ep31.真の完璧
――スピアマウンテンでは…
「それにしても…ちょっと疑問に思う事があってさ…」
「どうした?」
「ホワイトやジン、シェールさんが向かった時は…魔力源がそもそも見当たらなかったんでしょ?」
「そうだな。実際この岩山には魔力が殆ど感じられない」
ジンが足踏みをする。
岩はただの岩であり、特に魔力の気配も感じられなかった。
「もしかしてさ…魔力の根源ってかなり地下深くにあるんじゃないかなって思えてきて」
「地下深く?」
「ネオカオスがこれだけ探しても見つからないのであれば恐らく地下深く…このスピアマウンテンの地下の奥深くって可能性も…」
ミカが山の岩を見つめる。
「なるほど。と言っても…この山は魔力のせいかどうかは知らないがとてつもなく硬い岩石でできている。強力なドリルですら破壊は不可能だ。かつてこのスピアマウンテンにトンネルを作ろうとして断念した奴がいるくらいだ」
「そう…なんだ」
「簡単な魔力はおろか、高出力の魔力ですら破壊は不可能。例えば…」
ロキが自己強化の魔力で自身を強化し、思いっきり岩石を蹴る。
「…!」
蹴った場所が土煙に覆われる。
だが岩石にはヒビすら入らなかった。
ロキが魔力を解く。
「こんな感じだ」
「…ほんとだ。ロキの魔力がダメなら…四人で協力してギリギリ行けるか行けないかくらい…か」
「そうだな。まぁ協力したとてトンネルを作ろうとしても数年はかかるだろう」
「となると…もしこの山に魔力の根源があったとしても…魔力の根源を得るのは厳しいのかしら?」
「そうなるな。俺達はネオカオスに見つからないようにスピアマウンテンを歩き続ければいい。手掛かりがあったら報告…ないなら何もなし。それだけだ」
「…そうね」
ミカがそういうと、ミカの通信機が鳴る。
「…あ、シェールさんのとこから連絡来てる」
ミカが通信機を使い始める。
シェールのホログラムがミカの通信機に現れる。
「はい、こちらミカ」
ミカがシェールと通信する。そして…
「…え、あ、そうですか。了解です」
ミカがすぐ通信機を切る。
「どうだったって?」
「…あっちには無いみたい。一応ちょっと掘って探索とかはしてるみたいだけど」
「そうか」
「後は…やっぱりと言うかネオカオスと鉢合わせたらしい」
「…そうか」
「そして、あっちの負傷者はゼロ。こっちも負傷者ゼロでやりたいね」
ミカの言葉にジンとロキが頷く。
そして、だんまりしていたミカがホワイトの方を見る。
「…ホワイト?さっきからどうしたの?」
ホワイトはずっと下を向いていた。
「え…?えっと…その…」
「もしかして、ちょっと不安?」
「ちょっと不安だけど…いや、何でもない」
ホワイトが首を振る。
「そう?ならいいけど」
「…そういえばホワイト。ブラックさんはあの後…どうなったんだ?」
ロキが聞く。
「あ…え…お兄ちゃんの事?」
「そういえば、あたしも気になってた。ラッシュ師団の基地爆破の一件から…特に何も音沙汰がない気がする」
「そういえば…お父さんを見つけたらすぐ基地に帰ってくるって言ってたし…あ…でも前の基地は…」
「…そうね。そうなると…今は本当にどこにいるか分からない状況ね」
「そう…かも。ごめん」
ホワイトが頭を下げる。
「まぁ…あの時ジハを一瞬で仕留めれる所まで追い詰めたあの人の事だし…きっと大丈夫だとは思うが…」
「…!」
ミカが空を見上げていると、ミカが何かを見つける。
「あの黒丸…」
ミカは空中に何か浮いている物を見つける。
ミカの言う通り、黒丸が浮かんでいた。
そして…
「…何かの…いや…これは…!」
浮いている物はこちらに向かって来ていた。
