ep37.根源への追及
――ラッシュ師団の基地にて…
ホワイトが霊安室でブラックの遺体を見る。
「お兄…ちゃん…今頃あっちで…お母さんやお父さんと…会えてるかな…」
ホワイトはブラックの頬を触る。
「…私が…もっと強くならないと…」
ホワイトが涙を流す。
「…私は、どうすればよかったの…?」
ホワイトがそう言うと、ホワイトの後ろからジンが現れる。
「…ホワイト」
「ジン君…ミカは…」
「…大丈夫だ。かなりの重症ではあったが、お前の魔力で止血はされていたから明日にでも治るだろう」
「っ…そっか…良かった…」
ホワイトが胸を押さえる。
「魔力の根源については現在も調査中だ。だが未だに掴めず…ジハについても行方が知れず…」
「そっか…」
「だが、ネオカオス四天王は既にこの時点で四人全員やれている。フェクトの方も…捕えている以上は何か聞き出せるはずだ」
「フェクト…そうだ…フェクトに聞きたい事があったんだった…今は何処に…?」
「ロキが牢屋で話してるぞ。色々情報を聞き出してる最中だ」
「…そっか」
ホワイトが目を逸らす。
ジンがホワイトの肩に手を乗せる。
「お前は兄さんの元へまだいてやれ。俺はロキから情報を聞いてくる。何を聞けばいい?代わりに聞いといてやる」
「あっ…いや…それは…私の口から言いたい…」
「そうか。何か分かったらまた来る」
「…うん」
「…その、なんと言えばいいか分からないが…残念だったな…」
ジンの言葉を聞いてホワイトが落ち込む。
「…また来る」
ジンが霊安室から出る。
霊安室にはホワイトと…ブラックの遺体だけが残る。
(…そうだ。)
ホワイトがブラックの遺体の方へ寄る。
ホワイトに考えがあった。
(今ここで、お兄ちゃんの元で寝て…お兄ちゃんの脳内世界に干渉…できないかな?)
(癒しの神様と会えたら…)
(生き返らせてくれるかも…)
ホワイトはブラックの胸に頭を横に乗せる。
ブラックの息はなく、心臓も動かず…ホワイトはそれに絶望していた。
「…心臓、やっぱり止まってる…」
ホワイトが目を瞑る。
「…お願い、癒しの神様…私の思いに…答えて…!」
ホワイトが癒しの神に会える事を信じ、眠りにつく。
――一方、ラッシュ師団の牢屋で…
フェクトに尋問するロキ。
「ネオカオス四天王はお前以外は全員死んだ。デストは動かない、ルキは研究所の瓦礫の下、メタリーはうちによってやむを得ず殺害。後は…お前だけだ」
「そっか」
フェクトがロキの方を見つめる。
ネオカオス四天王の内、三人は死亡し自分も捕まったフェクトだったが…何処か救われたかのような顔を浮かべるフェクト。
「お前の処罰はお前の殺した数で決める。何人殺した?」
「…殺した数か…二人かな」
「二人…そいつらはラッシュ師団か?一般の人間か?どっちだ…!」
「…そのどっちでもないよ」
「…は?」
ロキがフェクトに銃と怒りを向ける。
どっちでもないという言葉は、意味不明だった。
「あまり俺を舐めるなよ。どっちを殺したか聞いてる…!」
「ホントだって…僕が殺したのは…家族だよ」
「家族…?」
ロキが首を傾げる。
銃を引っ込めるロキ。
「僕が父さんに殺されそうになったってのは言っただろう?」
「聞いたな。ジンも同じ事を言ってた」
「…母さんは自分で死んだけど、アレは実質的に僕のせいだ」
「となると…お前は…ネオカオスとして人を殺してない…?」
「…まぁ、僕がやる事はその自前の魔力を使った情報収集が主な物だからね。…対峙したラッシュ師団を傷つけたりはしたけど」
「…そうか。…だが尋問は尋問だ。次の質問だ。ジハは今どこにいる?」
「…ジハさんの居場所は分からない」
フェクトのこの言葉に嘘はない。
フェクトは真の完璧のフェクトに変貌したあの後、ジハと会っていない。
何処で何をしているかも聞かされていない。
ただ一人、ネオカオスでジハの行方を知っている可能性がある者がいる。
「だけど、メタリーなら知ってたはずだ」
「メタリーが?」
「あぁ。と言っても…ミカがメタリーを殺したんだろ?」
フェクトの言葉を聞き、ロキが真実を言うべきかそのまま嘘を吐くべきか迷っていた。
ホワイトを守るためという訳ではないが、嘘を吐く事を選ぶ。
「…そうだな。やむを得ないと聞いたが」
「あいつは…ジハさんと似て残虐な奴だったよ。ジハさんみたいに表を隠すって事はしないけど、表に出して人を煽る…人をいたぶって何人も殺してきた…そんな奴だ。ジハさんの娘ってのも納得できるよ」
「…そうだな」
「…メタリーが死んだ今、ジハさんがどこに行ったかを知る者はいない。その間に…ジハさんが魔力の根源を見つけ出したら…君達も終わりだね」
