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白と悪魔と  作者: りあん
第一部 世界の改変
23/271

ep21.手掛かり




 ――ルキが動く少し前の時間…ラッシュ師団の基地では。


「おはよう諸君」


 ランスが通信機を使い、基地内の団員に呼びかける。


「今日から活動再開だ。ジハ脱走後のネオカオスの捜査に当たる。まずはネオカオスの新しい本拠地を見つけたい。前と同じく一筋縄では見つからないだろう…ネオカオスを見つけ、気付かれないように尾行し、本拠地の出所を探ってくれ。

 それと、ウィッシュ城下町の住民に危険が伴わないよう行動してくれ。以上だ」


 ランスが通信を切る。



 ランスの通信を聞いていたロキが一人しかいない四人部屋で寝転がっていた。


「…ミカもジンも…結局帰ってこなかったな…」


 ランスが一人で呟いていると、部屋に一人の団員が入ってくる。


「ロキ、俺達戦闘団員も本拠地を暴きに行くぞ」

「…そうだったな。もっと自由行動の日を増やして欲しかったところだぜ…」


 ロキが嫌々と立ち上がる。


「ネオカオス四天王とやらも未だ一人しかやれてないだろう?少なくとも残り三人はああいった強者が向こうにいるはずだ。俺達は戦闘団員としてネオカオス四天王を倒さなければならない。

