ep39.魔力の根源
――そして、地面に着く三人。
その場所には緑や青の明かりが灯っていた。
「…なんだ…これ」
三人が辺りを見回す。
そこには緑色や青色に光る鉱石が何個もあり、洞窟の中にしてはとても明るかった。
「ここがスピアマウンテンの…内部だって言うのか?」
「…信じられないけど、そうみたいね。一応だけど…あの鉱石の尖り方…槍に見えなくもない」
「まさにスピア…と言ったところか」
ミカが鉱石の方へ歩き出す。
「…綺麗。そして…凄い魔力濃度」
ミカの持っている魔力濃度計は10を指していた。
「当たり前のように10の数値…というか、これが今まで見つからなかったなんて…信じられない」
「…まるで洞窟の中なのに夜の光が灯ってる街みたいだ」
「この鉱石も…凄い魔力を感じる…!」
ミカが鉱石に手を触れる。
ミカが鉱石からピリッとした感覚を手にし、手を離す。
「…ちょっと手がヒリヒリしそうだわ」
「あぁ。触れなくても分かる。この鉱石は魔力を帯びてる。多いとかそういうレベルじゃない。鉱石そのものが、魔力の塊…みたいな」
ジンが鉱石を眺めていると、ミカが別の方向へ指を指す。
「奥へ行けるような道があるわ」
「…なぁ、この鉱石が魔力の根源って可能性はあるか?」
「流石にこれらが…とはなるけど、根源の一部って可能性はありそう。となると…この先に絶対何かあるわ」
この先に行けば絶対魔力の根源がある…そう三人は思っていた。
「…行こう。この先に…!」
「勿論…!」
ミカがそう言うと、ジンがホワイトの方を向く。
「ホワイト…大丈夫か?」
「…大丈夫。でも…魔力の濃度が強くてちょっと気持ち悪い…かも」
「…そうか、あんまり無理はするなよ」
「うん…」
ホワイトが歩き始める。
「ほら、こっち」
ジンがホワイトに手を差し伸べる。
「あ…ありがと…」
ホワイトがジンの手を掴む。
「…何イチャイチャしてんの?早く行くわよ」
「おう、今行く」
「う…うん」
ホワイトが顔を赤くする。
三人は洞窟の奥へ歩き出す。
「少しずつだけど、強くなってるわね、魔力の気配が…」
「長居すると、気持ち悪くなりそうだ」
「今私が持っている魔力よりも、かなり強い…」
「…そうね。となると本当にこの奥に…」
ミカがそう言うと、目の前に紫色の光を見つける。
「…!あの光…魔力の柱と同じ色…!」
「行ってみよう…!」
三人が走り出す。
「…!」
「…なんだ、これ」
三人は広い場所に出た。
周りには魔力を帯びた緑色や青色の鉱石が沢山あった。
しかも目の前には紫色の鉱石が沢山あり、更に水が滝のように流れていた。
そして、崖になっているところの下には紫色の水で満たされていた。
「ここが最深部っぽいけど…」
「水…滝…でも紫色の滝だ。あの滝こそが…魔力の根源…なのか?」
「…とてつもない力を感じるわ」
ミカが崖の方へ歩き出す。
だが…
「っ…何これ…」
ミカが一定の距離を進むと…
ミカの身体に異様な気配を感じた。
「っ…これ…魔力の…!」
ミカが後ろ歩きをする。
「ミカ…!大丈夫…!?」
「…平気。でも…近付くと凄い魔力の圧力を感じる…」
ミカがそう言うと、ホワイトが崖の方へ歩き出す。
ホワイトもまた、ミカと同じように異様な気配を感じる。
「っ…ほんとだ…空気からも感じられるこの圧力…」
「近くにいるだけで、頭がおかしくなりそうだわ」
「…あぁ。これが…魔力の根源…なのか…?」
ジンが疑いつつも歩き出す。
「っ…凄い…これ以上は…進めないレベルの圧力だ…!」
「…思い出した。私見た事がある…本に書いてあった…魔力の根源の…その図…」
