ep30.三手の混沌
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――時は少し遡り、メタリーが行動を始めた時間…
「…メタリー様、御報告が」
「はい」
メタリーの元にネオカオスの下っ端が報告しに来る。
「フェクト様を見つけました」
「あら、早い。どこにいたの?」
「いえ、それが…見つけた頃にはすぐにその場を去ってしまいまして…」
「…どういう事?」
メタリーが疑問に思う。
「…フェクト様には説得がいらないご様子でした…。まるで…獲物を見つけたかのように鋭い眼光を…」
「…なるほどね」
メタリーが自身の髪を触る。
「ひとつは無駄足だったって訳か、了解」
「…それと、もうひとつ報告が」
「ん、何?」
「…ブラックの方も発見しました」
メタリーが目付きを変える。
「お。案内してくれる?」
「…はい、ただいま」
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――ホワイトは夢を見ていた。
「…あれ」
ホワイトは真っ白空間の上に立たされていた。
「…ここは…」
ホワイトが辺りを見回すと、癒しの神がそこに立っていた。
「…!癒しの…神様!」
「久しぶりですね、ホワイト」
癒しの神はホワイトに近付く。
「…と、なると…ここは脳内世界…?」
「…その後、私の魔力についてはどうですか?」
「え?えっと…」
ホワイトは考え始める。
「あの後ジンという者に何度か使用しましたね?」
「あぁ…そうです。ジン君が死にかけた時と…一緒に宿に泊まった時と…ネオカオス研究所の件の後…」
ホワイトがそう言うと、癒しの神が少し微笑んだかのような顔をする。
「ここ数回での使用で、身体の負担も小さくなってきた頃でしょう。あなたの身体が徐々に私の魔力に適応していっているのです」
「なるほど。と言ってもここ数日間は鍛錬に集中してたせいで使って無かったかも…」
ホワイトが指を手に当てて考え始める。
「そういえば…夢にも出てくるんですね、癒しの神様」
「えぇ、夢は脳内世界と一緒ですから」
「…でも久々に出てきたって事は、何か言いたい事があるって事…ですよね?」
ホワイトが首を傾げる。
何もないのに癒しの神が夢の中に出てくる訳がない、ホワイトはそう考えていた。
「お察しの通り。あなた達やあなた達に相反する存在が求めている物…『魔力の根源』について」
「…!」
ホワイトが目を光らせる。
「場所は…かつて災いが起きた場所…」
「かつて…となると、お母さんの…」
ハンバ荒野…そこに魔力の根源があるとホワイトがあると考えていた。
「いえ、そことは違います」
「…え?」
ホワイトが首を傾げる。
「そことは違うって…まさか…森林…?」
「…いいえ」
「…!まさか…」
そう…ハンバ荒野もウィッシュ森林も違うとなると、残るはスピアマウンテン…ホワイト達が行く予定の場所だった。
「別名槍の山。槍のように魔力の柱が出ていたことがあった故にそう呼ばれた場所…」
「え…でも…魔力の柱が出たことが災いと呼ぶには少し弱いような…」
「…これ以上はあなた達は知らないかつての世界の話になります。今はまだ語る時ではない…」
癒しの神はそう言うとその場を去ろうとする。
「…!待って…あの時の話の続き…まだ終わってない…!」
ホワイトは癒しの神の腕を掴もうとする。
「私の魔力は…一体なんなの…?」
「あなたの魔力は、あなたの父親譲りの物」
「そんなの分かってる…そういうことを言ってるんじゃない…!」
「…そしてもう一つ、母親からも授かった物」
「…え…?」
ホワイトが疑問を持つ。
「その時が来た時…あなたは知るでしょう。あなたが何者か…」
「待っ…」
ホワイトが癒しの神を追おうとするが…
ホワイトの夢の世界はここで消え去る。
――翌日朝…
「…いつもと違う魔力の気配」
ミカは基地の外で魔力の気配を感じていた。
スピアマウンテンの方から魔力の気配が漂っていた。
