね。…まぁでも、久しぶりに外で団員服以外を着れるのは嬉しいかも」
「久しぶりの私服だけど…似合ってるかな?」
ホワイトが私服を見せる。
白をベースにした服にロングスカート。
ホワイトらしい清楚な服装。
「うん、だいぶ似合ってる。ロングスカート、ホワイトには結構似合うね。短いのも似合いそうだけど」
「そう?嬉しい」
ホワイトがそう言うと、ジンがやってくる。
「待たせたな、二人とも」
「ジン君」
「ジン…その服…」
ジンの服は黒をベースにした…制服の様な物だった。
そして変装をしているかのような赤い眼鏡。
「殺し屋時代によく変装してた際に着てた服だ。いいだろ?」
ジンが指で眼鏡の位置を整える。
「…アンタにしては似合っててちょっと腹立つわね…」
「そういうミカも、その短パン似合ってるぞ」
ジンがミカの私服を見つめる。
活発的な服装で動きやすい短パン。
まさしく俊敏に動くミカに似合う服装だった。
「そういう目であたしを見ないでくれる?」
「え、酷くね?」
「あ、来たよ電車」
ホワイトがそう言うと、電車がやってくる。
「…ネオカオスの件があって…ここにいる人達も魔力と魂が吸われてたのに…今や何も問題なく過ごしてるんだな」
ジンが周りの人混みを見る。
「…そうね。でも案外世間ってそんなものよ。ちょっと前に何か事件があっても…気付いたら皆忘れたかのように過ごしてる」
「…皆、当たり前に今を生きてるんだね」
「その当たり前を守るのが…あたし達ラッシュ師団の仕事よ」
ミカの意外な言葉を聞いてホワイトが疑問を抱く。
「…そうなの?」
「え?」
ミカが唖然とする。
「…そういえば元はと言えばネオカオスに立ち向かうために、正義の団体として結団された…みたいな感じだったっけ…あれ…もしかしてネオカオスの件が終わったら…って言うかほぼ終わってるけど…ラッシュ師団ってどうなるの…?」
ミカが早口で喋り出す。
「ミカ…?」
「…いや、でも、団長ならきっと…こう言う…気がするような…」
「ミカ、電車乗るぞ」
「いや…案外ああ見えて団長はガサツだからそういうのは考えてなさそう…」
「ミカ!」
ホワイトがミカの腕を引っ張る。
「うおっ…びっくりさせないでよ…」
「電車乗り遅れちゃうところだったよ!」
「あ…」
三人は電車にギリギリで乗り込む。
「…ごめん」
「ミカ…今はラッシュ師団の事は少し忘れて…楽しも?」
「…そうね」
三人は空席を探し始める。
「席そこに4つ空いてるしそこ使うか」
「うん」
三人は席に座る。
ジンが窓からの景色を眺め始める。
「…ホワイト」
「ん?どうしたの?」
「…お父さん、見つかるといいな」
「うん…!」
「何言ってるのジン?見つかるといい…じゃないでしょ?」
「え?」
ジンが疑問に思うと、ミカが口を開ける。
「一緒に見つけよう、でしょ?」
「…そうだったな。ホワイト、一緒に」
「ねぇ見て!アレウィッシュマウンテンかな?綺麗!」
ホワイトが窓からウィッシュマウンテンを指していた。
「…聞いてないし」
「まぁいいんじゃない?ホワイトが楽しければ」
「…それもそうだな」
電車が動き出す。
ネオカオスの件が終わり、ホワイトの仇は果たされた。
ネオカオスの残党を捕まえる為、ラッシュ師団は今も何処かで駆け続ける。
――そして…ホワイトの父を見つける三人の旅が…これから始まる。
後書き。
どうも作者です。今回の「後書き~世界観とキャラの設定~」はお休みです。
第一部完結ー!
ネオカオス編こと、「第一部 世界の改変」はこの話を以て終了となります!
ここまで見て下さった方、ありがとうございました!
もしまだ第一部の全話を見てないよって方がいましたら一話から是非お読み下さい!
そして次回からは
「第二部 可能と不可能の根源」
が開幕…!
果たして可能と不可能の根源…とは?
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次回予告…
「豪剣と愛と」
その豪剣は…愛ゆえに。