メタリーが死亡した今、メタリーに一番近い存在はフェクトだった。
だがそのフェクトもラッシュ師団に捕らえられており、しかもジハの居場所をフェクトは把握していない。
これ以上はお手上げだろう、フェクトはそう思い込んでいた。
「魔力の根源か。それについてだが、ラッシュ師団は既に魔力の根源の手掛かりを見つけている。ジハに見つけられる前にこっちで回収する予定だ」
「…そうかい」
フェクトが少しため息を吐く。
そこへジンが牢屋にやってくる。
「邪魔するぞ」
「…やぁ、ジン。会いたかったよ」
フェクトがジンの顔を見て嬉しそうな顔をする。
ジンがフェクトを見下ろし、睨む。
「…俺は別に会いたくなかったけどな」
「酷いなぁ。ホワイトは元気かい?ミカは今頃殺した事を後悔してるかい?」
「…ホワイトは…今はそっとしておいてくれ。ミカは…今は安静にしている」
「そっか。まぁ…その意味で言うと僕も本当は安静にしないといけないんだけどね…」
ジンが黙り込む。
フェクトが思い出したかのように喋り出す。
「そうだ、僕の処罰はどうなるんだい?」
「お前はこの件が終わるまでここだ。俺にもっと情報を吐いてもらう」
「そっか。まぁ…なんでも正直に話そう。ジハさんも…こんな僕を見限っただろう…。あの人に黙って殺されるくらいなら、あの人の事を話してから殺される方がマシだ」
「…あいつは何を考えてる?」
「…ジハさんは、魔力の根源を取り込んで完全な存在になろうとしてるんだよ」
「完全な…存在…?」
「その完全な存在になるとはメタリーから聞いたな。魔力の根源を取り込んで…完全な存在に…か」
「あ、聞いてたんだ。ならこれについては知ってるかな?魔力の根源を取り込んだ後の事…」
「…世界の改変以外にも…あるのか」
完全な存在になる事で何をするかまではラッシュ師団の皆は分かっていない。
だがこの場でただ一人、フェクトだけは理解している。
「魔力の根源を取り込み完全な存在になった後、世界の改変を行う。そして…この世にいる全ての人間から魔力と魂を吸い尽くす…」
「魔力と魂を…?」
「…ジハさんはこの世のみならず、別世界にも関与しようとしてるんだ」
「っ…別世界…だと…?」
ロキが驚く。
ジンは黙って聞いていた。
別世界、ロキにとってあまりしっくり来ない話。
「君達もちょっとは聞いた事があるはずだ。女神族の話を…」
「っ…女神族…!」
女神族は当然この世界から生まれたものではない。
ジハは…女神族の世界を目指していた。
この人間界に住まう全ての人間の魔力と魂を吸い尽くせば、別世界に住まう女神族も流石に放っておけないはず。
「ジハさんは…そこを狙うつもりなんだ」
「…そんな事、俺等に喋っていいのか?お前の恩人でもあるんだぞあいつは…!」
「…いいさ。どの道ジハさんが完全な存在になったら、君達に防ぐ手段はない。この世界も終わる…ネオカオスの皆も…じきに死ぬだろう」
フェクトが諦めたかのような喋り方をする。
「っ…どういう事だ…?」
「さっき言ったはずだよ、この世にいる全ての人間から魔力と魂を吸い尽くすって」
「っ…どうしてお前は…そんな事態が迫ってるかもしれない中、冷静でいられる…?」
「…僕は謝りたいんだ。あの世に行って…お母さんに」
「っ…ホワイトと…一緒か…!」
ジンが驚いた表情をする。
フェクトもまた、ホワイトと一緒であの世と言う世界に行って家族に謝りたかった。
「後は…あの世に行ったデストやルキにも謝らないとかな。デストは人造人間ながら僕が話してて楽しい人だった。ルキも…案外話が分かる奴だった」
「…そうだ、お前に聞きたい事があった」
ロキが喋り出す。
ロキは殺戮のデストという存在、もとい人造人間が気になっていた。
「…デストは一体何者なんだ?人造人間と言ったが…あいつは一体…――」
「あぁ…ベースとなったデストっていう人間がいただけだよ。今ベースのデストはどこにいるかは知らないけどね」
「…そうか」
「他に聞きたい事はあるかい?ジハさんの真の目的については殆ど言ったはずだ」
「団長の報告があったらまた聞く。それまでここにいろ」
ロキが椅子から立ち上がる。
そして…
「…お前はこの一件が全て終わったら、俺が解放してやる」
「…!」
ロキの言葉を聞き、フェクトが驚く。
「そのためにも…ラッシュ師団は…お前達ネオカオスに勝つ…絶対だ」
「…そうかい。楽しみだよ」
フェクトが安心したかのような顔をする。
ロキがジンの方へ振り向く。
