ep28.白の決断
「ミカ…!ミカ…!」
ホワイトは少ない魔力で血だらけのミカを救おうとしていた。
「…私だけじゃダメだ…そうだ…ランスさんに連絡を…」
ホワイトが通信機を使ってランスに連絡する。
ランスのホログラムがホワイトの通信機に現れる。
「ようホワイト。任務の方は…」
「ランスさん…!ネオカオス研究所の近くに…すぐ来てください…回復ができる人を…できるだけ多く…!」
「…どうした?何があった…?」
「ミカが…!!」
「…!」
ホワイトの言葉にランスが驚いた表情をする。
「…すぐ向かう。待ってくれ」
ランスがそう言うと、通信が切断される。
「っ…ミカ…!」
ホワイトは魔力切れの中、息のないミカをただ見る事しかできなかった。
――数分後…ホワイト達の元にランスを含むラッシュ師団の団員が何人か集まった。
回復魔法が使える団員がホワイト、ジン、ミカの傷に応急処置を施した。
倉庫跡でランス含む団員が倉庫跡を漁っていた。
頭や腕などに包帯を巻いたホワイトがランスに近付く。
「…ランス…さん…」
ランスに話しかけるホワイト。
「ジンは大丈夫だ。お前より傷は深いが…それでも後遺症とかはなく、気を失ってただけだ。少しすれば大丈夫だろう」
「そっか…良かった…」
ホワイトが安堵する。
「ミカの方だが…こっちは重傷になってる。背中から大量出血…火傷の跡も見られた。あの爆発をもろに喰らったのだろう…」
「っ…ミカは…ミカは大丈夫…なんですか…」
「生きてはいる、大丈夫だ。ただ、今のラッシュ師団の魔力ではすぐにミカを戦闘に戻すのは不可能だ。暫くは基地で安静にさせなければならない…」
「そんな…」
ホワイトは自分の弱さに怒りを持っていた。
自分のせいで…ミカを重傷にさせてしまった。自分のせいで…
「…恐らくだが、ミカはお前やジンを庇ったのだろう」
「え…」
ホワイトがランスの言葉に疑問を持つ。
「ホワイトやジンは全体的に傷を負ってたが…ミカの場合は背中が主なダメージだ。…お前達が爆発に巻き込まれる直前にミカが後ろに移動し二人を庇った…これで説明がつくか?」
「っ…!」
ミカは爆発から逃げていた時…ホワイトやジンが致命傷を負わないように二人の背後に立ち、代わりに爆発を受けていたのだった。
「でも…だからってミカが私やジン君を庇った理由が…――」
「そこまでは俺も知らない、俺はエスパーじゃないからな」
「っ…」
ランスの言葉にホワイトが落ち込んだのか、目線を下げる。
「それと、こっちで休んでたロキの方だが」
「…!ロキ君は…」
「明日には復帰できるだろう。お前の魔力のおかげだ」
「っ…良かっ…た…」
ホワイトが再び安堵する。
「お前の傷の方もひとまずは大丈夫だ。後遺症の心配もないし、身体中の出血は収まっている。傷口もちゃんと塞がっている。…ただ、万全とは言えないから魔力が戻ったら、自分に回復魔法をかけるのを忘れずにな?」
「…はい」
ホワイトが自身の包帯に手を触れる。
ホワイトの身体中にはまだ痛みが残っていた。
ホワイトはわずかに残った魔力で自身の傷をゆっくりと回復させる。
「応急処置が終わった今、見て分かる通り団員総出で研究所跡地を調査している」
「…そう…ですか」
「でも…まさか奴等が研究所を爆破という選択を取るとはな…研究所跡地を調べて何か分かったらお前にも教える。…今回は本当によくやってくれた」
「…はい」
「…それと、直接言えてなかったが…おかえり。お前が生き返ったのは未だ信じられんが…本当に良かった」
「…ただいまです」
ホワイトは表情を変えずに話す。
ランスは喜んでいたが、ホワイトは同じように喜べなかった。
自分が生き返っても、自分のために誰かが辛い思いをするのはホワイトにとってとても辛いものだった。
「とりあえず、後は団員に任せる。俺達は先に基地に戻るぞ。お前も着いてこい」
「…はい」
ホワイトがランスに着いていく。
「…ランスさん」
「どうした?」
「…ネオカオス四天王の一人…暗殺のルキはこう言ってました…私が死んだ所で現状は殆ど変わらないって事…この場所がネオカオスにとって、第二でしかないって事…」
「第二でしかない…か」
「私の予想…ですけど、ネオカオスは第一の本拠地を既に持ってるのかなって…」
「なるほどな。そこについても探る必要がありそうだ」
ランスがそう言うと、ホワイトがランスの目を見つめる。
「…また、誰かを向かわせるんですか」
ホワイトはまた誰かを向かわせて、誰かが危険な目に合うかもしれない事が怖かった。
「向かわせたい。…と言いたいが、今の俺達にはネオカオス四天王に抗う力は弱いと見た。俺達が協力しないと倒せなかった殺戮のデスト…ホワイトやジン、ミカの力がなければ倒せなかった暗殺のルキ…これと並ぶかそれ以上の強さを持つと思われる二人がまだ残っている。そのためにはもっと力を付けなければならない」