 もちろん倒す…だけでなく、情報収集のために奴等を確保する事も大事だ。本拠地を暴くという事は四天王の奴等がいてもおかしくない。俺達も一緒に行くぞ」

「…まぁ、そうだな。殺戮のデストが人造人間だった以上、他のネオカオス四天王もきっと普通の人間ではないはずだ。

 ミカが見かけたとされるホワイトを殺した女も恐らくネオカオス四天王の一人だろう」


 ロキが服を着直す。ロキが持っている銃の弾の数を確認する。


「あぁ、そうだな。だからこそ、お前のそのふざけた馬鹿力を出せる魔力が必要だ」

「褒められてるのか分からんな…」

「一応褒めている。話を戻そう、俺達は元あったネオカオスの本拠地の近くを探る事になった。前と同じく空間を歪ませる仕掛けをしているかもしれない。

 ミカから預かった空間を切り裂けるナイフも俺が持っている。これを使わせてもらおう」


 団員がミカの空間を切り裂けるナイフをロキに見せる。


「そういえば…ミカとは連絡取れてるのか?」

「なんだ?お前がてっきり取れてるものだと思ってたぞ。団長からもロキが知っているだろうって伺っていたしな」


 団員がロキの顔を見て疑問に思う。ロキが連絡を取っているものだと思い込んでいたからだ。

 だがロキはミカと連絡を一切取っていなかった。いや、取れなかったのである。


「なんだそれ…団長俺に信頼寄せすぎだろ…俺が裏切者(ネオカオス)だったらどうするんだ…」


 ロキが少し呆れた顔をする。


「仲間の死を弔う奴に裏切者はいない」

「…そうかよ」

「で、その様子だと連絡は取れてないみたいだな」

「あぁ…昨日の自由行動からミカは一切帰ってきてない。何度か通信は試みたのだが…全部ブッチだ」

「そうか。お前はこのままあいつを待つか?」


 団員がそう言うと、ロキは少し悩んでから話し始める。

 ロキに一瞬気の迷いが出る。ミカを待つか、団員と行くべきか…


「…いや、お前達と行く」

「そうか?一瞬気の迷いが見えたが――」

「一瞬迷ったが、迷ってても仕方ない。俺は俺本来の役目を果たす、それまでだ」

「そうか。なら話は早い。ところで、ジンの方は?」

「ジンもあの後帰ってきてない。通信機による連絡も繋がらない。だが、あいつはなんとなく大丈夫な気がするんだ」


 ロキはジンを信じていた。

 ずっと一緒にいたから、ずっと戦闘員としていたから。


「それに…――」

「それに…?」

「…いや、なんでもない。行くぞ」


 ロキ達が部屋を出て、ネオカオスの元々本拠地にしてた場所へ向かおうとする。









 ――それから数分後…

 ネオカオス本拠地があった場所の近くに、ラッシュ師団の戦闘団員がロキを含め5人程集まっていた。

 その場所には既に湖はなく、ネオカオス本拠地が立っていた。

 幻術は既に必要ない、そういう事なのだろうか。


「ここが元ネオカオス本拠地…」

「…思えばここに突入してから…全てが狂ったな」


 ロキが呟く。

 ネオカオス本拠地の周りは木で囲まれていて、風も殆どなく静かだった。


「魔力は…もう働いていないな。あの時みたいに湖ではなくなっているな」

「近くには…特に何もなし。中に人がいる気配も全くないな。…行くぞ皆」

「おう」


 戦闘団員がボロボロになった扉を開け、ネオカオス本拠地入る。


「………」


 ロキが一番後ろに立ち、続けて入る。




 ネオカオスの元本拠地の廊下はとても荒れていた。

 何せここで戦闘が行われていたのだから。


「少し、血の臭いがするな」

「だが、死体はどこにも転がってないな。なんでだ?」

「それは、団長が全部回収してそれぞれの墓を立てたからだ」


 ロキが後ろから話す。


「ランスさんにそんな一面が…」

「殺戮のデストを戦闘不能にした時もその戦闘で死亡したネオカオスの下っ端を弔っていた。団長はそう言う人だ」

「敵味方関係ない…か…」

「俺達戦闘団員はネオカオスをいざという時は殺していいという許可も頂いているが…その後処理をしてくれてたのはランスさんだったんだな…」

「とはいえ、ネオカオスがしようとしている事はラッシュ師団にとっても…他の人間達にとってもいけない事だ。俺達はあいつらを止めるための戦闘をすべきだ」


 団員の一人がそう言うと…

 あの時ジハとブラックがいた大きな部屋に着く。



「…ここか…つい最近の出来事なのに…少し懐かしさを感じる…」


 ロキは少し懐かしさを感じていた。


「…!」

「どうした?ロキ?」

「この気配…魔力が近くに…!」

「まさか、ジハ!?」


 団員が銃を構える。

 だがロキはジハの魔力ではなく、別の魔力の気配を感じ取っていた。


「かなり小さい気配ではあるが…あっちの方か…!」


 ロキが指をさす。

 扉が少し開いていた。

 まるで誰かが入ったかのように…


「何かがあるのか…或いは、誰か…いるのか…?」

「皆、銃を構えろ。一応戦闘態勢に入る」

「…了解」


 団員全員で銃を持ち、扉の方へ恐る恐る向かう。



「…行くぞ」

「…おう」


 団員が扉を思いっきり蹴る。

 そして、後ろから団員が部屋の中に銃を向ける。


「…ここは…書庫か?」


 部屋の中にはずらりと本が並んでいた。

 魔力を得る方法について記されている本、昔話の本、沢山の一族の本など、沢山存在していた。


「ここでネオカオスは知識を得ていたのか…しかしこんな大量の書物…どこで…」

「ここにある本…どうする?」


 ロキが本に手を持っていく。


「そうだな…使えそうな奴は基本的に持ち帰りたい」

「…そんな事よりロキ、魔力の気配はどうなった?」

「あぁ…ここからする」


 ロキが本を持ちながら前に出て歩くと、そこには紙切れが置いてあった。


「紙切れ?」

「待て、何か書いてあるぞ。ロキ、読んでくれ」

「おう」


 ロキは紙切れに書いてある文を読み始めた。


 「――大切な物が何かを考え、ここに来た。ここには多くの叡智が眠っている。

 だがこの前ラッシュ師団にここは突破されたから当然ここは誰もいなかった。

 僕はここにあると思い、大切な物を見つけに来た。だがここにはなかった。

 しかし、僕は気付いた。

 ジハさんこそが僕の大切な物…いや、人だ。

 僕が片思いしてたとしても、ジハさんが僕を救ってくれたという過去は決して変わらない。

 大切な人を守るため、僕は真の完璧になろう。

 ――フェクト』


 紙切れに書かれていた文はこれで終わっていた。


「…これは…もしや夜逃げか?」

「…にしては、紙が新しい気もするが…」


 ロキが紙を持つ。古びたような様子は一切なかった。

 ロキが字に触れる。ロキの指に少しだけインクが付く。

 そして…ロキはその紙から多少の魔力を感じていた。


「紙が新しい…?ロキ、もしかして先程魔力を感じたのは…――」

「間違いない、この紙切れからだ…。フェクトという者…恐らくネオカオスの者だろうが、そいつが強大な魔力を持っている故にこの紙に魔力が少し付着していたのだろう。紙が新しいのは…恐らく最近書かれた…」