「皆…伏せて…!」
「え?」
「早く…!」
ミカの言う通り、三人が身を伏せる。
「一体何を言って…――」
ジンが言葉を続けようとすると、魔力の弾が何個か此方に降り注いでくる。
「ぐっ…!」
四人には直撃しなかったが、当たりが爆発し揺れる。
「っ…遠隔から攻撃されてる…!?」
「…あれ、当たらなかったか」
「…!」
ジンが空を見上げると、そこには黒いローブを着た少年が浮いていた。
少年が紫色の目でジンを笑いながら睨む。
「その声…その服…お前…」
「…見つけたよ、ジン」
「"完璧のフェクト"…!」
ジンがフェクトに銃を向ける。
「完璧?馬鹿にしないでくれ。僕はもう完璧なんかじゃない。その上の完璧…"真の完璧のフェクト"だ」
フェクトが両手に魔力を込める。
「ジン君…アレが…ネオカオス四天王の…完璧のフェクト…?」
「あぁ、あいつがそうだ。だけど…服の色が変わってる。それに…あの頃と違って魔力の気配がけた違いだ…」
「っ…となると…結局戦闘は避けられないみたいね…」
ミカが銃剣を構える。
ロキもフェクトに銃を向ける。
「ジン、久々だね。君が大切な物を見つけたように、僕も大切な物を見つけたよ」
「…そうか、そいつは大した事だな」
ジンがフェクトの魔力の弾でひび割れた岩石を見る。
「…で、その大切な物ってのがその魔力って訳か…?そして…その魔力で再び人々を傷付ける…そういう事なのか…?」
「傷付ける?僕が頑張る事でジハ様が喜ぶんだ。君らは…ジハ様を脅かす悪い奴等だ。傷付いて当然だよ」
「っ…やっぱりネオカオス…改心は不可能か…」
ジンが銃を投げ捨てる。
そして右手に炎の魔力を込める。
「今回はお揃いなんだね。ジン以外に男が一人と…女の子二人…凄く殺し甲斐がありそうだ…!」
フェクトがそういうと、右手から魔力の弾をジン目掛けて放つ。
「っ…!」
ジンが魔力弾を避ける。
「ジン君…!」
「俺の心配をするな…それより…来るぞ…!」
「えっ…?」
フェクトは次々と魔力の弾を飛ばし、他の三人に向けても攻撃を始める。
「っ…!」
「一人ずつ潰すのも面倒だ、纏めて消してあげるよ」
フェクトが攻撃を続ける。
「っ…空中に浮いてる状態から攻撃され続けられたら…いくら何でも持たない…なんとか引き摺り下ろさないと…」
「なら、俺に良い考えがある」
ロキがそう言うと、地上を走り始める。
「ん…?」
フェクトがロキの方を見下ろす。フェクトは魔力弾をロキに連続で放つ。
ロキは魔力弾をかわし、自己強化の魔力を使用する。
そして力を入れて飛び上がり…
「…!」
フェクトの目の前に大きく飛び上がる。
「…落ちろ――」
ロキは右手でフェクトを殴りかかろうとする。
「…落ちないよ」
フェクトは魔力が込められた左手でロキの右手を掴み、攻撃をガードする。
「っ…!」
「僕は…完璧なんだ」
フェクトは左手を使い、ロキを振り落とす。
「ぐっ…!」
ロキは地に着くギリギリで受け身を取る。
「っ…あぶねぇ…」
「ロキ君…!」
ホワイトがすぐさまロキの傍に寄る。
「あの高度…頭から行ってたら…死んでた…」
ロキがフェクトを見上げる。
「…あの野郎…遠距離タイプかと思ったら近距離への迎撃手段も持っていた…」
「っ…そんな…」
「あの様子じゃ…上から降りずに一生攻撃し続けるつもりだ…」
「…強くなったな、フェクト」
ジンが呟く。ジンが浮いているフェクトに銃を向ける。
「強くなったさ。いや…ならざるを得なかったんだ」
フェクトは両手に魔力を込め始める。
「僕はさ…ずっと迷ってたんだよ。ジンが言う大切な物が何かを。でも、あの後ジハ様に会って…大切な物を知った。いや、教えて貰った」