「…!そうだそれだ…あたしも見た覚えがある…!昔の出来事を元に作られた最近の本で…!」
「…俺は本に疎いからないが、お前達が言うって事は本当に…」
「魔力の根源!」
三人が口を揃えて言う。
「…まさか本当に見つけちゃうなんて」
「しかも一番乗りよ。これって凄い事よ?」
「あぁ…本当に…見つけちまったんだな」
三人が目を光らせる。
「あっ…そうだった…団長に報告しなきゃ…!」
ミカが通信機を使おうとする。
だが、通信機からは雑音が鳴り響く。
魔力の気配が強く、通信機にすら影響を与えていた。
「っ…流石にこの魔力の前で通信機を使うなんて…無理な話ね」
「これも魔力の根源の影響か…となると外に出る必要があるか…」
「そうね…一旦あたしが外に出て報告を…」
ミカがそう言うと、通信機が突如バラバラに壊れ始める。
「っ…!」
ミカの通信機は謎の風でボロボロに砕け散った。
「な…」
「っ…この感触…まさか…!」
ミカがそう言うと、ミカが辺りを見回す。
そして…
「ラッシュ師団。もういたのか」
「っ…!」
ミカはジハを目視した。
三人の背後にはジハが一人で立っていた。
「それにしても、通信機のみならず貴様の腕諸共吹き飛ばそうと思ってたが…まさか通信機のみに抑えるとは」
「ジハ…!?」
「っ…ジハ…てめぇ…どうしてここが…!?」
三人が驚いた表情をする。
ジンが銃を向ける。
「どうしてって?君達とは違う道でここに来た、それだけの事よ」
「っ…!」
「まさか先回りされてるとは。しかし、魔力の根源は私が手に入れる」
「っ…渡さない…!」
ミカが銃剣をジハに向ける。
「ミカ…!団長への報告が優先だ…!今ここでジハとやり合うのは…!」
「分かってる…でも…!」
ミカが銃剣を構えながら周りを見る。
「ホワイトかジンの通信機を使えば行けるけど…ジハを超えて報告に行ける…か…?」
「っ…やるしか…ねぇのか…?」
ジンの腕が震えていた。
「お前達、威勢はいいみたいだな。だが…勝てるかな?この私に」
ジハはそう言うと、三人の元へ歩き出す。
「この際ここでの戦闘には勝てなくてもいい…報告にだけでもいければ…」
「ミカ…何言って…」
「…ホワイトかジンだけでも…外に戻って団長に報告を…!」
ミカの身体が震えていた。
ミカは自分がおとりになる事を考えていた。
「っ…!ミカ…お前が身代わりになる気か…!?」
「おとりにはなるけど、身代わりにはならない。アンタ達だけでも…早く…!」
「っ…!ホワイト…!走るぞ…!」
「っ…うん…!」
ジンとホワイトが走り出す。
「行かせないよ。君達は一旦眠ってもらいたい」
ジハがそう言うと、両手に魔力を込める。
「この魔力を前にどう動く?今降参するなら命だけでも…」
ジハが言葉を続けようとすると、ミカがすぐさまジハの前へ移動し、銃剣を振るう。
「っ…!」
ジハは右手に込めた魔力でミカの銃剣をガードする。
「早い…いつの間に私の目の前に…」
「…あたし達だって、強くなってんのよ…ただ生きてるだけじゃない。今ここでアンタを止めるために…強くなってきたのよ…!」
ミカがそう言うと、銃弾を撃つ。
「っ…!」
ジハの腹に銃弾が当たる。
ジハの腹から血が出る。
「アンタはここで止める…!絶対に…!」
「…なるほど、ゴミの分際にしてはやるじゃないか」
ジハはそう言うと、撃たれた箇所に魔力をかける。
「…ゴミなんかじゃない。アンタの方が…ネオカオス四天王ですら道具扱いするようなアンタこそ…ゴミよ…!」
「ゴミにゴミと言って何が悪い?こうしてる間にも私の魔力で撃たれた場所は回復してるのだよ」
ジハの撃たれた場所は既に回復していた。
「回復してる…だけど…!」
