ep23.仲間の合流
――一方…ホープシティの宿にて…
夜が明け、ホワイトが目を覚ます。
「ん…」
普段使わないベッドの上でホワイトは寝転がり、辺りを見回す。
「ここ…そうだ…確か…ここに来て…」
ホワイトが起き上がる。
だが部屋にはジンはいなかった。
「…ジン君…どこ…?」
ホワイトが普段の服を着て部屋を出る。
「…ジン君…!」
――ホワイトが宿を出る。
「…どこ行っちゃったんだろう…」
ホワイトが辺りを見回す。
「…!いた…」
ホワイトがジンを見つける。
ジンは女性の住民と話していた。
「あ…女の人と…喋ってる…」
少し妬くホワイト。
ジンはホワイトに気付く。
「…じゃ、俺はこれで。ありがとうございました」
ジンは女性に手を振る。
「ホワイト、おはよう。ぐっすり寝てたから起こすのもちょっとなって思って…」
「…ねぇ、今の女性…」
ホワイトが嫉妬したかのような顔をする。
「ん?あぁ…聞き込みだよ。通信機が使えないから…どうにかして基地に連絡を取りたかったんだ。…それで俺が悩んでいる時にあの人が話しかけてくれて…」
「…そっか。それで…どうだったの?」
「とりあえずラッシュ師団の皆が他に来てないか聞いたんだが…どうやら俺等以外には来てないみたいだ」
「そう…なんだ」
そして、ジンが自分の壊れた通信機をホワイトに見せる。
「で、通信機の方なんだが…御覧の通りルキに壊されちまってる。本当は直すのを頼みたいが…」
「通信機が使えないって…不便だね…」
「そうだな…何とかならないだろうか…」
「…基地に戻るとか?」
ホワイトが提案する。
だが、今の外に二人だけで行動するのは危険だった。
何せホワイトを一度殺し、ジンをも重傷に追い込んだ暗殺のルキがこの周辺にいるかもしれないのだから。
「それも考えたが、まずホワイトが生き返ったって情報を師団の皆は知らない可能性が高い。急に出てきたらビックリするだろう…。それに…昨日ルキと接触した以上周辺にあいつがいてもおかしくはないはずだ。あいつと外での接触は避けたい。だからひとまずは…大きな移動はせずこの街でネオカオスについての聞き込みをしていこう」
「でも、ルキは街まで入り込んで私を刺してきた…だから…」
ジンがホワイトの手を掴む。
「それに関しても俺といれば、ひとまずは大丈夫だ。ひとまずは俺から離れないでくれ…」
「…分かった」
ホワイトがジンの服を掴む。
「そういえばさ…ジン君…私、話してなかったことがあるんだけどさ…」
「ん?どうした?」
「…私が死んでる時…かな…夢みたいなものを見ててさ…」
「夢…みたいなもの?」
ジンが首を傾げる。
「…何もない世界で、癒しの神様とお話したの」
「…なんだそれ。話が見えてこない…」
「えっと…かくかくしかじかで…」
ホワイトは癒しの神と脳内世界で会話したことをジンに説明する。
癒しの神に脳内世界で会った事…自分は何れ生き返る運命にあった事…
「なるほど…」
「分かった…かな…?」
「不思議な事が逆に増えた」
「…だよね」
「死んだ人間に干渉できる能力を持ってたり、人の願いに呼応して魔力が発動して願いを叶える事ができる女神族…何者なんだ?」
「分からない…分からないけど、敵ではない気がする」
「そうだな。…さて、本題の聞き込みをしよう」
「あっ…うん」
ジンが歩き出す。
ホワイトがゆっくりジンに着いていく。
「…すいません、俺達ラッシュ師団というんですが…怪しい団体について…」
ジンは住民に話しかける。
――それから数分後…
「…はぁ」
ジンが近くのベンチに座り、ため息をつく。
ホワイトがジンの隣に座る。
「…ネオカオスの情報…ゼロだったね…」
「ここには来てないって事でいいんだろうか」
「そう…かも」