「なるほどな。となると…この近くにもしかしたらフェクトって奴がいるのかも…?」


 ロキが紙切れを持つ。


「もしもこの魔力の波長を読み取れる奴がいれば…もしかしたらフェクトに辿り着けるかもしれん」

「それはそうだが…そんな魔力を持つ団員は今の戦闘団員にはいない。一度基地へ持ち帰る必要があるな」

「そうだな」


 ロキが紙切れをポケットにしまう。


「この魔力を解き明かせそうなのは…シェールさんだろうか?魔力の心まで読み取れるかは不明だが…」

「試す価値はあるか。団長とシェールさんに報告だ。撤退するぞ」

「了解」


 団員全員で撤退を試みようとする。

 だが…


「がはっ!」

「!?」


 ロキの前にいた戦闘団員がとんできたナイフで腹を刺され、倒れる。


「…!誰だ…!」

「いい臭いだわ。…でも、憎たらしくなる臭いでもあるわ。それも酷く…」


 ロキが振り向くと、そこには暗殺のルキが立っていた。


「…お前は…!」

「あら…えっと…あなたは初めましてかしら?私はルキ。暗殺のルキって言えばいいかしら?」

「暗殺の…まさかネオカオス四天王…!」

「御名答――」


 ルキがそう言うと、もう一人の団員も念力でナイフを飛ばし、今度は左胸を刺す。


「がはっ…」

「…!」


 ナイフの刺さった音を聞いてルキが微笑む。


「あぁ…ナイフが刺さる時もいい音…これよこれ…私が本来したい暗殺というものは…!」

「…ナイフ…まさか…お前がホワイトを…!」

「ふふっ…だったら、どうするかしら?」

「っ…!!」


 ロキがルキに怒りを向ける。

 ホワイトの仇…今それが目の前にいるのだから…


「皆殺しにしてあげる」


 ルキが念力でナイフを飛ばす。


「っ…!」


 ロキがギリギリのところでかわす。

 だが、かわした先には団員が立っていた。


「ぐああっ!?」

「…!」


 団員が額を刺され、そのまま仰向けに倒れる。


「あら、ラッキーヒット。頭に突き刺さってるし…これは流石に即死かしら?」

「貴様…よくも…!」

「よくも…はこっちの台詞でもあるのよ…!あなた達こそ…デストやフェクト…その他下っ端を奪って…!」


 ルキが念力で自身の背後に大量のナイフを浮かせる。

 ルキもまた、ラッシュ師団に怒りを向けていた。

 お互いがお互いを恨んでいたのだった。


「ここがあなた達の墓場よ、ラッシュ師団。あなた達が下っ端を殺した場所で、私はあなた達を殺す。血で血を洗いなさい」

「ロキ、これはまずいぞ…5対1だった物が…2対1になっている…」


 気付いたらロキと一緒にいた団員はロキ含め二人となってしまっていた。


「それに、この狭い書庫じゃ戦いづらい…!」

「そうよ、あなた達にとってはとても戦いづらい場所。でも、私にとっては最高の場所よ」


 ルキが念力で再びナイフを投げ、団員に刺す。


「がっ…!」

「…!」


 団員の左胸に直接刺さり、団員がそのまま倒れる。


「また心臓…――」

「辞めろ…!」


 ロキが銃を構える。


「…そのちっさい豆鉄砲でこの大量のナイフを扱う私に勝てるとでも?」

「くっ…」


 ルキが背中からナイフを大量に浮かせる。


「ホント愚かねぇ…あなたもネオカオスに入っていればこんな結末を迎えなかったはずなのに」


 ルキが歩いてロキに近付く。


「…お前は…一体何が目的なんだ…!?」

「私の目的?私は…ただ殺せれば何でもいい。元々私は色んな犯罪者を殺す依頼を受けてた殺し屋だったんだけど…ある事件をきっかけにその殺し屋は辞めたわ。今はネオカオスとして、ラッシュ師団という犯罪団体を殺すためだけに動いているわ。まぁ殺し屋の血はまだ騒いでいるけれどね…」