ミカは銃剣を構え、ジハの元へ飛び込む。
「回復が追い付かないレベルで切り刻めば…!」
ミカが銃剣を振り、ジハを攻撃する。
「…ふむ」
ジハは魔力の壁を作り出し、ガードする。
「メタリーを殺せただけあって、実力は本物だな」
「っ…メタリーは…アンタの娘だったはず…もっと悲しんでもいいんじゃないの…?」
ミカが銃剣を振り続ける。
ジハは魔力の壁でガードし続ける。
「メタリーも所詮私の計画の一部でしかなかった。奴が去ってしまった事でネオカオスの戦力はかなり落ちたが…まだ私がいる。私がいればネオカオスは何度でも立ち上がれる。四天王ならまた雇えばいい。それだけの事さ…」
「っ…なんて奴…自分の娘ですら道具扱いなんて…それに…娘がいるからにはアンタの奥さんとかもいるはず…アンタの奥さんは…アンタの計画に違和感を持ったりはしなかったの…!?」
「…奥さん?奥さんねぇ」
ジハはそう言うと、左手に風の魔力を込める。
「私の奥さんはネオカオス創設の時点で既に死んだんだよ。今はもう、私の一部だ」
ジハが風の魔力でミカに攻撃する。
「っ…!」
ミカは風に巻き込まれ、壁まで吹っ飛ぶ。
「がはっ…」
「っ…!ミカ…!」
ホワイトが足を止め、ミカの方を見る。
「っ…ホワイト…何してんの…早く行っ…――」
ミカが言葉を続けようとすると、ホワイトの後ろにジハが瞬間移動する。
「っ…!」
「この小娘が…そうかリュンヌの…!」
ジハはホワイトの首を両腕で縛るように掴む。
「がっ…」
「ホワイト…!」
「こいつが…そうかあの忌々しい女と男の間に生まれた…人間の小娘…!」
「がはっ…辞め…て…」
ホワイトはジハの腕を掴み、解こうとする。
だが力の差がありすぎて解けなかった。
「このままお前もリュンヌの元に送ってやろう…!」
「がはっ…」
ホワイトが吐血する。
「…ダメだ…意識…が…」
ホワイトの目の前が霞む。
「ホワイト…!っ…クソッ…がはっ…立て…ない…」
ミカが身体を起き上がらせようとする。
だが、ボロボロの傷故に全身に痛みが走り…倒れてしまう。
「辞めて…ホワイトを…殺さ…ない…で…」
「がはっ…」
「クククク!このまま死ね…!!」
ジハがホワイトの首を完全に絞めようとしたその時…
ジハの後ろから炎が現れる。
「っ…!」
ジハはホワイトの拘束を解き、炎を避ける。
解放されたホワイトは床に手を付く。
「がっ…はぁ…はぁ…ゲホッ…ゲホッ…」
ホワイトは呼吸が荒くなっていた。
ホワイトの涎が地面に零れる。
「行ったんじゃなかったのか?」
「…やっぱり、おとりになんてできねえよ」
炎の影響で出た煙からジンが現れる。
ジンが引き返し、ホワイト達を救いに戻って来た。
「っ…ジン…」
「お前は確かフェクトが言ってた、大切な物を教えた存在だったな」
「…聞いてたのか、フェクトから」
ジハはジンの方を睨む。
「フェクトに無駄な事を吹き込みやがって」
「っ…フェクトにも…許容以上の与えやがって…暴走させて…ふざけるな…!」
ジンは激昂し、炎の魔力をジハに放つ。
「ふざけてるだと?私が?私の魔力にすら耐えれない肉体には殺人兵器以外の価値はない。奴も死んで当然だ」
ジハが炎をかわす。
「…フェクトは生きてる、俺達が生かした…俺達が奴を…助けた…!」
「助けた?フェクトは助けを望んだのか?お前達なんかに?不本意に助ける事こそ、苦しみを与えるだけの事だろう?」
「そんな訳…ねぇだろ!!」
ジンは火力を上げ、ジハに炎を放つ。
「…なるほどな」
ジハがジンの炎を浴びる。
「命中した…!?」
「…そうか、これは想定以上だ…!」
ジハは炎を振り払う。