「大丈夫な可能性が高い場所に行くはずなのに…今日は…何か嫌な予感がする」
ミカがそう言うと、ジンとロキがミカの元へやってくる。
「…よ、ミカ」
「…戦闘狂組。あれ、ホワイトは?」
「ホワイト…?一緒じゃなかったのか?」
「見てないわよ。まだ寝てるんじゃないかしら?」
「いや、部屋にはいなかった」
「修行室かしら。ちょっと見てく…」
ミカが言い終わる前にホワイトが三人の元へ走ってやってくる。
「はぁ…はぁ…皆…」
ホワイトが息切れする。
「…!ホワイト…どうしたの…?」
「…ごめん、ちょっと考え事してて…遅れた…」
「ん、そっか。まぁ遂に魔力の根源とご対面…する可能性がある場所に行く訳だから深く考えるのも分かるよ」
「…う、うん。そう…だね」
ホワイトが苦笑いする。
ホワイトは皆に対してスピアマウンテンに魔力の根源があるとは言えなかった。
「今の所ネオカオスをスピアマウンテンの方角に見かけたって情報はないし、確認してすぐ帰る…それだけの事をすればいいだけよ」
「…そうだね」
「と言っても、スピアマウンテンは広いからなぁ…山頂に行く事にもなりそう…かな」
ミカが通信機で地図を確認する。
「他の山と違って別に特段空気が薄いとかそういう訳ではないし標高も大した事はない…けど、何せゴツゴツしてる岩山な訳だし身体的に疲れてしまいそうだわ」
「ミカの割には弱気だな」
「ちょっとね。山にはなんか分からないけどあまりいい思い出がなくてさ…」
ミカがため息をつく。
そして…ホワイトが話し始める。
「そ…そうだ…!三人共…スピアマウンテンってさ…過去に何か事件…みたいなの起こった事ある…?」
「過去に?」
「そう…例えば…災いが…とか」
過去にスピアマウンテンに起こった事件や災いがあれば、魔力の根源があるという説明もつく、そうホワイトは考えていた。
「いや、俺は知らないな。強いて言うなら魔力の柱が立った事くらいだが、あれを災いと言うには弱い気もするな。本当に柱が立っただけでその周辺にいる動植物がどうなったとかは特になく、被害は殆どなし。あの後も特に何も起こらなかった訳だし」
「俺もないな。ネオカオスに当たるのが災いみたいなものだし…」
「…あたしも、心当たりはないかな」
「そ…そっか…」
三人の意見を聞き、ホワイトが残念そうな顔をする。
「…色々調べる価値…あるかも」
ホワイトが小声で呟く。
「立ち話もなんだし、そろそろ向かう?」
「そうだな。…それにしても、四人でちゃんと行動するのは実は初めてだったりするか?」
「そう…かも。いつも誰か欠けてた気がする」
「大体俺だな」
ロキが自分を指指す。
「まぁ前の基地ではあたし達三人は一緒だった訳だしそうなるのも仕方ない気はするわ。新しい基地は四人一緒だけど」
「そうだな」
ジンがそう言うと、ミカが銃剣を取り出す。
ミカが銃剣の銃弾を確認する。
「本題に入るわ。歩きながらでもいいけれど…ネオカオスと鉢合わせる事も考えて、武器の手入れはちゃんとね。最悪…殺しと言う手段も取らないといけないわ」
ミカが先陣を切って歩き始める。
「武器の手入れねぇ。まぁ、俺の銃はミカが作ったから信用なるな」
「俺も一緒だ。その点安心できる」
「…私も。この銃を、麻酔銃として使えるように作ってるの、本当にいいなって思う」
「…そう」
ミカは三人の方には振り向かずに言う。
「…行こっか」
「おう」
四人はスピアマウンテンの方角へ歩き始める。
――ウィッシュ森林にて…
「ネオカオス…!」
「げっ…ラッシュ師団…何故ここに…」
シェールとラッシュ師団の団員がネオカオスの複数の下っ端と対峙する。
「あなた達の研究所のデータからここに魔力の根源の手掛かりがあると分かったわ」
「チッ…どうする…?魔力の根源はすぐそこかもしれないってのに…」
「皆、ネオカオスの団員を捕らえて…!」
「了解…!」
シェールの命令に従い、ラッシュ師団の団員が銃を撃ち、網を出す。
網はネオカオスの下っ端を一人ずつ捕らえる。
「ぐっ…!なんだこれ…網…!?こんな網…」