 ルキがニヤリと笑う。


「ラッシュ師団は犯罪団体なんかじゃねぇ…!そっちこそ犯罪団体だろう…!」

「なかなか言うわね。そうね…傍から見たらあなた達は正義、私達は悪だわ。…でも、ひとつだけあなた達と私達で大きな違いがあるわ」

「違い…だと…?」

「一般人を巻き込んでいるかどうか」


 ルキが睨む。


「あなた達は一般人に聞き込みをするけど、私達は私達だけで解決する…この意味、分かるかしら?」

「…どういうことだ…?」

「ラッシュ師団は聞き込みなど他人の力が無ければ大して動けないのに対し、ネオカオスはネオカオスだけでそこに存在できる…無関係な人間ですら不要なのよ」

「っ…なんて奴…!」


 ロキが引き金に指を持っていく。


「さて、長話もこの辺にして…そろそろ暗殺のお時間よ」

「…お前はここで俺が捕らえる。そして…全て吐いてもらおう…何よりホワイトの仇…!」

「吐く?何を?反吐でも出せばいいかしら?」

「ほざけ…!」


 ロキが銃を撃つ。

 ルキは念力で浮かせたナイフで銃弾を弾く。


「そんな豆鉄砲じゃ、私に攻撃は当たらないわ」


 ルキはロキの方へ念力でナイフを投げる。

 ロキはまたそれを避けるが、ルキは連続でナイフを投げる。


「ほらほら、当たるまで投げるわよ」

「っ…!」


 ロキが走ってナイフを避ける。


「こういう相手にはいつか当たる理論を通す…それが私のやり方よ」

「そうかよ…!」


 ロキが銃を撃ちながらルキのナイフを避け続ける。


「当たらないわ」


 ルキは自分の顔の目の前でナイフで銃弾を弾く。


「このナイフはただのナイフじゃない。1本1本が銃弾すらも貫通させない硬さと皮膚にすんなり通る切れ味の良さを持つ…ちょっと指で触れるだけでも皮が剝けちゃうほどよ」


 ルキはナイフを一瞬だけ触り、自分の指の皮が少し剥げるのをロキに見せる。


「あなたはだいぶ不利。…大人しく投降しなさい。まぁ、投降したとして殺すだけだけど…」

「クソッ…!」

「ジンを相手してた時は流石に炎が面倒だったけど…あなたみたいに、魔力を自身の身体能力にしか関係ない人には私は一生有利ね」


 ルキがロキにナイフを投げ続ける。


「さて、いつまで持つかしら?」


 ロキの左腕にナイフが掠る。


「っ…!」

「あら、当たった。ふふふ…とても痛いでしょう?」


 ロキの左腕が出血していた。

 掠っただけなのに多く出血する。ロキの血が床に垂れる。


「その出血量…凄いでしょ?ちょっと掠っただけでもこの威力…素晴らしいわ…」

「…そうだな…このままじゃ俺は…負けそうだ」

「そうよ、このまま死になさい」

「…負けそうとは言ったが、負けるとは言っていねえ」


 ロキがそう言うと、自分の身体を強化をする魔力を解放する。


「…最大解放…!」

「それがデストを気絶させたという魔力ね…。凄い魔力を感じるわ…」


 ルキは少し汗をかく。

 ロキの魔力の圧に少しだけビビっていた。


「…お前のターンは終わった。次は…俺のターンだ」



 ――ロキがルキに対して、攻撃の構えを取る。

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本編のスピンオフである
悪魔に堕ちて悪魔と結婚した太陽
も連載中!
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