「…!あの後…ジハに会ったのか…!」
「あぁそうだよ。ジハ様は僕の事を褒めてくれた。ジンに恥をかかされた後で落ち込んでた僕を褒めてくれた。勝てなくてもいい、よく足止めをしてくれた…って」
「っ…」
「そして…ジハ様から魔力を頂いた。この力で僕は君らを倒せる力を得た」
「…ジハの魔力を直々に…」
「だから、今度は勝つよ。そして君達を殺してみせる」
フェクトがそう言うと、再び魔力弾を複数放つ。
「っ…どうするの…ジン…!」
「…このままじゃジリ貧だ。あいつをまずは地に落とすなりして戦いやすくしないといけない…だがロキの魔力で太刀打ちできないとなると…厳しい」
「じゃあどうすれば…!」
「今それを考えてる…!」
ジンがそう言うと、魔力弾が四人の元に降ってくる。
「っ…避けるしか…」
四人は走って魔力弾を避ける。
「っ…」
「四人纏めて…潰してやる…!」
「っ…団長やシェールさんに報告を…」
「おっと…それもさせないよ」
フェクトは両手に魔力を込めた後、当たりに電気を飛ばす。
「っ…!」
ミカが使おうとした通信機から雑音が鳴り響く。
フェクトは電波妨害をする電磁波を辺りに撒いていた。
「あたり一面に通信を妨害するような電磁波を撒いた。君達が連絡をする事も、外から連絡が来る事もできない…!」
「っ…なんて奴…」
「さてと、このまま逃げ続けれるかい?体力切れでいつかは当たっちゃうよ?」
フェクトは再び魔力弾を複数放つ。
「うぐっ…!」
ホワイト以外の三人はかわす。
だが…ホワイトに魔力弾が直撃する。
「っ…!ホワイト…!」
「うっ…だ…大丈夫…でも…」
ホワイトは腕から血が出ていた。
「っ…魔力で止血を…!」
「うっ…うん…」
ホワイトは回復魔法で自分の出血した腕を止血する。
「ジン…このままじゃ本当に四人ともやられる…どうすれば…」
「…近距離もダメなら…いっそこっちも遠距離で…だがあの距離で俺等の銃弾が当たるか…?」
「当たらなくはないだろうけど…でもかなり厳しいはず」
「…一人ずつがダメなら…こうしよう」
ロキが提案し始める。
「ジンとミカで奴に向かって銃を撃て。ホワイトは俺やお前自身の回復に徹してくれ。俺があいつを…撃ち落とす」
「なっ…さっきあいつに近距離すら効かない事が分かっただろ!?このままじゃ逆にロキが死んじまう…」
「…さっきのは俺一人であいつを撃ち落とそうとしたから失敗しただけだ。…お前達で援護してくれれば、行ける」
ロキがフェクトを見上げる。
「っ…」
「…これが無理だったら次を考えればいい。その間に…死んでるかもしれないがな…!」
ロキはそういうと、自己強化の魔力を使用する。
「…やるしかないか」
「負けないためには、やるしかない…か」
ジンが銃、ミカが銃剣を構える。
「ホワイト…!」
「…分かってる…!」
ホワイトが回復魔法を準備する。
「…行くぞ…!」
ロキは力を入れて再び飛び上がる。
「…また来たね。それは通じないってさっき学ばなかったの?」
フェクトは再び両手に魔力を込めて迎撃の準備をしていた。
「今だ…二人とも!」
「っ…!」
ジンとミカがフェクトの方目掛けて撃つ。
「ふん…魔力を込めた火炎弾…くらえ…!」
「っ…!」
フェクトはジンが撃った火炎弾をかわす。
「小賢し…」
フェクトが言葉を続けようとすると、ミカの撃った銃弾がフェクトの頬を掠める。
「っ…あぶな…」
「…こっちはがら空きか?」
ロキは右手でフェクトに殴りかかろうとする。
「…!」
フェクトは咄嗟に左手でロキの右手を掴む。
「っ…ヤバい…魔力の集中ができてない…」
フェクトは段々と押され、少しずつ地に近付く。
