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白と悪魔と  作者: りあん
第一部 世界の改変
34/271

ep32.完璧の暴走

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ――時は、フェクトが一度元ネオカオス本拠地の場所に戻った頃に遡る。


「…ネオカオスの本拠地だったとはいえ、今は誰もいない…か」


 フェクトが荒れた書庫で歩いていた。


「…ここには沢山の叡智が眠っている。本に記されてる物だと、攻撃に使う魔力の扱いや、人を癒す魔力の扱い…自分を守るための魔力の扱い…そして、それらの魔力の最適化…色々だ」


 フェクトが一人で呟いている。


「…人が全ての魔力を扱えないのは、身体や魂の魔力の許容量のせいだ。それに人によって得意不得意も当然ある。多くは遺伝で魔力を引き継ぐが…僕の場合は殆ど親の魔力には頼らず…絵本で読んだ魔力をそのまま真似てみたらちょこっとできただけだ。

 僕は才能に溢れてる、そう自負してる。才能があるからこそ、修行も短くできる。努力に割く時間を短くできるんだ」


 フェクトが早口で喋る。


「おっといけない。魔力の事になるとどうして僕は一人で喋っちゃうんだろう。…話し相手が欲しいな」

「話し相手が欲しいのかい?」


 フェクトの近くで不気味な声が聞こえた。


「…!その声は…」

「やぁ、フェクト。爆破の件以来かな」


 フェクトの後ろにはジハが立っていた。


「…ずっとあなたに会いたかったですよ」

「私はこの突破された元本拠地に残された物を回収しに来た。ラッシュ師団の基地を爆破した件以来、ここにはラッシュ師団はおろかネオカオスの団員すら入ってないからね。その痕跡が全く残っていない」

「そうだったんですか」


 フェクトがジハに近付く。


「回収したい物は回収できた。話し相手になら付き合うよ、フェクト君」

「話し相手、感謝します。…僕は、大切な物を探しに来ました」

「大切な物?」


 フェクトは大切な物に固執していた。


「…ウィッシュマウンテンでジンというラッシュ師団の男に出会いました。そして…願いをかけた戦いに負けました」

「そうか」

「…そして、ジンは大切な物について言っていました。僕には…それがなかった」

「大切な物ねぇ」


 ジハがフェクトに近付く。

 ジハがニヤリと笑う。


「僕には奴に勝てず…奴の言葉のせいで何のために戦ってるのか…分からなくなりました…」

「奴には一旦勝てなくてもいい、よく足止めをしてくれた」


 ジハの言葉にフェクトが感化される。


「っ…こんな僕を…褒めて下さるのですか」

「あぁ。君は大事な僕の息子だからね」

「息子…」

「私は君のお父さんだ。そして…親である私から、君にいい物を渡そう」


 ジハはそう言うと、右手に強大な魔力を込める。

 そして、フェクトに魔力を当てる。


「っ…!」

「君に過去に魔力の柱から得た魔力を全て授けよう。2年前に見つけた物だ」


 フェクトの身体を紫の魔力が覆う。


「っ…凄い…力が…みなぎる…」

「凄いだろう?」

「これならジンに大切な物の証明を…っ…!?――」


 魔力が強すぎた影響か…フェクトの意識が無くなる。


「そして、この魔力を得た君は完全な私の下僕となる」

「…ジハ様」


 フェクトが目を覚ます。

 そして…フェクトの目はジハと同じく紫色に輝いていた。


「…フェクト、我が息子よ。君は今から真の完璧を目指せ。そのためにも、今は姿を潜めよ、今は力を蓄えよ。そして…何れはラッシュ師団を殺すだけの殺人兵器となってもらおう」