ジンとホワイトは数分聞き込みをしていたが、収穫はゼロだった。
ネオカオスの情報は何も得れなかった。
「…なぁ、ホワイト」
「なあに?」
「…その…今聞くのもアレなんだけどさ…お前の母さんについて…詳しく聞きたいと思ってさ」
「あ…えっと…」
ホワイトがジンの方から目を逸らす。
「…いや、ダメならいいんだ…その…悪かった」
「いや…大丈夫…だけど…正直変なお母さんだよ…」
「…変?」
ジンが疑問に思う。
「ホワイトも、ホワイトの兄さんも相当真面目な方じゃないか」
「あ…うん…どちらかというとそこはお父さん譲りだから…」
「変ってのが気になるな」
「えっと…お母さん、生きてた頃は…結構騒がしかったんだよね…」
「…騒がしい?」
「お母さんの右腕…闇と月の力を帯びてるんだよね」
「闇と月の…力?」
ジンが自身の右腕を見る。
右腕に闇と月の力…どういう感じなんだろうと。
「お母さんは人間ではあるんだけど…とある種族の一味でさ…その力のせいか知らないけど、いっつも騒がしい」
「腕も気になるが…その、騒がしいってなんだ?」
「簡単に言えば…うるさい」
「うるっ…」
ジンがホワイトの言葉に驚く。
うるさいという言葉をホワイトが言うなんてジンにとっては意外だった。
「けど、その騒がしさは…家族の支えだった。そして…優しかった。優しくて…強くて…家族の皆を守ってくれた。もうすぐ50歳になるのにまだ20歳くらいなんじゃないかって思うくらい若々しくて…」
「…そう…か」
「だから…ネオカオスに殺されたって聞いた時は嘘だと思ってた…ラッシュ師団に来て…お母さんの遺体を見た時…辛かった…あまりにも辛くて…吐いてしまった…」
ホワイトが涙を流す。
「お父さんも…お母さんと一緒にいたはずなのに…気付いたらいなくなっていた…もしかしたらお父さんもネオカオスに…」
「…父さんの方は…どんな人だったんだ…?」
「お父さんは、お母さんとは真反対で大人しい人だった。左腕も…太陽と光の力を模してた。そこもお母さんと反対だった…」
「…お父さんも、何かの一族だったのか」
「…うん。お父さんも凄く優しくて…母とは違った強さがあって…お父さんも…若々しかった…な…」
ホワイトが涙を零す。
「父さんの方は…まだ見つかってないんだったか…」
「…うん。それっぽい魔力も…どこに行っても全く感じない…もう死んじゃってるの…かも…」
「そんな事…!」
ジンがホワイトの両肩に両手を乗せる。
「っ…言い切る事はできないが…可能性はあるんだろ…?」
「ある…けど…2年間ずっとお父さんの魔力を感知できてないし…もう…」
ホワイトの身体が震えていた。
「…何処か知らない街で魔力を温存するために休んでいるって可能性もある…ネオカオスの件が全て済んだら…ラッシュ師団の大仕事も終わる。…その後に俺と一緒に、お前の父さんを探そう…!」
「っ……なんで…ジン君も…そんなに優しいの…?」
「…お前が…優しくしてくれたからだ…それに…俺はネオカオスの件が終わると…ラッシュ師団としてじゃなく、俺自身がやる事がない。だからせめて…お前の手伝いをさせてくれ」
「…あり…がとう…」
ホワイトが涙を流す。
「…まだ礼を言われるのは早い。…まずはネオカオスの奴等だ…奴等の野望を止める…そのためにも…――」
「…そのためにも…何?」
ジンの後ろから声がした。
「…!その声…」
「ミカ…!!」
「…久しぶり」
ジンとホワイトの後ろにはミカとロキがいた。
「ロキも…ってその傷…」
「ど…どうしたの…!?」
ロキのボロボロな姿に二人が驚く。
「ちょっと派手にな…右腕も右足も骨折しちまってさ…」
「大丈夫なのかよ…」
「ホワイト…会って早々悪いんだが…俺の回復をしてくれないか…?」
「…うん、分かった。骨折には…この魔法が効くはず…」