「ここまで来たからには…倒す…!」
フェクトはロキに押され続け、遂に地面が触れそうになる。
「どいつもこいつも…僕の邪魔をしやがって…!」
フェクトとロキは思いっきり地に着く。
辺りに砂ぼこりが舞う。
「ロキ…!」
「ロキ君…!」
ロキはフェクトの左腕を抑え込んでいた。
「っ…離せ…!」
フェクトは右手に魔力を込める。
「…そいつは禁止だ」
ロキは左手に銃を持ち、フェクトの額に銃を突きつける。
「っ…!」
「…チェックメイトだ」
フェクトは右手に魔力を込めるのを辞める。
ロキが勝利を確信する。
「…ここまで…か」
「このまま死ぬか、もう二度とラッシュ師団に歯向かわないって決めてどっかに去るか、決め…」
「ロキ…!慢心するな…!そいつはまだ…!」
「…あ?」
ロキが疑問に思い始めると、フェクトは突如ロキの目の前から消える。
「…!消えた…!?」
そして…気付いたらロキの腹にフェクトは殴りかかっていた。
「がはっ…!」
魔力を込めた一撃の衝撃でロキは吐血する。
「っ…!まさか…」
「…瞬間移動拳」
ロキは吹っ飛び、倒れる。
「ロキ君…!」
「がっ…クソッ…」
「奴はテレポートも使える…あいつの魔力を封じ切らないと勝ちを確信できない…!」
「…ジン以外は僕の事、無知で助かったよ。そして…ただのテレポートじゃないよ。テレポートをしてからすぐさま攻撃に移せば…移動する力が加わって威力が倍増する…。今のはその一部、瞬間移動拳」
「…いつの間にそんな技までも…」
「真の完璧になるには、これくらい取得しなきゃね。そして更に…」
フェクトは再びテレポートで姿を消す。
そして、ジンの真後ろに現れる。
「っ…!」
「この距離…避けれる?」
フェクトは右手に魔力を込め、魔力弾をジンに向かって放つ。
「ぐおっ…!」
ジンに魔力弾が直撃する。
「っ…!ジン君…!!」
ジンは吹っ飛び、その場に倒れる。
ジンがボロボロになって横たわる。
「…瞬間移動魔力弾」
「っ…ロキのみならずジンまでも…」
ミカが銃を構える。
「さてと…」
フェクトは再びテレポートをし、今度はミカに近付く。
「っ…!」
ミカは咄嗟に反応し、銃剣を振るう。
「その銃…剣にもなるんだ」
フェクトはミカの攻撃を避ける。
「…あたし特製の武器よ。…これくらいできて当然」
「そっか。その武器…欲しいね」
フェクトはそう言うと、左手に魔力を使って冷やし始め、その手でミカの武器を掴もうとする。
「っ…!」
フェクトはミカの武器を掴み、瞬時に凍らせる。
「…これだったら、もう使えないよね?」
「っ…」
フェクトはミカから凍らせた武器を奪い取る。
「そしてこうやって…」
フェクトは右手に魔力を使って火を作り、氷を溶かし始める。
「…これで僕の物だ」
フェクトはミカに向けて銃剣を構える。
「僕ならこれを綺麗に扱える。君には向いてないよ」
「…そっか」
ミカはそう言うと、魔力で銃剣を作り出す。
「おっと…何もない所から武器を…」
「…完璧のフェクトと言ったわね」
「…違う、真の完璧のフェクトだ。真を忘れるな」
「…じゃあ、真の完璧のフェクト…あなたが真の完璧なら…」
ミカが銃剣を振る。
「あたしは極みよ」
――ミカの近くで風が起こる。
まるでミカの魔力が溢れ出ているかのように風が吹く。
後書き~世界観とキャラの設定~
『真の完璧』
…フェクトが叡智を得た先に見出した完璧の答え…らしい。
瞬間移動をして、それに攻撃を乗算させる事で瞬間移動魔力弾と言った単純かつ強力な技が使えるようになっている。
現段階ではホワイト達一行を平らげれる程の力を持っているが…