「魔力で作った網の銃…そんなすぐに抜けれる訳ないわ」
シェールが網に捕らわれている下っ端に銃を向ける。
「っ…てめぇ…殺す気か…!?」
「大丈夫、騒いでなければ撃たないから安心して」
「っ…」
シェールが微笑みながら下っ端に銃を向ける。
シェールが周囲を確認する。
「皆、分散して魔力の根源を探して!ネオカオスは極力殺さず、網で捕らえて…!」
「了解!」
団員がそれぞれ散らばって魔力の根源を探し始める。
シェールが辺りの魔力の気配を感じ取る。
「…ここの魔力の気配…確かに強いけれど少し違う気もする」
「シェールさん、強い魔力反応こちらにありです!」
「ありがとう。すぐ行くわ」
シェールが団員の方へ走り出す。
団員が地面を指指す。
「ここです」
「…確かに。他の場所とは違う気配…」
シェールが土を触る。
「シェールさん、もしかしてここが…魔力の…」
「…根源じゃない」
「…なんですと?」
「確かに小石ひとつひとつに魔力は感じられる…けど、魔力が弱すぎるわ。そもそもこの場所に本当に根源があったら…ウィッシュ城下町が今まで数百年も安泰だった理由が分からないわ。ここでいつか暴走が起きて城下町は終わり…でも、終わった経歴はない。つまり…」
「…ウィッシュ森林はそもそも候補ですらなかったと」
「無駄足…かぁ」
シェールがその場に座り込む。
「でもまぁ…ここの魔力は根源にはならないにしろ、研究する価値はちゃんとある場所だったわね。…敵ながらお見事だわ、ネオカオス」
「団長に報告を?」
「そうね、宜しくお願いするわ」
「了解」
団員は通信機を使い、ランスへ連絡する。
「となると…ホワイトちゃんのお母さんが亡くなったという噂のハンバ荒野でほぼ確定…か」
――ハンバ荒野にて…
「ネオカオス、やはりここに来たか」
「その言葉、そっくりそのままお返ししよう。ラッシュ師団、やはりここに来たか」
ネオカオスとラッシュ師団が対面している。
ラッシュ師団側にはランス含む数人の団員がいたが、ネオカオス側にジハはいなかった。
「頭はどこ行った?ここが一番魔力の根源がある場所として疑わしい場所だろう?」
「ジハ様の事か。あの方は忙しいのでな。他の者とは距離を置かせて頂いているのだよ」
「ほう。そうなれば…雑魚に等しいな。全員捕らえろ!」
「そう上手くいくとでも?」
ラッシュ師団の団員は銃を撃ち、網を出す。
網はネオカオスの下っ端を一人ずつ捕らえる。
「…捕まえた」
「この網…魔力で強化された網か。確かにこれだと雑魚じゃ終わりだ。だがな…」
ネオカオスの下っ端は網を銃剣を使って切る。
「…!」
「我等ジハ様直々の部下。ウィッシュ森林やスピアマウンテンに向かった各部下達とは一味違うのだよ」
「…なるほど、これは厳しい戦いになりそうだ」
ランスがネオカオスの下っ端を睨み付ける。
「団長、奴等の方にメタリーの顔は見えましたか?」
「…いや、いないな。この魔力反応…確かに他のネオカオスの下っ端とは一味違うが…メタリーの魔力は感じられなかった。恐らくだがフェクトという奴もこっちには来てないだろう」
「となると…ウィッシュ森林かスピアマウンテンのどっちかにいるか、或いは何処かで待機してるか…」
「なら俺の魔力を使用しよう。こいつらはすぐに片付けないといけない」
ランスが前に出る。
「え…でも…団長の手を汚す訳には…」
「まぁ、見てろ」
ランスがそう言うと、魔力を使って右手に槍を作り始める。
「ジハとの決戦の前に、久々にこの武器を使いたい」
「…!その魔力…その武器…」
「…あの時は救えなかったが、今度は皆を救うために…この槍を振るおう」
ランスが槍を構える。
「皆、俺に続け!」
ランスが走り出す。
「了解!」
団員も続けて走り出す。
「…団長が前線を張るとは愚かな…総員、ランスを含むラッシュ師団全員を殺せ!」
「御意!」
ネオカオスの下っ端が銃剣を構える。
「…さて、どっちが勝つかな」
――ハンバ荒野にて…ネオカオスとラッシュ師団の戦いが始まろうとしていた。