「…そう…ですね」
ランスの言う通り、ネオカオス四天王はデストやルキを倒してもまだ二人残っている。
そして、ホワイト達が束になっても重傷を負ったりするほどのネオカオス四天王の実力を見るに、ラッシュ師団側の力はあまりにも弱かった。
「ひとまずは誰も危なくならない範囲で奴等の本拠地を探らせる事にする。暫くは団員全員で大きな戦闘を避けるつもりだ。ホワイトは…その間に少しでも実力を鍛えてて欲しい」
「…私も…ですか」
「お前の魔力は基本的に誰とも相性が良いが、中でもジンやミカ、ロキと相性が良い。年齢が同じで話が通じやすいってのもあるだろうが、何より接近戦を得意とする奴等が多い。それを援護する形で今後も活かせるだろう。…回復魔法を持つ団員も今や戦闘に巻き込まれる時期だ。仲間を守り続けられるようにするために、自分を守る力も必要だ。そのために…ホワイト、強くなれ」
ランスの言葉にホワイトが決心する。
「…分かりました。私…頑張ります…!」
「おう」
ランスがホワイトの目を見て少しだけ微笑む。
「でも…私も、前線で戦えるくらい強くなれればいいのにな…」
ホワイトが小さな声で呟く。
――基地に戻る団員達。
ホワイトはすぐさまジンのいる病室に向かった。
「よ、ホワイト」
「…ジン君」
ジンは病室のベッドで寝転がっていた。
ホワイトが来た瞬間に起き上がっていた。
「…もう…大丈夫なの…?」
「あぁ。つってもまだ万全じゃねえ。身体中凄く痛いし、暫くは様子見だ。ホワイトは大丈夫か?」
「あっ…うん。私は…自分で完治しきれるくらいには治ったよ」
「そうか。流石ホワイトの魔力だな」
ジンがホワイトの方を見て微笑む。
ジンがホワイトについている包帯を見る。
「そうだ、ミカなら隣の病室だ。…あいつも今は目を覚ましてるはずだ」
「…そっか」
ホワイトがそう言うと、ジンの唇に自身の唇を当てる。
「…!」
「…これで、早く治して欲しい…」
ホワイトは自分に秘められた女神族由来の謎の魔力がジンを救えると信じて、唇を当てていた。
「…お…おう…誰かに見られてないからいいけど…急でビックリしたぞ…」
「あっ…えっ…と…ごめん…」
ホワイトが顔を赤くする。
「いや、大丈夫だが…あんまり深く考えすぎるなよ?」
「…うん。大丈夫」
ホワイトがそう言うと、ジンのいる病室を後にした。
ホワイトがミカのいる病室に入る。
「…ミカ」
「………」
ミカは包帯で身体の多くの場所を覆っていた。
ミカが窓の方をじっと見つめる。
「…ミカ?」
「あ、ホワイト」
ホワイトの方を向くミカ。
ミカは少し微笑む。
「…ホワイト、怪我の方は大丈夫?」
「っ…」
ミカが首を傾げる。
ミカの言葉を聞いて、ホワイトが涙を流す。
「…え…どうしたの…?」
「…どうして…自分の心配より…私の心配をするの…?」
ホワイトの目から更に涙が流れる。
「え…えっと…ちょっと泣かないで…」
「うっ…うっ…ぐすっ…ジン君もミカも…優しすぎるよ…」
「あ…えっと…とりあえずさ…」
ミカがホワイトの頭を撫でる。
「…あなたが無事で良かったよ、ホワイト」
「っ…ミカは…ミカは大丈夫なの…?」
「大丈夫。だけど、ちょっと無理しすぎちゃったかな…殺戮のデストの時に深く刺された時といい…暗殺のルキの時の爆発に巻き込まれた時といい…色々あってあたしの身体結構危なかったみたい…だから暫くは休まなきゃいけないかも…」
「…そっか」
ホワイトがそう言うと、ミカに回復魔法をかける。
「ん、ありがと。少し楽になったかも」
「…早く元気になってね」
「勿論。できる限り早く復帰を目指すよ」
ミカがそう言うと、ホワイトの後ろからランスが現れる。
「ホワイト、ここにいたか」
「あっ…ランスさん」
「お前に先程の件やそれ以前の件と言い、色々聞きたい事がある。いいか?」
「あっ…分かりました」
「ミカとジンは御覧の通り元気だ。ミカの方は復帰に数日時間を要するが…ジンの方は明日にでも治るだろう」
「…本当ですか?」
「あぁ」
ランスがそう言うと、ホワイトは安心したかのような顔をする。
「立ち話もなんだし、団長室まで着いて来てくれるか?」
「…分かりました」
ランスとホワイトが団長室へ向かう。
「…団長」
二人の背中を眺めるミカ。
「…何を考えているのかしら…」
――団長室にて…
「さて、お前に聞きたい事は色々あるが…ネオカオス研究所については既に聞いた。お前が一度死んだ後の話について聞こう」
ランスが椅子に座る。
ホワイトがランスの机の前に立つ。
「えっと…何から話せば…」
「そうだな、生き返った理由とか。後は…生き返った際の代償とか」