ホワイトはそう言うと、ロキの右腕と右足に回復の魔法をかけた。
「骨は折れてるけど…自然治癒を促進させて修復していけば大丈夫。明日には治るよ」
「助かる。…本当にホワイトなんだな?」
ロキがホワイトの目を見つめる。
「…本当に私だよ。ジン君が…生き返らせてくれた」
「…そうか。長くは言わない。…おかえり」
「…ただいま」
ホワイトとロキが話し合っているのを見るジンとミカ。
ジンが胸を押さえる。
「…なんか…心が痛い」
「なんでよ?」
「…それはそうと…ミカ、お前今まで何を…」
「そういえば…俺も聞いてなかった。何してたんだミカ?」
「え…え…私が一回死んじゃった後…何かあったの?」
三人がミカに疑問を向ける。
「っ………」
ミカが言葉を詰まらせる。
「…あたしは…あの女を地獄に送るまで…帰らないつもりだった」
「あの女…暗殺のルキの事か」
「ルキ…」
ミカが拳を強く握る。
「…あの女を殺す…そのためにネオカオスを探し続けた。下っ端ばかりだったけど…手掛かりはある程度掴めてた。…そして、あの女を殺して、あたしも死のうと思ってた」
「え…」
「ホワイト…アンタに謝る為に…」
「っ…」
「…ホワイトとあの世で会って…あの世でホワイトのお母さんも探して…それで…」
ミカがそう言うと、ホワイトはミカに抱き付く。
「ホワイト…?」
「…今こうして私は生き返ってるからアレだけど…ミカが自分で死んで私の元に来てたら…私は怒ってたかな」
「っ…」
ミカがホワイトの言葉に感化される。
ミカがホワイトの心臓の音を感じて…安心する。
「…私はあなたに謝られる事なんて望んでない。謝るくらいなら…感謝される方が嬉しい…かな」
「…そう…」
「だから…自分で死のうとなんて思わないで…」
「…分かった」
ミカはホワイトを強く抱き締める。
「ミカって力強いけど…ちょっと身長低いよね」
「…うるさい」
ミカが顔を赤くする。
「…さてと…四人集まった事だし…一旦ラッシュ師団の基地に戻りますか」
「あ、そうだ思い出した…ミカ、すまない…通信機…壊しちまった」
「…は?」
ジンの壊れた通信機をミカが見る。
「っ…すまない…本当に…」
「…いや、いいわよ。あの時の通信中に壊されたのは分かってるし。こんなのすぐに直せるわ」
ミカがジンの壊れた通信機を受け取る。
「…助かる」
「それと…ホワイトの通信機も持ってきたから、はい」
ミカがホワイトに通信機を手渡しする。
「あっ…ありがとう…!」
「…で…基地に戻るとして…どうするんだお前等?」
「どうする…って…何をだ…?」
「お前達…一応団長からしたら俺以外は問題児扱いだぞ?」
「問題児…」
「問題児…?」
ホワイトは生き返り…
ミカは自由時間を与えられる前に基地からいなくなり…
ジンは…ホワイトを生き返らせてしまった。
三人はまぎれもない問題児と化していた。
「っ…確かに…今の俺達には…基地に戻っても気まずい雰囲気が…」
「俺は一応、奴等の元の本拠地を漁るって仕事があって…奴等に攻撃されてこの状態になって…って感じだったが、お前等どういう顔で基地戻るつもりだ…?」
「う…うーん…」
「…ひとまず、団長に連絡…しようか」
ミカが自身の通信機を見る。
「…大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、ホワイトいるし」
「…え、私?」
ホワイトが疑問に思うと、ミカが通信機を使い始める。
「…それもそうだな」
「…あーもしもし?団長?聞こえる?」
「聞こえるぞ」
ミカの通信機からランスの顔がホログラムで現れる。
「…お前達、お揃いか」
「…よ、団長」
ジンが手を小さく振る。
「ジン…お前俺に連絡も寄越さず…何してた…?」