「…ジハ様の頼みだったら、僕なんでもします。ラッシュ師団も…全員殺します」

「そうだ。それでこそ…我が息子よ…」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ――そして現在…


「…完璧のフェクトと言ったわね」

「…違う、真の完璧のフェクトだ。真を忘れるな」

「…じゃあ、真の完璧のフェクト…あなたが真の完璧なら…」


 ミカが銃剣を振る。


「あたしは極みよ」


 ミカの近くで風が起こる。

 まるでミカの魔力が溢れ出ているかのように風が吹く。


「…ちょっと振っただけで風を起こす…ただ者じゃないね?」

「…魔力の扱いがちょっと他の奴等より上手いだけよ」

「そうかよっ…!」


 フェクトが両手に魔力を込める。


「…炎と氷を…融合…!」


 フェクトは右手に炎、左手に氷を作り融合させる。

 融合させると、氷の中に炎が宿る。


「これが僕の魔力…魔力を融合させる能力…更にダメ押しだよ」


 フェクトはそう言うと、更に雷の魔力も融合させる。


「…この魔力弾が当たったら、君の身体はどうなるかな?冷えちゃう?燃えちゃう?それとも…痺れちゃう?」

「…じゃあ、そのどれでもないって答えるわ」


 ミカはそう言うと、走り出す。


「なるほど…じゃあ…消えてなくなるか…!」


 フェクトは融合で作り出した魔力弾を巨大化させ、ミカの方へ飛ばす。


超融合魔力弾(スーパーフュージョンボール)…この魔力弾が直に当たってしまえば君だけじゃなく、君の後ろにいる女の子やそこで倒れてるロキも巻き込む…!」


 フェクトが不敵な笑いをする。


「…このまま消えてなくなってしまえ…!」

「っ…!」


 ミカは魔力弾を銃剣で斬りかかる。


「その銃剣じゃ、僕の魔力弾を斬り落とす事はできない…!」

「っ…!」


 ミカは魔力弾を斬る。

 だが、魔力弾が爆発し、当たりが白い煙に覆われる。


「ミカ…!」

「一人で斬る事で仲間を庇ったか…!だが…君の身体は急激な温度の上昇と低下が入り交じり…」


 しかし、ミカはボロボロになりながらもフェクトの方に向かう。


「っ…!」


 ミカはフェクトに向かって銃剣を振るう。

 フェクトは咄嗟にミカから奪った銃剣を構え、ミカの攻撃を受け止める。


「っ…何故…その程度の傷で済んでる…!?」


 ミカは後退する。ミカの身体から血は大量に出ており、吐血もしていた。

 だが、ミカは平気な顔をしていた。


「…死線を搔い潜った量が違う…それだけよ」


 ミカはそう言うと、銃剣でフェクトに銃弾を放つ。

 銃弾はとても早く飛び、フェクトの身体を貫く。


「がっ…!」


 フェクトの右の肺に銃弾が貫通する。


「ぐっ…肺を…」

「…確か魔力の扱いって、呼吸も関係するんじゃなかったかしら?肺の機能が弱くなったら…どうなるかしら?」

「っ…クソッ…!」


 フェクトは両手に魔力を込め、再び超融合魔力弾(スーパーフュージョンボール)を作ろうとする。

 だがさっきより魔力が弱くなっていた。


「ミカ…その傷…」

「平気。一応治せる範囲で治してくれると嬉しいけど」

「あっ…ごめん…!」


 ホワイトはそう言うとミカに回復魔法をかける。

 ミカの傷が一部回復する。


「…ん、ありがと」

「っ…今度こそ吹っ飛ばす…!その傷じゃ…次は受けれないだろ!?」


 フェクトが両腕に魔力を込める。


「…確かに、受けれないわね。普通に当たったら死んじゃうわ」

「そうだよ…だからここで…死…」

「当たれば…の話だけど」


 ミカがそう言うと、フェクトの背後に回り込む。


「っ…!?早…」


 フェクトが喋る暇もなく…

 ミカは銃剣でフェクトの身体を滅多刺しにする。


「ぐっ…がはっ…うっ…!」


 ミカはフェクトを蹴飛ばす。


「っ…がはっ…なんだこの…女は…」

「…まだまだ…よね?」

「っ…このままじゃ…」


 フェクトが立ち上がる。

 フェクトの身体から大量の血が出る。


「このまま…いや、まだマダ…」

「…?」


 フェクトの声の後半が機械音のような声になる。


「まだ…僕は戦エル…!」


 フェクトがそう言うと…