「…ジン、ひとまずはこいつから聞きたい情報は聞けた。それと、俺はこいつから色々情報を聞く故に戦闘には暫く参加できない。何かあった時はホワイトを頼む」
「…言われなくても。お前はお前の責務を果たせ」
「…言われなくても」
ロキがそう言うと、ジンはその場を去る。
「…君達、仲良いんだね」
「あぁ。やっぱり俺達は気が合うみたいだ」
――一方…
「っ…!」
ホワイトは真っ白な世界に佇んでいた。
「…ここは…成功したの…?」
ホワイトが辺りを見回す。
「ホワイト…ここに来たという事は…」
「…!癒しの神様…!」
ホワイトが振り向く。
そこには癒しの神が立っていた。
「魔力の根源は…まだ見つかっていないという事ですね」
「っ…それよりも…癒しの神様に頼みが…!」
「頼み?」
ホワイトが大きな声を出す。
「…お兄ちゃんに…会わせて欲しい…!」
「あなたのお兄さんを」
「そう…!私を庇ったせいでお兄ちゃんは死んだ…だから…!」
ホワイトが希望と焦りを持って癒しの神にお願いする。
「それはできない頼みです」
「っ…どうして…!」
「ここはあなたの脳内世界です。現実ではあなたはお兄ちゃんの脳内世界に関与しようとか考えてたようですが」
「っ…まさか…失敗したの…?」
「失敗も何も…死者に会う事は本来不可能なのですよ」
「そん…な…」
ホワイトが真っ白な世界の地面に膝をつく。
「あなたのお母さんにも当然会えません…そもそも私達女神族は死者に関与する力はない」
「っ…じゃあどうしてあなたは私が死んだ時に…」
「この前も言ったはずです。あなたに癒しの神に通ずる力が発現したという事…」
「っ…だからどうしてそれが私に発現したの…?どうして…どうして私なの…?」
ホワイトが自身の手のひらを見る。
「…何故、なんでしょうね」
「答えてよ…!私には分からない…!お兄ちゃんも…お母さんも…お父さんも失って…今の私には…もう…何も残ってないの…!」
「…」
癒しの神が黙り込む。
「ねぇ…黙ってないでよ…!」
ホワイトが怒った表情で癒しの神を見る。
「…珍しく感情的ですね」
「っ…話をそらさないで…!」
「…私もよく分かりません」
「…は…?」
癒しの神の衝撃的な言葉にホワイトが呆れたかのように喋る。
「…何よ…分からないって…癒しの神様も案外…大した事ないんだね…。癒しの神だからって…何もかも分かる訳じゃ…ないんだ…」
「…あなたに魔力が発現した理由…それは私にも分かりません」
「…もういいよ、あなたに聞こうとした私が馬鹿だった…」
ホワイトがそう言うと、振り向いて歩き始める。
「もう顔も見たくない…あなたの魔力のせいで…色々めちゃくちゃだよ…」
「っ…ホワイト…」
癒しの神はホワイトを追おうとする。
「来ないでよ…!」
ホワイトが大きな声を上げる。
「っ…!」
「私の事助けられないなら…もうほっといてよ…!!」
「っ…ホワイト…待ってください…あなたの事…」
真っ白な世界…
辺りのヒビはどんどん広がり………
――現実に戻る。
「っ…はぁ…はぁ…」
ホワイトが目を覚ます。
ホワイトは顔を上げてブラックの方を見る。
「…やっぱり…ダメだった…」
ホワイトがブラックの方を見て涙を流す。
「…ごめん…ごめん…お兄ちゃん…」
ホワイトを後ろから見るシェールの姿。
「ホワイトちゃん…」
「…シェールさん」
ホワイトがシェールの方を向く。
ホワイトが腕で涙を拭う。
「…死んでしまってもなお、お兄さんの元にいてあげるなんて…あなたは本当に優しいのね…」
「…私は…これからどうすればいいですか…」
「そう…ねぇ」
シェールが考え始める。
そして、シェールが今後の作戦について喋り始める。
「ネオカオス四天王は全部倒せたけど…魔力の根源は未だ見つからないし…ジハの意向も探れない。明日また、魔力の根源探しに行く事になったわ。その上で…あなたはどうしたい?」
「私は…」
ホワイトが一瞬貯めてから話し始める。
「…ジハを…探して…捕らえます」
ホワイトが拳を握る。
「…と言うと」
「…お母さんが死んだのは…ジハによるもの。そして…お兄ちゃんを殺したメタリーを動かしたのも…ジハ。だから私は…あの人を許しません…」
「…そう。そう言うと思ったわ」
シェールがホワイトの考えが分かったかのように喋る。
「そうだと思ってあなたやジン君、ミカちゃんを再びスピアマウンテンに向かわせようと思っているの」
「…!本当ですか…!?」
「えぇ。あなたを行かせるならその二人かなと思って」
シェールがそう言うと、ホワイトが再び拳を握る。
「…私の力で…二人を援助します。そして…」
「――絶対にこの手で…ジハを止めて見せます…!」