「…ホワイト生き返らせてた」
「そんなふざけて…って言いたいが…現に今、そっちにはホワイトがいるんだもんな…」
「…ランスさん、御迷惑をおかけしました…」
ホワイトが頭を下げる。
「…あぁ…お前が死んだ時は皆で悲しんでた…でも再び会えるなら会えるで俺は嬉しいよ…おかえり」
「…ただいまです」
ホワイトが頭を再び下げると、ロキが話し始める。
「…団長、色々情報があります。…ネオカオスの元本拠地でネオカオス四天王の一人、暗殺のルキに接触しました。…そして、俺以外の4人は…奴によって…」
「…そう…か…」
ランスが悔しそうな顔をする。
また仲間を死なせてしまった自分を心の中で責めていた。
「それと…ジハとも接触しました」
「ジハもか…それにそのロキの怪我…」
「…これもジハにやられた物です。今はホワイトのおかげで少しずつ治ってはいますが…奴はあの頃以上に…強くなってました。俺が魔力による強化をした後ですら…手も足も出なかった。前みたいに一筋縄ではいかないでしょう…」
「…そうか。そっちはそっちで対策を考えねばな…」
ランスが腕を組む。
「…それと、暗殺のルキがネオカオスの研究所らしきものの責任者に任されたって情報も」
「研究所」
「ただこれについては場所が特定できず…」
だがランスには研究所には心当たりがあった。
「それについては別の団員が怪しげな建物を見つけたという報告があってな」
「…!」
「研究所…かは断定できないが、怪しい人間が何度かその場所に入ってくのを見たという情報があった。恐らくネオカオスだろう」
「じゃあ、そこへ向かえば…」
「まぁ待て。そこについてはお前達ではなく別の団員に向かわせる。お前達は一旦基地へ戻って別で仕事を…」
「…いや、あたし達にやらせてください」
「…ミカ?」
ミカが拳を強く握る。
「…あたしは…あの女を殺し…いや、絶対捕まえる。捕まえて…全部吐かせる」
「今物騒な言葉が聞こえた気がするが?」
「…ちょっと前のあたしなら…間違いなく殺す選択を取ってた…けど、今ホワイトやジンと一緒なら…それも大丈夫です。…あたしは、あたしなりの復讐を果たしたい」
「私情か」
ランスが少し考え、再び話す。
「いいだろう、お前達に任せる。お前達の通信機に目撃のあった場所を送っておこう。そこに向かえ」
「…はい!」
「…ロキ君は、基地に戻ってて」
ホワイトがロキの腕に触れる。
「え…俺も行くぞ?」
「ロキ君は…骨折してるんだからまだ安静にしてなきゃダメ」
ホワイトの強めの言葉にロキが少し驚く。
少し間があった後、ロキが頷く。
「…そうだな、分かった。ホワイトの頼みだしな」
「よし、じゃあロキの方は別の団員に迎えを寄越そう、そこで待機しててくれ。お前達のいる場所は…背景的にホープシティだろう」
「知ってたんですか?」
「あぁ…昔旅をしてた時にな。ホワイトとジンとミカで…研究所かもしれない場所を探ってほしい」
「分かりました!」
「…了解」
ミカが通信を切ろうとする。
だが途中でランスが話し始める。
「…それとミカ。お前には重要な任務が今後あるからな。くれぐれも…死ぬなよ?」
「…勿論…ですけど」
「じゃあな」
ランスが通信を切る。
「…?」
「ランスさん、なんか企んでる…?」
「…さぁ?」
「団長から悪い予感はしないが…ちょっと気にはなるな」
四人がランスの言葉を疑問に思っていた。
「さて、目指すはネオカオスの研究所か…」
「…大丈夫だと思うが、一度ホワイトを殺した奴だ…ミカやジンも油断しないようにな」
「…勿論」
「あいつには俺も一度殺されかけてるからな…あの時の借りを返すつもりで…」
――そして、ロキは別の団員と合流し、ホワイト達はネオカオス研究所の手がかりとなりうる場所へ向かった。