 身体中の傷が紫色の魔力に覆われ、みるみると回復していく。

 そして…魔力による風圧が辺りに発生する。


「っ…!」

「…ジハ様の力…ジハ様こそ…完璧なんダヨ…!」

「ミカ…!」


 ホワイトがミカの元へ走り出す。


「フェクト…まるで、何かに操られて正気を失ってるみたい…」

「っ…まさか…」

「…ジハなら、やりかねない事…ね」


 ミカが銃剣を構える。


「がはハ…がはハ…あははハハ…」


 フェクトは両手に魔力を込める。

 魔力により、再び風が起こる。

 ミカやホワイトが風に煽がれそうになる。


「っ…!この魔力による風…強い…!」

「うっ…ミカ…どうすれば…!」

「…恐らくだけど…フェクトはジハから魔力を貰って…その魔力に身体が耐えきれず暴走を始めてる…!」

「そんな…」


 ミカが銃剣を暴走したフェクトの方に向ける。


「…さっきまでのフェクトは強力すぎるながらも許容量の分扱えてたけど…今はそれをオーバーしてる。その証拠に…アレを見て!」

「っ…!」


 ミカがフェクトの方に指を指す。

 紫色の魔力に覆われているフェクトの手のひらからは血が多く出ていた。

 フェクトの血が地面に垂れ続ける。


「っ…さっき傷が治っていたはずなのに…もう出血…しかもあの量…」

「…そう、あのふざけた魔力には代償があった…魔力が身体に耐え切れず出血している…」

「そんな…」


 フェクトの手から出続ける大量の血を見てホワイトが震える。


「あはハハハ…タス…けて…」

「っ…!?」


 ホワイトはフェクトの声に気付く。


「今…助けてって…」

「は?助けてって…あいつが…?」

「そう…今確かに…聞こえた…」

「っ…」


 ミカが息を詰まらせる。

 フェクトの腕の出血量が更に増える。


「…でも、あいつを助ける方法なんて…あるの…?」

「え…?」

「…あの魔力に囚われた以上、アイツを殺す方がアイツの救いかもしれない。…あのふざけた魔力をどうにか突破して奴の心臓を…」

「そんなの…ダメだよ…!」


 ホワイトが大きな声を出す。

 ホワイトが首を振る。


「っ…!」

「いくらネオカオスだからって…人の命が失われるのは…嫌だ…!」

「…アンタは…この状況でそんな事言ってられるの…?」

「え…?」

「ぐおおおおオオオっ…!!」


 フェクトはかつてないほどに強力で巨大な魔力弾をミカとホワイトの方向へ放つ。


「っ…!」


 ホワイトとミカが横に飛び込んで避ける。


「っ…!」


 当たらなかった魔力弾は空中で爆散し…大きな音が鳴り響く。


「っ…何…あの威力…!」

「あの威力の魔力弾…くらえば即死よ…!あの威力を持ってしても…アンタは…フェクトを助けようと言うの…!?」

「っ…」

「仮にもネオカオス…敵で…!仮にもジンやロキを傷付け…!アンタも傷付いて…!それでも…アイツを助けようって言うの…!?」

「っ…そんなの…」


 ホワイトが拳を握る。


「…私は…敵であろうと、助けたい」

「っ…」

「約束したの、自分に…自分が助けれる命は、例え敵であっても救うって…」

「…そっか」


 ミカが銃剣を下ろす。


「…ひとつ方法があるとしたら、フェクトの身体をよく見て」

「…フェクトの…身体…?」

「…周りをよく見ると、紫色の膜があるでしょ…?」


 ミカがフェクトの方に指を指す。

 ホワイトがフェクトの方を見ると、フェクトの周りに紫色の膜が見えた。


「…ほんとだ。魔力に覆われていて…膜の様な物…アレは一体…」

「推測だけど…アレが恐らくフェクトを暴走させている力。魔力だけどうにかして削ぎ落とせば…或いは…」

「っ…でも…そんなのどうやって…」

「それをどうしようか今…」

「…なら…俺にいい考えが…ある…」


 ロキが立ち上がり、二人方へ向かう。


「っ…!」

「…俺にもいい考えがある」


 ジンが立ち上がり、残った三人の方へ向かう。


「ロキ君…!ジン君…!」

「随分待たせたな。…数分とはいえ意識を失っちまってた…」

「遅いわよ。でも…良かった」

「っ…!今治す…!」


 ホワイトがジンとロキに回復魔法をかける。


「有難い。さて、考えを話そう。恐らくロキと一緒だが…」