ホワイトが少し迷ってから発言し始める。
「…生き返った理由はジン君が知ってます。彼が私に生きる道を再びくれました。私は分かりません…」
「そうか。じゃあそうだな…あの世という物は存在したか?」
「…あの世」
ホワイトは考え始めた。
そしてホワイトは脳内世界で癒しの神と会話したことを思い出す。
「あの世…と言えるかは分からないけど、私が死んでいる間…脳内の世界に行きました」
「…脳内の世界?」
「そこにいた神様が言ってました…」
「神様?」
「正確には…女神族です…そして、私には特別な力があるって言ってました」
「女神族…特別な力…ふむ?」
ランスが首を傾げる。
「何か、分かりましたか…?」
「…いや、何も」
「ですよね…」
ホワイトは少し落ち込んでいた。
「…これ以上は聞いてもよく分からないだろうな…生き返りについては今の魔力でもよく分からないんだが、まあこれは後からでもどうにでもなるだろう」
「そう…なんですかね…?」
「問題は…ネオカオスの暗殺のルキの実力…どうだった?」
「っ…」
ホワイトは少し思い出したくなかった。
暗殺のルキは自分が想像してたよりも強く、ミカやジンに自分が支えられていた事…
「…凄く、強かったです。…あの場に一人でも欠けていたら…間違いなく私達は全員死んでました」
「…そうか」
ホワイトが目線を下に向ける。
「さっきも言ってましたけど…四天王と言う事は後二人…いるって事ですよね…」
「そうなるな。ジンの話にもあった"完璧のフェクト"なる存在、そしてもう一人については…心当たりがある」
「…!本当ですか…!?その…名前は…」
「…"絶壁のメタリー"」
「絶壁の…でもどうして名前を…」
「なに、簡単な話だ。ネオカオスに立ち向かうためにラッシュ師団を立ち上げ、割と最初の時期に俺に歯向かった小娘だ」
絶壁のメタリー、それはかつてランスも戦ったとされるネオカオス四天王の一人。
ランスはネオカオス四天王について認知してた訳ではなかったが、過去に戦闘した件もありそう推測していた。
「そして…ジハの実の娘だ」
「…ジハの…娘…!?」
ホワイトが驚く。
「あぁ。奴がジハの事をパパと称していた。まあ親の代わりとして呼ぶなら誰でもできるが…あの片方の目の色と顔付き…間違いなかった。奴に似ていた」
「ジハに…娘が…」
「あいつは強かった。俺の銃裁きは何も通らず…当たったと思ったら弾かれた。あの時は意味が分からなかったな…あの魔力はまさに壁…絶壁だった。俺一人では間違いなく負けていただろう」
ランスが拳を握る。
「ランスさんでも勝てない相手を…どうすれば…?」
「あぁ。だからこそ…お前達にはもっと強くなってもらわないといけない。今の状態では残りのネオカオス四天王相手に返り討ちにあってしまうだろう」
「…強く…なれるかな…」
ホワイトが不安そうな顔をする。
「これからなればいい。だがネオカオス四天王が二人やられた事により向こうも焦るはずだ、暫くはネオカオスも下手な動きはできないはず。その間に此方は戦闘能力の強化を行う。特に回復が使える者もまともに戦えるようになるくらいには…強くならないといけない」
「なる…ほど…」
「明日からウィッシュ城下町を借りて鍛錬を行う事にした。宜しく頼むぞ」
「はい…!」
「俺が聞きたかったことは全部聞いたな。これで以上だ。今日はもう休め」
「…はい」
ホワイトが団長室から出ようとする。
「そうだ、ホワイト。最後に聞きたい事があった」
「…はい?」
「お前は、ネオカオスの件が終わったらどうしたい?」
「…え?」
ホワイトが首を傾げる。
「もしもの話だ。ネオカオスとの争いが終わり、ラッシュ師団としてやることが無くなった場合どうしたいか聞いておきたくてな」
「…それなら決めてます」
ホワイトにはネオカオスの件が全て終わった後のやりたい事が決まっていた。
「…生きてるかもしれないお父さんを探します」
「ソレイユさんのことか」
「…はい」
ホワイトがそう言うと、ランスは少し微笑む。
「ソレイユさんも、リュンヌさんも…お前みたいな娘を持って幸せだな」
「…え?」
「なんでもない。ネオカオスの件が終わったら終わったで団員それぞれやりたい事があるだろう。勿論許可する。その時が来てくれるように…鍛錬を頑張ってくれ」
「…はい」
ホワイトは今度こそ団長室から出る。
――全てが終わったら父親を探す…その決断をしながら。
後書き~世界観とキャラの設定~
『ミカの自然治癒』
…過酷な戦いを何度も生き延びている故か、自然治癒がかなり早い。
そのため、身体に危機が迫っていても応急処置さえ施されていれば数日経てば元通りになる。
デスト戦における腹の傷も現在は完全に無くなっている。