ジハの身体はボロボロになっていた。
「…認めよう、お前は強い。お前は強いからフェクトに無駄な事を吹き込んだ事は不問にしてやろう」
「っ…今更何を…!」
「だがな、殺す」
ジハはそう言うと、ジンに向かって風の魔力で攻撃する。
「っ…!」
風はとても早く、ジンは直撃する。
「がっ…」
ジンは風によって壁まで吹っ飛ぶ。
「っ…ジン君…!!」
ホワイトがジンの方を見る。
「さてと、今度こそこの小娘を…」
ジハがホワイトの方へ歩き出そうとした瞬間…
ミカがジハの目の前まで移動し、銃剣をジハの左胸に刺す。
「っ…!?」
「ミカ…!」
「このまま死ね…ジハ…!!」
ミカが強く銃剣を押し込む。
「ぐっ…ぐおおおおお…!!」
ジハがミカの銃剣を右手で掴む。
ジハの血が左胸から出続ける。
「…アンタに武器が刺さってる状態…この状態だとアンタは本来の力を――っ…!?」
その瞬間、ミカが驚いた表情をする。
そして…ジハは左手に風の魔力を込めていた。
「…吹っ飛べ」
ジハがそう言うと、ミカに向かって風の魔力で攻撃する。
「っ…!?」
ミカは再び風で吹っ飛び、壁まで吹っ飛ぶ。
「っ…!ミカ…!!」
「…私の心臓を直接壊そうとするとは、流石だな」
ジハはそう言うと、胸に刺さった銃剣を抜く。
「だが、心臓にはギリギリ届いてない。残念だったな」
ジハが魔力で胸の傷を一瞬で回復させる。
「っ…!そんな…ミカ…ジン君…!しっかりして…!」
ジンとミカは気絶していた。
この場でただ二人、ホワイトとジハだけが立っていた。
「人の心配をしてる場合か?」
「っ…!」
ホワイトの後ろにはジハが立っていた。
ジハはホワイトの腰に目掛けてリングのような魔力を放ち、拘束する。
ホワイトは身体を拘束され、腕を動かせなくなってしまってた。
「っ…!辞め…て…」
ジハは拘束されたホワイトに足払いをし、転ばせる。
「がっ…」
ホワイトはその場に倒れる。
腕が拘束されてしまい、立ち上がれなかった。
「戦闘力の高い二人は暫く起きないだろう。そして、お前は弱い。魔力を使って無かった私に首を絞められたくらいで死にそうになるくらいには弱い」
「っ…魔力を…使って…ない…?」
ホワイトがジハの言葉を聞いて絶望する。
「奴等に対して風の魔力や壁を作る魔力を使い、回復をするためにも魔力を使ったがお前には使っていない。今の拘束するために一瞬使いはしたがな」
「っ…そん…な…」
ホワイトが涙を流す。
ホワイトは自分の無力さに絶望していた。
「ははは、どうした?悔しいか?お前が追ってきた仇は…お前が思っているより遥かに強い。そう、お前達が強くなっているように、私も強くなったんだ。お前達に一度捕まってからお前達に対する怒りが湧いてきた。その怒りが私を強くさせた」
「…そっか…私は…ミカやジン君に助けられて…自分が強くなったと勘違いしてたんだ…私は…弱かったんだ…」
ホワイトの涙の量が増える。
「…さて、無駄話は終わりだ。そこで横たわりながら世界の変わる瞬間を見ているがいい」
ジハがそう言うと、ジハは魔力の根源の元へ歩き出す。
「っ…ダメ…行っちゃダメ…」
ホワイトが拘束されている中動こうとする。
「ここからでもすぐ感じ取れる膨大な魔力…!そうだよ、私はこれを待っていたんだよ…!!」
ジハがゆっくりと崖の方へ歩き出す。
「魔力の根源よ…!私の望みに答えよ…!私を…完全なる存在へ変えよ…!!」
ジハが魔力の根源の前に立つ。
「…そして、世界の改変を行うのだ…!!」
ジハがそう言うと、紫色の水の中へ落ちる。
ジハが飛び込んだ水から水飛沫が飛び散る。
――そして、地響きが起こり始めた。