「ミカ、あの時の事覚えてるか?」

「あの時って…いつの事よ…」

「これ見て分かんね?」


 ロキがそう言うと、ロキはナイフを取り出した。


「…これだよ」

「これは…!」


 ミカがロキのナイフを見て驚く。

 それはかつてネオカオスの本拠地に乗り込んだ際に使った空間を切り裂けるナイフだった。


「そのナイフ…いつの間にアンタがそれを…」

「…別名空間切り裂きナイフ、今名付けた」

「安直な名前を付けないで…」

「フェクトの周りには魔力の膜があって、魔力を削ぎ落さないと恐らく正気には戻れない。だが、普通にやってたら死亡しないと魔力は身体から離れ落ちない」

「…だけどこのナイフがあれば空間を斬る事が可能だ。それにあの魔力…身体から一部溢れ出ている。あの魔力の膜の空間だけを斬り、魔力を削ぎ落す…それができる…はずだ」


 ジンとロキが続けて喋る。


「簡単に言ってくれる…じゃない。空間を斬るだけで魔力まで纏めて斬り落とせる保証なんてないのに…」

「…できないのか?」

「できるに決まってるでしょ…!」


 ミカがロキの持っていた空間を切り裂けるナイフを取る。


「あたしの作った武器よ。魔力の膜を切る事くらい、造作でもない…!」


 ミカがフェクトの方を見る。

 フェクトは魔力が暴走していて辺りの岩石を宙に浮かせていた。


「だがそのナイフ…空間を切る程の力なんだろ…?そんなのがもしも生物の身体に当たったりしたら…」


 ジンが不安そうにする。


「…どうせこのナイフの使い方…皆知らないでしょ。今まで持ってたロキもどうせ大して扱えなかったのでしょ?」

「うっ…このナイフを借りて使った時には既にこのナイフに用は無かったからな…扱えなかったんじゃなくて、扱わなかったんだ…」

「…このナイフは、空間を切るのに特化した…あたし特製の武器…」


 ミカがナイフを構える。


「…フェクトを助けるためにも…皆、援護をお願い…!」

「おう…!」


 ミカが走り出す。


「ぐゥゥゥ…!」


 フェクトは再び魔力弾を放つ。


「…あの魔力弾に当たったら間違いなく死ぬわよ…避けて…!」

「当たり前だ…!」


 ジンとロキが魔力弾を避ける。


「…それにしても…魔力に関しては未だに不思議な事が多いわ…身体の外にまで溢れ出る程強大な魔力…身体の外に出たら最後、放出した魔力を扱う事は難しいはずなのに…フェクトは反動を受けながらも放出している魔力を扱う事ができてる…」


 ミカが走りながら呟く。


「ジハから貰った魔力だと予想してるとはいえ…これも彼の言う完璧の一部…なのかしら?」

「あははハハハ…!」


 フェクトは再び魔力弾を放つ。


「っ…!」


 ホワイトの方に向かっていた魔力弾をホワイトは避ける。


「危な…!」


 ミカがフェクトに近付く。


「…さてと…」


 ミカは空間を切るナイフをフェクトに向かって投げる。


「あははハハ…そのナイフ…僕を殺せるのカイ?タスけてくれるノカ?」

「…どっちもできるわ。何故ならこのナイフは…」


 ミカが投げたナイフはフェクトを覆う魔力の膜に刺さる。


「…!」

「刺さった…!」

「…あたしの魔力操作で、切れる範囲を選べるのだから…」


 ミカは指を動かし、ナイフを操るかのような動作をする。

 ミカの指の動きに合わせるようにナイフが移動し、フェクトの魔力の膜を少しずつ切っていく。


「す…すごい…でもどうして…?」

「…ルキが使ってたあの念力のような魔力を少し真似てみただけ。…これくらいなら、あたしにもできる…!」

「な…なんダ…魔力が弱くなってイク…」


 フェクトを覆う魔力の膜は段々と切れていく。

 そして…


「辞め…ロ…辞め………!!」


 ――魔力の膜が消滅する…!



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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
も連載中!
是非こちらも御覧ください!
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